「特別支給の老齢厚生年金」という名称を聞いたことはあっても、具体的な受給条件や手続き方法、また注意すべきデメリットまで正確に把握している方は少ないのではないでしょうか。この制度は自動的には支給されず、自ら申請しなければ受け取れないうえ、働き方によっては年金が減額・停止されるリスクもあります。社会保険・年金制度の専門家である社会保険労務士法人とうかいが、2026年時点の最新情報をもとに、制度の仕組みから受給要件・申請手続き・デメリットまでわかりやすく解説します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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- NHK「あさイチ」
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1. この記事の要約
- 特別支給の老齢厚生年金とは、65歳前(60〜64歳)に受け取れる厚生年金の経過措置であり、生年月日によって支給開始年齢が異なる。
- 受給するには「厚生年金保険の被保険者期間1年以上」「受給資格期間10年以上」「所定の年齢への到達」の3要件をすべて満たす必要がある。
- 自動的には支給されない。支給開始年齢の誕生月の約3ヶ月前に届く「年金請求書」を使って、自分で申請しなければならない。
- 働きながら受給する場合は「在職老齢年金」の仕組みにより、賃金と年金の合計額が一定基準を超えると年金の一部または全部が支給停止になる。
- 昭和44年4月2日以降生まれの男性、昭和49年4月2日以降生まれの女性は特別支給の対象外となり、65歳から老齢厚生年金が始まる。
2. そもそも、特別支給の老齢厚生年金とは?
特別支給の老齢厚生年金とは何か
特別支給の老齢厚生年金とは、厚生年金保険の受給開始年齢を60歳から65歳に段階的に引き上げる際の経過措置として設けられた年金給付のことです。本来の老齢厚生年金(65歳から支給)とは別の制度であり、60〜64歳の間に受け取れる「つなぎ」の年金として機能しています。
昭和60年(1985年)の年金大改革(国民年金の給付水準見直し・基礎年金制度の導入)、及びその後の平成6年(1994年)・平成12年(2000年)の厚生年金保険法改正によって、老齢厚生年金の受給開始年齢は60歳から段階的に65歳へと引き上げられることになりました。しかし急激な変更は生活への影響が大きいため、生年月日ごとに支給開始年齢を緩やかに引き上げる経過措置が設けられました。それが「特別支給の老齢厚生年金」です。
根拠法令は厚生年金保険法附則第8条(報酬比例部分)および附則第9条(定額部分)です。

