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コラム

トラック運転手の残業時間 計算方法|運送業の歩合給・荷待ち・未払い代も解説

運送業で働くトラックドライバーにとって、残業代の計算は非常に重要です。 歩合給や荷待ち時間など、業界特有の事情が絡むため、自身の給与が正しく支払われているか不安に感じる方も少なくありません。 この記事では、トラック運転手の残業時間の基本的な考え方から、給与体系別の具体的な計算方法、未払い残業代が発生した場合の対処法までを分かりやすく解説します。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

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あなたの残業代は適正?トラック運転手の残業代計算が必要な理由

トラック運転手の給与は、固定給に加えて歩合給や各種手当が組み合わさることが多く、給与体系が複雑になりがちです。 そのため、会社側が残業代を誤って計算していたり、意図的に少なく支払っていたりするケースが見受けられます。
自身の労働時間と給与明細を照らし合わせ、正しい残業代計算を行うことで、受け取るべき正当な対価を得ているかを確認できます。 支払われるべき残業代が平均より低いと感じた場合は、未払いの可能性を疑う必要があります。

残業代の計算が必要な理由について解説します。

1日8時間・週40時間を超える労働が「残業」の基本

労働基準法では、労働時間の上限が原則として1日8時間、週40時間と定められています。これを「法定労働時間」と呼びます。この法定労働時間を超えて行われた労働が「時間外労働」、つまり残業にあたります。
会社は、従業員に残業をさせた場合、通常の賃金に割増率を乗じた割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。この原則はトラック運転手にも当然適用されます。
したがって、1日の実働が8時間を超えた部分や、週の労働時間が40時間を超えた部分については、残業代の支払い対象となります。

トラック運転手の残業代を3ステップで計算する方法

トラック運転手の残業代計算は、複雑な給与体系から難しいと感じるかもしれません。 しかし、手順を追って進めれば、誰でも自身の残業代を算出することが可能です。
計算は大きく分けて「1時間あたりの基礎賃金の算出」「残業時間の集計」「割増率の適用」という3つのステップで構成されます。 この流れを理解することで、会社から支払われている金額が適正かどうかを判断する基準を持つことができます。

ステップ1:1時間あたりの基礎賃金(時給)を算出する

残業代を計算するための最初のステップは、自身の1時間あたりの基礎賃金、つまり時給を算出することです。 月給制の場合、まず月給の総額から、法律で定められた特定の「除外手当」を差し引きます。 除外手当には、家族手当、通勤手当、住宅手当などが該当します。 次に、その金額を月平均所定労働時間(1年間の総所定労働時間÷12ヶ月)で割ることで、1時間あたりの基礎賃金が求められます。 この基礎賃金が、残業代計算のすべての土台となる重要な数値です。

ステップ2:残業時間を正確に集計する

次に、時間外労働、休日労働、深夜労働といった、割増賃金の対象となる残業時間を正確に集計します。 トラック運転手の場合、タコグラフやデジタルタコグラフ(デジタコ)、運転日報などが客観的な労働時間の証拠となります。 これらの記録をもとに、法定労働時間である1日8時間・週40時間を超えた時間数を算出します。 特に、荷待ち時間や車両の点検時間など、運転以外の業務時間も見落とさずに含めることが重要です。 記録が手元にない場合は、会社に開示を求めることも検討します。

ステップ3:割増率をかけて残業代を算出する

1時間あたりの基礎賃金と残業時間が算出できたら、最後のステップとして、労働の種類に応じた割増率をかけて残業代を求めます。 法定労働時間を超える「時間外労働」には25%以上、法定休日の労働である「休日労働」には35%以上、午後10時から午前5時までの「深夜労働」には25%以上の割増率がそれぞれ適用されます。 例えば、時間外労働かつ深夜労働にあたる時間帯は、25%+25%で合計50%以上の割増率となります。 これらの割増率を正確に適用し、最終的な残業代を算出します。

