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コラム

社内生成AI利用規程の作成方法|テンプレートと策定手順を解説

業務効率化の切り札として生成AIの活用が広がる一方、情報漏洩や著作権侵害といったリスクも顕在化しています。
こうしたリスクを管理し、従業員が安全にAI技術の恩恵を受けられる環境を整備するためには、明確なルールを定めた社内規定の策定が不可欠です。

この記事では、社内向けの生成AI利用規程を作成するための必須項目や策定手順、すぐに使えるテンプレートの考え方を網羅的に解説します。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア

  • NHK「あさイチ」
  • 中日新聞
  • 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」

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-社内でAIツールを使用する際に従業員に対して「守るべきライン」を設定するもの

目次

そもそも社内AI利用規程はなぜ必要なのか?

現状、社内AI利用規程の策定は法律で定められた義務ではありません。
しかし、企業が生成AI利用に伴うリスクを管理し、従業員を守るためには、その策定は極めて重要です。
明確なガイドラインがない状態では、従業員が知らず知らずのうちに機密情報を漏洩させたり、著作権を侵害したりする可能性があります。

規程を設けることで、従業員は利用可否の判断に迷うことなく、安全な範囲でAIを活用でき、企業はコンプライアンス違反や信用の失墜といったリスクを未然に防げます。

ガイドラインを整備しないことで起こりうる3つの重大リスク

生成AIの利用に関する明確なルールを社内で設定しないままでは、予期せぬトラブルに発展する可能性があります。
従業員が良かれと思って行ったAIの利用が、結果的に企業へ深刻なダメージを与える事態も想定されます。
ここでは、ガイドラインの未整備によって発生しうる代表的な3つのリスクについて具体的に解説します。

リスク1:入力した機密情報や個人情報が漏洩する

多くの生成AIサービスは、ユーザーが入力した情報をサービス品質の向上やAIモデルの学習データとして利用する場合があります。
そのため、社内の機密情報や顧客の個人情報を含むデータを安易に入力すると、それらの情報が意図せず外部に流出し、第三者に閲覧される可能性があります。
一度学習データとして取り込まれた情報は削除が困難なケースも多く、企業の信用や競争力を著しく損なう重大な情報漏洩事故につながる恐れがあります。

リスク2:著作権侵害などで法的なトラブルに発展する

生成AIは、インターネット上の膨大なテキストや画像を学習データとしています。
そのため、AIが生成した文章や画像が、既存の著作物と酷似あるいは完全に一致してしまうことがあります。
従業員がその事実を知らずに生成物を社外向けの資料やマーケティングコンテンツに利用した場合、著作権者から権利侵害を主張され、損害賠償請求や使用差し止めといった法的なトラブルに発展するリスクを抱えています。

リスク3:AIの誤情報(ハルシネーション)を鵜呑みにして損害が出る

生成AIは、事実に基づかない誤った情報や、文脈に合わない不自然な内容をもっともらしく生成することがあり、これは「ハルシネーション」と呼ばれています。
AIの回答を鵜呑みにし、事実確認(ファクトチェック)を怠ったまま業務を進めると、誤ったデータに基づく経営判断を下したり、顧客に不正確な情報を提供したりする事態になりかねません。

結果として、企業の信頼性が低下し、経済的な損害が発生する可能性があります。

すぐに使える!社内生成AI利用規程に盛り込むべき必須項目8選

実効性のある社内規定を作成するためには、AI利用に伴うリスクを網羅的にカバーする規約を盛り込む必要があります。
ここでは、あらゆる業種・規模の企業で共通して重要となる8つの必須項目を紹介します。
これらの項目を自社の状況に合わせて具体化することで、従業員が安心して利用できるガイドラインの土台を築けます。

① 規程の目的と適用される対象者の範囲

規程の冒頭で、策定の目的を明確に示します。
例えば、「生成AIの適切な利用を通じて業務の生産性を向上させるとともに、利用に伴うリスクを管理すること」といった目的を記載します。
これにより、従業員は規程が単なる禁止事項の羅列ではなく、積極的な活用のためのルールであると理解できます。

あわせて、この規程が適用される範囲を具体的に定義することも重要です。
正社員だけでなく、契約社員、派遣社員、業務委託先の従業員など、社の情報資産にアクセスする可能性のある全ての関係者を対象に含める必要があります。

② 業務での利用を許可するAIツールの指定

市場には多種多様な生成AIツールが存在しますが、そのすべてがビジネス利用に適したセキュリティレベルを備えているわけではありません。
情報漏洩リスクを管理するため、企業として利用を許可するAIツールを具体的にリストアップし、それ以外のツールの業務利用を原則禁止とします。
利用を許可するツールは、入力情報を学習データとして利用しない設定(オプトアウト)が可能であるか、あるいは法人向けにセキュリティが強化されたプランを提供しているかなどを基準に、情報システム部門が安全性を評価した上で選定します。

