マネーフォワード給与(MF給与)で賞与計算を実行したとき、社会保険料や所得税の控除額が想定と異なる——そんなトラブルが毎年6月・12月の賞与シーズンに多発します。賞与計算は給与計算より設定項目が多く、支給後に誤りが発覚すると修正手続きが複雑になります。社会保険・給与計算の専門家である社会保険労務士法人とうかいが、MF給与における賞与計算のよくある設定ミスと、支給前に確認すべき対処法をこの記事で解説します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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結論:賞与計算ミスの原因は「設定の更新漏れ」と「前月給与との連動ミス」がほとんど
MF給与の賞与計算が合わない原因の大半は、保険料率の未更新・所得税計算に使う前月給与の連動ミス・標準賞与額上限の未処理の3点に集約されます。 支給前にこの3点を確認するだけで、賞与計算トラブルの約8割は防げます。
残り2割は対象者の設定漏れや雇用保険料の設定誤りです。以下で5つの原因と修正手順を順に解説します。

このセクションのポイント
- 賞与計算ミスの主因は保険料率未更新・前月給与連動ミス・標準賞与額上限未処理の3点
- 支給前に3点を確認するだけでトラブルの大半は防げる
- 支給後の修正は社会保険料の精算・所得税の年末調整対応が必要になるため、事前確認が最も効率的
MF給与で賞与計算が合わない5つの設定ミス
原因①:保険料率が更新されていない
協会けんぽの健康保険料率は毎年3月分(4月納付分)から改定されます。MF給与で料率を手動更新しなければ、古い料率で賞与の社会保険料が計算されます。
修正手順は「設定」→「保険料率設定」を開き、自社の加入保険者(協会けんぽの場合は都道府県別料率)の最新値と一致しているかを確認してください。厚生年金保険料率は2017年9月以降18.3%(労使折半で各9.15%)で固定されているため変動はありませんが、健康保険料率は毎年変わります。
原因②:所得税計算の「前月給与」連動が誤っている
賞与の所得税は「前月の社会保険料控除後の給与」を基準に税率を決定します(所得税法第185条)。前月給与がMF給与上で確定されていなければ、全員分の税率・控除額がずれます。
典型的なミスのパターンは次の3つです。
- 賞与支給月の前月の給与明細がまだ「確定」されていない
- 前月に昇給・降給があったが、MF給与への反映が遅れている
- 前月が入社初月で給与実績がない(この場合は「前月給与なし」の特別計算が必要)
修正手順は、賞与計算を実行する前に前月の給与明細が「確定済み」の状態になっているかをMF給与上で確認してください。
原因③:標準賞与額の上限処理が行われていない
健康保険の標準賞与額は同一年度(4月〜翌3月)内の累計573万円が上限です。この上限を超えた分には保険料がかかりませんが、MF給与が正しく上限処理を行っているかを確認する必要があります(健康保険法第45条第1項)。
夏・冬と2回賞与を支払う企業では、高給与層の役員・従業員を中心に年度累計が573万円を超えるケースがあります。厚生年金保険は1回あたり150万円が上限(厚生年金保険法第24条の4第1項)のため、1回の賞与が150万円を超える場合も同様に上限処理を確認してください。
修正手順は、賞与明細画面の「標準賞与額」欄を開き、上限処理が適用されているかを確認してください。2回目の賞与を支給する前に当該従業員の年度累計額を手動で確認する習慣をつけることが重要です。
原因④:賞与支給対象者の設定に漏れ・誤りがある
MF給与で賞与計算を実行した際、途中入社者が含まれていない・退職予定者が含まれているケースが発生します。 主な原因は部門・グループ設定の誤り、または就業規則の賞与支給要件とシステム設定の不一致です。
特に注意が必要なパターンは「育休中の従業員」です。育児休業中の社会保険料は免除申請により事業主・本人ともに免除されますが、MF給与で「育休中免除」設定が有効になっていなければ、通常通り社会保険料が控除されてしまいます。
修正手順は、賞与計算前に対象者リストを手動で確認し、就業規則の支給日在籍要件と照合してください。
原因⑤:雇用保険料が控除されていない(または二重控除)
雇用保険料は給与だけでなく賞与にも課されます(雇用保険法第14条・第19条)。MF給与の設定によっては賞与からの雇用保険料控除がオフになっているケース、または逆に二重集計されているケースがあります。
2025年度の雇用保険料率は一般の事業で労働者負担分が1,000分の6です(厚生労働省告示)。「設定」→「雇用保険設定」で事業分類と料率が正しいかを確認し、賞与明細の「雇用保険料」欄に控除額が表示されているかを確認してください。
このセクションのポイント
- 保険料率は毎年3月(協会けんぽ健保)に更新。更新後に賞与計算を実行すること
- 所得税は前月給与の「確定済み」が前提。賞与計算の前に前月明細の確定状況を確認
- 健保の標準賞与額上限は年573万円・厚年は1回150万円。2回目以降は年度累計を手動確認
- 育休中の社保免除フラグと退職予定者の除外は、就業規則と照合して判断する
社会保険労務士法人とうかいからのアドバイス
賞与支給前に以下の3点を確認することで、支給後の修正コストを大幅に削減できます。
- 保険料率の確認:健康保険料率が最新(当年度・都道府県別)に更新されているか、賞与計算前に必ず確認する。
- 前月給与の確定:賞与計算の実行前に、前月の給与明細が「確定済み」になっているかをMF給与上で確認する。
- 対象者リストの照合:支給対象者・除外者(退職予定・育休中・入社日要件)を就業規則と照合してから賞与計算を実行する。
支給後に誤りが発覚した場合は、社会保険料の控除誤りは翌月給与での精算と賞与支払届訂正で、所得税の過不足は年末調整で最終精算します。ただし、退職者が絡む場合は対応が複雑になるため、早期に社会保険労務士法人とうかいへご相談ください。

