賞与とは、定期的な給与とは別に支払われる特別な賃金のことで、一般的にボーナスと呼ばれます。 この賞与からは、毎月の給与と同じように社会保険料や税金が控除されます。 せっかくのボーナスが思ったより少ないと感じるのは、この控除が理由です。
この記事では、賞与から引かれる社会保険料の具体的な計算方法や、手取り額がいくらになるのかを解説します。 また、保険料の計算には上限が設定されているため、その仕組みや産休・育休中といった特別なケースでの注意点についても詳しく説明します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
- NHK「あさイチ」
- 中日新聞
- 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri/
取材・寄稿のご相談はこちらから

賞与(ボーナス)から天引きされる4つの社会保険料
賞与(ボーナス)は、労働の対価として支払われる報酬に含まれるため、毎月の給与と同様に社会保険料が徴収されます。 賞与から天引きされる社会保険料には、「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料(40歳以上の従業員のみ)」「雇用保険料」の4種類が含まれています。 これらの保険料は、賞与の総支給額を基に計算され、会社と従業員がそれぞれ負担します。 何がいくら引かれるのかを正確に理解しておくことが、手取り額を把握する第一歩です。
【種類別】賞与にかかる社会保険料の計算方法をわかりやすく解説
賞与にかかる社会保険料の計算は、種類ごとに異なる計算式を用います。 健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料の計算では、賞与の総支給額から千円未満を切り捨てた「標準賞与額」が基準となります。 この標準賞与額に、それぞれの保険料率を掛けて保険料を算出します。 一方、雇用保険料は切り捨てを行わず、賞与の総支給額に直接料率を掛けて計算する点が異なります。
計算結果に円未満の端数が出た場合の処理は、労使間の取り決めによりますが、一般的には50銭以下を切り捨て、50銭を超える場合は切り上げます。

健康保険料の計算式:標準賞与額 × 健康保険料率
健康保険料は、賞与の額面から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、加入している健康保険組合が定める「健康保険料率」を掛けて算出します。 この保険料率は、都道府県や加入している組合によって異なります。 例えば、協会けんぽ東京支部に加入している場合、令和7年度(2025年)の健康保険料率は9.91%です。 これに介護保険料率1.59%を合算すると11.50%となります。 これらの料率を従業員と会社で折半するため、従業員の健康保険料負担分は4.955%、介護保険料を含む場合は5.75%となります。
正確な保険料率については、自社が加入している健康保険組合の保険料額表を確認する必要があります。 この表には、標準賞与額に応じた具体的な保険料が記載されています。
厚生年金保険料の計算式:標準賞与額 × 厚生年金保険料率
厚生年金保険料も、健康保険料と同様に「標準賞与額」を基に計算します。 計算式は「標準賞与額×厚生年金保険料率」です。 厚生年金保険料率は、2017年9月以降18.3%で固定されており、これを従業員と会社で半分ずつ負担するため、従業員の負担率は9.15%となります。
厚生年金保険の被保険者資格は70歳で喪失するため、70歳以上の従業員が受け取る賞与からは厚生年金保険料は徴収されません。
年金の受給資格や将来の受給額に関わる重要な保険料であり、賞与からも適切に納付されます。
介護保険料の計算式(40歳以上の場合):標準賞与額 × 介護保険料率
介護保険料は、40歳から64歳までの従業員(介護保険第2号被保険者)のみが支払う社会保険料です。 計算式は「標準報酬月額×介護保険料率」および「標準賞与額×介護保険料率」で求められます。 40歳未満、または65歳以上の従業員からは徴収されません。 介護保険料率も健康保険料率と同様に、加入している健康保険組合によって異なりますが、協会けんぽの介護保険料率は全国一律です。
例えば、協会けんぽに加入している40歳から64歳までの従業員の場合、令和7年度の介護保険料率は1.59%です。 これを会社と折半するため、従業員の負担は0.795%となります。
雇用保険料の計算式:賞与の総支給額 × 雇用保険料率
雇用保険料の計算は、他の社会保険料とは異なり、1,000円未満の切り捨てを行わない「賞与の総支給額」に直接「雇用保険料率」を掛けて算出します。 この保険料率は、事業の種類(一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業)によって異なります。 令和7年度における一般の事業の雇用保険料率は全体で1.45%で、このうち従業員の負担割合は0.55%、会社負担が0.9%と定められています。 健康保険料や厚生年金保険料のように会社と従業員で均等に折半するわけではないため、負担割合に注意が必要です。
2026年4月開始「子ども・子育て支援金」の徴収
子ども・子育て支援金は、賞与の額面から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、国が一律で定める「支援金率」を掛けて算出します。 この支援金は2026年4月から導入され、健康保険料とあわせて徴収されます。支援金率は、加入している健康保険組合や協会けんぽの種類にかかわらず、国が定める率が適用されます。 例えば、2026年度(令和8年度)の支援金率が0.23%と設定された場合、この料率を従業員と会社で折半するため、従業員の負担分は0.115%となります。正確な支援金率については、年度ごとに公表される最新の情報を確認する必要があります。
なお、健康保険と同様に、年度の累計額が573万円を超える分については、支援金もかかりません。
【シミュレーション】賞与50万円の場合の手取り額はいくらになる?
