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コラム

厚生年金の標準報酬月額等級上限引き上げとは?社労士が解説【2026年版】

厚生年金保険の標準報酬月額等級の上限が、2024年(令和6年)年金制度改正法により引き上げられました。長年650,000円に据え置かれていた最高等級が見直され、高所得者の保険料計算と将来の年金給付に変化が生じています。社会保険・労務管理の専門家である社会保険労務士法人とうかいが、制度の背景・改正内容・企業の実務対応を詳しく解説します。この記事では、標準報酬月額とは何か、今回の改正で何が変わるのか、経営者・人事担当者が取るべき実務対応をまとめています。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア

  • NHK「あさイチ」
  • 中日新聞
  • 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」

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1. この記事の要約

  • 標準報酬月額等級の上限引き上げとは、厚生年金の保険料計算基礎となる標準報酬月額の最高等級を引き上げ、高所得者の保険料を実態賃金に近づける改正。
  • 改正前の上限は第32等級(650,000円)。2024年(令和6年)年金制度改正法により段階的に引き上げが行われる。
  • 月収65万円超の被保険者は、新等級に基づいて保険料が再計算され、事業主・本人双方の負担が増加する。
  • 一方、保険料が増える分だけ将来受け取れる老齢厚生年金額も増加するメリットがある。
  • 算定基礎届・月額変更届など実務手続きで新等級表を使用する必要があり、給与計算システムの設定更新が必要。

2. そもそも、標準報酬月額等級の上限引き上げとは?

標準報酬月額等級の上限引き上げとは、厚生年金保険料の計算基準となる「標準報酬月額」の最高等級を見直し、実態の賃金水準に合わせる制度改正のことです。これにより、これまで上限で頭打ちだった高所得者の保険料計算が実際の賃金に近い形に改められます。

なぜ今、上限引き上げが必要なのか?

厚生年金の標準報酬月額上限(650,000円)は長年据え置かれてきましたが、この間に高所得者の賃金は大幅に上昇しました。月収が80万円でも150万円でも、全員が第32等級(65万円)に張り付き、同額の保険料を負担する状況が続いていました。これには2つの問題があります。
不公平な保険料負担:実際の賃金差があるのに同額の保険料
年金給付の過小評価:上限超過分は年金計算に反映されず、高所得者の老後保障が実態より低い
社会保障審議会年金部会はこの乖離を是正するために上限等級の引き上げを答申し、2024年(令和6年)年金制度改正法として国会で成立しました。

専門用語解説

【標準報酬月額】 標準報酬月額とは、厚生年金保険・健康保険の保険料計算や給付額算定に使用する、月給を一定の幅で丸めた金額のことです(厚生年金保険法第20条・健康保険法第40条)。基本給・各種手当・通勤手当を含む月給をもとに、法定の等級表に当てはめて決定します。同じ等級内であれば給与が多少増減しても保険料は変わりません。

【標準報酬月額等級】 標準報酬月額等級とは、標準報酬月額を段階的に区分した「ランク」のことです。改正前の厚生年金は第1等級(88,000円)〜第32等級(650,000円)の32等級構成でした。健康保険は第1等級(58,000円)〜第50等級(1,390,000円)の50等級と、厚生年金より等級数・上限ともに高く、この乖離が今回の改正の背景の一つです。

【算定基礎届】 算定基礎届とは、毎年4〜6月の報酬平均をもとに標準報酬月額を決定するための届出です(厚生年金保険法第21条・健康保険法第41条)。毎年7月1〜10日に年金事務所へ提出し、9月〜翌8月の標準報酬月額が決まります。改正施行後の初回算定基礎届から新等級表が適用されます。

【月額変更届(随時改定)】 月額変更届とは、固定的賃金が変動して標準報酬月額が2等級以上変わった場合に提出する届出です(厚生年金保険法第23条)。上位等級が追加されると、これまで上限張り付きだった社員の昇給時に随時改定が新たに必要になる場合があります。

このセクションのポイント

  • 標準報酬月額は月給を等級に当てはめた保険料計算の基礎。改正前の上限は32等級・650,000円
  • 上限引き上げにより、月収65万円超の社員の保険料負担(労使双方)が増加する
  • 同時に高所得者の将来年金額も増加するため、必ずしも不利益な改正ではない

3. 今回の変更点:何が、どう変わるのか?