給与体系別!残業代の具体的な計算方法【固定給・歩合給】

トラック運転手の給与体系は、会社によって様々です。 ここでは、代表的な「固定給のみ」のケースと、運送業で多く見られる「固定給+歩合給」のケースに分けて、具体的な残業代計算の方法を解説します。
特に歩合給が含まれる場合は計算が複雑になり、会社側も誤った解釈をしている可能性があります。
自身の給与体系に合った正しい計算方法を理解し、未払いがないか確認することが重要です。

残業代の具体的な計算方法について解説します。

【固定給のみの場合】

残業代の計算式と具体例 給与が固定給のみで構成されている場合、残業代の計算は比較的シンプルです。 まず「(月給-除外手当)÷月平均所定労働時間」で1時間あたりの基礎賃金を算出します。 次に、その基礎賃金に実際の残業時間と割増率(時間外労働なら1.25)を掛け合わせます。 例えば、基礎賃金が1,500円で、月に30時間の時間外労働をした場合、「1,500円×30時間×1.25=56,250円」がその月の残業代となります。 休日労働や深夜労働がある場合は、それぞれの割増率を適用して計算します。

【固定給+歩合給の場合】

歩合給部分も含めた残業代の正しい計算式 固定給に歩合給が加わる場合、「歩合給だから残業代は出ない」というのは誤りです。 歩合給部分も残業代計算の基礎に含める必要があります。 計算方法は複雑ですが、まず固定給部分の残業代を通常通り計算します。 次いで、歩合給部分の基礎単価を「歩合給の総額÷総労働時間」で算出します。 その基礎単価に、残業時間と割増率(時間外労働なら0.25)を掛けて歩合給部分の残業代を求めます。 これら2つを合算した金額が、支払われるべき正しい残業代となります。

これも残業時間?トラック運転手の労働時間に含まれるケース

トラック運転手の業務は、車両を運転している時間だけではありません。 荷物の積み降ろしを待つ「荷待ち時間」や、始業前の車両点検、終業後の洗車など、運転に付随する様々な作業が発生します。 これらの時間が労働時間として扱われず、結果的にサービス残業になっているケースも少なくありません。 ここでは、法律上、労働時間として認められるべき具体的なケースについて解説します。

手待ち・荷待ち時間も労働時間として認められる

荷主の都合による荷待ちや、積み込み・荷降ろしの順番を待っている時間は「手待ち時間」と呼ばれ、労働時間に含まれます。 手待ち時間は、運転手が自由にその場を離れることができず、会社の指示があればすぐに業務を開始しなければならない状態にあるためです。 会社によってはこれを休憩時間として扱うよう指示する場合がありますが、実質的に会社の指揮命令下にあると判断される限り、賃金支払いの対象となる労働時間と見なされるのが原則です。 手待ち時間が長時間に及ぶ場合は、残業代にも大きく影響します。

車両の点検や洗車、事務作業の時間も対象

始業前に行う車両の日常点検やアルコールチェック、終業後に行う洗車や燃料の給油、運転日報の作成といった事務作業も、会社から義務付けられている業務であれば労働時間に含まれます。 これらの付随的な作業は、安全な運行や業務報告に不可欠であり、運転という主業務と密接に関連しています。 たとえ始業時刻前や終業時刻後に行われていたとしても、会社の指示に基づき行われる作業時間は、賃金の支払い対象としなければなりません。 これらの時間がサービス残業として扱われていないか確認が必要です。

渋滞に巻き込まれた時間も労働時間になる

業務中の渋滞に巻き込まれた時間も、労働時間として扱われます。 渋滞中は車両が動いていないかもしれませんが、運転手は交通状況に注意を払い、いつでも運転を再開できる状態で待機している必要があります。 これは運転業務から解放されているわけではなく、会社の指揮命令下にある状態が継続していると判断されるためです。 したがって、渋滞によって拘束時間が長引いた場合、その時間は休憩時間ではなく労働時間としてカウントされ、法定労働時間を超えれば残業代の支払い対象となります。

運転手は走行中だけでなく、荷待ちや点検、洗車、渋滞中の待機も会社の指揮命令下にあるため労働時間に含まれます。これらを休憩扱いにするサービス残業には注意が必要です。

