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コラム

就職お祝い金の禁止、2025年から求人サイトも対象に!法改正のポイント解説

2025年4月1日から、職業安定法の改正により就職お祝い金の提供に関する規制が強化されます。 これまでは人材紹介会社のみが対象でしたが、今後は求人サイトなども規制対象に含まれます。 厚生労働省は、この規制を通じて求職者が金銭に惑わされず、適切な職業選択を行えるよう労働市場の健全化を目指しています。 本記事では、法改正の背景や具体的な内容、今後の採用活動で注意すべきポイントについて詳しく解説します。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア

  • NHK「あさイチ」
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そもそも就職お祝い金とは?求職者を集める仕組みを解説

就職お祝い金とは、求人サイトや人材紹介会社などの事業者が、自社のサービスを利用して就職が決まった求職者に対して支払う金銭やそれに類する経済上の利益のことです。 この仕組みは、他のサービスとの差別化を図り、より多くの求職者を集めるためのインセンティブとして広く活用されてきました。
求職者にとっては臨時収入となる魅力がある一方、事業者側にとっては自社経由での応募や採用決定を促すためのマーケティング戦略の一環でした。 しかし、このお祝い金が求職者の安易な就職や早期離職を助長する可能性が指摘され、法改正による規制の対象となりました。

就職お祝い金とは何かご存じですか?

就職お祝い金が禁止される3つの理由|法改正の背景とは

就職お祝い金が法律で禁止される背景には、労働市場の健全性を確保するという大きな目的があります。 金銭的なインセンティブが求職者の職業選択に不適切な影響を与えることへの懸念から、厚生労働省は段階的な規制強化に踏み切りました。
具体的には、お祝い金目当ての短期的な就職・離職の防止、求人サービス間の健全な競争促進、そして求職者による適切な職業選択の実現という3つの理由が挙げられます。 これらの措置は、労働者と企業の長期的なマッチングを重視する考え方に基づいています。

就職お祝い金に関する法改正が行われました。

理由1:お祝い金目当ての安易な転職や早期離職を防ぐため

就職お祝い金が禁止される最も大きな理由の一つは、金銭的なインセンティブが求職者の安易な意思決定を誘発し、結果として早期離職につながる懸念があるためです。 高額なお祝い金は、求職者が仕事内容や企業文化との相性といった本質的な要素を深く検討する前に、目先の利益を優先して応募・入社を決断させる一因となり得ます。
このような形での転職は、入社後のミスマッチを生みやすく、短期での離職を繰り返すことにつながりかねません。 結果として、求職者自身のキャリア形成を妨げるだけでなく、採用した企業にとっても損失となるため、こうした負の連鎖を断ち切ることが規制の目的とされています。

理由2:求人サービス本来の提供価値(質)で競争を促すため

お祝い金の提供が常態化すると、求人サービス事業者間の競争が、求職者と企業のマッチング精度やサポートの質といった本質的な価値ではなく、単なるお祝い金の金額の多寡に陥ってしまう危険性があります。 このような状況は、サービスの質の向上に向けた事業者の努力を阻害しかねません。 規制によって金銭的なインセンティブが禁止されることで、各事業者は求人情報の正確性、使いやすいプラットフォームの提供、キャリア相談の充実度など、サービス本来の価値で差別化を図る必要が出てきます。 これにより、求人サービス市場全体の健全な競争が促進され、結果的に求職者と企業の双方にとって利益となることが期待されています。

理由3:職業選択を歪めることなく、労働市場を健全化するため

お祝い金は求職者が自身のスキルやキャリアプラン労働条件などを総合的に判断して行うべき職業選択を金銭的な魅力によって歪めてしまう可能性があります。 特に生活に困窮している求職者にとっては高額なお祝い金が提示されると不本意な条件の求人であっても受け入れてしまうケースが考えられます。
このような転職や再就職は長期的なキャリア形成に悪影響を及ぼすだけでなく労働市場全体のマッチングの質を低下させる要因となります。 規制は求職者が金銭的なインセンティブに左右されることなく自身の適性や希望に合った職業を冷静に選択できる環境を整え労働市場全体の健全化を図ることを目的としています。