2024年(令和6年)年金制度改正法により、厚生年金保険の標準報酬月額等級の上限が段階的に引き上げられます。改正前まで第32等級(650,000円)で頭打ちだった高所得者の保険料計算が、実態の賃金により近い等級で行われるようになります。

改正前後の比較

項目改正前改正後
厚生年金の最高等級第32等級等級追加(段階的引き上げ)
厚生年金の上限月額650,000円段階的に引き上げ(要最新確認)
健康保険の上限月額1,390,000円(第50等級)変更なし(現時点)
保険料率18.3%(労使折半)変更なし
対象者月収約65万円超の厚生年金被保険者
実施時期令和6年改正法附則に基づき段階的施行

⚠️ 新等級の具体的な月額・等級番号・施行日は、年金事務所または厚生労働省の最新公示をご確認ください。給与計算システムのバージョンアップにより自動更新されるケースが多いですが、手動設定が必要な場合は担当社労士にご相談ください。

企業・従業員への影響

企業(事業主)への影響

  • 対象社員の保険料折半負担額が増加する
  • 賞与にも同様の等級表が適用されるため(標準賞与額の上限は別規定)、高所得者が多い企業ほど人件費増の影響が大きい
  • 給与計算システム・賃金台帳の設定更新が必要

従業員への影響

  • 月収65万円超の社員は保険料控除額が増加する(手取りが減る)
  • 一方、将来受け取れる老齢厚生年金の報酬比例部分が増加する
  • 遺族厚生年金・障害厚生年金の計算にも反映されるため、保障面では充実する

出典:令和6年年金制度改正法(令和6年法律第25号)、厚生年金保険法第20条・第21条・第23条

このセクションのポイント

  • 保険料率は変わらず、等級上限の引き上げにより高所得者の保険料負担が増加する
  • 保険料増加の裏返しとして、将来の厚生年金受給額も増加する
  • 給与計算システムの等級表更新が実務上の最優先対応事項

4. 経営者が今すぐ対応すべきこと|社会保険労務士法人とうかいからのアドバイス

優先度別アクションリスト

【今すぐ確認】

  • 月収65万円超の社員が何名いるかを把握する
  • 給与計算システムの等級表が最新版に更新されているか確認する
  • 顧問社労士・システムベンダーから改正情報の連絡が来ているか確認する

【期日までに対応】

  • 新等級適用後の初回算定基礎届(7月)で新等級表を使用しているか確認する
  • 上限に張り付いていた社員について随時改定(月額変更届)が必要かどうか確認する
  • 新保険料額を人件費計画・給与明細設計に反映する

【体制整備】

  • 高所得者向けの保険料シミュレーションを行い、対象社員への説明資料を準備する
  • 賃金台帳・給与明細フォーマットの標準報酬月額欄が正しく表示されるか確認する
  • 外部委託している場合は社労士・給与計算代行会社に更新対応の依頼が完了しているか確認する

よくある落とし穴

システム更新を忘れて旧等級のまま計算してしまう落とし穴は?

症状:改正後も給与計算システムが旧等級表のままで、保険料が過少または過大に計算されている。 原因:システムのバージョンアップを行わず、等級表の自動更新機能を有効にしていなかった。 対処法:改正施行前にシステムベンダーへ問い合わせ、等級表更新スケジュールを確認する。更新後は試算で新旧差額を検証する。

随時改定の要否を見落とす落とし穴は?

症状:昇給した際に新等級で改定が必要な2等級差が生じているのに、月額変更届を出していない。 原因:従来は上限張り付きで変動がなかったため、月額変更届のチェック対象から外していた。 対処法:新等級適用後は月収65万円超の社員の昇給時に必ず2等級差チェックを行い、該当する場合は随時改定する。

従業員への説明が不十分で不満が生じる落とし穴は?

症状:給与明細の控除額が増えた理由を説明できず、従業員から「間違いでは?」と問い合わせが殺到する。 原因:制度改正の告知を行わず、明細変更の事前説明をしていなかった。 対処法:改正施行前に「厚生年金保険料の変更理由」を社内通知で説明し、将来の年金増額というメリットも合わせて伝える。

社会保険労務士に相談するとできること

  • 給与計算システムの等級表更新確認・保険料試算のサポート
  • 算定基礎届・月額変更届の作成代行
  • 対象社員のリストアップと保険料増加額のシミュレーション
  • 従業員向け説明資料の作成
  • 年金事務所への問い合わせ・手続き代行

このセクションのポイント

  • 給与計算システムの等級表更新が最優先の実務対応
  • 昇給時の随時改定(月額変更届)の要否確認も忘れずに
  • 従業員への事前説明が不満・トラブル防止に直結する