知っておきたい法規制|トラック運転手の時間外労働の上限(2024年問題)

2024年4月1日から、トラック運転手の時間外労働に対して新たな上限規制が適用されました。 これは「2024年問題」として知られており、運送業界の働き方を大きく変える可能性があります。
ドライバー自身がこれらの法規制を正しく理解することは、自らの労働条件が法律に適合しているかを確認し、過重労働を防ぐ上で非常に重要です。 ここでは、知っておくべき労働時間に関するルールを解説します。

知っておきたい法改正について解説します。

改善基準告示で定められた拘束時間・休息期間のルール

トラック運転手の労働条件については、労働基準法を補う形で「改善基準告示」が定められています。この告示では、労働時間だけでなく、拘束時間(始業から終業までの時間)や休息期間(勤務終了から次の勤務開始までの時間)についても詳細な基準が設けられています。 例えば、1日の拘束時間は原則13時間以内とされています。また、1日の休息期間は、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、最低でも継続9時間を下回らないように設定されています。
ただし、宿泊を伴う長距離貨物運送の場合には、継続8時間以上が週2回まで認められる例外規定があり、休息期間のいずれかが9時間を下回る場合には、運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与える必要があります。
これらの基準は、運転手の健康を確保し、過労運転による事故を防ぐことを目的としており、残業時間を考える上での大前提となります。

時間外労働の上限は原則月45時間・年360時間

2024年4月1日以降、トラック運転手の時間外労働時間には、罰則付きの上限が設けられました。 原則として、一般職の場合は時間外労働の上限は月45時間、年360時間です。 しかし、トラック運転手の時間外労働は、「年960時間(月平均80時間)」が罰則付きの上限となります。一般職のような「月45時間」という制限はありませんが、
その代わりに「1日の拘束時間」や「月間の拘束時間」で厳しく制限されています。 2026年現在は、労働基準監督署による監査も強化されています。
自身の労働時間が「年960時間」以内であっても、1日の拘束時間が15時間を頻繁に超えていないか、休息が9時間取れているかをセットで確認することが、自身の健康と権利を守る鍵となります。

未払い残業代を請求するためにやるべきこと

自身の残業代が正しく支払われていない「未払い」の可能性があると分かった場合、泣き寝入りする必要はありません。 法律に基づいて、過去の未払い分を会社に請求する権利があります。
ただし、請求を成功させるためには、時効の管理や証拠の収集など、計画的に進める必要があります。
ここでは、未払い残業代を請求するために具体的に何をすべきかを解説します。

未払い残業代を請求するためにやるべきことについて解説します。

残業代請求の時効は3年!早めの行動が重要

未払い残業代を請求する権利には、「時効」という期限が設けられています。 現在、残業代請求の時効は3年です。 これは、給与の支払日から3年が経過すると、その分の残業代を請求する権利が消滅してしまうことを意味します。
例えば、2024年4月25日支払いの給与に未払いがあっても、2027年4月25日を過ぎると請求できなくなります。 時効は日々進行していくため、未払いに気づいたら、1日でも早く証拠集めなどの行動を開始することが非常に重要です。

タコグラフや日報など、労働時間を証明する証拠を集める方法

未払い残業代を請求する際、最も重要になるのが、実際にどれだけ働いたかを客観的に証明する証拠です。 トラック運転手の場合、タコグラフ(アナログ・デジタル)の記録や運転日報が極めて強力な証拠となります。 その他にも、タイムカード、業務上のメールやLINEの送受信記録、給与明細、ETCの利用履歴、高速道路の領収書なども有効です。
これらの証拠は、できる限りコピーを取るなどして手元に確保しておくことが望ましいです。 会社が保管している資料については、開示請求を行うことも可能です。