③ 入力してはいけない情報(機密情報など)の具体的な定義

情報漏洩を防ぐ上で最も重要な項目の一つです。
単に「機密情報」や「個人情報」と記載するだけでは、何が該当するのか従業員の判断が分かれてしまう可能性があります。
そのため、「顧客名簿」「未公開の財務情報」「技術情報」「人事評価データ」のように、自社の業務内容に即した具体的な情報の種類を例示することが不可欠です。

これにより、従業員は入力時に迷うことなく、リスクの高い情報をAIに入力することを回避できます。

④ AIが生成した文章や画像の取り扱いルール

AIが生成したコンテンツには、誤情報や権利侵害のリスクが含まれることを前提としたルールを定めます。
具体的には、AIによる生成物を業務で利用する際には、必ず人間によるファクトチェックや内容の校閲を行うことを義務付けます。
また、生成された内容をそのままコピー&ペーストして使用することを禁止し、あくまで「下書き」や「たたき台」として活用するよう促します。

特に、社外に公開する資料やコンテンツについては、複数人での確認や上長の承認プロセスを設けることも有効です。

⑤ 著作権や商標権など知的財産権の遵守

AIの生成物が第三者の知的財産権を侵害するリスクに対応するための項目です。
生成された文章や画像、ソースコードなどを利用する際は、既存の著作物と類似していないかを確認するよう従業員に注意喚起します。
特に、企業のロゴやキャラクターデザイン、広告コピーといった商用利用が前提となるコンテンツの制作にAIを用いる場合は、より慎重な確認が求められます。

また、自社が権利を持つ情報をAIに入力する際の注意点についても触れておくと、より網羅的な規定になります。

⑥ AI利用における責任の所在の明確化

AIはあくまで道具であり、その利用結果に対する最終的な責任はAIではなく利用した人間にあることを明確に規定します。
AIが生成した情報に誤りがあり損害が発生した場合や、生成物が第三者の権利を侵害した場合でも、その責任はAIの開発元ではなく、AIを利用して業務を行った従業員および監督者、ひいては企業が負うことになります。
この点を明記することで、従業員にAIの出力を過信せず、慎重に扱うべきであるという意識を持たせることができます。

⑦ 規程違反が発覚した場合の罰則規定

規程の実効性を確保するため、違反者に対する具体的な措置を定めます。
この罰則は、既存の就業規則や懲戒規程と連動させるのが一般的です。
違反の内容や程度に応じて、「厳重注意」「減給」「出勤停止」「懲戒解雇」といった段階的な懲戒処分を科すことを明記します。

罰則規定を設けることで、従業員に対して規程遵守の重要性を明確に示し、安易なルール違反を抑止する効果が期待できます。

⑧ 技術動向を踏まえた定期的な見直しと改定

生成AIの技術は日進月歩で進化しており、関連する法律や社会的な認識も変化し続けています。
そのため、一度作成した規程がすぐに現状にそぐわなくなる可能性があります。
このような変化に対応するため、規程には「年に1回」や「半期に1回」といった具体的な頻度で見直しを行う旨を明記しておくことが重要です。

これにより、規程を常に最新の状態に保ち、形骸化を防ぐことができます。

テンプレートを基にした社内生成AI利用規程の策定4ステップ

社内規程をゼロから作成するのは大きな負担ですが、基本的なテンプレートを基に自社の状況に合わせてカスタマイズすることで、効率的に策定を進められます。
ここでは、リスクを洗い出し、関連部署と連携しながら、実効性の高い規程を完成させるための具体的な4つのステップを解説します。

ステップ1:社内でのAI利用状況と潜在的リスクの洗い出し

まず、規程策定の土台となる現状把握から始めます。
従業員を対象としたアンケートやヒアリングを実施し、どのような部署で、どの生成AIツールが、どのような業務目的で利用されているかという社内利用の実態を調査します。
これにより、現場で既に発生している課題や、今後想定される情報漏洩、コンプライアンス違反などの潜在的リスクを具体的に特定できます。

この洗い出し作業が、自社の実情に即した規程を作成するための重要な第一歩となります。

ステップ2:必須項目を網羅したガイドラインの草案を作成する

ステップ1で把握した現状とリスクを踏まえ、規程の草案を作成します。
前章で紹介した「盛り込むべき必須項目8選」を骨子として、公開されている雛形や他社事例を参考にしながら、自社の業種や企業文化に合わせて肉付けを行っていきます。
この段階では完璧を目指す必要はなく、まずは議論のたたき台となるドラフトを作成することが目的です。

各項目について、できるだけ具体的な表現を用いることを意識すると、後の調整がスムーズに進みます。

ステップ3:法務や情報システム部など関連部署と内容を調整する

作成した草案は、必ず関連部署に共有し、専門的な見地からのフィードバックを求めます。
法務部門には、著作権や個人情報保護法などの法的リスクに問題がないか確認を依頼します。
情報システム部門には、セキュリティ上の懸念や技術的な実現可能性についてレビューを依頼しましょう。