5. とうかいが実際に対応した相談事例・よくあるトラブル

相談事例

事例①:給与計算システムの更新漏れで過少徴収が半年間続いた IT企業

相談内容:IT業・従業員55名の企業から「算定基礎届の確認をしたところ、高所得者の標準報酬月額が旧等級のままになっていた。遡及修正はできるのか」とのご相談をいただきました。

背景と問題点:改正施行後も給与計算システムの等級表が自動更新されておらず、月収75万円超の社員数名について旧等級(650,000円)で保険料を計算し続けていました。半年分の差額が発生しており、遡及して追徴・調整が必要な状況でした。

社労士法人とうかいの対応:年金事務所への遡及修正の手続き方法を確認し、算定基礎届の訂正届を提出しました。併せて給与計算システムの等級表更新を依頼し、今後の定期的な法改正チェック体制の構築を支援しました。対象社員への保険料差額の追徴は、複数回に分けて穏やかに対応しました。

結果・教訓:遡及修正は完了し、年金事務所からの追徴も整理できました。システム任せにせず、施行日前後にベンダーへ能動的に確認することの重要性を痛感した事例です。

事例②:月額変更届の要否を見落としていた製造業

相談内容:製造業・従業員40名の企業から「春の昇給後、高所得者のランク変更が必要かどうかわからない」とのご相談をいただきました。

背景と問題点:従来、月収65万円超の社員は上限に張り付いていたため、昇給があっても月額変更届を検討したことがありませんでした。しかし新等級適用後は、昇給によって2等級以上の変動が生じる可能性があり、随時改定の判断が必要になりました。

社労士法人とうかいの対応:対象社員の4〜6月の平均報酬と新等級を照合し、随時改定が必要な社員を特定しました。月額変更届を代行作成・提出し、以後の管理フローを整備しました。

結果・教訓:随時改定の漏れは不正確な保険料徴収・給付計算のリスクにつながります。新等級適用後は、月収65万円超の社員の昇給時に必ずチェックが走るフローを組み込むことが重要です。

事例③:従業員から「手取りが減った、計算ミスでは」と問い合わせが相次いだ卸売業

相談内容:卸売業・従業員30名の企業から「新年度から給与明細の社会保険料控除額が増えた社員から、間違いではないかと問い合わせが5件来た」とのご相談をいただきました。

背景と問題点:等級上限の引き上げに伴う保険料増加を事前に従業員へ説明していなかったため、「計算ミス」と思った社員が人事担当者に連絡してきました。担当者自身も制度改正の内容を十分に把握しておらず、説明できない状況でした。

社労士法人とうかいの対応:従業員向けの「厚生年金保険料変更のご案内」文書を作成し、全社員に配布しました。保険料が増える理由(上限引き上げ)と将来の年金受給額が増えるメリットを平易に説明した内容で、問い合わせが収束しました。

結果・教訓:法改正による保険料変更は、従業員への事前周知が不満防止の鍵です。変更が生じる場合は社労士に依頼して説明資料を作成し、施行前に配布することをお勧めします。

よくあるトラブルとその対処法

よくあるトラブル①:給与計算システムの等級表更新漏れ

症状:改正後も旧等級表で保険料が計算されており、一部社員の保険料が過少または過大になっている。 原因:システムベンダーへの更新依頼をしていなかった、または自動更新機能を有効にしていなかった。 対処法:改正施行前後にベンダーへ等級表更新の完了確認を行う。更新後は対象者の保険料で試算検証を行う。自己解決が難しい場合は社会保険労務士法人とうかいへ。

よくあるトラブル②:算定基礎届で新等級を適用し忘れる

症状:7月の算定基礎届を旧等級で提出してしまい、9月以降の標準報酬月額が誤った状態で決定される。 原因:例年通りの手順で算定基礎届を作成しており、等級表の変更を考慮していなかった。 対処法:改正施行後初回の算定基礎届作成前に、使用している等級表が最新版であることを確認する。自己解決が難しい場合は社会保険労務士法人とうかいへ。

よくあるトラブル③:人件費増加の把握が遅れる

症状:高所得者が多い部門で、予算策定後に保険料増加による人件費の超過が判明した。 原因:改正による保険料増加額を事前に試算せずに予算を組んでいた。 対処法:改正施行前に月収65万円超の社員を抽出し、新等級での保険料増加額をシミュレーションして次年度予算に反映する。自己解決が難しい場合は社会保険労務士法人とうかいへ。

このセクションのポイント

  • 給与計算システムの等級表更新確認は施行前に能動的に行うことが重要
  • 算定基礎届・月額変更届での新等級適用漏れは遡及修正が必要になり手間がかかる
  • 従業員への事前説明(手取り減少の理由と年金増額のメリット)で問い合わせを防止できる