特別支給の老齢厚生年金の2つの構成
特別支給の老齢厚生年金には、以下の2つの部分があります。
| 構成 | 内容 | 現在の状況 |
|---|---|---|
| 定額部分 | 国民年金(老齢基礎年金)に相当する部分 | 男性は2013年度までに廃止完了。女性も2018年度までに廃止完了 |
| 報酬比例部分 | 厚生年金保険の在職中の報酬に比例する部分 | 現在も経過措置として存続。生年月日により支給開始年齢が異なる |
2026年時点では定額部分はすでに廃止されており、現在受給できる特別支給の老齢厚生年金は報酬比例部分のみです。
専門用語解説
【報酬比例部分】 報酬比例部分とは、厚生年金保険の被保険者として在職中に受け取っていた報酬(給与・賞与)の水準と被保険者期間に比例して計算される年金額のことです。在職中の平均標準報酬額と被保険者期間(月数)をもとに計算されます。65歳以降の老齢厚生年金もこの報酬比例の考え方で計算されており、特別支給はその「前払い」的な位置づけです。
【受給資格期間】 受給資格期間とは、年金を受け取るために必要な、保険料を納付した期間・免除された期間・合算対象期間(カラ期間)等の合計のことです。2017年(平成29年)8月以降、老齢年金の受給資格期間は25年から10年に短縮されました(年金機能強化法・公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律)。
【在職老齢年金】 在職老齢年金とは、厚生年金保険に加入しながら(=働きながら)老齢厚生年金を受給する場合に、賃金と年金の合計額が一定基準を超えると、超過分の2分の1の年金が支給停止される仕組みのことです。2022年(令和4年)4月の改正により、60〜64歳の支給停止基準額が28万円から47万円(令和4年度)に引き上げられ、働きながら受給しやすくなりました。
このセクションのポイント
- 特別支給の老齢厚生年金は、年金受給開始年齢を60歳→65歳へ段階的に引き上げる際の経過措置。根拠は厚生年金保険法附則第8条・第9条。
- 2026年時点で受給できるのは「報酬比例部分」のみ。定額部分はすでに廃止済み。
- 受給するには3要件(被保険者期間1年以上・受給資格期間10年以上・所定年齢への到達)をすべて満たす必要がある。
3. 誰が対象?生年月日別の支給開始年齢と受給要件
受給するための3要件
特別支給の老齢厚生年金を受給するには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あること
- 老齢年金の受給資格期間(10年以上)を満たしていること(国民年金・厚生年金の保険料納付済み期間+免除期間+合算対象期間の合計)
- 特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢(61〜64歳のいずれか)に達していること
生年月日別の支給開始年齢(報酬比例部分)
受給できる年齢は、性別と生年月日によって以下のとおり異なります。
【男性】
| 生年月日 | 特別支給の支給開始年齢(報酬比例部分) |
|---|---|
| 昭和36年4月1日以前 | 60歳(既に全員65歳以上のため受給終了) |
| 昭和36年4月2日〜昭和38年4月1日 | 61歳 |
| 昭和38年4月2日〜昭和40年4月1日 | 62歳 |
| 昭和40年4月2日〜昭和42年4月1日 | 63歳 |
| 昭和42年4月2日〜昭和44年4月1日 | 64歳 |
| 昭和44年4月2日以降 | なし(65歳から老齢厚生年金) |
【女性】(男性より5年遅れのスケジュール)
| 生年月日 | 特別支給の支給開始年齢(報酬比例部分) |
|---|---|
| 昭和41年4月1日以前 | 60歳(既に全員65歳以上のため受給終了) |
| 昭和41年4月2日〜昭和43年4月1日 | 61歳 |
| 昭和43年4月2日〜昭和45年4月1日 | 62歳 |
| 昭和45年4月2日〜昭和47年4月1日 | 63歳 |
| 昭和47年4月2日〜昭和49年4月1日 | 64歳 |
| 昭和49年4月2日以降 | なし(65歳から老齢厚生年金) |
2026年時点で対象になる方(目安)
2026年(令和8年)時点で特別支給の老齢厚生年金を受給中または近く受給開始を迎える主な対象者は以下のとおりです。
| 2026年時点の年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 61歳(昭和40年生まれ) | 支給開始63歳→まだ先 | 支給開始61歳→今年から受給開始 |
| 62歳(昭和39年生まれ) | 支給開始62歳→今年から受給開始 | 支給開始62歳→今年から受給開始 |
| 63歳(昭和38年生まれ) | 支給開始62歳→受給中 | 支給開始63歳→今年から受給開始 |
| 64歳(昭和37年生まれ) | 支給開始62歳→受給中 | 支給開始64歳→今年から受給開始 |
「繰り上げ受給」との違いは?
特別支給の老齢厚生年金は、繰り上げ受給とは異なる制度です。繰り上げ受給は65歳以降の老齢厚生年金を早めに受け取る代わりに年金額が恒久的に減額される制度ですが、特別支給は制度上定められた年齢から定められた額を受け取るものであり、減額はありません。
出典:厚生年金保険法附則第8条・第9条(昭和60年改正)、健康保険法等の一部を改正する法律(平成12年法律第62号)

このセクションのポイント
- 受給要件は①被保険者期間1年以上、②受給資格期間10年以上、③所定年齢への到達、の3つ。
- 支給開始年齢は生年月日と性別によって異なる。男性は昭和44年4月2日以降、女性は昭和49年4月2日以降生まれは対象外。
- 繰り上げ受給とは異なり、特別支給を受け取っても年金額の恒久的な減額はない。
- 2026年時点では昭和38〜40年生まれの男性、昭和40〜43年生まれの女性が主な対象者。
4. 手続き方法:いつ・何を・どこに提出するのか
申請は自動ではない!届く書類と提出期限
特別支給の老齢厚生年金は、申請しなければ自動的には支給されません。年金請求書の提出が必要です。
支給開始年齢の誕生月の約3ヶ月前に、日本年金機構から「年金請求書(事前送付用)」がご自宅に届きます。この書類が届いたら、必要事項を記入のうえ、添付書類とともに誕生日以降に年金事務所へ提出してください。

