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あと1年! 2022年10月以降の社会保険の適用拡大までに
企業が今すべき準備とは?

これまで大企業のみが対象であった短時間労働者(パートタイマーなど)の社会保険の加入義務が、2022年10月以降、中小企業にも段階的に拡大されていきます。これまで社会保険の加入対象外であった従業員への対応、今後新たに人材を採用する場合の対応など、中小企業にとって大きな影響が予想されます。

適用拡大スタートまであと1年。適用拡大についての詳細と、今、中小企業が準備しておくべき対応を社会保険労務士が解説していきます。

この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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社会保険の適用拡大とは?

2020年10月まであと1年。今から準備をすすめましょう。

少子高齢化の進行や定年延長、働き方の多様化、女性の活躍推進といった社会の変化を背景に、2020年に年金制度改正法が成立しました。年金支給開始年齢の見直しのほか、社会保険の適用対象の拡大も改正となったのです。

 

現行の社会保険の適用対象は?

まずは、現行の社会保険の適用対象について、確認しておきましょう。

現行の社会保険は、すべての企業に対して、以下の要件を満たす労働者に加入を義務付けています。

現行の社会保険の加入要件

① すべての企業が義務づけ

・正社員:所定労働時間が週40時間の労働者

・パートタイマー等社員:所定労働時間が正社員の4分の3以上(週30時間以上)である労働者

② 大企業(従業員501人以上)に義務づけ

・週の所定労働時間が20時間以上

・賃金月額が888,000円以上

・1年を超える雇用期間が見込まれる

・学生ではない

そして、今回の2022年10月の改正では、従業員501人以上の大企業に対して義務付けられていたこれらの条件が、拡大されるということになります。

2022年10月以降の社会保険の適用対象は?

2022年10月以降は段階的に適用対象が拡大されていきます。

2022年10月以降の社会保険の加入要件

① すべての企業が義務づけ

・正社員:所定労働時間が週40時間の労働者

・パートタイマー等社員:所定労働時間が正社員の4分の3以上(週30時間以上)である労働者

② 従業員101人以上の企業に義務づけ

・週の所定労働時間が20時間以上

・賃金月額が88,000円以上

・2か月を超える雇用期間が見込まれる

・学生ではない

2022年10月からは、従業員101人以上の企業に対して、社会保険の適用対象が拡大されました。企業の従業員規模の要件が、501人以上から101人以上に、雇用期間の要件が、「1年以上」から「2か月超」に拡大されることになります。

そして、少し先にはなりますが、2024年10月には、この条件がさらに拡大され、従業員ん規模が51人以上の企業に適用されることになります。

要件 現行 2022年10月〜 2024年10月〜
企業の従業員規模 常時501人以上 常時101人以上 常時51人以上
週の所定労働時間 20時間以上 20時間以上 20時間以上
賃金 月額88,000円以上 月額88,000円以上 月額88,000円以上
雇用期間の見込み 継続して1年以上 継続して2か月超 継続して2か月超
適用除外 学生 学生 学生

しっかりチェック。従業員数のカウントの方法

まずは、2022年10月以降に、自社が社会保険の適用拡大の対象として該当するのか、確認しなくてはなりません。企業の従業員規模によって、社会保険の適用対象を判断していくことになりますが、従業員数のカウントの方法について、しっかりと確認しておきましょう。

カウントする従業員の範囲は?

社会保険の適用拡大以前の従業員数に注目し、社会保険の被保険者の人数をカウントします。社会保険の適用対象外の短時間労働者については、このカウントに含みません。

従業員のカウントの方法は?

人数は毎月カウントしていきます。直近12か月のうち6か月で基準である101人を上回った段階で適用対象となります。全事業所単位でカウントしますので、支店や営業所ごとに判断するわけではありませんので、注意してください。

一旦、適用対象となれば、従業員数が基準を下回ったとしても、原則、適用から外れるということはありません。適用から外れる場合には、被保険者の3/4の同意を得た上でなければ手続きはできません。

社会保険の適用拡大によるさまざまな影響とは?

