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コラム

退職後は任意継続と国民健康保険どちらが得?2026年版・ケース別比較

退職後の健康保険をどうするか、「任意継続と国保のどちらが安いの?」という疑問は多くの方が抱えます。答えは「一概には言えない」ではなく、収入水準・扶養家族の人数・退職理由の3点で明確に判断できます。社会保険・労務管理の専門家である社会保険労務士法人とうかいが、2026年時点の制度情報をもとに、ケース別の判断基準と計算イメージを解説します。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア

  • NHK「あさイチ」
  • 中日新聞
  • 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」

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結論:3つの軸で「どちらが得か」は判断できる

退職後の健康保険選択は、以下の3軸で判断してください。

  1. 在職中の標準報酬月額が低い(〜20万円程度)→ 任意継続が有利になりやすい
  2. 扶養家族が多い(子ども2人以上など)→ 任意継続が有利になりやすい
  3. 会社都合退職(特定受給資格者)→ 国保の軽減制度で国保が圧倒的に有利

また、2022年1月の健康保険法改正により、任意継続からいつでも国保に切り替えられるようになりました(健康保険法第38条改正・令和4年1月1日施行)。1年目は任意継続、保険料が下がる2年目以降に国保へ切り替えるという段階的な戦略も有効です。

このセクションのポイント

  • 判断軸は「収入水準」「扶養人数」「退職理由」の3点
  • 2022年1月改正で任意継続からいつでも国保へ切り替え可能になった
  • 会社都合退職者は国保の軽減制度により、国保が大幅に有利になりやすい

任意継続と国保の仕組み・保険料のポイント

任意継続とは?

任意継続とは、退職後も最大2年間、在職中の健康保険に加入し続けられる制度です(健康保険法第37条)。申請期限は退職日翌日から20日以内で、1日でも過ぎると加入できません。

保険料は「在職中の標準報酬月額 × 保険料率」で計算しますが、協会けんぽは標準報酬月額30万円が上限(令和6年度)となるため、退職前の収入が高くても保険料には上限があります。在職中は会社と折半していた保険料を、退職後は全額自己負担します。

計算例(協会けんぽ・東京都・令和6年度・40歳未満)

標準報酬月額月額保険料(概算)年間概算
28万円約27,944円約335,000円
30万円(上限)約29,940円約359,000円
50万円(上限適用で30万円)約29,940円約359,000円

※協会けんぽ東京都・令和6年度保険料率9.98%で試算。介護保険料(40〜64歳)は別途加算。

国民健康保険(国保)とは?

国民健康保険とは、会社員等の被用者保険に加入していない方全員が加入する公的医療保険です(国民健康保険法第5条)。市区町村が運営し、保険料は前年所得をもとに算定されます。

国保の最大の特徴は「扶養」という概念がない点です。配偶者・子どもも全員が被保険者となり、1人あたりの均等割(年間4〜8万円程度・自治体差あり)が人数分かかります。扶養家族が多い世帯では保険料総額が大きくなる傾向があります。

退職後は退職翌日から14日以内に住所地の市区町村窓口で加入手続きが必要です(健康保険資格喪失証明書を持参)。

このセクションのポイント

  • 任意継続は20日以内の申請が必須。保険料は協会けんぽ標準報酬30万円が上限
  • 国保は前年所得基準のため、退職直後(翌年3月まで)は在職中の収入が高いほど高くなりやすい
  • 国保には「扶養」がなく、家族全員に均等割が発生する

ケース別の比較早見表

退職者のプロフィール有利な選択判断理由
標準報酬月額〜20万円・単身任意継続が有利国保の均等割が相対的に重い
標準報酬月額40万円超・単身国保が有利任意継続は30万円上限で頭打ち。国保は上限なし
扶養家族3人以上任意継続が有利国保の均等割が人数分加算される
会社都合退職(解雇・倒産等)国保が有利所得割を30%にみなす軽減制度が適用
収入高+扶養多い個別試算が必要相反する要素があるため要計算

会社都合退職(特定受給資格者)の国保軽減について:雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者に該当する場合、国保の所得割計算で前年給与所得を30/100(30%)にみなす軽減が受けられます(国民健康保険法施行令第29条の7第2項・第3項)。退職日翌日から翌年度末まで適用され、保険料が大幅に下がります。

