内定時・入社時にどれだけ準備ができているかが、入社後の定着率を大きく左右します。
こちらのページでは、それぞれの状況に合わせて、人材の定着を目的とした入社時の対応について解説します。
内定の通知は企業にとって、応募者に「自社で働いてほしい」という意思表示です。
入社につなげるため、内定通知は口頭と書面にて行うようにしてください。
内定を口頭で伝える際には、一緒に働いてほしいということを熱意をもって伝えましょう。
内定を通知したからと言って、応募者が入社してくれるかどうかは分かりません。
応募者は複数の企業受けているケースがほとんどで、自社の内定を持っているということは他社からも内定をもらっていると考えた方が自然でしょう。
まずは口頭で熱意を伝えて下さい。
また、中途採用の場合などは内定から採用までの期間が短いため、口頭だけで内定通知を済ませるケースも散見されます。期間が短いと用意するのも大変だとは思いますが、必ず書面でも内定通知を行いましょう。
書面で通知することで、条件面の相違からの労働トラブルを防ぐことができるだけでなく、応募者からもコンプライアンス意識の高い企業だとうつり、信頼感が増します。
応募者の意思を確認するためにも、内定承諾書を提出してもらいましょう。
内定承諾書は応募者の入社の意思を固めるために有効です。
内定承諾書の提出と同時に、入社時の誓約書として社員に守ってもらいたい重要事項を書面で提示し、署名してもらうことをお勧めします。
入社前に応募者に守ってもらいたいことを伝えておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
また、入社日が近くなったら、雇用契約書の締結も行いましょう。
応募者が内定を承諾しただけでは、厳密な意味で雇用契約が締結されたことにはなりません。
労働条件の記載された雇用契約書に双方の署名をすることで、雇用契約が締結されます。
労働基準法第15条では書面の交付による明示事項として、以下の5つを定めています。
(1)労働契約の期間
(2)就業の場所・従事する業務の内容
(3)始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換(交替期日あるいは交替順序等)に関する事項
(4)賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項
(5)退職に関する事項(解雇の事由を含む)
適切な書式での労働条件の明示を行わない場合や口頭での雇用契約しか締結されていない場合に、記載されていないことによる労使間のトラブルとなってしまいます。
後々のトラブルを避けるためにも適切な書式を使用して雇用契約を締結しましょう。
入社後には社会保険の手続きが必要です。細かく煩雑な手続きが多いため、入社前から準備をしておくことをお勧めします。
企業と従業員の双方が安心して働けるように、各種手続きを行わなければなりません。
必要な手続きは以下の通りです。
入社した社員が業務上以外での怪我や病気をした時、治療・通院費の一部を会社が負担してくれる保証です。
提出する書類は社員に配偶者など扶養親族がいるかいないかで変わります。
配偶者など扶養親族がいる場合は「健康保険 被扶養者(異動)届」「国民年金第3号被保険者 資格取得等届」に記入・捺印をしていただく必要があるので、社員から書類をいただいた時に記載漏れや誤りがないかしっかり確認を取りましょう。
入社した社員が業務上で怪我や病気をした時、育児休業や失業した時の保証です。
「雇用保険被保険者資格取得届」に必要事項を記入して提出しましょう。
前職で雇用保険に加入していた方がいたら前職の「雇用保険被保険者証」を提出していただき、雇用保険者番号を「雇用保険被保険者資格取得届」に記載します。
会社が社員の所得税を毎月の給与から源泉徴収して代わりに納付ができるようにするための手続きです。
労働基準法の定めにより、名簿を作成して会社に保管することが義務付けられているため忘れず作成しましょう。必須の記入事項は以下のとおりです。
一 性別
二 住所
三 従事する業務の種類
四 雇入の年月日
五 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)
六 死亡の年月日及びその原因引用:労働基準法施行規則第53条
入社後すみやかに社会保険などの手続きを行うためにも、採用後3日以内に下記の書類を記載、提出してもらいましょう。
これらの書類は応募者の必要な情報を集めるための書類です。
会社の規模や業種によっても必要となる情報は変わるため会社で必要な書式を用意しておきましょう。
身元保証書、緊急時連絡書やマイカー通勤許可申請書は回収していない企業も多いとは思いますが、何かがあった時のトラブルのため、入社時に回収しておきましょう。
新入社員が安心して仕事を始められるように、必要な備品や環境を整備しておきましょう。
入社当日の流れを決めておきましょう。
入社初日は誰でも受け入れてもらえるかどうか不安で緊張しているものです。
不安を解消し、「この会社にしてよかった」と思ってもらえるためには、「お客様」だと思い、丁寧に対応することが必要です。
いきなり現場任せにするのではなく、採用担当者やメンターとなる先輩がついて会社の紹介をしましょう。
一例としては、まず配属先の部署への挨拶します。
その後、鍵やセキュリティカードの貸与、駐車場の案内、ビルの入館方法などの出勤や退勤の方法、そのほか備品を貸与する場合は使い方の説明とともに渡します。
業務ソフトや連絡手段は各社で違いますので、使い慣れているからと言って説明を省略するのではなく、使い方を再度教えましょう。
少なくとも初日から3日間は、会社の経営理念や今後の計画の説明といった理念教育を行いましょう。
入社前に説明をしているとは思いますが、入社前と入社後では受け手の意識も違います。
これから長く働いてもらう仲間です。
企業にとって最も大切な考えの共有と、これから企業がどうなっていくのかという未来の共有を行いましょう。
また、中小企業には大なり小なり、それぞれの会社の文化や慣習があります。
いつも働いている自分たちにとっては当たり前のことでも、説明をされていない新入社員にはわからないことがたくさんあります。
例えば、社員同士を「〇〇さん」とさんづけで呼び合うのか「〇〇課長」と役職で呼び合うのかも、説明をしていなければ分かりません。
そういった文化や慣習を最初に伝えておくことで、新入社員が馴染みやすくなります。
当社でも、新入社員には3日間は新入社員研修として理念教育と文化や慣習の説明に充てています。
理念教育、文化や慣習の説明を入社時に行うことで、現場での受け入れもスムーズにいき、定着率が上がります。
入社時にどれだけ準備ができているかが、入社後の定着率を大きく左右します。
応募者の心理としては、入社を決めた後も「もしかしたらブラック企業に就職してしまったのではないか。」と不安を抱いています。
法律に基づいた書面を段取りよく提出してもらうことで、しっかりした会社だと思ってもらうことができます。
また、定着率の低い企業の多くが入社後のサポートを現場に任せきりにしてしまっています。
配属先の部署は教育を専門に担当しているわけではないので、何をさせたらいいかわからず、現場での仕事を任せてしまいます。
会社のことを何もわかっていない状態で、いきなり現場で仕事を任されたのでは会社に対して不信感を抱くことになりかねません。
書面の準備と新入社員に対するサポートをしっかりすることで、早期離職を防ぐことができます。
私たち社労士法人とうかいも、これまで多数の中小企業様で採用をサポートさせていただいてきましたが、採用した新人が生き生きと活躍している企業様は、きまって事前の準備とサポートに力を入れてらっしゃいました。
どのような書面を準備すればいいのか、新入社員のサポートは何が必要なのかなど、入社準備でお悩みでしたら、社労士法人とうかいにお気軽にご相談ください。
人事労務の専門家として、法令にのっとった正確な書式のご案内はもちろん、応募者の力を発揮させるサポートに関してもアドバイスさせていただきます。