「企業型DCを導入すると本当に節税になるのか?」「いくらぐらい得するのか?」という声をよく聞きます。企業型DCには、事業主・従業員双方にとっての税制優遇が整備されています。この記事では、社会保険労務士法人とうかいが、企業型DCの節税の仕組みと具体的な試算を詳しく解説します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
- NHK「あさイチ」
- 中日新聞
- 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri/
取材・寄稿のご相談はこちらから

1. この記事の要約
- 企業型DCの事業主掛金は全額が損金算入され、法人税の節税につながる
- 中小企業が月55,000円の掛金を拠出した場合、年間で最大約22万円(法人税率34%の場合)の節税効果
- 従業員にとっても、掛金相当額が非課税・運用益が非課税という税制優遇がある
- 受取時にも「退職所得控除」「公的年金等控除」が適用され、受取税負担が低くなる
- 退職金・生命保険との比較でも、企業型DCは透明性の高い節税手段
2. 企業型DCの節税の仕組みとは?
企業型確定拠出年金(企業型DC)とは、確定拠出年金法(平成13年法律第88号)に基づく企業年金制度で、事業主(会社)が毎月掛金を拠出し、従業員が運用指図を行う制度です。
節税の観点から整理すると、企業型DCには3つのタイミングで税制優遇があります。

| タイミング | 税制優遇の内容 | 根拠規定 |
|---|---|---|
| ①拠出時(掛金を出すとき) | 事業主掛金:全額損金算入(法人税節税) | 法人税法第37条 |
| ②運用時(資産を運用するとき) | 運用益:非課税 | 確定拠出年金法第73条 |
| ③受取時(60歳以降に受け取るとき) | 一時金:退職所得控除 / 年金:公的年金等控除 | 所得税法第30条、第35条 |
この「拠出→運用→受取」すべてのステージで税が優遇される点が、企業型DCが「最強の節税制度のひとつ」と言われる理由です。
専門用語の解説
損金算入とは、法人税の課税所得を計算するときに費用として差し引くことができる処理のことです。支出した掛金が損金に算入されると、その分だけ課税所得が下がり、結果として法人税の負担が軽減されます。
退職所得控除とは、退職一時金にかかる所得税を計算する際に適用される大きな控除です。勤続年数20年以下では「40万円×勤続年数」(最低80万円)、20年超では「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」が控除されます(所得税法第30条)。
このセクションのポイント
- 企業型DCは「拠出→運用→受取」の3ステージで税制優遇がある
- 事業主掛金は全額損金算入で法人税節税につながる
- 運用益非課税・受取時税優遇で資産の増加効率が高い
3. 節税効果の試算:具体的にいくら得するのか?
①法人税の節税効果(事業主掛金の損金算入)
掛金を全額損金算入することで、法人税(+地方法人税・法人住民税・法人事業税)の負担が軽減されます。実効税率は企業の規模・所得水準によって異なりますが、中小企業では約23〜34%が目安です。

【試算例1】月55,000円の掛金を拠出した場合
| 条件 | 計算 | 節税額 |
|---|---|---|
| 年間掛金 | 55,000円×12ヶ月 | 660,000円 |
| 法人税等節税(実効税率23%) | 660,000円×23% | 151,800円/年 |
| 法人税等節税(実効税率34%) | 660,000円×34% | 224,400円/年 |
【試算例2】従業員10名・全員月30,000円拠出した場合
| 条件 | 計算 | 節税額 |
|---|---|---|
| 年間掛金総額 | 30,000円×10名×12ヶ月 | 3,600,000円 |
| 法人税等節税(実効税率23%) | 3,600,000円×23% | 828,000円/年 |
| 法人税等節税(実効税率34%) | 3,600,000円×34% | 1,224,000円/年 |
10名規模でも年間80万〜120万円超の節税効果になります。
②中退共・生命保険との比較
企業が退職金を積み立てる手段は企業型DCだけではありません。代表的な手段と比較します。
| 制度 | 損金算入 | 受取時税優遇 | 解約返戻金 | 課税リスク |
|---|---|---|---|---|
| 企業型DC | 全額 | あり(退職所得控除等) | なし(資産は従業員個人に帰属) | 低い |
| 中退共 | 全額 | あり(退職所得控除) | あり(解約時は益金算入) | 中程度 |
| 養老保険(福利厚生プラン) | 1/2のみ | あり | あり(解約時益金算入) | 高い(節税否認リスク) |
| 経営者保険 | 要件あり | 限定的 | あり | 高い(令和元年以降規制強化) |
企業型DCは全額損金算入かつ税務上の取り扱いが明確であり、他の手段と比べて税務リスクが低い点が大きな特長です。
③従業員の税制優遇
従業員の視点では以下の優遇があります。
掛金拠出時(事業主掛金の場合): 事業主掛金は従業員の給与に含まれないため、その分の所得税・住民税がかかりません。年間66万円(月55,000円)の掛金があれば、課税所得が最大66万円圧縮されます。
運用益の非課税: 通常、投資信託の運用益には約20%(所得税15%+住民税5%)の税金がかかります。企業型DCでは運用益がすべて非課税のため、その分が複利運用に回ります。
受取時(例:勤続30年・一時金1,500万円の場合): 退職所得控除:800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円 上記の例では、退職所得控除額が1,500万円となるため、課税対象がゼロになります。