2年目に国保が安くなるケースについて:国保保険料は前年所得が基準のため、退職翌年度(6月以降)は無収入・低収入が反映されて大幅に下がることがあります。2022年改正後は「1年目は任意継続、2年目以降に国保へ切り替え」という段階的な選択が合理的です。

このセクションのポイント

  • 収入が高い単身者は国保、扶養家族が多い場合は任意継続が有利になりやすい
  • 会社都合退職者は軽減制度により国保が圧倒的に有利になるケースが多い
  • 退職翌年度以降は国保が下がることが多く、途中切り替えが有効な戦略となった

社会保険労務士法人とうかいからのアドバイス

企業の人事担当者は、退職者に対して以下の3点を必ず案内してください。

  1. 任意継続の申請期限(退職翌日から20日以内)を書面で伝える:1日でも過ぎると加入不可。口頭だけでなく退職案内書に必ず記載してください。
  2. 会社都合退職者には国保の軽減制度を積極的に案内する:この制度を知らないまま割高な任意継続を選んでいる退職者が多くいます。
  3. 「どちらが安いか」を一概に断言しない:扶養家族の有無・標準報酬月額・市区町村によって異なります。個別の試算情報を提供することが最善の対応です。

社会保険労務士法人とうかいでは、退職予定者向けの個別試算サポートや、退職手続きマニュアル・案内書の整備まで対応しています。

このセクションのポイント

  • 人事担当者は任意継続20日以内の期限を退職者に必ず書面で案内する
  • 会社都合退職者への国保軽減制度の案内を怠らない
  • 「どちらが得か」の断言は避け、個別試算の情報を提供することが重要

よくある質問(FAQ)

Q. 任意継続と国保、どちらが安いか一言で教えてください。

A. 「収入・扶養人数・退職理由」の3点次第で答えが変わります。標準報酬月額が低い方・扶養家族が多い方は任意継続、会社都合退職者・高収入単身者は国保が有利になりやすいです。正確な比較には個別試算が必要です。

Q. 任意継続の申請を20日過ぎてしまいました。どうすればいいですか?

A. 残念ながら、20日を1日でも過ぎると任意継続への加入は一切できません。国民健康保険への加入が唯一の選択肢となります。退職翌日から14日以内に住所地の市区町村窓口で国保の手続きを行ってください。

Q. 任意継続から途中で国保に切り替えることはできますか?

A. はい、2022年1月以降はいつでも切り替えられます。健康保険法第38条の改正(令和4年1月1日施行)により、翌月以降の脱退を申し出ることで任意のタイミングで国保に移れるようになりました。

Q. 会社都合退職の場合、国保保険料は安くなりますか?

A. はい、特定受給資格者に該当すれば国保の所得割が大幅に軽減されます。前年給与所得を30/100にみなして計算する制度が退職日翌日から翌年度末まで適用されます(国民健康保険法施行令第29条の7)。

Q. 扶養家族がいる場合は任意継続が有利ですか?

A. 扶養家族が多いほど任意継続が有利になりやすいです。任意継続は家族の人数に関わらず保険料が変わりません。国保は全員に均等割(年間4〜8万円程度・自治体差あり)が発生するため、子どもが2人以上いる世帯では任意継続が有利なケースが多いです。

まとめ

退職後の健康保険は「任意継続か国保か」の2択ですが、収入水準・扶養家族の人数・退職理由の3点で判断の方向性が出せます。2022年1月改正により任意継続からいつでも国保に切り替えられるようになったため、「1年目は任意継続、2年目は国保」という段階的な選択も有効な戦略です。正確な判断には個別試算が欠かせません。

社会保険労務士法人とうかいでは退職者向けの個別試算・相談に対応していますので、お気軽にご相談ください。

この記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。保険料率(協会けんぽ東京都・令和6年度:9.98%)は毎年3月に改定されます。国保保険料の計算方式・料率は市区町村ごとに異なるため、正確な金額は住所地の市区町村または社会保険労務士にご確認ください。法令・制度は改正される場合があります。 監修・文責:社会保険労務士法人とうかい

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