影響も大きいですが、働き方の見直しのチャンスでもあります。

社会保険の適用対象が拡大することで、企業はもちろん、対象となる短時間労働者の双方に与える影響は、非常に大きいものです。

企業への影響

短時間労働者の要件が広がったことにより、社会保険に加入させなければならない従業員が多くなります。パートタイマーやアルバイトなどの従業員を多く抱える企業にとっては、社会保険料の負担増加は最も大きな影響となるのではないでしょうか。

社会保険料は、労使折半で負担するものです。新たな加入対象者が増えれば、その分、会社負担分の保険料も増加することになります。財務へのインパクトが大きいものですので、新たに加入対象となる従業員の社会保険料の試算や今後の採用計画に応じた資金計画も必要となってくるでしょう。

社会保険料の増加は、企業にとっては大きな問題でありデメリットとして注目されがちですが、一方で人材獲得のチャンスにもつながるかもしれません。短時間労働者であっても、社会保険に加入できる企業であれば、魅力的に映るということもあるでしょう。

 

従業員への影響

新たに社会保険に加入することになる従業員にとっても、影響は大きいでしょう。社会保険料は労使折半の負担ですので、給与額は加入前と変わらなければ、手取りの収入は減ることになります。とはいえ、当然ながら、社会保険に加入するメリットは大きいものです。厚生年金保険に加入することになれば、将来受け取る年金額は増えます。また、病気などで休職する場合には傷病手当金などの給付が受けられることになります。そのほか、障害を負った際の障害年金、死亡した場合の遺族年金も給付されることになります。単純に手取り額だけでははかることのできないメリットがあるでしょう。

年金や各種の給付だけではありません。短時間労働者の中には、配偶者の扶養の範囲内で働いていたという人も多いでしょう。これまで配偶者に扶養されている従業員は、年収130万円を超えないように仕事をするなど、制限をしながら働いていた人も多いはずです。適用拡大後は、扶養基準ではなく、社会保険の適用がされますので、働き方に自ら制限をかける必要がなくなるわけです。

社会保険の適用拡大。企業はどのように対応するのか

早めの準備が鍵です。ぜひご相談ください。

2022年10月から社会保険の適用拡大となるのは、従業員が101名以上の企業です。2019年の厚生労働省の資料によれば、今回の社会保険適用拡大で、新たに45万人が社会保険の適用対象となると見込んでいます。企業の社会保険料負担は1,130億円増加するとしています。段階的に進むこの改正は、2024年には、新たに125万人もの社会保険の適用対象が増加、企業の負担は3,160億円に上るとしています。

この改正で多くの企業がその対象となるのがわかります。対象となる企業には、改めて通知書も届くようですが、その前に自社が対象となるのか、対象となる場合にどのような事前準備が必要なのかを確認しておく必要があるでしょう。

 

STEP1適用対象となる従業員のチェック

まずは自社が2022年10月以降に社会保険の適用拡大の要件に該当するのか、確認します。正社員および社会保険に加入している短時間従業員(正社員の所定労働時間の3/4以上の所定労働時間)の数が101人以上であるか、ないかが第1のステップです。101人以上であれば、適用ということになります。101人未満であっても、新たに人材を採用する予定があるような場合には、どのタイミングで適用対象となるのかは予定しておいたほうがよいでしょう。

そして、一番重要なのが現時点で社会保険の適用外となっている短時間従業員の人数およびそれぞれの労働条件を確認する必要があります。現時点で社会保険の適用外となっている短時間従業員が、今後対象となるかどうかを判断するためです。労働条件の確認とともに、働く実態がどのようになっているかもあわせて確認していきます。とくに、雇用期間については、注意が必要です。雇用期間については、例え雇用契約が2か月以内であっても、実態として2か月を超えて雇用される見込みがあると判断される場合には、最初の雇用契約の期間から対象となります。

