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コラム

労災とは?認定基準や休業補償、申請方法までわかりやすく解説

労災とは、仕事中や通勤中に発生したケガや病気などに対して、国が補償を行う制度です。 この制度に関する知識は、万が一の際に自分や家族の生活を守るために不可欠といえます。 この記事では、労災の基本的な意味から、認定されるための基準、受けられる補償内容、申請手続きの流れまで、わかりやすく説明します。 いざというときに慌てないよう、基本的なポイントをしっかり押さえていきましょう。 わかりやすい解説を心がけているため、初めて労災について調べる方にも理解しやすい内容です。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

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目次

労災(労働災害)とは?仕事中や通勤中のケガ・病気が対象

労災とは、「労働災害」の略で、仕事や通勤が原因で労働者が負ったケガ、病気、障害、あるいは死亡のことを指します。 この正式名称が示す通り、労働者を保護するための制度であり、その根拠となる法律が労働者災害補償保険法です。
労災と認定されると、治療費や休業中の生活費などが労災保険から給付されます。 この保険は、一人でも労働者を雇用する事業主に加入が義務付けられており、保険料は全額事業主が負担します。 そのため、労働者は保険料を支払うことなく補償を受けられるのが特徴です。
つまり、仕事に関連するケガや病気なのか、という点が労災について理解する上で重要なポイントになります。

労災についてご存じですか?

労災に認定されるための2つの基準

労災と認定されるには、厚生労働省が定める2つの基準を両方満たす必要があります。 それは、業務が原因で災害が発生したといえるか(業務起因性)と、事業主の管理下で業務に従事しているときに発生したか(業務遂行性)です。 これらの基準は、災害が「業務災害」なのか「通勤災害」なのかによって、判断の仕方が少し異なります。
個別のケースが労災に当てはまるかどうかは、労働基準監督署がこれらの基準に基づいて客観的な事実関係を調査し、最終的に判断を下します。

労災認定されるための基準について解説します。

基準1:業務災害|仕事が原因で発生したケガや病気

業務災害とは、労働者が事業主の支配・管理下にある状況で、業務が原因となって発生した災害を指します。 この判断には「業務遂行性」と「業務起因性」の2つが考慮されます。
業務遂行性は、所定労働時間内や残業時間中に社内で業務にあたっている状態を指し、休憩時間や出張中も含まれます。 一方、業務起因性は、その業務に伴う危険が現実化したと経験則上認められることを意味します。 例えば、精神障害やうつ病といったメンタル疾患も、強い心理的負荷(ストレス)が原因であると医学的に認められれば、労災認定の対象となります。

基準2:通勤災害|自宅と会社の往復中に起きた事故

通勤災害とは、労働者が通勤中に被った災害のことです。 ここで言う「通勤」とは、住居と就業場所との間の往復、複数の事業場で働く場合の事業場間の移動などを指します。 この移動が、業務の性質を持つものを除き、合理的な経路および方法で行われることが条件です。 例えば、通勤途中の交通事故は通勤災害にあたります。
しかし、通勤中の事故であっても、通勤経路を逸脱したり中断したりした場合は、その後の移動は原則として通勤とはみなされません。 ただし、日用品の購入など、日常生活上必要な行為をやむを得ない理由で最小限度の範囲で行う場合は、元の経路に戻った後の事故は再び通勤災害として扱われます。

【ケース別】こんなとき労災は適用される?具体的な事例を紹介

労災が適用されるかどうかは、具体的な状況によって判断されます。 業務との関連性が認められれば、社内での作業中のケガだけでなく、出張中の移動や宿泊先での事故も対象になり得ます。 ここでは、労災保険が適用されるケースとされないケースの具体的な例をいくつか紹介します。 これらの事例を通じて、どのような場合に補償が受けられるのか、用語の意味とあわせて理解を深めていきましょう。 例えば、同じ休憩時間中のケガであっても、事業場の施設に問題があった場合と、私的な行為が原因だった場合とでは判断が異なります。

労災保険が適用されるケースの例

労災保険が適用される典型的な例として、工場での作業中に機械に手を挟まれて負傷した場合や、建設現場で足場から転落してケガをした場合などが挙げられます。 また、社用車で営業先へ向かう途中に交通事故に遭った場合や、長時間労働による過労が原因で脳梗塞を発症した場合も業務災害と認められる可能性があります。 上司からの継続的なパワーハラスメントにより精神障害を発症したケースも、業務との因果関係が認められれば対象です。 さらに、会社が主催する運動会に参加してケガをした場合も、参加が強制されているなど業務の一環とみなされれば労災保険が適用されます。

