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コラム

就業規則の基礎知識|作成手順と労働基準法の注意点をわかりやすく解説

就業規則は、職場のルールを定め、労使間のトラブルを防ぐための重要な書類です。 この記事では、労働基準法に基づいた就業規則の作成手順や注意点について、初めての方にもわかりやすい手引きとして解説します。 法的に適切な就業規則を作成・運用し、健全な職場環境を構築するための基礎知識を網羅的に紹介します。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

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就業規則とは?

まず知っておきたい基本ルールと作成義務 就業規則とは、労働者の賃金や労働時間などの労働条件、服務規律などを定めた職場の規則集です。 その基本的な目的は、会社のルールを明確にし、労使双方がそれを守ることで円滑な企業運営を図ることにあります。 労働基準法では、一定の条件を満たす事業場に対して、就業規則の作成と届出が義務付けられています。

就業規則とは何なのか。詳しく解説します

会社のルールブック!就業規則が持つ法的な役割

就業規則は、単なる社内マニュアルではなく、労働契約の内容を具体的に示す法的な役割を持つ会社のルールブックです。 労働条件や服務規律などを明文化することで、個別の労働契約で定めていない事柄についても、就業規則の内容が適用されます。 法令に準拠した就業規則は、労使間のトラブルが発生した際に、会社の主張の根拠となる重要な役割を果たします。

常時10人以上の従業員を雇用する事業場に作成義務がある

労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります。 この「労働者」には、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトなども含まれます。 したがって、雇用形態にかかわらず、常時雇用している人数が10人に達した時点で、労基法上の作成義務が発生します。

就業規則がない場合のリスクと罰則について

作成義務があるにもかかわらず就業規則を作成・届出しない場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科される可能性があります。 また、罰則以上に大きなリスクとして、労使トラブルの発生が挙げられます。 労働条件や懲戒処分の根拠が不明確になるため、問題社員への対応が困難になったり、解雇をめぐる紛争に発展したりする課題が生じます。 「知らなかった」では済まされないため、作成義務が生じたら速やかに対応が必要です。

就業規則を作成する3つの重要なメリット

就業規則を作ることは、法的な義務を果たすだけでなく、企業経営において多くのメリットをもたらします。 労働条件や服務規律を明文化することで、労使間の無用なトラブルを未然に防ぎ、企業の秩序を維持することが可能になります。 また、従業員が安心して働ける環境を整備することは、組織の活性化と成長にもつながります。

労使間の認識のズレをなくしトラブルを未然に防ぐ

労働時間や休日、賃金といった労働条件や、守るべき服務規律を就業規則に明記することで、会社と従業員の間の認識のズレを防ぎます。 入社時などに内容を説明し、従業員の理解を得ることで、労働条件に関する「言った・言わない」の争いや、ルール違反に関する見解の相違といったトラブルを未然に防止する効果が期待できます。

懲戒処分の明確な根拠となり企業の秩序を維持する

従業員が企業の秩序を乱す行為をした場合、就業規則に懲戒の種類と事由を定めておくことで、初めて有効な懲戒処分が可能となります。 就業規則という明確な規則集がなければ、たとえ問題行動があっても懲戒解雇などの重い処分はできず、企業の秩序維持が困難になります。 公正な労務管理を行う上で、就業規則は不可欠な根拠となります。

懲戒処分の明確な根拠となり企業の秩序を維持する

従業員が就業規則を読むことで、休日や賃金、各種手当などの労働条件や、会社が設けている福利厚生制度などを正確に把握できます。 ルールが明確で、公平に運用されている職場は、従業員にとって安心感と信頼感をもたらします。 このような環境は、従業員のエンゲージメントを高め、結果として人材の定着率向上に寄与します。

就業規則の明文化は、労働条件のズレによるトラブルを未然に防ぎ、企業の秩序を維持する懲戒処分の明確な根拠となります。公平なルールの可視化は従業員に安心感を与え、定着率や組織の活性化に寄与します。

