お気軽にお問合せ・ご相談ください

052-433-7280
営業時間
9:00〜17:00 (土日祝は除く)

中小企業の労務担当者が知っておきたい、
従業員の満足度アップのための健康管理。社会保険労務士が解説します。

従業員の健康対策は、高いパフォーマンスを発揮するための土台であり、人材採用の戦略としても大きな役割を担っています。最近では、「健康経営」というキーワードとともに企業に浸透してきました。従業員の一人ひとりが健康で業務を遂行することが、企業の収益の拡大・成長につながるという考え方です。従業員の健康増進に積極的に取り組む企業も、徐々に増えてきています。

とはいえ、中小企業にとっては、専門家の不在や1人バックオフィスといった場合も少なくありません。従業員の健康管理といっても、どのような対応を行えばいいのかわからない担当者の方も多いでしょう。

そこで、今回は中小企業の労務担当者の方が、最低限知っておきたい、「従業員の健康管理」について、社会保険労務士が解説します。

この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

取材・寄稿のご相談はこちらから

「安全配慮義務」従業員の健康を守る会社の義務とは?

労働環境のベース。「安全配慮義務」を理解しましょう。

労働契約法では「企業は従業員に対して生命や身体の安全を確保しながら働けるように配慮する義務がある」としています。会社は従業員に対して安全配慮義務があるというわけです。

この安全配慮義務を企業が怠った結果、労災事故が発生したり、心身に不調をきたせば、大きなトラブルに発展する可能性も少なくありません。

このようなケースが発生しないよう、企業が果たすべき「安全配慮義務」に必要なポイントを確認しておきます。

ポイント1 作業環境の整備

事故やケガなどが発生する可能性はないか、危険防止の措置を行います。安全に作業を行える環境を整備することが必要です。危険防止のために必要な機械装置があれば、その操作方法を従業員へ指示・指導することも必要です。さらに、それらの整備や点検も重要でしょう。

ポイント2 職場環境の改善

物理的な安全配慮はもちろんですが、職場の人間関係といった目に見えない環境も、健康に大いに影響を及ぼすものです。従業員間のコミュニケーション問題、ハラスメント問題は、会社にとっては見逃せない重要な問題です。それらの防止のための対応策や解決策は、企業にとっては必須の取り組みといえるでしょう。

ポイント3 健康管理

従業員の心身の健康状態を把握し、健康管理をサポートしていく必要があります。単純に健康診断を実施すればよいというものではありません。従業員の職種、職務内容、健康状態に応じて、必要な配慮は異なります。「ポイント1の職場環境の整備」は、目に見えてわかりやすいので、取り掛かりやすいのですが、個人個人の健康サポートは、難しい部分も多いものです。とくにメンタル面でのケアは、多くの企業担当者も悩んでいることでしょう。メンタルサポートを放置してしまった結果、状況が悪くなってしまうということも起こりがちです。大きなトラブルに発展する前に、予防の視点での対策を検討しておく必要があります。

ポイント4 労働時間の管理

長時間労働が健康に影響をもたらすことは誰でもイメージできることでしょう。長時間労働によって十分な休息や睡眠が取れない状態が続けば、心筋梗塞などのリスクが大幅に増加するといわれています。さらには、メンタルヘルスへの影響も大きく、うつ病などの発症リスクを著しく増加させると言われています。昨今の働き方改革を通じて、時間外労働の上限規制なども厳しくなってきていますが、業種、職種によっては、まだまだ長時間労働が常態化している場合もあるようです。長時間労働からくる悪影響は、従業員個人への健康問題だけではなく、企業ブランド価値や採用力の低下など、さまざまな損失をもたらします。未然に防ぐための取り組みが必要でしょう。

ポイント5 安全衛生管理体制や教育の実施

企業規模が大きければ、産業医、衛生管理者、作業責任者など体制を整えやすいかもしれません。しかしながら、小さな規模の企業では、担当者1人という場合も少なくないはずです。その場合には、外部のサービスなどを活用しながら体制を整えておくことも検討しましょう。コストがかかるため難しいという声もありますが、最近では小さな企業向けの健康管理委託サービスや、専門スタッフなども増えてきました。低コストでも可能なケースもあるので、検討してみることもおすすめします。

また、企業担当者はもちろん、従業員自身も安全衛生に関する知識を十分に保有していく必要があります。定期的に安全教育や衛生教育、健康相談などを行っていくことよいでしょう。

「安全配慮義務」違反したらどうなる?

法律上の義務はしっかりと確認しておきましょう。

安全配慮義務に違反し、労災、死亡事案などが発生した場合に因果関係が認められれば、裁判に発展することもあるでしょう。企業が労災事故や過労死などを予測できなかったのか、回避できなかったかなど、追及されることになります。民法上の損害賠償請求が発生することになります。例えば、過重労働によりうつ病を発症し、自殺したケースでは、会社の安全配慮義務違反として約7,000万円の賠償命令が命じられました。

死亡事案や後遺障害事案などは、損害賠償に及べば非常に多額の賠償金額を支払う必要があるとともに、社会的信用の失墜といった非常に大きなリスクを負うことになります。

コンサルタント中村のアドバイス

事件は事故において、突然何かが起こるということは考えづらいと理解しておきましょう。
たとえ、突発的な事故であろうと、それは予防できなかった結果であると考えるべきです。結果がすべてではないですが、その兆候は必ず現場にはあります。まずは自社の現場で事件や事故の兆候がないかどうかチェックしていくことが重要です。

企業担当者が絶対に理解しておくべき
健康管理の義務とは?

