e-Govの電子申請は、これまで紙媒体で行っていた行政手続きをオンラインで完結させるための国のシステムです。
この記事では、e-Gov電子申請でできることや、導入するメリット・デメリット、利用開始までの具体的な方法を解説します。
企業の労務担当者や個人事業主の方が、e-Govの全体像を理解し、スムーズに導入できるよう、必要な情報を網羅的に提供します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
- NHK「あさイチ」
- 中日新聞
- 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri/
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e-Gov電子申請システムとは?行政手続きをオンライン化する国の窓口
e-Gov電子申請システムとは、総務省が運営する行政情報のポータルサイト「e-Gov(イーガブ)」が提供する、行政手続きのオンライン申請窓口です。 従来は役所の窓口へ出向いたり、書類を郵送したりする必要があった申請や届出を、インターネット経由で自宅やオフィスのパソコンから行える仕組みを提供しています。 このシステムは2020年11月にリニューアルされ、より使いやすいインターフェースへと改善されました。
e-Gov電子申請システムの3つの主要な機能
。e-Gov電子申請システムは、単に申請業務をオンライン化するだけでなく、行政に関する情報を効率的に収集・活用するための多様な機能を備えています。主な機能として、社会保険や労働保険などの「電子申請」があります。
その他、申請書の作成、エラーチェック、電子署名付与、処理状況の照会、公文書の取得などが挙げられます。 これらの機能を活用することで、行政手続きの効率化と国民の行政参加を促進します。

社会保険や労働保険などの行政手続きを電子申請
e-Govでは、社会保険や労働保険、雇用保険に関するさまざまな手続きを電子申請で行えます。例えば、従業員の入退社に伴う資格取得届や喪失届、労働保険の年度更新、36協定届などが対象です。
e-Govでは多くの行政手続きに対応しており、多くの企業で発生する定型的な申請業務をオンラインで完結させることが可能です。
これにより、手続きのために役所へ出向く手間や時間を大幅に削減できます。
法令を検索して条文や改正情報を確認
e-Govには、日本の法令を検索できる「e-Gov法令検索」機能があります。
憲法、法律、政令、勅令、府令、省令、規則など、公布された法令の内容をキーワードや法令名から手軽に調べることが可能です。
法令の条文だけでなく、過去の改正履歴や未施行の法令情報も確認できるため、法改正への対応が必要な総務・人事担当者にとって、正確かつ最新の情報を迅速に入手するための信頼できる情報源となります。
国の政策に対する意見や要望を提出
「パブリックコメント」機能を通じて、各府省が策定する政策案に対して国民が意見や要望を提出できます。
これは、政策決定過程の透明性を高め、国民の多様な意見を反映させるための重要な制度です。 e-Govのサイト上で案件が公示され、誰でもオンラインで意見を提出できます。
提出された意見は考慮された上で最終的な意思決定が行われ、結果も公表されるため、行政への参加意識を高めることにもつながります。
特定の法人では電子申請が義務化されている手続きも
2020年4月以降、特定の法人においては、一部の社会保険・労働保険手続きの電子申請が義務化されました。 対象となるのは、資本金が1億円を超える大企業や、相互会社、投資法人、特定目的会社などです。
義務化の対象となる手続きには、健康保険・厚生年金保険の被保険者報酬月額算定基礎届や被保険者賞与支払届、労働保険の年度更新に関する申告書、雇用保険の被保険者資格取得届や喪失届などが含まれます。
対象法人は、これらの手続きを必ずe-Govなどを利用して電子的に行わなければなりません。
e-Gov電子申請システムを利用する3つのメリット
e-Gov電子申請システムを導入することで、企業は多くのメリットを享受できます。最大の利点は、時間や場所の制約を受けずに行政手続きを進められる点です。これにより、役所への移動や窓口での待ち時間が不要になり、担当者の業務負担を大幅に軽減できます。
さらに、ペーパーレス化が進むことで、申請書類の印刷代や郵送費、交通費といった物理的なコストの削減にも直結し、組織全体の生産性向上に貢献します。
時間や場所を問わず24時間365日申請できる
e-Gov電子申請システムは、原則として24時間365日いつでも利用可能です(システムメンテナンス時を除く)。 そのため、行政機関の窓口が開いている平日の日中に時間を合わせる必要がありません。
企業の担当者は、自社の業務の都合に合わせて、早朝や夜間、休日など、時間や場所を選ばずに申請業務を進められます。
これにより、他の優先業務を中断することなく、柔軟な働き方が可能になります。
役所への移動や待ち時間がなくなり業務を効率化できる
従来の手続きでは、役所の窓口へ書類を提出するために移動時間や交通費がかかり、さらに窓口での待ち時間も発生していました。 e-Govを利用すれば、申請書の作成から提出までの一連の作業をすべてオフィスのパソコンで完結させることが可能です。