労災保険が適用されないケースの例

労災保険が適用されないケースには、業務との関連性がない場合や、労働者の故意による災害が含まれます。 例えば、昼休み中に同僚とキャッチボールをしていて負傷した場合、これは私的な行為とみなされ、業務遂行性が否定されるため対象外です。 また、業務終了後に会社の最寄り駅とは逆方向の繁華街へ向かい、そこで事故に遭った場合も、合理的な通勤経路から逸脱しているため通勤災害とは認められません。 さらに、わざとケガをするなど、労働者が故意に災害を発生させた場合や、個人的な恨みが原因で第三者から暴行を受けた場合も、業務起因性がなく労災の対象とはなりません。

労災適用の可否は、業務や通勤との関連性で判断されます。強制参加の行事や過労、パワハラによる発症は対象ですが、休憩中の私的行為や故意の負傷、経路逸脱後の事故は原則除外されます。

労災保険から受けられる7つの主な補償内容

労災保険からは、被災した労働者やその家族の生活を支えるために、様々な種類の保険給付が提供されます。 これらの補償は、治療費の支払いや休業中の所得保証など、状況に応じて多岐にわたります。 労災保険は、健康保険や雇用保険と同じく社会保険の一つですが、その目的や補償内容には違いがあります。 健康保険が業務外の事由による病気やケガを対象とするのに対し、労災保険は業務上・通勤上の事由を対象としています。 ここでは、労災保険から受けられる主な7つの補償について、それぞれの内容を解説します。

①療養(補償)給付:治療費や薬代が無料になる

療養(補償)給付は、労災によるケガや病気の治療を受ける際に必要な費用を補償する制度です。 この給付により、被災労働者は無料で治療を受けられます。
具体的には、労災病院や労災指定病院を受診すれば、窓口での支払いは発生しません。 対象となるのは、診察費、薬剤費、手術費、入院費用、通院のための交通費など、治癒(症状が安定し、これ以上治療を続けても効果が期待できない状態)するまでに必要となる医療費全般です。
もし労災指定外の病院で治療を受け、一度費用を自己負担した場合は、後からその金額を請求して払い戻しを受けることも可能です。

②休業(補償)給付:休業4日目から給料の約8割が支給される

休業(補償)給付は、労災によるケガや病気の療養のために仕事を休み、賃金を受けられない場合に、その間の所得を補償する制度です。 この給付は、休業した日が4日目に達した時から支給が開始されます。
支給される金額は、休業1日につき給付基礎日額(事故発生直前3ヶ月間の平均賃金)の60%に相当する額です。 さらに、社会復帰促進等事業から特別支給金として給付基礎日額の20%が上乗せされるため、合計で平均賃金の約8割が補償されます。 この給付により、療養中の生活の安定が図られます。
なお、休業初日から3日目までは待機期間とされ、事業主が労働基準法に基づき休業補償を行う義務があります。

③障害(補償)給付:体に後遺症が残った場合に年金や一時金がもらえる 障害

(補償)給付は、労災によるケガや病気が治癒(症状固定)した後も、身体に一定の後遺障害が残った場合に支給される給付です。 障害の程度に応じて等級が定められており、第1級から第7級までの重い障害には「障害(補償)年金」が、第8級から第14級までの比較的軽い障害には「障害(補償)一時金」が支給されます。
例えば、障害等級第1級の場合は給付基礎日額の313日分の年金が、第8級の場合は503日分の一時金が支払われます。
この給付は、後遺障害によって低下した労働能力を補い、将来の生活を支えることを目的としています。

④遺族(補償)給付:労働者が亡くなった場合に遺族の生活を支える

遺族(補償)給付は、労働者が労災によって死亡した場合に、その遺族の生活を支えるために支給される制度です。 主に「遺族(補償)年金」と「遺族(補償)一時金」の2種類があります。 遺族(補償)年金は、亡くなった労働者の収入によって生計を維持されていた配偶者や子などのうち、最も優先順位の高い遺族(受給資格者)に対して、遺族の数に応じて毎年支払われます。
年金を受け取る資格のある遺族がいない場合には、一定の範囲の遺族に遺族(補償)一時金が支給されます。 また、葬儀費用として「葬祭料(葬祭給付)」も支払われます。

