
2026年4月1日から、働きながら老齢厚生年金を受け取る「在職老齢年金」の制度が改正されます。
今回の法改正では、年金の支給停止額を計算する際の基準額が、現行の48万円から62万円に引き上げられることが大きな変更点です。
この引き上げにより、就労収入と年金の合計額が高い場合でも年金が減額されにくくなり、高齢者の就労意欲の向上が期待されています。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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そもそも在職老齢年金とは?
働きながら年金を受け取る仕組みを解説
在職老齢年金とは、老齢厚生年金の受給資格がある人が、厚生年金保険の被保険者として働きながら受け取る年金を指します。
特に65歳以上の人が働き続ける場合、毎月の賃金(標準報酬月額)と年金の月額(基本月額)の合計額が一定の基準を超えると、年金の一部または全部が支給停止される仕組みです。
この制度は、就労による収入と年金のバランスを調整する目的で設けられています。

【2026年4月施行】厚生年金保険法改正で在職老齢年金の基準額が変わる
2026年4月1日に施行される厚生年金保険法の改正により、在職老齢年金の支給停止基準額が変更されます。
この改正は2024年に成立した年金制度改正法に基づくものであり、現行の基準額48万円が62万円へと大幅に引き上げられる点が大きな特徴です。
2024年の議論を経て決定されたこの変更は、働く高齢者の収入増加と年金受給の両立を支援することを目的としています。
現行の支給停止基準額48万円から62万円への変更点を比較
現行の在職老齢年金制度では、「基本月額(老齢厚生年金の月額)」と「総報酬月額相当額(毎月の賃金+過去1年間の賞与を12で割った額)」の合計が48万円を超えると、超えた金額の2分の1が年金から支給停止されます。
2026年4月の改正後は、この支給停止の基準となる金額が62万円に引き上げられます。
これにより、例えば月収と年金の合計が60万円の人は、現行制度では年金が月額6万円((60万円-48万円)÷2)停止されますが、改正後は基準額の62万円を下回るため、支給停止は発生せず年金を全額受給できるようになります。
この変更は、就労する高齢者の手取り収入に直接影響を与える重要な改正です。
なぜ基準額が引き上げられる?法改正の目的は高齢者の就労促進
今回の法改正の主な目的は、高齢者の就労意欲の促進です。
現行制度では、一定以上の収入を得ると年金が減額されるため、収入が基準額を超えないように就労時間を調整する、いわゆる「働き控え」を選択する人が少なくありませんでした。
特に意欲と能力のある65歳以上の就労を妨げる「年金の壁」を緩和し、人手不足が深刻化する中で、経験豊かな高齢者に貴重な労働力として活躍してもらう社会的な狙いがあります。

基準額の引き上げで働く高齢者の年金受給額はどう変わるか
支給停止基準額の引き上げは、働く高齢者の老齢厚生年金の受給額に直接的な影響を及ぼします。2024年度の支給停止基準額は50万円ですが、2025年度には51万円に引き上げられる予定です。さらに、2026年4月からは62万円に引き上げられることが予定されており、これにより、これまで年金の一部が停止されていた人の支給停止額が減少、あるいはゼロになる可能性が高まります。
これにより、同じように働いていても、年金収入を含めた手取り額が増加するケースが多くなり、高齢期の経済的な安定につながることが期待されます。
月収と年金の合計が62万円以下なら年金は減額されない
2026年4月からの新制度では、年金の月額である「基本月額」と、給与と賞与から算出される「総報酬月額相当額」の合計が62万円以下の場合、老齢厚生年金は減額されずに全額が支給されます。
この合計額が62万円を超過した場合に限り、超えた金額の半分に相当する額が年金の支給額から停止されることになります。
これまで、支給停止基準額である48万円を意識して就労調整を行っていた多くの人にとって、この基準額の引き上げは大きなメリットとなります。
年金の減額を気にすることなく、より柔軟な働き方を選択しやすくなるため、自身の能力を活かして収入を増やす機会が広がります。
企業の人事労務担当者が押さえておくべき法改正の注意点
今回の法改正に伴い、企業の人事労務担当者は、制度変更の内容を正確に把握し、社内への周知徹底を図る必要があります。
特に、働きながら年金を受給している65歳以上の従業員から、給与と年金の関係についての問い合わせが増加することが見込まれます。
直接的な給与計算システムの変更は不要ですが、従業員へ正確な情報提供ができるよう、相談体制を整えておくことが重要です。
まとめ
2026年4月から、在職老齢年金の支給停止基準額が現行の48万円から62万円へと引き上げられます。
この法改正は、意欲ある高齢者の就労を促進し、年金を受給しながら働き続けやすい環境を整備することを目的としています。
この変更により、働きながら老齢厚生年金を受け取る多くの人にとって、年金が減額されることなく、より高い収入を得られる可能性が広がります。
企業側は、この制度変更を正しく理解し、対象となる従業員への適切な情報提供が求められます。
個人の働き方や企業の高齢者雇用戦略に影響を与える重要な改正点です。

よくあるご質問
ここではよくあるご質問をご紹介します。
在職老齢年金とはなんですか?
在職老齢年金とは、老齢厚生年金の受給資格がある人が、厚生年金保険の被保険者として働きながら受け取る年金を指します。
特に65歳以上の人が働き続ける場合、毎月の賃金と年金の月額の合計額が一定の基準(支給停止基準額)を超えると、年金の一部または全部が支給停止される仕組みです。これは、就労による収入と年金のバランスを調整する目的で設けられています。
2026年4月の法改正で、在職老齢年金の支給停止基準額はいくらになりますか?
2026年4月1日から施行される厚生年金保険法の改正により、在職老齢年金の支給停止基準額は、現行の48万円から62万円に引き上げられます。
この改正は、2024年に成立した年金制度改正法に基づくものです。
支給停止基準額が引き上げられることで、働く高齢者の年金受給額はどう変わりますか?
支給停止基準額の引き上げにより、老齢厚生年金の支給停止額が減少するか、あるいはゼロになる可能性が高まります。
具体的には、年金の月額(基本月額)と給与・賞与から算出される額(総報酬月額相当額)の合計が62万円以下であれば、年金は全額支給されます。これにより、年金が減額されることなく、より高い収入を得やすくなります。
在職老齢年金の支給停止は、具体的にどのように計算されるのですか?
2026年4月からの新制度では、「基本月額(老齢厚生年金の月額)」と「総報酬月額相当額(毎月の賃金+過去1年間の賞与を12で割った額)」の合計が62万円を超過した場合に、超過した金額の2分の1に相当する額が年金の支給額から支給停止されます。
企業の人事労務担当者は、今回の法改正でどのような対応が必要ですか?
企業の人事労務担当者は、2026年4月からの在職老齢年金の支給停止基準額変更(48万円から62万円へ)の内容を正確に把握し、社内への周知徹底を図る必要があります。
特に、働きながら年金を受給している65歳以上の従業員から、給与と年金の関係について問い合わせが増えることが見込まれるため、従業員へ正確な情報提供ができるよう、相談体制を整えておくことが重要です。直接的な給与計算システムの変更は通常不要です。