とくに、以下のような場合には慎重労働条件通知書や雇用契約書で、雇用期間を2か月としている場合でも、「更新される旨」や「更新される場合がある旨」などを明示していれば、適用対象となります。

STEP2社会保険料の負担額をシミュレーション

適用対象が増加すれば、自ずと企業の社会保険料負担も重くのしかかります。予め資金計画をしておくためにも、シミュレーションを行うことをおすすめします。厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトに「社会保険料かんたんシミュレーター」も用意されているので、利用してみるのもよいでしょう。

厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」

https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/

STEP3短時間労働従業員への説明会や面談の実施

新たに社会保険の適用対象となる短時間労働従業員がいる場合には、必要に応じて説明会や個別の面談を実施しましょう。できればスケジュールに余裕を持ったうえで、個別の面談を行います。会社の方針やどのような対応を行うのかを丁寧に説明していくことで、従業員の安心感にもつながるでしょう。

とくに配偶者の扶養内での仕事をされている場合などは、働き方の見直しが必要になるケースもあるでしょう。従業員それぞれが納得のいく働き方を選択できるようにするためにも、制度の説明や加入することによって受けられるメリットなどを、丁寧に説明をすべきでしょう。現在の短時間労働従業員の労働条件通知書や雇用契約書を用意しながら、現状の働き方との、かい離はないかなども、あわせて確認していくと、実態が把握しやすいと思われます。

個別面談を行うと、社会保険の加入を希望しない、といった従業員も出てくるかもしれません。とはいえ、要件に該当すれば本人の希望の有無にかかわらず、加入しなければなりません。そのような場合には、働き方自体の見直しが必要となる場合もあるでしょう。

場合によっては、複数回の面談が必要になるかもしれませんので、早めに対応を始めることをおすすめします。

STEP2での社会保険のシミュレーションと並行して、加入対象となる人員などを確定していきます。

 

○社会保険の専門家である社会保険労務士への相談

厚生労働省では、社会保険の理解をすすめるにあたって、専門家のサポートもすすめています。

「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大に関わる専門家派遣依頼届」

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/iraitodoke.pdf

 

STEP4人員配置の見直し

従業員との話し合いのなかで、人員配置の見直しなどが発生する場合もあるでしょう。ここまでのステップで加入対象者の特定を行います。各種助成金や補助金を活用できる可能性はないかなども合わせて確認しておくとよいでしょう。

 

○中小企業生産性革命推進事業

https://seisansei.smrj.go.jp/

中小企業基盤整備機構において中小企業を支援する各種制度があります。

「ものづくり補助金」「持続化補助金」「IT導入補助金」

○キャリアアップ助成金

短時間労働者の労働時間延長や選択的適用拡大を行った場合の助成金制度があります。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

「短時間労働者労働時間延長コース」「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」「正社員化コース」

STEP5社会保険の資格取得届の提出

適用拡大の対象となる企業は、加入対象者が確定したら、資格取得届の準備です。被保険者の資格取得をする日、報酬月額等を記入した資格取得届を提出することになります。資格取得した日から5日以内に提出することになります。

まとめ

助成金の活用などもあわせてご相談ください。
 

2022年10月からの社会保険の適用拡大は、多くの企業とそこで働く従業員に非常に大きな影響をもたらします。対応にあたっては、早めの準備が鍵となります。というのも、従業員への説明や面談はもちろんのこと、資金計画や人員計画など必要な対策を行うには、早いに越したことはありません。場合によっては、キャリアアップ助成金や各種補助金の活用も検討テーブルに乗せることができるかもしれません。単純に、社会保険に加入する、しないというだけでなく、今後の従業員の人員計画の策定、働き方に影響する部分も多いので、この機会に社会保険の専門家である社会保険労務士にご相談ください。

当社では中小企業のみなさまに、人事労務のスペシャリストとしてさまざまなアドバイス、取り組みをご支援いたします。ご興味をお持ちでしたら、お気軽にお問い合わせください。

 

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