移動や待機に費やしていた時間を他のコア業務に充てられるため、人事・労務担当者の業務は大幅に効率化されます。
また、提出後の進捗状況もオンラインで確認できるため、管理も容易になります。
交通費や印刷代などのコスト削減につながる
電子申請への移行は、ペーパーレス化を促進し、直接的なコスト削減に貢献します。 申請書類を印刷するための紙代やインク代、役所へ郵送するための切手代や封筒代、そして窓口へ直接提出しに行く際の交通費などが不要になります。
特に、多数の従業員を抱え、頻繁に行政手続きが発生する企業にとっては、これらの経費削減効果は大きく、長期的に見ればコストメリットが期待できるでしょう。

経営視点のアドバイス
e-Govの導入により、24時間365日どこからでも手続きが可能になります。役所への移動や待ち時間が解消され、印刷・郵送等のコスト削減と業務効率化が実現します。
e-Gov電子申請システムの注意すべき3つのデメリット
e-Gov電子申請システムは業務効率化に大きく貢献する一方、導入や運用にはいくつかの注意すべきデメリットも存在します。
特に、利用開始までにはアカウント登録やソフトウェアのインストールといった初期設定が必要で、パソコン操作に不慣れな場合には手間取ることがあります。
また、手書き書類と比べて入力ミスに気付きにくい点や、一部の行政手続きには対応していない場合がある点も、あらかじめ理解しておく必要があります。

利用開始までの初期設定や準備に手間がかかる
e-Govの利用を開始するには、いくつかの事前準備が必要です。 まず、法人・個人事業主向けの認証IDである「GビズID」の取得が必要です。
GビズIDを取得している場合、原則として電子証明書の取得は不要です。
その後、e-Govアカウントを作成し、利用するパソコンのOSやブラウザが推奨環境を満たしているかを確認する設定作業が求められます。 さらに、専用の申請アプリケーションのインストールも必要となり、これらの初期設定を完了させるまでに一定の時間と手間がかかります。
申請内容の入力ミスが起きても気付きにくい
電子申請は手軽な反面、入力内容の確認が疎かになりがちです。 手書きの書類であれば、書きながら全体を俯瞰して確認できますが、パソコンの画面上では入力ミスや変換ミスを見落としてしまう可能性があります。
申請データは提出前に一時保存して見直すことができ、提出後も申請内容の変更や修正には一定の条件が伴います。例えば、e-Gov電子申請では提出先が補正を認めた場合に限り補正が可能となり、マイナポータルを通じて年金に関する申請を行った場合は、処理状況によっては日本年金機構への連絡が必要となる場合があります。
誤った情報のまま手続きが進んでしまうリスクを避けるため、提出前には複数人でダブルチェックを行うなどの対策が有効です。
一部の健康保険組合や特定の行政手続きには未対応
e-Govは多くの行政手続きに対応していますが、すべての手続きを網羅しているわけではありません。
例えば、企業が加入している健康保険組合によっては、e-Govではなく独自の電子申請システムを導入している場合があります。 その場合、健康保険関連の手続きは別途その組合のシステムを利用する必要があります。
また、一部の特殊な申請や、地方自治体が管轄する手続きなど、e-Govの対象外となるものも存在するため、事前に申請したい手続きが対応しているかを確認することが重要です。
e-Gov電子申請システムの利用開始に必要な4つの準備
e-Gov電子申請システムを円滑に利用するためには、いくつかの事前準備が必要です。 この準備の流れを正しく理解しておくことで、スムーズな導入が可能になります。 具体的な手順としては、まず申請者の本人確認を行うための「GビズID」または「電子証明書」の取得から始めます。
次に、e-Govのアカウントを作成・登録し、使用するパソコンのブラウザ設定を確認します。 最後に、電子申請に必要な専用アプリケーションをインストールすれば、準備は完了です。

GビズIDや電子証明書を取得する
e-Govで電子申請を行うには、申請者が本人であることを証明するための認証手段が必要です。
法人や個人事業主の場合、GビズIDアカウント(GビズIDプライム、GビズIDメンバー)、e-Govアカウント、または法務局や民間の認証局が発行する電子証明書などの認証手段を利用できます。申請対象の手続きによっては、GビズIDプライムやGビズIDメンバーで電子証明書(電子署名用証明書)が不要となる場合があります。 GビズIDプライムは無料で取得できますが、書類審査が必要で、発行までに2週間程度の期間がかかる場合があります。
ただし、GビズIDエントリーであれば即日発行も可能ですが、別途、電子署名が必要になる場合があります。
一方、電子証明書は有料ですが、より幅広い手続きに対応している場合があります。
e-Govアカウントを作成して登録する
