
2028年より、改正された雇用保険法の施行が始まる予定です。
現行法では、雇用保険の加入対象者となるのは「週の所定労働時間が20時間以上」の労働者です。しかし、改正後は「週10時間以上」に変更されます。
多くの短時間労働者が雇用保険へ新たに加入することになるため、事業主は適切な手続きを行わなければなりません。特に、アルバイトやパートなどの短時間労働者が多い企業にとっては、大きな影響が出るでしょう。
今回は、2028年から運用が開始される改正雇用保険法の内容について、わかりやすく解説します。

この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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2028年より週10時間以上で勤務する労働者が雇用保険へ加入する
2028年から施行される改正雇用保険法では、週10時間以上働く労働者が新たに雇用保険の対象となります。多様な働き方が増加する中で、社会全体での労働者の安心感を高め、労働市場を安定させる目的があります。
ほかにも、雇用のセーフティネットを拡大し、求職者支援制度の活用を促す目的もあります。
つまり雇用保険対象者の拡大は、働き方の柔軟性のニーズが高まる中で、労働者全体の福祉を向上させるための施策といえるでしょう。

基本手当や育児休業給付などの適用範囲が拡大される
雇用保険法改正により、労働者の社会保障給付が拡充されます。これまで雇用保険に加入できなかった労働者が加入することで、失業時の基本手当や育児休業中に得られる育児休業給付といった雇用保険の各種給付が広く適用されます。

特に、基本手当は失業時の生活を支える重要な手当です。対象範囲が広がることで多くの労働者がその給付を得られ、失業期間中も経済的な支援を受けられます。
また、育児休業給付の拡大により、短時間労働者でも育児と仕事を両立するためのサポートを受けられます。育児を理由とした離職を防ぎ、雇用を維持することは、事業主にとっても人材の流出を防げるメリットが期待できるでしょう。
教育訓練支援の充実とリ・スキリングの促進
2028年に先立って、2024年10月1日より順次、教育訓練支援の充実とリ・スキリングを促進する法改正が行われます。
厚生労働省は、雇用保険の対象拡大だけでなく、以下のような教育訓練やリ・スキリング支援の充実化も進める方針です。
- 教育訓練給付金について、訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のため、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大70%から80%に引き上げる(2024年10月1日より)
- 自己都合で退職した者が、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限をせず雇用保険の基本手当を受給できるようにする(2025年4月1日より)
- 自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため、基本手当に相当する新たな給付金を創設する(2025年10月1日より)
上記改正により、優れた知識やスキルを持った労働者が、退職後の経済的な不安を軽減して転職活動を行えます。また、在職中受けられる教育訓練給付を手厚くすることで、自発的な職業訓練を促せるでしょう。
労働者がスキルアップに関する支援を受けやすくなれば、企業にとっても従業員の能力向上を図りながら、業績向上や職場の活性化を見込めます。
事業主も、雇用保険からの給付に関する理解を深めて従業員へ周知することは大切といえるでしょう。
雇用保険の適用拡大に伴う企業への影響とは?
2028年より施行される改正雇用保険法により、多くの短時間労働者が雇用保険に加入します。現行法では、週の所定労働時間が「10時間以上20時間未満」の短時間労働者は雇用保険に加入しませんが、2028年より加入させる必要があります。
新しく雇用保険の対象となる労働者がいる場合、ハローワークに対して被保険者となった日の属する月の翌月10日まで「雇用保険者資格取得届」を提出する必要があります。

また、新しく労働者が雇用保険に加入すると、労使の双方が雇用保険料を納める必要があります。令和6年度における雇用保険料は以下のとおりです。

上表は令和6年度の雇用保険料なので、2028年(令和10年)は上表の料率とは異なる可能性があります。いずれにしても、労使の双方に経済的な負担が発生する点は押さえておきましょう。
例えば、総支給額が月5万円の短時間労働者の場合、労働者が負担する雇用保険料は300円、事業主が負担する雇用保険料は475円です(令和6年度の料率で計算)。
労働者も雇用保険料を納める必要があるため、新しく被保険者となる労働者への説明も求められます。労働者に対して改正内容を周知し、雇用保険に加入するメリットを説明するとよいでしょう。

鶴見の経営視点のアドバイス
経済的負担だけでなく、適切な手続きを行う事務的な負担も発生します。改正雇用保険法施行後は、事業主や人事部門の業務増大が予想されるでしょう。労働者との信頼関係を損ねないためにも、事業主はきちんと法改正に対応することが求められます。
企業が改正雇用保険法に対応しない場合のリスク
改正雇用保険法が施行されたら、企業は速やかに対応しなければなりません。雇用保険に加入させるべき労働者を加入させない場合、労働者が不利益を被ってしまうため、注意しましょう。
企業が改正雇用保険法に対応しない場合のリスクとして、以下が考えられます。
- 適切な手続きをしないことで労働局より指導を受けるリスク
- 後になって、本来納めるべき雇用保険料だけでなく追徴金を課されるリスク
- 労働者から訴訟を起こされるリスク
改正雇用保険法が施行されたら、事業主や人事労務管理者に求められるのは迅速かつ適切な対応です。最新の法律に対応できないと、上記のようなリスクが顕在化し、経済的・事務的負担が重くなってしまいます。
また、労働者との信頼関係を損ねてしまうと人材流出につながりかねません。最新の法令を理解し、適切な手続きを行うことは事業運営を支える基礎といえるでしょう。


コンサルタント中村の経営視点のアドバイス
労働保険関係で専門家に相談したいときは、社会保険労務士に頼りましょう。専門家に必要な手続きを代行してもらえれば、労働局から指導を受けるリスクや労働者から訴訟を起こされるリスクを大きく軽減できます。
まとめ
2028年より改正雇用保険法が施行されます。改正雇用保険法では週の所定労働時間が10時間以上の労働者が新しく雇用保険の対象となるため、事業主は適切な手続きを行いましょう。
労働者にとっては、基本手当や育児休業給付を受給でき社会保障給付が拡充されるメリットがあります。労働者の福祉を向上させるためにも、事業主は新たな制度に対応するための準備と対応が求められます。
社会保険労務士法人とうかいは、社会保険や労働保険の専門家として事業主の方を支援いたします。事業主として行うべきことをわかりやすくお伝えしつつ、必要に応じて手続きの代行も行います。
個別で無料相談を行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。