6. 個別相談のご案内|社会保険労務士法人とうかい

社会保険労務士法人とうかいは、社会保険手続き・給与計算支援・労務管理を専門とする社労士法人です。標準報酬月額等級改正への対応として、給与計算システムの確認サポート、算定基礎届・月額変更届の代行、従業員向け説明資料の作成まで、実務に直結した支援を提供しています。

こんなお悩みをお持ちの方はご相談ください

  • 給与計算システムの等級表が正しく更新されているか確認したい
  • 算定基礎届・月額変更届の作成・提出を任せたい
  • 保険料増加額を試算して人件費計画に反映したい
  • 従業員への説明資料を作成してほしい

対応エリア:愛知県を中心に東海地方(岐阜・三重・静岡)の企業様に対応しています。オンライン相談にも対応しており、全国からのご相談も随時承っております。初回相談は無料です。

7. よくある質問(FAQ)

Q. 標準報酬月額等級の上限引き上げはいつから適用されますか?

A. 令和6年(2024年)年金制度改正法に基づき段階的に施行されます。具体的な施行日・新等級の月額については、年金事務所または厚生労働省の最新公示をご確認ください。給与計算システムが自動更新される場合は、施行日にベンダーへ更新完了を確認することをお勧めします。

Q. 保険料率も上がりますか?

A. いいえ、今回の改正で保険料率は変わりません。厚生年金保険料率は18.3%(労使折半で各9.15%)のままです。変わるのは保険料計算の「基礎となる等級の上限」であり、高所得者の標準報酬月額が上位等級に振り分けられることで保険料負担が増加します。

Q. 月収65万円以下の社員には影響ありませんか?

A. 基本的に影響ありません。今回の改正は標準報酬月額の「上限」を引き上げるものであり、月収65万円以下の社員の等級・保険料は変わりません。ただし、昇給等により将来65万円超となった場合は新等級が適用されます。

Q. 給与計算システムは自動で更新されますか?

A. 多くのクラウド給与ソフト(マネーフォワード給与・freee給与・弥生給与など)は施行日に合わせて自動更新されますが、バージョンアップの適用タイミングや手動設定が必要なケースもあります。施行前にベンダーへ確認することを強くお勧めします。

Q. 随時改定(月額変更届)が必要になるのはどんな場合ですか?

A. 固定的賃金の変動後3か月の平均報酬で計算した標準報酬月額が、変動前と比べて2等級以上変わった場合に随時改定が必要です。新等級適用後は、月収65万円超の社員の昇給時に2等級差が生じる可能性があります。毎回の昇給時にチェックする仕組みを整備してください。

Q. 従業員から「手取りが減った」と言われたらどう説明すればよいですか?

A. 「厚生年金の保険料計算基準が法改正で見直され、月収65万円超の方は保険料が増加しました。同時に、増えた保険料は将来の老齢厚生年金の受給額に上乗せされるため、老後の保障が手厚くなります」と説明してください。事前に書面で周知しておくと問い合わせを大幅に減らせます。

Q. 標準賞与額の上限も変わりますか?

A. 標準賞与額の上限(厚生年金:150万円/回、健康保険:年間573万円)は今回の改正では変更されていません(要最新確認)。月ごとの標準報酬月額等級とは別に管理してください。

Q. 社労士に何を依頼できますか?

A. 給与計算システムの等級表更新確認・算定基礎届および月額変更届の作成代行・保険料増加額のシミュレーション・従業員向け説明資料の作成・年金事務所への手続き代行など、実務全般をサポートできます。社会保険労務士法人とうかいへお気軽にご相談ください。

まとめ

厚生年金保険の標準報酬月額等級上限の引き上げは、高所得者の保険料負担を実態賃金に合わせる制度改正です。月収65万円超の社員がいる企業は、給与計算システムの等級表更新・算定基礎届での新等級適用・月額変更届の要否確認という3点を最優先で対応する必要があります。

また、保険料増加は将来の年金受給額増加というメリットと表裏一体です。従業員への適切な説明と、人件費計画への影響の事前把握が、スムーズな対応の鍵となります。「自社の対応が正しいか確認したい」「算定基礎届の作成を任せたい」という場合は、社会保険労務士法人とうかいへお気軽にご相談ください。

この記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法令・制度は改正される場合があるため、最新情報は厚生労働省・日本年金機構等の公式サイトをご確認ください。 監修・文責:社会保険労務士法人とうかい

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