賞与の額面が50万円の場合、実際に手元に残る金額をシミュレーションします。 具体的なモデルケースを設定し、天引きされる社会保険料と所得税を計算して手取り額をシミュレーションします。
この例を通じて、ご自身の金額に置き換えておおよその手取り額を把握する参考にしてください。 実際の金額は、加入している健康保険組合の料率や前月の給与額によって変動します。

計算の前提条件(東京都在住・30歳・扶養家族なしの場合)
今回のシミュレーションでは、以下の条件を設定します。 まず、従業員は東京都在住で、協会けんぽに加入しているものとします。 年齢は30歳とし、この場合、介護保険料の徴収対象外となります。 また、扶養家族はなしとします。
前月の給与(社会保険料控除前)は30万円だったと仮定します。 これらの条件に基づき計算をしていきます。
実際に天引きされる社会保険料と所得税の合計額
賞与50万円から天引きされる各項目を計算します。
健康保険料:健康保険料率は都道府県によって異なります。個人が負担する健康保険料は、標準賞与額に健康保険料率を乗じて算出されます。
厚生年金保険料:賞与額50万円の場合、個人が負担する厚生年金保険料は、標準賞与額に厚生年金保険料率(労使折半後の料率)を乗じて算出されます。例として、厚生年金保険料率が18.3%の場合、個人負担分は9.15%となるため、500,000円×9.15%=45,750円となります。
雇用保険料:雇用保険料率は年度によって変更される場合があります。個人が負担する雇用保険料は、賞与額に雇用保険料率を乗じて算出されます。 社会保険料の合計は上記の料率に基づいて算出されます。
次に所得税を計算します。 賞与の課税対象額は、賞与額から社会保険料合計を引いた金額です。 前月の給与と扶養親族の数から源泉徴収税率が決まるため、所得税は課税対象額に源泉徴収税率を掛けて算出されます。 賞与には基本給の他に各種手当が含まれる場合もありますが、計算方法は同じです。
賞与50万円から社会保険料などを引いた手取り額
シミュレーションの結果、賞与50万円から控除される金額の合計は、社会保険料と所得税を合わせて約9万円程度となります。 したがって、最終的な手取り額は、総支給額500,000円から合計控除額を差し引いた約41万円となります。 このように、賞与の額面から約2割弱が社会保険料と所得税として天引きされることが分かります。 実際の手取り額は、個々の条件によって変動するため、あくまで一例として参考にしてください。
賞与の社会保険料が高すぎると感じたら知っておきたい上限額の仕組み
賞与明細を見て「社会保険料がおかしい、引かれすぎでは?」と感じることがあるかもしれません。 特に賞与額が多い場合、控除額も大きくなるため損をしているように感じる人もいます。
しかし、賞与にかかる社会保険料には負担が過大にならないよう上限額が設けられています。 この上限額の仕組みを理解することで、控除額の正当性を確認できます。 節税を意識する上でも、月給とは異なる賞与の社会保険料のルールと上限について知っておくことは重要です。
健康保険料には年度の累計で573万円の上限がある
健康保険料の計算の基になる標準賞与額には、年度を通した上限が設けられています。 具体的には、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間における賞与の累計額が573万円を超える場合、その超えた分については健康保険料がかかりません。 例えば、夏に300万円、冬に300万円の賞与が支給された場合、年度の累計は600万円となります。
このとき、健康保険料の計算対象となる標準賞与額は上限である573万円までとなり、超過分の27万円には保険料が課されない仕組みです。
厚生年金保険料は1回あたり150万円が上限
厚生年金保険料の計算対象となる標準賞与額には、支給1回あたり150万円という上限が設定されています。 これは、賞与が支給される都度適用される上限額です。 例えば、1回の賞与が200万円だった場合、標準賞与額は150万円として計算され、超過した50万円分には厚生年金保険料がかかりません。