【2025年4月から】就職お祝い金禁止の法改正ポイントを時系列で確認

就職お祝い金に関する規制は、一度に導入されたわけではありません。 厚生労働省は、労働市場への影響を考慮しながら段階的に規制を強化してきました。 まず2021年に人材紹介会社を対象とした規制が始まり、その後、求人メディアなども含めたより広い範囲へと対象が拡大されることになりました。
ここでは、法改正のポイントを時系列に沿って確認し、規制内容の変遷と2025年からの変更点を理解します。

2021年4月の法改正:人材紹介会社によるお祝い金提供が禁止に

2021年4月1日に施行された職業安定法施行規則の改正により、まず「職業紹介事業者」、つまり人材紹介会社(転職エージェント)が求職者に対して就職お祝い金を提供することが禁止されました。
この規制は、お祝い金を目当てとした安易な転職や、それに伴う早期離職を防ぐことを目的としていました。 求職の申し込みや就職を勧奨する手段として、自社サービスを利用した就職を条件に金銭などを提供する行為が、職業紹介事業の許可基準に違反すると明確化されたのです。
ただし、この時点では求人サイトなどの「募集情報等提供事業者」は規制の対象外とされており、一部のサービスでは引き続きお祝い金の提供が行われていました。

2025年4月の法改正:求人サイトなど募集情報等提供事業者も規制対象へ

2021年の規制後も、対象外であった求人サイトなどがお祝い金の提供を続ける状況がありました。 この抜け穴を塞ぎ、規制の実効性を高めるため、2025年4月1日からは新たに「募集情報等提供事業者」も規制の対象に加えられます。
これには、一般的な求人サイトや求人情報誌、求人検索エンジンなどが含まれます。 この改正により、人材紹介会社だけでなく、インターネットや紙媒体で求人情報を提供するほぼ全ての事業者が、就職を条件とするお祝い金の提供を禁止されることになります。
これにより、求職者が金銭的なインセンティブに左右されず、求人内容そのもので職業を選択できる環境が整備されることになります。

注意点:自社採用サイトで直接支給するお祝い金は規制対象外

今回の法改正における重要な注意点は、企業が自社の採用サイトなどを通じて、直接採用した従業員に支給する「入社祝い金」や「支度金」は規制の対象外であるという点です。
この規制は、あくまで求職者と企業を仲介する第三者の事業者(職業紹介事業者や募集情報等提供事業者)による金銭提供を禁止するものです。 企業が福利厚生の一環として、自社の従業員となる人に直接祝い金を支払う行為は、職業の紹介や情報の提供に対する対価とは見なされないため、法律上問題ありません。
したがって、企業は引き続き、採用競争力を高めるための一つの施策として、自社独自の入社祝い金制度を設けることが可能です。

どこまでがNG?禁止対象となる金銭・物品の具体例

法改正によって就職お祝い金の提供が禁止されますが、具体的にどのようなものが違法となるのか、その範囲を正確に理解しておく必要があります。
現金だけでなく、金銭的価値を持つ物品やサービスも規制対象に含まれる可能性があります。 また、どのような条件であれば例外的に認められるのか、その境界線も気になるところです。
ここでは、禁止対象となる具体例や、例外とされるケースについて解説します。

どこまでが禁止になるのでしょうか。具体例を出しながら解説します。

現金だけでなくAmazonギフト券やポイント付与も原則禁止

今回の規制で禁止されるのは、現金での「お祝い金」に限りません。 Amazonギフト券、各種商品券、電子マネー、ポイントといった、金銭と同等の価値を持つもの全般が対象となります。 名称が「就職祝い金」「転職サポート金」「入社おめでとうキャンペーン」など、どのような名目であっても、自社サービスを経由した就職を条件として経済的な利益を提供する行為は、原則として禁止対象と見なされます。
重要なのは名称や形式ではなく、その提供が求職者に対して就職を勧奨し、職業選択の判断に影響を与えるインセンティブであるかどうかという実態です。 したがって、事業者は現金以外の代替手段を用いることもできなくなります。

例外的に認められる「社会通念上相当」の景品とは?