このセクションのポイント
- 月55,000円の掛金で年間最大約22万円の法人税節税
- 中退共・生命保険より税務リスクが低く安定した節税手段
- 従業員も運用益非課税・受取時税優遇の恩恵を受けられる
4. 経営者が今すぐ対応すべきこと
優先度別アクションリスト
【優先度:高】現状の退職金制度を棚卸しする 現在、中退共や生命保険で退職金積立を行っている場合、企業型DCとの重複や法定上限(月27,500円)との関係を確認してください。既存制度の見直しとセットで導入するケースが多くあります。
【優先度:高】社労士・税理士と節税効果を試算する 法人税の実効税率は企業の所得水準によって異なります。顧問税理士と連携しながら「いくら拠出するか」を設定することが重要です。社労士法人とうかいでは、税理士と連携した相談にも対応しています。
【優先度:中】掛金水準・加入対象者を設計する 全従業員一律か、正社員のみか、勤続年数条件を設けるかなど、加入対象者の設定を検討します。
【優先度:中】運営管理機関を選定する 銀行系・証券系・信託会社系など複数の運営管理機関があります。手数料・運用商品ラインアップ・サービス品質で選ぶことが重要です。

よくある落とし穴
落とし穴①:掛金が多すぎて中退共の上限と重複するケース 中退共と企業型DCを同時に実施している企業が掛金を増やすと、法定上限(月27,500円)を超えることがあります。必ず法定上限を確認してください。
落とし穴②:規約作成を社内だけで進めようとするケース 企業型DC規約は厚生労働大臣の承認が必要で、内容の不備があると差し戻されます。社労士への依頼をお勧めします。
落とし穴③:投資教育を形式的にしか行わないケース 確定拠出年金法第22条の投資教育義務を怠ると、従業員が制度を理解しないまま運用しデフォルト商品(元本保証型の低リターン商品)に積み上がるケースがあります。実質的な教育の機会が必要です。

社会保険労務士に相談するとできること
社会保険労務士(社労士)は企業型DCについて以下の業務を代行・支援できます。
- 企業型DC規約の作成・厚生労働大臣への申請代行
- 加入対象者・掛金水準の設計提案
- 投資教育プログラムの企画・実施サポート
- 導入後の規約変更・法改正対応
- 従業員向け説明会の実施サポート
このセクションのポイント
- まず現状の退職金制度を整理してから掛金水準を設計する
- 規約作成は社労士へ依頼が確実
- 投資教育は形式だけでなく実質的な理解促進が重要
5. とうかいが実際に対応した相談事例・よくあるトラブル
相談事例①:「退職金制度がないまま10年経った」製造業(従業員15名)
状況: 退職金制度がなく、優秀な人材が同業他社に転職してしまうケースが続いていた。採用時に不利になっているとの悩み。
対応: 企業型DC(選択制DC)を導入。月30,000円を事業主掛金として設定し、年間の法人税等節税額は約100万円に。採用時の説明に「毎月3万円を会社が積み立て、老後資産を支援します」というメッセージを加えることで応募者数が増加。