申請に必要な書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 年金請求書 | 日本年金機構から事前送付されるもの |
| 戸籍謄本・抄本または住民票 | 発行から6ヶ月以内のもの |
| 受取口座の通帳またはキャッシュカード | 本人名義のもの |
| 雇用保険被保険者証(在職者の場合) | 離職日等の確認のため |
| マイナンバーカードまたは通知カード+身分証明書 | マイナンバー確認のため |
| 在職証明書(会社に在籍している場合) | 勤務先で発行してもらう |
加給年金の受給要件を満たしている場合(後述)は、配偶者・子の戸籍謄本等も必要になります。
申請窓口と提出方法
- 年金事務所または「街角の年金相談センター」の窓口に直接持参する
- 郵送で日本年金機構に提出する(封筒が年金請求書に同封されています)
提出は誕生日以降から可能です。誕生日前に提出しても受理されないため注意してください。
65歳になったときの手続き
65歳になると特別支給の老齢厚生年金は終了し、老齢厚生年金(本来の65歳からの年金)に切り替わります。この際も日本年金機構から書類が届きますが、切り替えには別途手続きが必要な場合があります。65歳の誕生月に届く書類を確認し、案内にしたがって手続きを進めてください。
このセクションのポイント
- 特別支給の老齢厚生年金は自動支給ではない。支給開始年齢の誕生月の約3ヶ月前に届く「年金請求書」を提出して申請する。
- 必要書類は戸籍謄本・受取口座の通帳・マイナンバー確認書類等。加給年金がある場合は追加書類が必要。
- 申請は誕生日以降から受付。年金事務所窓口または郵送で提出できる。
- 65歳到達時には老齢厚生年金への切り替え手続きが必要。
5. 働きながら受給する場合の注意点:在職老齢年金の仕組み
在職老齢年金とは何か
在職老齢年金とは、厚生年金保険に加入しながら(=会社に勤めながら)老齢厚生年金を受給する場合に、賃金と年金の合計が一定基準額を超えると年金が減額・停止される仕組みのことです。
2022年(令和4年)4月の改正前は、60〜64歳の支給停止基準額が「28万円」と非常に低く設定されており、働く意欲を削ぐとして批判されていました。改正により基準額が47万円(令和4年度)に大幅引き上げられ、多くの方が年金を受け取りながら働きやすくなりました(基準額は毎年度改定されます)。
出典:厚生年金保険法附則第11条の改正(健康保険法等の一部を改正する法律・令和2年法律第40号、令和4年4月1日施行)

支給停止の計算式
支給停止が発生するかどうかは、以下の計算式で判断します。
(標準報酬月額)+(直近1年間の標準賞与額の合計 ÷ 12)+(老齢厚生年金の月額※)
※加給年金額は除く
この合計額が基準額(令和4年度:47万円)を超える場合、超過分の2分の1が支給停止されます。
【計算例】
| ケース | 標準報酬月額 | 年金月額 | 合計 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| Aさん(月給35万円・年金8万円) | 35万円 | 8万円 | 43万円 | 基準額以下→全額支給 |
| Bさん(月給45万円・年金8万円) | 45万円 | 8万円 | 53万円 | 超過6万円→3万円停止 |
| Cさん(月給50万円・年金8万円) | 50万円 | 8万円 | 58万円 | 超過11万円→5.5万円停止 |
(賞与等は考慮していない簡易計算例。実際は標準賞与を含む)
働きながら受給する際の実務ポイント
賃金が高い管理職・役員・高度専門職の方の場合、基準額を大きく超えて年金が全額停止になるケースもあります。一方で、定年後の再雇用で給与が下がっている場合は、年金と組み合わせることで収入を確保しやすくなっています。
65歳以降も働き続ける場合、厚生年金は「在職定時改定」(毎年10月に年金額を改定する仕組み)により、働いた分が年金額に反映されます。
6. 特別支給の老齢厚生年金のデメリット・注意点
デメリット①:繰り下げ受給ができない
65歳以降の老齢厚生年金は、受給開始を最大75歳まで遅らせる「繰り下げ受給」が可能で、1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%増額されます。しかし特別支給の老齢厚生年金には繰り下げ制度はありません。支給開始年齢に達したら、受け取るか受け取らないか(申請するかしないか)の選択のみです。

デメリット②:在職老齢年金による減額リスク
上述のとおり、厚生年金加入の職場で働きながら受給する場合、賃金と年金の合計が基準額を超えると年金が減額・停止されます。特に定年後も同水準の給与で再雇用されている場合は、年金がほぼ受け取れないケースもあります。
デメリット③:申請を失念すると受給漏れが生じる
特別支給の老齢厚生年金は申請が必要な制度です。「年金請求書が届いたが忙しくて放置した」という事例が実務上散見されます。受給権は発生から5年で時効となるため(国民年金法第102条・厚生年金保険法第92条)、申請が5年以上遅れると過去分は受け取れなくなります。