法律では、就職お祝い金の提供を原則禁止としつつも、「社会通念上相当と認められる程度」の景品については例外的に許容される余地を残しています。 しかし、この「社会通念上相当」という基準には、具体的な金額の上限が明記されていません。
一般的には、数百円程度の安価な文房具や企業のロゴが入った記念品など、受け取っても職業選択の意思決定にほとんど影響を与えないようなごく少額のものが想定されます。
この条件は非常に曖昧であるため、事業者が自己判断で数千円単位の景品を提供した場合、規制に抵触するリスクが伴います。 そのため、安易にこの例外規定を解釈して景品を提供することは避けるべきです。

就職の対価ではないアンケート謝礼などは対象外となる可能性

就職お祝い金の規制は、あくまで「就職の対価」として提供される経済的利益を対象としています。 そのため、提供の条件が就職と直接結びついていない場合は、規制の対象外となる可能性があります。
例えば、サービスの利用者全員を対象としたアンケートへの協力に対する謝礼や、ウェブサイトの使い勝手に関するヒアリング調査への参加費といった名目であれば、就職したかどうかを条件としないため、認められる場合があります。
ただし、実質的に特定の求人への応募者や内定者のみを対象とするなど、就職の対価であると判断されかねない運用は避けるべきです。 提供条件を慎重に設計し、その目的を明確にしておくことが求められます。

お祝い金に頼らない!今後の採用競争を勝ち抜くためのポイント

就職お祝い金という直接的なインセンティブが規制されることで、企業や求人サービスは、求職者に対してより本質的な価値を提供する必要に迫られます。 金銭的な魅力で応募者を集める手法が使えなくなるため、今後の採用市場では、いかに自社の魅力を伝え、優れた候補者体験を提供できるかが成功の鍵となります。 お祝い金に頼らない、持続可能な採用戦略への転換が、厳しい転職市場での競争を勝ち抜くために不可欠です。

企業の魅力(EVP)を再定義し、求職者へ明確に伝える

お祝い金に頼らず求職者を引きつけるためには、自社の「EVP(EmployeeValueProposition=従業員価値提案)」を明確にすることが不可欠です。 EVPとは、従業員がその企業で働くことによって得られる価値のことで、給与や福利厚生といった待遇面に加え、やりがいのある仕事内容、良好な人間関係、キャリア成長の機会、柔軟な働き方、企業理念への共感など、金銭以外の魅力も含まれます。
これらの自社ならではの強みを再定義し、求人情報や採用サイト、面接などのあらゆる場面で一貫性を持って具体的に伝えることで、企業の本当の魅力に共感する、マッチング精度の高い人材からの応募を集めることができます。

福利厚生として自社独自の入社祝い金制度を導入する

求人サイトなどを介したお祝い金は禁止されますが、企業が福利厚生の一環として、自社で直接採用した従業員に入社祝い金を支給することは規制の対象外です。
この制度をうまく活用すれば、採用における有効なアピールポイントとなり得ます。 例えば、転居を伴う入社者向けの支度金や、特定のスキルを持つ人材への一時金として設定することで、求職者の入社決断を後押しする効果が期待できます。重要なのは、特定の媒体経由の応募者だけを優遇するのではなく、全ての入社者が公平な条件で受け取れる自社の公式な制度として設計・運用することです。
これにより、コンプライアンスを遵守しながら採用競争力を高めることが可能です。