就業規則に記載すべき内容は法律で決まっている

就業規則への記載が求められる事項は、労働基準法によって定められています。 これらは「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」と呼ばれ、企業のルールとして任意で定める「任意的記載事項」と区別されます。 法令で定められた必要記載事項に漏れがあると、法違反となるため注意が必要です。

必ず記載が必要な「絶対的必要記載事項」の一覧

「絶対的必要記載事項」は、就業規則に必ず記載しなければならない項目です。 具体的には以下の事項が該当します。 1.始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項 2.賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項 3.退職に関する事項(解雇の事由を含む)

制度を設ける場合に記載が必要な「相対的必要記載事項」の一覧

「相対的必要記載事項」は、企業で該当する制度を設ける場合に記載が義務付けられる項目です。 例えば、退職手当、賞与などの臨時の賃金、従業員に負担させる食費や作業用品に関する定めがある場合は、それらについて明記しなければなりません。 その他、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰や制裁に関する制度がある場合も記載が必要です。

企業理念など任意で記載できる「任意的記載事項」の例

「任意的記載事項」は、法律上の記載義務はありませんが、会社が任意で定めることができるルールです。 公序良俗に反しない限り、就業規則に盛り込むことが可能です。 具体的には、本則となる就業規則の目的や基本方針、企業理念、ハラスメントの禁止、副業・兼業のルール、情報管理に関する規定などがこれに該当します。

【4ステップ】就業規則の作成から届出までの具体的な流れ

就業規則の作り方は、単に文書を作成するだけでなく、法的に定められた手順を踏む必要があります。
具体的には、原案の作成、労働者代表からの意見聴取、労働基準監督署への届出、そして従業員への周知という4つのステップで進めます。 この流れを正しく実行することで、就業規則は法的な効力を持ちます。

就業規則の作成手順について解説します。

ステップ1:就業規則の原案を作成する

はじめに、就業規則の原案を作成します。 まず、法律で定められた絶対的必要記載事項と、自社で制度を設けている相対的必要記載事項を漏れなく盛り込みます。 その上で、企業理念や服務規律といった任意的記載事項を追加し、自社の実態に合った内容に仕上げていきます。 法令に違反する内容は無効となるため、法改正の動向なども確認しながら作成することが重要です。

厚生労働省のモデル就業規則を活用する際の注意点

厚生労働省は、就業規則の模範として「モデル就業規則」を公開しており、作成の参考になります。 しかし、これはあくまで一般的な雛形であり、そのまま使用すると自社の実情に合わない可能性があります。 例えば、休職制度や慶弔休暇、副業に関する規定など、モデル就業規則に含まれていない項目も多くあります。 必ず自社の状況に合わせて内容を修正・追加・削除する作業が必要です。

ステップ2:労働者代表の意見を聴き意見書を作成してもらう

就業規則の原案が完成したら、従業員の代表者に内容を提示し、意見を聴かなければなりません。 これは労働基準法第90条第1項で定められた義務です。 事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者から意見を聴き、その内容を記した「意見書」に署名または記名押印してもらいます。 同意を得る必要はなく、あくまで意見を聴くことが求められます。

ステップ3:管轄の労働基準監督署へ必要書類を届け出る

労働者代表から受け取った意見書を添えて、完成した就業規則を事業場の所在地を管轄する労働基準監督署へ届け出ます。 提出が必要な書類は、「就業規則(変更)届」「意見書」「届け出る就業規則」の3点です。 これらの書類は2部ずつ用意し、1部は受付印を押してもらって控えとして保管します。 近年では電子申請による届出も可能になっています。

ステップ4:完成した就業規則を全従業員へ周知する

労働基準監督署への届出が完了したら、その就業規則を全従業員へ周知する必要があります。 労働基準法106条では、常時各作業場の見やすい場所へ掲示、または備え付ける、書面を交付する、などの方法で労働者に周知することを義務付けています。 イントラネットなど電子データで従業員がいつでも閲覧できる状態にすることも可能です。 この周知をもって、就業規則は法的な効力を生じます。

