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コラム

労働安全衛生法改正(2026年〜) 個人事業者・化学物質対策を解説

2026年1月1日から、労働安全衛生法の一部を改正する法律が段階的に施行されます。

今回の法改正では、これまで法の保護対象外であった一人親方などの個人事業者への安全衛生対策が義務化されるほか、化学物質に関する規制が大幅に強化される点が大きな特徴です。

本記事では、この法改正の2つの柱である「個人事業者への保護措置」と「化学物質の自律的な管理」について、事業者がいつまでに何をすべきかを具体的に解説します。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

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2026年から施行される労働安全衛生法改正の2つの柱

2026年以降、段階的に施行される労働安全衛生法の改正は、主に2つの大きな柱で構成されています。

一つは、一人親方やフリーランスなど、これまで法の保護が及ばなかった個人事業者に対する安全衛生措置の拡充です。

もう一つは、化学物質管理のあり方を、国が規制物質を定める従来の方式から、事業者が自らリスクを評価し管理する「自律的な管理」へと転換させることです。

この改正により、多くの事業者が新たな対応を求められます。

2026年の法改正の内容、把握していますか?

【改正点1】一人親方など個人事業者への安全衛生対策が義務化

今回の改正により、これまで労働安全衛生法の直接的な保護対象ではなかった個人事業者も、労働者と同様の保護を受ける対象となります。

具体的には、特定の作業を請け負わせる事業者に対し、その作業に従事する一人親方などの個人事業者の安全や健康を確保するための措置を講じることが義務付けられます。

これにより、建設業や運送業などで働く個人事業者の労働災害防止が図られます。

改正のポイントを押さえて、早めの対応を。

なぜ個人事業者も労働安全衛生法の保護対象に含まれるのか

近年、フリーランスやギグワーカーといった多様な働き方が広がる中で、企業の労働者と類似の業務に従事しながらも、労働安全衛生法による保護を受けられない個人事業者が増加しました。

特に建設業の一人親方などは、労働者と同じ現場で危険な作業を行うにもかかわらず、安全措置が不十分なケースが少なくありませんでした。

こうした働き方の実態と労働災害の発生状況を踏まえ、労働者と同等の保護を確保する必要性が高まったことが、今回の改正の背景にあります。

個人事業者が実施すべき具体的な安全衛生措置の内容

改正後の労働安全衛生法では、注文者などの事業者に対し、請負契約に基づき作業を行う個人事業者への安全衛生措置が義務付けられます。

具体的には、墜落・転落防止措置のための足場の設置や、危険な場所への立入禁止表示、化学物質の危険性に関する情報伝達などが挙げられます。

一方、個人事業者側にも、事業者が講じる措置(例:保護具の着用指示)に従う義務が課せられます。

このように、事業者と個人事業者の双方が協力して安全衛生を確保する体制が求められることになります。

個人事業者への措置義務はいつから適用される?

個人事業者に対する安全衛生措置を事業者に義務付ける改正規定は、2026年1月1日から施行されます。

対象となる事業者は、施行日までに自社の安全管理体制を見直し、契約する個人事業者に対してどのような措置を講じる必要があるかを具体的に検討しなくてはなりません。

例えば、請負契約の内容に安全衛生に関する条項を盛り込んだり、作業手順書に個人事業者が遵守すべき事項を明記したりするなど、具体的な準備を進める必要があります。

【改正点2】化学物質に関する規制の段階的な強化

化学物質による労働災害を防止するため、国が指定した物質のみを規制する従来の仕組みから、事業者が自ら化学物質の危険性・有害性を確認し、リスクに応じた対策を講じる「自律的な管理」を基本とする規制へと転換されます。

この変更に伴い、リスクアセスメントやラベル表示・SDS(安全データシート)通知が義務付けられる対象物質が大幅に追加されます。

これにより、事業者はより広範な化学物質について管理責任を負うことになります。

なぜ化学物質の自律的な管理が求められるようになったのか

化学物質によるがんや呼吸器疾患などの健康障害は、業務で取り扱う物質の種類が増加・多様化する中で後を絶ちません。国が全ての化学物質のリスクを把握し、個別に規制を設ける従来の方法では、新たなリスクへの対応に限界がありました。

そこで、化学物質を製造・譲渡・使用する事業者が主体となり、自らリスクを評価して必要な措置を講じる「自律的な管理」の仕組みへ移行することが求められたのです。

この改正は、より実態に即した柔軟かつ網羅的な化学物質管理を目指すものです。

リスクアセスメントが必須となる化学物質が大幅に増加

今回の改正で、リスクアセスメントの実施が義務付けられる対象物質が大幅に拡大されます。

従来は約670物質に限定されていましたが、今後は国によるGHS分類で危険性・有害性が確認された全ての物質が対象となります。

これにより、新たに対象となる物質は数千に及ぶ見込みです。

事業者は、自社で使用している全ての化学物質について、規制対象に該当するかどうかを網羅的に確認し、リスクアセスメントを実施する体制を構築する必要が生じます。

ラベル表示やSDS通知が義務付けられる対象物質の拡大

化学物質の譲渡・提供を行う際のラベル表示やSDS(安全データシート)による通知義務の対象も、リスクアセスメント義務対象物質の拡大に合わせて大幅に追加されます。

これは、サプライチェーンの上流から下流まで、化学物質の危険性・有害性に関する情報が正確に伝達されることを目的としています。

化学物質を取り扱う全ての事業者は、仕入れ先から適切なSDSを入手し、その情報に基づいて自社でのリスクアセスメントや従業員教育を実施することが、より一層重要になります。