企業にとって従業員の健康管理は、後回しにできない非常に重要な取り組みになります。法律でも決められている事項がさまざまにあります。少人数の企業であっても、従業員を雇用している以上、健康管理は必要です。会社が行うべき事柄について、確認しておきましょう。

会社が行うべき安全衛生項目
頻度 項目 内容

従業員

常時50人以上

従業員

常時10人〜

50人未満

該当した時 産業医・衛生管理者の選任・届出・周知

従業員が常時50人以上の事業所に選任義務あり

-
該当した時 衛生推進者の選任

従業員が常時10人〜50人の事業所に選任義務あり

-
月1回 (安全)衛生委員会の設置・開催 (安全)衛生委員会の開催を行う。開催にあたっては、産業医・衛生管理者・従業員などが出席し、従業員の健康管理や事業所の安全衛生全般について協議を行う。議事録も作成し、保管する義務がある。 -
月1回 職場巡視 原則、月1回の産業医の職場巡視を行う。 -
採用したとき 雇入健康診断 従業員を雇用するときに健康診断を実施する。
年1回 定期健康診断 定期的に健康診断の実施が義務付けられている。健診項目は安衛法に規定されている。
年1回 医師による健康診断の就業判定

定期健康診断の結果に対する医師の就業判定・意見が義務付けられている。

年1回 健康診断結果報告・届出

健康診断結果について、所轄労働基準監督署への報告・届出が義務付けられている。

-
年1回 ストレスチェック実施 ストレスチェックの実施計画、ストレスチェック実施、必要に応じて実施後の産業医面談等が義務付けられている。

努力義務

発生都度 長時間労働者面談 必要に応じて長時間労働者の産業医面談、就業上措置などへの対応を行う。
発生都度 休職者・復職者対応 必要に応じて産業医面談を実施したり、復職者の復職プログラムの計画、就業措置への対応を実施する。
発生都度 健康相談

従業員の健康相談やメンタル相談など、必要に応じて対応実施する。

健康管理の基本。必ず行う定期健康診断

健康診断は、会社には受診させる義務、従業員には受診する義務があります。

健康診断は、労働安全衛生法によって企業義務付けられています。従業員が少ない、多いは関係ありません。従業員を雇用していれば1年に1回、定期に健康診断を受診させる必要があるのです。その健診項目も定められています。

(深夜業などに従事している従業員は、半年に1回の健康診断が必要です)

 
健康診断の項目

既往歴及び業務歴の調査

自覚症状及び他覚症状の有無の検査

身長・体重・腹囲・視力及び聴力検査

胸部X線検査及び喀痰検査

血圧の測定

貧血検査

肝機能検査、

血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)

血糖検査

尿検査

心電図検査

※医師の判断により省略可能な項目もある

有害物質を扱う業務に従事する従業員には、特殊健康診断

有害物質を扱ったり危険業務に従事する従業員は、別途、特殊健康診断が必要です。

特定業務

・高気圧作業

・放射線を扱う業務

・特定化学物質を扱う業務

・石綿を扱う業務

・鉛を扱う業務

・四アルキル鉛を扱う業務

従業員が50人以下でも、健康診断結果への医師の意見聴取が必要

従業員が50人以上の企業であれば産業医の選任義務があることは、知っている方も多いでしょう。逆を言えば、50人以下の企業は、産業医の選任義務はありません。しかしながら、注意しておきたいのが、50人以下であっても健康診断結果に対する医師の就業判定・意見聴取は必要ということです。

労働安全衛生法では、健康診断で異常の所見があった従業員の健康保持のために必要な措置(就業上の配慮など)について、医師から意見を聴取しなくてはならない、としています。できれば産業医が望ましいところです。ただ、産業医の選任義務がないのですから、どうすればよいのか、ということになるでしょう。その場合には、事業所の最寄りの産業保健センターなどで無料で対応してくれますので、ご相談してみるのもよいかもしれません。また、スポットで医師の意見聴取に対応してくれるサービス会社などもあるので、相談してみるのもおすすめです。

労働安全衛生法の違反には、罰則がある

安全配慮義務違反については、法律としての罰則ではなく民法上の損害賠償に発展することになります。しかしながら、一方、労働安全衛生法においては、罰則規定が設けられています。健康診断の実施義務を怠った場合などでは、50万円以下の罰金が科されることもあります。

また、死亡事故などの重大な労災が発生した場合には、刑事責任も問われることもあります。罰金にあたっては、両罰規定が設けられており、責任者(個人)と会社(法人)の双方に刑が科されることになっています。

コンサルタント中村のアドバイス

安全配慮義務違反が認められると、刑事責任とともに、損害賠償請求をうけることがあります。この損害倍方請求は高額になることがあり、経営的に大きな影響を与えることになります。まずは万全の安全配慮を行ったうえで、リスクに備える場合は使用者賠償責任保険なども検討しましょう。

まとめ

従業員の健康管理にお悩みの経営者・企業担当者のみなさま。お気軽にご相談ください。

会社の事業運営に忙しく、従業員の健康管理のために十分な対応や取り組みができていないといった会社もあるのではないでしょうか?

しかしながら、従業員一人ひとりの健康が、事業活動に大きく影響することを理解しているからこそ、多くの企業が「健康経営」に取り組もうとされているのでしょう。とくに従業員の少ない会社は、従業員一人にかかる仕事の負担は大きく、その人に何かあれば、企業の生産性や売上に大きく影響してしまうでしょう。

企業が長期的に成長・発展していくためにも。今一度、従業員の健康管理体制や取り組みを見直してみることをおすすめします。当社では、人事労務の視点から、経験豊富なスタッフが取り組みへのアドバイスやリスク防止のサポートをしていきますので、お気軽にご相談ください。

最新セミナー一覧

サイドメニュー