ただし、同じ月内に複数回にわたって賞与が支払われた場合は、それらの合計額に対して150万円の上限が適用されるため注意が必要です。 健康保険料の年間累計とは上限の考え方が異なります。
月給とは異なる賞与の社会保険料計算ルール
賞与の社会保険料が高く感じられる一因は、毎月の給与との計算方法の違いにあります。 毎月の給与から引かれる社会保険料は、給与額を一定の範囲で区切った「標準報酬月額」という等級に基づいて決定されます。
一方、賞与の場合は、支給された賞与額そのものから算出した「標準賞与額」に直接保険料率を掛けて計算します。 そのため、賞与の支給額が大きくなればなるほど、それに比例して社会保険料も高額になります。 この計算ルールの違いが、手取り額が思ったより少ないと感じる原因の一つです。

経営視点のアドバイス
賞与の社会保険料は支給額に直接料率を掛けるため高額になりがちですが、上限があります。健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1回150万円が計算の限度額です。
こんな時はどうなる?賞与の社会保険料控除に関する注意点
賞与の社会保険料計算には、通常の支払い時以外にも注意すべき特殊なケースが存在します。 例えば、産休・育休中や退職月に賞与が支給された場合、社会保険料の取り扱いは通常と異なります。 また、賞与という名称でなくても、臨時的に支払われる特別手当や一時金なども、年3回以下の支給であれば社会保険料の対象となる賞与と見なされます。
これらの注意点を事前に把握しておくことで、予期せぬトラブルや計算ミスを防ぐことができます。

産休・育休中に支給される賞与は社会保険料が免除される
産前産後休業や育児休業の期間中に賞与が支給された場合、被保険者が負担する健康保険料と厚生年金保険料は免除されます。 この免除措置を受けるためには、事業主が「産前産後休業取得者申出書」または「育児休業等取得者申出書」を年金事務所へ提出する必要があります。 免除が適用されると、保険料の負担は0円になります。 なお、免除期間は休業を開始した月から終了する月の前月までです。
ただし、賞与が支給された月の末日時点で育児休業を取得している必要があるなど、詳細な要件があるため、復職のタイミングには注意が必要です。
退職月に受け取った賞与から社会保険料は引かれる?
退職月に支給された賞与から社会保険料が引かれるかどうかは、退職日によって決まります。 社会保険の資格喪失日は「退職日の翌日」であり、資格喪失日が属する月(資格喪失月)の保険料は徴収されません。 例えば、6月20日に退職した場合、資格喪失日は6月21日となり、資格喪失月は6月です。 この場合、6月分の社会保険料は徴収されないため、6月に支給された賞与からも保険料は引かれません。 しかし、6月30日のように月末に退職した場合、資格喪失日は翌月の7月1日となり、資格喪失月は7月です。
そのため、6月分の保険料は徴収対象となり、6月に支給された賞与からも社会保険料が引かれます。
年4回以上ボーナスが支給される場合は給与として計算される
社会保険制度における「賞与」の定義は、年3回以下の回数で支給されるものを指します。 もしボーナスが年4回以上支給される場合、それは賞与とは見なされず、毎月の給与と同じ「報酬」として扱われます。 この場合、社会保険料の計算方法が大きく変わります。 具体的には、年4回以上支給される賞与の合計額を12で割り、その金額を毎月の給与額に上乗せして標準報酬月額を決定します。
これにより、月々の社会保険料が高くなります。 このルールは、役員報酬など特定の支払いにも適用されるため、支給回数の定義には注意が必要です。
同じ月に2回以上賞与が支払われた際の合算ルール
厚生年金保険料の計算には、1回あたりの標準賞与額に150万円の上限がありますが、同じ月に2回以上賞与が支払われた場合は、それらの支給額を合算して上限を判断します。 例えば、同じ月の異なる支給日に100万円ずつ、合計200万円の賞与が支払われたとします。
この場合、それぞれの支給を個別に見るのではなく、合算した200万円で判断するため、標準賞与額は上限である150万円となります。 このルールを知らないと、上限を超えて保険料を徴収してしまう可能性があるため、特に給与計算担当者は注意が必要です。