相談事例②:「中退共の上限(月30,000円)に達しており拡充したい」小売業(従業員8名)
状況: 中退共で最大掛金(月30,000円)を拠出しているが、さらに手厚くしたい。ただし他の方法では税務リスクが心配。
対応: 中退共と企業型DCの同時実施は法定上限(27,500円)の関係で合算管理が必要なことを説明。実態として中退共を維持しつつ、企業型DCの追加掛金を最適化する設計を提案。
相談事例③:「選択制DCを導入したが従業員がほとんど選択しない」IT企業(従業員25名)
状況: 選択制DCを導入したが、給与を犠牲にしたくない従業員が多く加入率が低迷。
対応: 投資教育の内容を見直し、「長期・分散・積立」の効果を具体的な数字で示したワークショップを実施。加入率が導入後1年で20%→65%に改善。
よくあるトラブルとその対処法
トラブル①:退職した従業員が移換手続きをしない(自動移換) 対処:退職時に必ず書面で「6ヶ月以内のiDeCo移換」を案内する。自動移換されると管理手数料がかかり不利になることを伝える。
トラブル②:運用商品をデフォルト(元本確保型)のままにしている 対処:継続教育で定期的に運用状況の確認を促す。投資教育の中で「30〜40代での積立では長期分散投資が有効」という情報を提供する。
トラブル③:規約変更手続きを忘れる 対処:掛金変更や加入対象者変更には規約変更が必要。年に一度、規約内容を社労士と一緒にレビューする仕組みをつくる。

このセクションのポイント
- 退職金制度の代替として導入した企業は採用力向上の効果を実感
- 投資教育の充実が加入率・活用率の向上につながる
- 退職時の移換案内を仕組み化しておくことが重要
6. 個別相談のご案内|社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士法人とうかいでは、企業型DC(確定拠出年金)の導入コンサルティングを行っています。
- 現状の退職金制度との整合性チェック
- 掛金水準・加入対象者の設計
- 規約作成・厚生労働大臣への申請代行
- 投資教育プログラムの企画・実施

名古屋・東京・多治見に拠点あり。全国対応可能。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 企業型DCの掛金は毎年変更できますか? はい、変更可能ですが、掛金の変更には規約変更申請(厚生労働大臣への届出)が必要です。年1回程度の見直しを社労士と一緒に行うことをお勧めします。
Q2. 法人税の節税効果は確実ですか?税務リスクはありませんか? 企業型DCの事業主掛金の損金算入は法人税法第37条に明示されており、節税の根拠が明確です。経営者保険のような否認リスクとは性質が異なります。ただし、掛金上限(月55,000円または27,500円)を超えると法令違反になるため、上限の管理が必要です。
Q3. 赤字の年は節税効果がありませんか? はい、法人税がゼロの年は損金算入による節税効果は発生しません。ただし、従業員の所得税・住民税の節税効果(掛金が非課税扱い)は引き続き生じます。
Q4. 企業型DCの掛金は退職金と合算して退職所得控除を計算しますか? はい、一時金として受け取る場合は、企業型DCの一時金と他の退職手当等を合算して退職所得控除を計算します(国税庁タックスアンサーNo.1420)。複数の退職金がある場合は税理士への確認をお勧めします。
Q5. 会社が赤字になっても拠出し続ける義務がありますか? 企業型DCの掛金は規約で定めた金額を毎月拠出する義務があります。変更するには規約変更手続きが必要です。経営悪化時に掛金を減額・一時停止したい場合は、速やかに社労士に相談してください。
Q6. 退職金のない会社でも企業型DCは導入できますか? はい、退職金制度がない会社でも企業型DCを導入できます。むしろ退職金制度の代替として導入するケースが多く、採用・定着率の向上に効果があります。
Q7. 小規模(従業員5名以下)でも導入できますか? はい、従業員数の制限はありません。ただし、従業員が少ない場合は1人あたりの管理コストが相対的に高くなるため、費用対効果の確認が必要です。社労士法人とうかいでは小規模企業向けの導入シミュレーションも行っています。
まとめ
企業型DCは、事業主掛金の全額損金算入・運用益非課税・受取時税優遇という3ステージの税制優遇を持つ制度です。中小企業でも年間数十万〜数百万円規模の法人税節税効果が見込め、かつ従業員の老後資産形成にも貢献します。退職金制度として導入すれば採用力向上にもつながります。まずはとうかいへ無料相談をご検討ください。

監修:社会保険労務士法人とうかい https://www.tokai-sr.jp/