GビズIDまたは電子証明書の準備ができたら、e-Govの公式サイトでアカウントを登録します。アカウント登録時には、e-Gov専用アカウント、Microsoftアカウント、GビズIDプライムのいずれかを選択します。GビズIDを利用する場合、原則として電子証明書は不要です。メールアドレスを登録して仮登録を行い、届いたメールの案内に従って本登録を進めます。登録が完了すると、マイページへのログインが可能になり、申請の進捗状況の確認や、過去の申請履歴の閲覧ができるようになります。セキュリティを強化するため、2要素認証の設定も推奨されています。
利用するパソコンのブラウザ設定を確認する
e-Gov電子申請システムを安定して利用するためには、推奨されている動作環境でパソコンを使用することが重要です。 公式サイトで最新の推奨OS(Windows、Mac)やブラウザ(Edge、Chrome、Safariなど)のバージョンを確認し、自分のパソコン環境が対応しているかチェックします。
また、ブラウザの設定によっては、ポップアップブロック機能が申請画面の表示を妨げることがあるため、e-Govのサイトを許可リストに追加するなど、個別の設定が必要になる場合があります。
必要なアプリケーションをインストールする
一部の申請手続きでは、専用の「e-Gov電子申請アプリケーション」をパソコンにインストールする必要があります。 このアプリケーションは、申請書の作成や編集、電子署名の付与、申請データの送信といった一連の操作をサポートするものです。 公式サイトから無料でダウンロードできます。 インストールせずにブラウザのみで完結する手続きもありますが、事前にこのアプリケーションを導入しておくことで、幅広い手続きにスムーズに対応できるようになります。
e-Gov電子申請システムに関するよくある質問
e-Gov電子申請システムの導入を検討する際、費用や利用環境、サポート体制に関して疑問を持つ方も少なくありません。 ここでは、特に多く寄せられる質問として、利用料金の有無、スマートフォンからの利用可否、そして操作に困った際の問い合わせ先について解説します。
e-Gov電子申請システムの利用料金は原則無料ですが、電話での問い合わせには通話料がかかる場合があります。また、スマートフォンからは申請・届出は利用できず、手続の検索や処理状況の確認などの機能に限定されます。
操作に困った際の問い合わせ先としては、e-Gov利用者サポートデスクが設置されていますが、問い合わせ方法や時間帯によって対応が異なります。 これらの点を事前にクリアにすることで、より安心してシステムの利用を開始できます。
e-Gov電子申請システムの利用に費用はかかりますか?
e-Gov電子申請システムの利用自体に費用はかかりません。
国が提供するサービスのため、アカウント登録料やシステム利用料は無料です。 ただし、申請に必要な電子証明書を民間の認証局から取得する場合には、別途発行手数料や年会費などの費用が発生することがあります。
GビズIDの「gBizIDプライム」は無料で取得できるため、コストをかけずに始めたい場合はこちらを利用すると良いでしょう。
スマートフォンやタブレットからの電子申請は可能ですか?
e-Gov電子申請システムは、原則としてパソコンからの利用を前提として設計されています。
そのため、スマートフォンやタブレットからの操作は推奨されておらず、一部機能が正常に動作しない可能性があります。
ただし、マイナポータルと連携する一部の手続きについては、スマートフォンアプリからの申請に対応している場合もあります。 安定した利用のためには、パソコンからのアクセスが基本となります。
24時間いつでも申請ができますか?土日も受け付けてもらえますか?
システム自体は原則24時間365日稼働しています。
ただし、メンテナンス期間は利用できないほか、役所の審査が行われるのは平日の開庁時間内となるため、土日に申請をした場合、平日に申請をするよりも受領通知が届くまでに時間がかかることもあるでしょう。
操作に困った際のサポートや問い合わせ窓口はありますか?
はい、e-Govの公式サイトには利用者向けのサポートが用意されています。
サイト内には「よくあるご質問(FAQ)」のページがあり、操作方法やエラーの対処法などがまとめられています。
それでも解決しない場合は、電話による問い合わせが可能な「e-Gov電子申請サービスヘルプデスク」が設置されています。
具体的な操作で困った際には、これらのサポート窓口を活用することができます。
申請した書類に不備があった場合、どのように通知されますか?
システム内の「マイページ」に返戻通知が届きます。
登録したメールアドレスに通知が飛ぶ設定も可能です。修正が必要な場合は、指摘事項を確認した上で再度データを送信する「再申請」の手続きを行います。
まとめ
e-Gov電子申請システムは、行政手続きをオンライン化し、企業の業務効率化に大きく貢献する国の窓口です。24時間365日申請が可能で、コスト削減にもつながる一方、導入時の設定や操作に慣れが必要です。
近年では、多くの労務管理ソフトがe-Govと連携するAPIを提供しており、これらを活用することで、複数の手続きデータをまとめて作成し、ソフト上から直接申請を完了させることが可能になります。 健康保険証の廃止に伴い、電子申請の様式変更が行われます。旧様式での申請受付は、令和7年(2025年)2月28日で終了する予定のため、自社の利用状況を確認しておくことが重要です。