賞与からは社会保険料だけでなく所得税も控除される
賞与の手取り額を計算する上で忘れてはならないのが、社会保険料の他に「所得税」も控除されるという点です。 賞与の所得税は、まず賞与の総支給額から社会保険料の合計額を差し引いて課税対象額を算出します。 次に、その課税対象額に、前月の給与額や扶養親族の人数に応じて定められた源泉徴収税率を掛けて税額を決定します。
ここで源泉徴収された所得税はあくまで概算額であり、最終的な年間の所得税額は年末調整によって確定し、過不足分が精算される仕組みになっています。
賞与の社会保険料に関するよくある質問
賞与の社会保険料については、計算方法や特殊なケースなど、疑問が生じやすいポイントがいくつかあります。 ここでは、実務でよく寄せられる質問や多くの人が気になる点をQ&A形式で解説します。
例えば、賞与を支払った際には、事業主が「被保険者賞与支払届」を日本年金機構(年金事務所)へ提出する手続きが必要です。 こうした届出や保険料の算定に関する疑問を解消することで、より深い理解につながります。
賞与にかかる社会保険料率はいつのものが適用されますか?
賞与に適用される社会保険料率は、賞与が支給された月の料率が適用されます。
例えば、健康保険料率は法改正などにより変更されることがあり、通常毎年3月分(4月納付分)から改定されます。 もし4月に料率変更があった場合、4月中に支給される賞与には新しい料率が反映されます。 料率の変更は前月の給与計算時期に通知されることが多いため、賞与計算時には最新の料率を確認することが重要です。 2003年の総報酬制導入以降、賞与からも月給と同様に保険料が徴収されるようになりました。
試用期間中に支給された賞与からも社会保険料は引かれますか?
はい、引かれます。 試用期間中であっても、会社との雇用契約が結ばれており、社会保険の被保険者であることに変わりはありません。
したがって、試用期間中の従業員が賞与の支給対象者であれば、他の従業員と同様に、支給された賞与から社会保険料が控除されます。 社会保険の加入要件を満たしている限り、雇用形態や期間に関わらず、賞与は社会保険料の対象となります。
パートやアルバイトが受け取る賞与にも社会保険料はかかりますか?
社会保険の加入条件を満たしているパートやアルバイトの方であれば、賞与から社会保険料が引かれます。
週の所定労働時間や月額賃金などの要件を満たし、社会保険の被保険者となっている場合は、正社員と同様に賞与も保険料の対象です。 一方で、社会保険の加入条件を満たしていない、いわゆる扶養内で働いている場合は被保険者の対象外となるため、賞与が支給されても社会保険料はかからないです。
賞与から引かれる「所得税」と「社会保険料」の計算順序に決まりはありますか?
先に社会保険料を差し引きます。 賞与の所得税は、「賞与の総額」から「社会保険料」を差し引いた後の金額に、前月の給与から算出した税率をかけて計算します。
そのため、社会保険料の計算を間違えると所得税の額もズレてしまいます。
賞与の社会保険料計算には「上限額」があると聞きましたが本当ですか?
はい、健康保険と厚生年金にはそれぞれ標準報酬月額と標準賞与額に上限が設定されています。
健康保険の標準賞与額の上限は、年度(4月1日から翌年3月31日までの累計額)で573万円です。これを超える金額に対しては保険料がかかりません。 厚生年金保険の標準賞与額の上限は、1回あたり150万円です。
まとめ
賞与からは健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料の4種類に加え、2026年4月からは「子ども・子育て支援金」が新たに控除されます。
計算の基本は賞与額に保険料率を掛けることですが、保険料ごとに上限額が設けられている点や、産休・育休中や退職時など特殊な状況では取り扱いが異なるため注意が必要です。 計算ミスがあった場合は速やかな報告と調整が求められ、納付期限を守ることが重要です。
給与奉行のような給与計算システムを活用し、一覧表で確認するなどの対策でミスを防げます。 この記事で解説した計算方法や注意点を理解し、ご自身の賞与の手取り額を確認してみてください。