証拠がない場合に有効な対処法

タコグラフなどの客観的な証拠が手元にない場合でも、諦める必要はありません。 自分で作成した業務日誌やメモも、証拠として認められる可能性があります。 重要なのは、日々の始業時刻、終業時刻、休憩時間、荷待ち時間、具体的な業務内容などを、できるだけ詳細かつ継続的に記録しておくことです。
スマートフォンのGPSログや写真データ、同僚の証言なども、労働時間を裏付ける補助的な証拠になり得ます。 証拠が不十分だと感じても、まずは専門家に相談し、どのようなものが使えるか助言を求めるとよいでしょう。

弁護士など専門家への相談も有効な手段

残業代の計算が複雑であったり、会社との交渉に不安を感じたりする場合は、弁護士などの労働問題の専門家に相談することが有効な解決策です。 専門家は、法的な観点から未払い残業代を正確に計算し、証拠の集め方についても具体的なアドバイスを提供してくれます。
また、本人の代理人として会社と直接交渉したり、労働審判や訴訟といった法的手続きを進めたりすることも可能です。 初回の相談を無料で行っている事務所も多いため、まずは一度、専門家の意見を聞いてみることをお勧めします。

トラック運転手の残業時間計算に関するよくある質問

トラック運転手の残業代については、業界特有の慣行や誤った認識から、多くの疑問やトラブルが生じがちです。 特に「歩合給」や「固定残業代」の扱いは、会社側から都合の良い説明をされ、ドライバーが不利益を被っているケースも少なくありません。 ここでは、現場でよく聞かれる質問に対して、法律に基づいた正しい考え方を簡潔に解説します。

「歩合給だから残業代は出ない」と言われたらどうすればいい?

「歩合給だから残業代は出ない」という説明は、法律上誤りです。 歩合給制度であっても、法定労働時間を超えて働いた場合には、割増賃金(残業代)を支払う義務が会社にあります。

歩合給部分も含めて時間単価を算出し、それに基づいて残業代を計算し請求することが可能です。 このような説明をされた場合は、違法の可能性が高いと考え、専門家へ相談することをおすすめします。

「固定残業代(みなし残業代)を払っている」と言われた場合の注意点は?

固定残業代制度が法的に有効であるためには、通常の賃金部分と固定残業代部分が明確に区別され、何時間分の残業代に相当するかが明示されている必要があります。

また、固定残業時間を超えて労働した場合は、その超過分の残業代が別途支払われなければなりません。 これらの条件を満たしていない、または超過分が支払われていない場合は違法であり、未払い分を請求できます。

会社が労働時間の記録を提出してくれない場合はどうする?

会社は労働者の労働時間を管理・保存する法的義務を負っています。 そのため、タコグラフなどの記録の開示を拒否することは原則としてできません。

拒否された場合は、弁護士を通じて開示請求を行う、あるいは裁判所に対して証拠保全の申立てをするなどの法的手段があります。 まずは内容証明郵便で正式に開示を要求し、会社の対応を記録に残すことも有効な手段です。

「荷待ち時間(待機時間)」は休憩扱いと言われましたが、労働時間に入りますか?

原則として「労働時間」に入ります。 会社や荷主の指示を待っており、自由に場所を離れられない「手待時間」は休憩ではありません。

この時間を休憩として給与から引くのは「未払い残業」の典型的なパターンです。

会社を辞めた後でも、過去の未払い残業代を請求できますか?

過去3年分まで遡って請求可能です。 2020年の法改正により、賃金請求権の時効は「3年」に延長されました。

在職中はもちろん、退職後であっても証拠があれば、数百万単位の請求に繋がるケースも少なくありません。

まとめ

トラック運転手の残業代は、歩合給や荷待ち時間など運送業特有の要素が絡むため、計算が複雑になりがちです。
しかし、法定労働時間の原則や正しい計算ステップを理解すれば、自身の給与が適正かを確認できます。
まず、1時間あたりの基礎賃金を算出し、タコグラフなどで正確な労働時間を集計し、法で定められた割増率を適用します。 2024年問題による時間外労働の上限規制も念頭に置く必要があります。

もし未払い残業代が疑われる場合は、3年の時効に注意し、速やかに証拠を確保した上で、弁護士などの専門家へ相談することが問題解決への近道です。

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