h3:⑤介護(補償)給付:介護が必要になった場合の費用を補填する

介護(補償)給付は、障害(補償)年金または傷病(補償)年金を受給している労働者のうち、精神・身体上の障害により、常時または随時介護を必要とする状態にある場合に支給されます。 この給付は、介護にかかる費用を補填し、被災労働者とその家族の経済的負担を軽減することを目的としています。 支給額は、介護の必要性の程度や、親族による介護か、専門業者による介護サービスを利用したかによって異なります。
具体的には、常時介護の場合は上限額の範囲内で介護に要した費用が、親族などによる介護で費用を支出していない場合でも、一定額が支給されます。

⑥傷病(補償)年金:1年6ヶ月以上治療を続けても治らない場合に支給

傷病(補償)年金は、労災によるケガや病気の治療を開始してから1年6ヶ月を経過しても治癒せず、その障害の程度が傷病等級に該当する場合に支給される年金です。 この制度は、療養が長期化している労働者の生活保障を目的としています。
休業(補償)給付を受けている労働者がこの条件に該当する場合、労働基準監督署長の職権により、休業(補償)給付から傷病(補償)年金へと切り替えられます。
支給額は傷病等級第1級から第3級まで定められており、等級に応じて給付基礎日額の313日分から245日分の年金が支払われます。

⑦二次健康診断等給付:過労死などを防ぐための健康診断を受けられる

二次健康診断等給付は、過労死などを予防することを目的とした制度です。 職場の定期健康診断(一次健康診断)において、血圧や血中脂質、血糖などの項目で異常の所見が認められた労働者が対象となります。
この給付を受けることで、労働者は脳血管や心臓の状態を把握するための二次健康診断と、医師や保健師から生活習慣改善のための指導を受ける特定保健指導を、自己負担なく受けることが可能です。
この制度は、業務上の事由による脳・心臓疾患の発症を防ぐための予防的な措置という点で、他の給付とは少し異なる位置づけのものです。

労災が発生してから給付金を受け取るまでの4ステップ

労災が発生した場合、被災した労働者が補償を受けるためには、定められた手続き(申請)を適切な流れに沿って進める必要があります。 手続きは主に、会社への報告、病院での受診、労働基準監督署への書類提出、そして調査と給付決定というステップで構成されます。 申請には時効があり、例えば治療費を請求する権利は療養の費用を支出した日の翌日から2年、休業補償は賃金を受けなかった日の翌日から2年で消滅するため、速やかな対応が求められます。
ここでは、労災発生から給付金を受け取るまでの具体的な流れを0からわかりやすく解説します。

労災発生から給付金を受け取るまでの流れを解説します。

ステップ1:会社に労災の発生をすみやかに報告する

労災によるケガや病気が発生した場合、まずは速やかに会社の上司や担当部署にその事実を報告することが最初のステップです。 この報告は、労災手続きを進める上で非常に重要となります。 会社は労働安全衛生法に基づき、労働災害の状況を把握し、労働基準監督署へ報告する義務(労働者死傷病報告)を負っています。 また、会社からの証明が申請書類に必要になる場合もあるため、正確な発生日時や場所、災害の状況などをできるだけ詳しく伝えましょう。
もし、口頭での報告が難しい場合は、電話やメール、あるいは同僚を通じてでも構いませんので、必ず会社に一報を入れることが肝心です。

ステップ2:労災指定病院を受診し治療を受ける

会社へ報告した後、速やかに医療機関を受診して治療を開始します。 このとき、できるだけ「労災指定病院」を選ぶことが推奨されます。 労災指定病院であれば、受付で労災であることを伝え、必要な書類(様式第5号など)を提出することで、治療費を自己負担することなく受診できます。
もし近くに指定病院がない場合や、救急搬送された先が指定病院でなかった場合は、一旦健康保険証を使わずに全額自己負担で支払い、後日、労働基準監督署に治療費を請求する手続きを取ります。
その際は、治療にかかった費用の領収書や医師の診断書が必要になるため、必ず保管しておきましょう。

ステップ3:必要な申請書類を作成し労働基準監督署へ提出する

治療と並行して、労災保険の給付を受けるための申請書類を作成し、管轄の労働基準監督署へ提出します。 使用する書類の様式は、請求する給付の種類や受診した病院が労災指定病院かどうかによって異なります。
例えば、労災指定病院で治療を受けた場合は「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を病院の窓口へ提出します。休業補償を請求する場合は「休業補償給付支給請求書」を労働基準監督署に直接提出します。
これらの書類には、災害発生状況などを記載する欄や、事業主や医師の証明が必要な箇所があるため、会社の担当者や病院と連携して準備を進めることになります。