2026年1月以降の段階的な施行スケジュールを時系列で解説

化学物質に関する規制強化は、既に一部が施行されていますが、今後も段階的に進められます。

まず、2026年1月1日には、本記事で解説した個人事業者への措置義務が施行されます。

続いて化学物質関連では、2026年4月1日にラベル表示・SDS交付・リスクアセスメント実施義務の対象物質が追加されます。

このように、改正内容は複数の段階を経て適用されるため、事業者はそれぞれの施行時期を正確に把握し、対応が遅れないよう計画的に準備を進めることが求められます。

法改正に向けて事業者が今から準備しておくべきこと

今回の法改正は、対象となる事業者にとって、安全衛生管理体制の大きな見直しを求めるものです。

個人事業者に仕事を発注する事業者、化学物質を取り扱う事業者、そして個人事業者自身も、施行日までに必要な準備を計画的に進めなくてはなりません。

法改正の趣旨を正しく理解し、自社の現状を把握した上で、具体的な対応策を検討・実施することが、スムーズな移行の鍵となります。

【個人事業者向け】安全な作業環境の整備と知識の習得

個人事業者自身も、法改正を機に安全衛生への意識を高める必要があります。

まずは、発注者から指示される保護具の着用や安全手順の遵守を徹底することが基本です。

加えて、自身の作業に潜む危険性や有害性を正しく理解し、関連する知識を積極的に習得する姿勢が求められます。

業務内容によっては、特別教育の受講などを通じて専門的な知識を身につけることも、自らの安全を守る上で有効な手段となります。

【化学物質を扱う事業者向け】管理体制の見直しと担当者の育成

化学物質を扱う事業者は、まず自社で使用している化学物質を全てリストアップし、新たな規制対象に該当するかどうかを確認することから始めるべきです。

その上で、リスクアセスメントを適切に実施できる体制を構築し、化学物質管理者や保護具着用管理責任者といった専門的な知識を持つ担当者を選任・育成することが急務となります。

サプライヤーからのSDSの確実な入手と管理、従業員への情報伝達と教育なども含め、網羅的な管理計画を策定し実行することが、この法改正への対応となります。

今回の法改正は、個人事業主や化学物質取扱事業者に対し、安全管理体制の抜本的な見直しを求めています。計画的な担当者選任や教育、対策の実施が円滑な移行の鍵です。

まとめ

2026年以降に段階的に施行される労働安全衛生法の法改正は、「個人事業者への保護措置の義務化」と「化学物質管理の自律的な管理への移行」を二つの柱としています。

個人事業者に仕事を発注する事業者や化学物質を取り扱う事業者は、新たな義務に対応するための体制構築が求められます。

また、個人事業者自身も、発注者と協力して安全を確保する意識を持つことが重要ですす。

この法改正は、働く全ての人の安全と健康を確保するための重要な転換点であり、各事業者は早期の情報収集と計画的な準備が不可欠です。

よくあるご質問

ここではよくあるご質問をご紹介します。

2026年以降の労働安全衛生法の法改正では、主に何が変わるのですか?

労働安全衛生法の法改正(2026年1月1日以降段階的施行)の主な変更点は2つあります。一つは、一人親方やフリーランスなどの個人事業者に対する安全衛生対策を注文者である事業者に義務付けること。もう一つは、化学物質の管理方法を、国による規制から事業者が自らリスクを評価し管理する「自律的な管理」へと強化・転換することです。

なぜ個人事業者も労働安全衛生法の保護対象に含まれるようになったのですか?

近年、フリーランスや一人親方といった個人事業者が、企業の労働者と類似の業務(特に建設業など)に従事するケースが増加し、労働災害のリスクが高まっていました。従来の労働安全衛生法では彼らが保護対象外であったため、労働者と同等の安全を確保する必要性が高まったことが、今回の改正の背景です。

個人事業者に作業を請け負わせる事業者は、具体的にどのような安全衛生措置を講じる義務がありますか?

注文者などの事業者は、個人事業者の安全や健康を確保するための措置を講じる義務があります。

具体的には、墜落・転落防止のための足場設置や、危険な場所への立入禁止表示、化学物質の危険性に関する情報伝達などが挙げられます。個人事業者側も、事業者の指示(例:保護具の着用指示)に従う義務があります。

化学物質を取り扱う事業者は、法改正に向けていつまでに何を準備すべきですか?

規制強化は2026年1月1日以降段階的に施行されますが、特に2026年4月1日にはラベル表示・SDS交付・リスクアセスメント実施義務の対象物質が追加されます。

事業者は、自社で使用する化学物質を全てリストアップし、リスクアセスメント体制の構築、化学物質管理者などの担当者育成、サプライヤーからのSDSの確実な入手・管理を急ぐ必要があります。

個人事業者が安全を確保するために、自ら実施すべきことはありますか?

個人事業者自身も、法改正の趣旨を理解し、安全衛生意識を高めることが重要です。

発注者からの指示(保護具の着用など)を徹底して遵守するほか、自身の作業に潜む危険性・有害性を正しく理解し、関連知識を積極的に習得する(例:特別教育の受講)など、自らの安全を守るための行動が求められます。

化学物質の「自律的な管理」とはなんですか?

化学物質の自律的な管理とは、国が指定する物質のみを規制する従来の仕組みから転換し、化学物質を製造・使用する事業者が主体となって、自ら化学物質の危険性・有害性を確認し、そのリスクに応じた対策(リスクアセスメントや作業環境の改善など)を講じることを基本とする管理方法です。

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