各部署からの指摘や意見を反映させることで、規程の法的な妥当性や実効性を高め、より完成度の高いものへとブラッシュアップできます。

ステップ4:全従業員へ周知し、理解を深めるための説明会を実施する

完成した規程は、社内ポータルへの掲載やメールでの一斉通知など、全従業員が確実に認知できる方法で周知します。
ただし、規程を公開するだけで終わらせてはいけません。
なぜこの規程が必要なのかという背景や、各ルールの具体的な意図を解説する説明会や研修会を実施することが極めて重要です。

質疑応答の時間を設けることで、従業員の疑問を解消し、規程への理解と納得感を深めることが、ルール遵守につながります。

規程を形骸化させないために押さえておきたい運用ポイント

社内AI利用規程は、策定して終わりではありません。
技術の進化やビジネス環境の変化に対応しながら、実効性のあるルールとして機能させ続けるためには、継続的な運用が不可欠です。
ここでは、規程を単なる「お飾り」にせず、組織に根付かせるための3つの運用ポイントを解説します。

ポイント1:無断利用(シャドーAI)を防ぐための申請・承認フローを設ける

従業員が会社の許可なく、業務に個人契約のAIツールなどを利用する「シャドーAI」は、情報漏洩の温床となります。
これを防ぐため、業務で新たなAIツールの利用を希望する従業員が、情報システム部門などに利用申請を行い、セキュリティ面の審査を経て承認を得るという明確なフローを構築します。

この仕組みにより、会社は従業員の利用状況を把握・管理でき、安全性が確認されたツールのみが利用される環境を維持できます。

ポイント2:AI技術の進化や法改正に合わせて定期的に内容を更新する

生成AIを取り巻く環境は、非常に速いスピードで変化しています。
新しい技術が登場したり、AI利用に関する新たな法律が施行されたりすることもあります。
そのため、策定した規程がすぐに陳腐化してしまう可能性があります。

これを防ぐには、「半年に一度」や「年に一度」など、定期的に規程内容を見直すタイミングをあらかじめ決め、担当部署が責任を持ってアップデートを行う体制を整えておくことが重要です。

ポイント3:社員のAIリテラシーを底上げするための研修を継続的に行う

規程を遵守してもらうためには、従業員一人ひとりがAIの特性とリスクを正しく理解していることが前提となります。
規程の説明だけでなく、AIの基本的な仕組み、効果的な活用法(プロンプトの書き方など)、そして具体的なリスク事例などを学ぶ研修を継続的に実施します。

従業員のAIリテラシーが向上すれば、規程を「守らされる」のではなく、リスクを自律的に判断し、安全かつ効果的にAIを活用できるようになります。

社内生成AI利用規程に関するよくある質問

ここでは、ClaudeCodeを人事労務で活用する際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
導入を検討する上で生じる疑問や不安を解消するための一助としてください。

情報システム部門がなくても規程の作成は可能ですか?

はい、情報システム部門がない場合でも規程の作成は可能です。

総務や法務部門が中心となり、公開されているテンプレートや本記事で紹介した必須項目を参考に草案を作成できます。
技術的な判断が難しいセキュリティ要件などについては、必要に応じて外部のITコンサルタントや専門家の助言を求めることで補完するとよいでしょう。

禁止事項はどこまで厳しく設定すべきでしょうか?

業務効率を著しく損なわない範囲で、リスクの大きさに応じて設定することが重要です。
機密情報や個人情報の入力禁止といった、重大なインシデントに直結する項目は厳格に定めるべきです。

一方で、過度に厳しい制限はAI活用のメリットを失わせるため、生産性向上とのバランスを考慮し、現場の意見も聞きながら現実的なルールを設定する必要があります。

テンプレートはそのまま使用せず自社向けにカスタマイズが必要ですか?

はい、テンプレートはあくまで雛形であり、必ず自社の実態に合わせてカスタマイズすることが不可欠です。

企業の業種、事業内容、取り扱う情報の種類、企業文化などによって、想定されるリスクや守るべきものは異なります。
テンプレートを参考にしつつも、自社の状況に合わない部分は修正・削除し、必要な項目を追加する作業が必ず求められます。

-社内でAIツールを使用する際に従業員に対して「守るべきライン」を設定するもの

まとめ

社内生成AI利用規程の策定は、情報漏洩や著作権侵害といったリスクから企業を守り、従業員が安心してAIを活用できる環境を整えるために不可欠な取り組みです。
規程を作成する際は、テンプレートを参考にしつつも、自社の利用実態や潜在的リスクを十分に分析し、実情に合った内容にすることが重要です。
また、規程は一度作って終わりではなく、技術の進化や法制度の変更に合わせて定期的に見直し、研修などを通じて従業員の理解を深めながら運用していく必要があります。

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