ステップ4:労働基準監督署の調査後に給付が決定される

申請書類が労働基準監督署に提出されると、その災害が労災にあたるかどうかを判断するための調査が開始されます。 調査では、提出された書類の内容や、事業主、被災した労働者本人、同僚、担当医師などへの聞き取りが行われ、客観的な事実確認が進められます。 特に、業務と災害との間に因果関係があるかどうかが慎重に審査されます。
この調査の結果、労災であると認定されれば、保険給付の支給が決定し、指定した口座に給付金が振り込まれるか、または療養の給付が継続されます。
もし労災と認められない(不支給決定)場合は、不服申し立て(審査請求)を行うことも可能です。

労災に関するよくある質問

労災の制度や手続きについては、多くの方が疑問を抱く点があります。 例えば、雇用形態によって適用に違いがあるのか、会社が協力してくれない場合はどうしたらよいのか、といった質問がよく寄せられます。
ここでは、そうした労災に関するよくある質問とその回答をまとめました。 いざという時に適切に対応できるよう、あらかじめ知識を深めておくことが重要です。

パートやアルバイトでも労災保険は使えますか?

はい、使えます。 労災保険は、正社員だけでなくパート、アルバイト、派遣社員といった雇用形態に関わらず、すべての労働者に適用されます。

労働者を一人でも雇用している事業主は、労災保険への加入が義務付けられており、保険料は全額事業主が負担します。 そのため、パートやアルバイトの方も、業務中や通勤中にケガをした場合は、ためらわずに労災申請の手続きを進めることができます。 また、企業の役員や一人親方、フリーランスなど通常は労働者に該当しない方でも、特別加入制度を利用することで労災保険の補償を受けられる場合があります。

会社が労災を認めてくれない場合はどうすればいいですか?

会社が労災申請に協力的でない、いわゆる「労災隠し」にあった場合でも、労働者自身で手続きを進めることが可能です。

申請書の事業主証明欄が空欄でも、労働基準監督署は受理してくれます。 その際は、会社が協力してくれない旨を記した文書を添付するとよいでしょう。 労災を認めるかどうかを最終的に判断するのは会社ではなく労働基準監督署です。 会社が協力的でないことで労働者が労災申請をあきらめてしまうと、本来受けられるはずの補償を受けられず損をしてしまいます。 まずは労働基準監督署に相談してください。

間違えて健康保険証を使ってしまった場合の手続きは?

本来労災保険を使うべきところで健康保険証を使ってしまった場合でも、後から労災保険への切り替えが可能です。

まずは、受診した病院に連絡し、労災扱いに変更できるか相談してください。 病院が対応してくれれば、健康保険で支払った自己負担分(3割)が返金され、病院が残りの7割を健康保険組合等から労災保険へ請求し直してくれます。 病院で切り替えができない場合は、一度治療費の全額を立て替え払いし、その後、労働基準監督署に療養の費用を請求する手続きを行うことになります。

労災を申請すると、会社が「解雇」や「不利益な扱い」をすることはありませんか?

法律で禁止されています。 労災による休業期間中およびその後30日間は、原則として解雇してはならないと労働基準法で定められています。

また、労災申請を理由とした不利益な扱いは禁止されています。

在宅勤務(テレワーク)中の怪我も労災になりますか?

業務遂行中であれば認められます。 「仕事中にデスクで作業をしていて腰を痛めた」「業務に必要な書類を取りに行こうとして転倒した」などは対象です。

ただし、私的な用事(家事や散歩など)の最中の怪我は対象外となります。

まとめ

労災(労働災害)は、業務または通勤が原因で発生した労働者の傷病等に対し、必要な保険給付を行う制度です。 労災と認定されるには、業務との関連性を示す「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの基準を満たす必要があります。 補償内容には、治療費を補填する療養(補償)給付や、休業中の生活を支える休業(補償)給付など多岐にわたります。

労災が発生した際は、速やかに会社へ報告し、労災指定病院を受診した上で、労働基準監督署へ申請手続きを行います。

雇用形態にかかわらずすべての労働者が対象であり、会社が非協力的な場合でも申請は可能です。

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