候補者体験を重視し、採用プロセス全体を見直す

候補者体験(CandidateExperience)とは、求職者が企業を認知してから応募、選考、内定、入社に至るまでの一連のプロセスで得る体験の総称です。 この体験の質を高めることが、お祝い金に代わる強力な魅力となり得ます。
例えば、応募後の迅速で丁寧な連絡、分かりやすい選考案内の送付、面接官の誠実な対応、合否に関わらずフィードバックを伝える姿勢などが挙げられます。 優れた候補者体験は、候補者の入社意欲を高めるだけでなく、企業のブランドイメージ向上にも貢献します。
たとえ採用に至らなかったとしても、良い印象を持った候補者が知人に自社を勧めたり、将来的に顧客になったりするなど、長期的な利益をもたらす求人戦略となります。

お祝い金規制後は、自社の価値(EVP)の再定義や候補者体験の向上が採用の鍵です。自社独自の入社祝い金制度の活用も含め、本質的な魅力で惹きつける戦略への転換が求められます。

就職お祝い金の禁止に関するよくある質問

就職お祝い金の禁止に関して、事業者や求職者から多くの疑問が寄せられています。 特に、自社採用サイトでの扱いや、例外的に認められる景品の具体的な基準、万が一お祝い金を受け取ってしまった場合の責任の所在など、具体的なケースにおける違法の判断については関心が高いようです。 ここでは、そうしたよくある質問に対して、Q&A形式で簡潔に解説します。

自社の採用サイトから直接応募した人に祝い金を渡すのも違法になりますか?

結論として、違法にはなりません。

今回の規制は、求人サイトや人材紹介会社といった第三者の事業者が、自社サービス経由での就職を条件に金銭などを提供することを禁じるものです。 企業が自社の採用サイトで直接募集し、福利厚生の一環として入社祝い金を支給する行為は、これに該当しないため規制の対象外です。

「社会通念上相当と認められる景品」とは具体的にいくらまでなら許容されますか?

この条件について、法律で定められた明確な金額の基準はありません。

一般的には、数百円程度の記念品や文房具など、職業選択の判断に影響を及ぼさないごく少額なものが想定されています。 しかし、基準が曖昧なため、安易な解釈で景品を提供すると規制に抵触するリスクがあります。 慎重な判断が求められます。

お祝い金を受け取ってしまった求職者も罰則の対象になりますか?

いいえ、求職者が罰則の対象になることはありません。

この法律による罰則の対象は、違法にお祝い金を提供した事業者側(求人サイトや人材紹介会社)です。 求職者がお祝い金を受け取ったとしても、それによって法的な責任を問われることはないため、心配する必要はありません。

お祝い金を禁止している紹介会社が違反した場合、どのような罰則がありますか?

行政処分(改善命令や業務停止)の対象となります。

悪質な場合は、職業紹介事業の許可取り消しになることもあります。企業側も、違反している紹介会社を利用し続けると、コンプライアンス意識を疑われるリスクがあります。

友人紹介(リファラル採用)で、紹介した社員に報奨金を出すのは違反ですか?

原則として違反ではありません。 自社の従業員が知人を紹介し、会社がその手間に対して「紹介手当」を支払うことは、職業紹介業ではないため禁止対象外です。

ただし、金額が給与の範囲を超えて高すぎる場合は「無許可の就業紹介」と疑われる可能性があるので、社内で適正な額を定める必要があります。

まとめ

就職お祝い金に関する規制は、2025年4月から求人サイトなどの募集情報等提供事業者にも拡大されます。 この法改正の背景には、金銭的なインセンティブによる職業選択の歪みをなくし、労働市場を健全化するという目的があります。

事業者側は、この規制の趣旨を理解し、コンプライアンスを遵守しなければなりません。 今後は、お祝い金に頼るのではなく、企業の本来の魅力(EVP)の発信や候補者体験の向上といった、より本質的な価値で競争する求人戦略への転換が求められます。

求職者にとっても、今回の規制は、目先の利益に惑わされず、自身のキャリアプランに合った転職先を慎重に見極める良い機会となります。

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