就業規則を変更する際に押さえておくべき法的ルール

就業規則は、一度作成したら終わりではありません。 法改正や社会情勢の変化、会社の成長に合わせて、内容は随時見直しと変更が必要です。 就業規則を変更する際にも、新規作成時と同様に法的なルールが定められており、適切な手続きを踏まなければ、変更が無効となる可能性があるので注意が必要です。

変更手続きも作成時と同様に届出と周知が必須

就業規則の内容を変更する場合の手続きは、新規作成時と基本的に同じです。 まず、変更内容について労働者代表の意見を聴き、意見書を作成してもらいます。 次に、変更後の就業規則と意見書、就業規則(変更)届をセットにして、管轄の労働基準監督署へ届け出ます。 そして最後に、変更後の就業規則を全従業員に周知することで、変更の効力が発生します。

従業員に不利益な変更を行う場合は原則として同意が必要

賃金の引き下げや休日の削減など、従業員にとって労働条件が不利益になるような変更を行う場合、原則として個別の従業員から同意を得る必要があります。 ただし、判例上、変更に社会通念上の合理性があり、変更後の就業規則を従業員に周知した場合には、同意がなくとも変更の効力が認められることがあります。 しかし、この「合理性」の判断は非常に厳格なため、不利益変更を行う際は慎重な検討と対応が求められます。

就業規則に関するよくある質問

ここでは、就業規則の作成や運用に関して、企業担当者から寄せられることの多い質問とその回答を紹介します。

パートタイマーやアルバイトにも就業規則は適用されますか?

はい、適用されます。 同じ事業場で働く労働者であれば、パートタイマーやアルバイトといった非正規雇用の従業員にも、原則として同一の就業規則が適用されます。

ただし、勤務形態などの違いから正社員と異なる定めをする場合は、パートタイマー用の就業規則を別途作成することも可能です。

複数の事業所がある場合、就業規則は本社で一括作成できますか?

本社での一括作成は可能ですが、届出は事業場ごとに行うのが原則です。

各事業場の労働条件に実質的な違いがなければ、本社で作成したものを各事業場の管轄労働基準監督署へ届け出ます。 ただし、本社と支社で労働条件が異なる場合は、それぞれの内容を反映した就業規則を事業場ごとに作成・届出する必要があります。

就業規則の作成や見直しはどこに相談すればよいですか?

社会保険労務士(社労士)が就業規則作成の専門家です。

法改正への対応など専門知識が不可欠なため、国家資格者である社労士に相談するのが最も確実です。 また、都道府県の社労士会や労働基準監督署、よろず支援拠点などで実施している無料相談を活用するのも一つの方法です。

従業員が10人未満の小規模な会社ですが、就業規則は作っておいた方が良いのでしょうか?

法的な義務は義務はありませんが、早期の作成を強くおすすめします。

10人未満であれば労基署への届出義務はありません。しかし、法律上の根拠(就業規則)がないと、万が一問題社員が現れたときに「懲戒処分」や「解雇」を適法に行うことができず、泥沼の労使トラブルに発展するリスクがあります。

常時10人以上」のカウントに、派遣社員や育休中の社員、副業・アルバイトの人は含まれますか?

就業規則の作成義務は「自社が直接雇用している労働者」の総数で判定します。そのため、パート・アルバイトや育休中の社員は1人としてカウントします。

一方で、派遣社員は派遣元企業と雇用関係があるため、派遣先である自社の10人カウントには含めません。

まとめ

就業規則は、労働基準法に基づき作成が義務付けられているだけでなく、企業の秩序を維持し、労使間のトラブルを未然に防ぐための重要なルールブックです。

その作成や変更には、意見聴取や届出、周知といった法定の手順があり、記載すべき事項も定められています。

これらのルールへの正しい理解に基づき、自社の実態に合った就業規則を整備・運用することが、健全な企業経営の基盤となります。

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