このセクションのポイント
- 支給前の3点確認(保険料率・前月給与確定・対象者照合)で大半のミスは防げる
- 支給後の社保ミスは翌月精算・訂正届で対応。所得税は年末調整で精算
- 退職者が絡む場合は早期相談が修正コストを最小化する
よくある質問(FAQ)
Q. 賞与の健康保険料が想定より少ない。計算方法が合っているか確認したい。
A. 賞与の健康保険料は「標準賞与額(1,000円未満切り捨て)×保険料率÷2(労使折半)」で計算します。給与と異なり、賞与には標準報酬月額等級がなく、賞与額から直接計算されます。MF給与の明細と手計算の結果を照合して確認してください。(健康保険法第45条)
Q. 賞与から所得税がゼロになった。誤りか?
A. 前月の社会保険料控除後の給与が国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の最低区分(68,000円未満)に該当する場合、税率がゼロになることがあります。ただし前月給与がMF給与に正しく連動していない場合も誤ってゼロ判定になるため、前月給与の連動状況を必ず確認してください。(所得税法第185条)
Q. 賞与支払届の提出期限はいつか。遅れるとどうなるか。
A. 法令上の提出期限は賞与を支払った月の翌月末日です(健康保険法第48条の2・厚生年金保険法第27条の2)。日本年金機構は電子申請での5日以内提出を推奨しており、遅延が続くと年金事務所から指導を受ける場合があります。社会保険労務士法人とうかいで電子申請代行を承っています。
Q. 育休中の従業員に賞与を支払う場合、社会保険料は免除されるか。
A. 2022年10月1日以降、育休中の賞与にかかる社会保険料は「育休取得月の末日が育休中であること」または「同月内に14日以上育休を取得すること」が免除要件です(健康保険法第159条の3・厚生年金保険法第81条の2の2)。要件を満たす場合はMF給与で「育休中免除」設定を有効にし、年金事務所への申出も別途行ってください。
Q. 賞与計算を間違えて支給してしまった場合、修正できるか。
A. 修正は可能ですが手続きが複雑になります。社会保険料の控除誤りは翌月給与での精算と賞与支払届訂正で対応します。所得税の過不足は在籍者なら年末調整、退職者なら修正申告で精算します。修正が複数年にまたがる場合は社会保険労務士・税理士との連携が必要なため、社会保険労務士法人とうかいへご相談ください。
まとめ
MF給与の賞与計算が合わない場合、①保険料率の未更新、②前月給与の連動ミス、③標準賞与額上限の未処理、④対象者設定の誤り、⑤雇用保険料設定の誤りを順番に確認することで大半のケースは解決できます。毎回の賞与支給前に本記事の確認手順を実施し、少しでも疑問があれば支給前に社会保険労務士法人とうかいへご相談ください。

この記事は2026年5月27日時点の情報をもとに作成しています。法令・制度は改正される場合があるため、最新情報は厚生労働省・日本年金機構・国税庁等の公式サイトをご確認ください。 監修・文責:社会保険労務士法人とうかい
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