デメリット④:雇用保険(基本手当)との調整
60〜64歳で離職して雇用保険の基本手当(失業給付)を受給している期間は、特別支給の老齢厚生年金が支給停止されます。基本手当の受給終了後に停止が解除されます(厚生年金保険法附則第11条の5等)。どちらを優先するかは状況によって判断が必要です。
デメリット⑤:課税対象となる
年金収入は「雑所得(公的年金等)」として所得税・住民税の課税対象です。ただし「公的年金等控除」が適用されるため、一定額までは非課税となります。給与所得と合算して確定申告が必要になる場合があります(年金収入が400万円以下かつ他の所得が20万円以下の場合は確定申告不要)。
このセクションのポイント
- 在職老齢年金の基準額は2022年4月改正で47万円に引き上げられたが、高賃金の方は減額・停止リスクあり。
- 特別支給には繰り下げ制度がない。増額を望む方は65歳以降の老齢厚生年金を繰り下げることで対応する。
- 受給権には5年の時効がある。年金請求書が届いたら速やかに申請すること。
- 雇用保険の基本手当受給中は特別支給が停止される点に注意。
7. 加給年金について
特別支給の老齢厚生年金には、加給年金が加算される場合があります。
加給年金とは、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、支給開始年齢に到達した時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者または18歳未満の子(一定の障害がある場合は20歳未満)がいる場合に加算される年金です(厚生年金保険法第44条)。
加給年金額は法令で定められており、配偶者分・子分があります(毎年度改定。令和5年度の配偶者分:228,700円+特別加算、要最新確認)。
加給年金を受け取るには、年金請求書への記載と添付書類(配偶者・子の戸籍謄本等)の提出が必要です。自動的には加算されないため、対象者は必ず申告してください。
8. 経営者・人事担当者が対応すべきこと|社会保険労務士法人とうかいからのアドバイス
優先度別アクションリスト
【今すぐ対応】定年前後の従業員への情報提供体制を整える
60〜64歳の従業員がいる場合、特別支給の老齢厚生年金の申請漏れがないよう、支給開始年齢の3〜4ヶ月前に会社から情報を提供する仕組みを作ることが重要です。年金請求書は本人宛に届きますが、多忙な管理職や手続きに不慣れな方は失念するケースがあります。

【期日を設けて対応】在職老齢年金による影響を事前にシミュレーションする
定年再雇用の際に給与水準を設定する場合、在職老齢年金の基準額(現行47万円)を踏まえて、年金と給与の合計をどう設計するかを事前に検討することが望ましいです。年金が全額停止になるほどの給与設定の場合、本人にとっての総収入への影響を丁寧に説明してください。
【体制整備】定年退職・再雇用に関する社会保険手続きマニュアルを整備する
定年退職・再雇用にあたっては、社会保険の資格喪失・取得手続き、雇用保険の取り扱い、在職老齢年金への影響など、複数の法制度が絡み合います。個別ケースに対応できるよう、チェックリストやマニュアルを整備しておくことを推奨します。
よくある落とし穴
落とし穴①:「年金はまだ先の話」として情報提供が遅れる
60歳を超えた従業員に対して年金の情報提供が後回しになり、申請漏れが発生するケースがあります。生年月日から支給開始年齢を把握し、前もって情報提供できる体制を整えることが重要です。

落とし穴②:在職老齢年金の基準額を「28万円」のままと認識している
2022年4月改正前の基準額「28万円」を現在も使用しているケースがあります。正しくは毎年度改定される基準額(令和4年度以降47万円台)を確認してシミュレーションしてください。
落とし穴③:定年後再雇用の賃金設定で年金を考慮していない
在職老齢年金の仕組みを考慮せずに定年後の給与額を設定すると、従業員が「働いても年金が停止されるだけ」という状況になり、モチベーション低下や退職の原因になりかねません。手取り収入の観点から賃金を設計することが大切です。
落とし穴④:雇用保険と年金の調整を見落とす
離職して基本手当を受給している期間は特別支給の老齢厚生年金が停止されます。再雇用前に一定期間離職するようなケースでは、雇用保険受給と年金支給停止の関係を従業員に事前に説明する必要があります。

社会保険労務士に相談するとできること
- 生年月日・職歴をもとにした特別支給の老齢厚生年金受給額の試算
- 在職老齢年金の計算シミュレーションと定年後の賃金設計アドバイス
- 年金請求書の記載サポートおよび申請書類の確認・整備支援
- 加給年金の受給要件確認と申請サポート
- 定年退職・再雇用に伴う社会保険・雇用保険手続きの代行
このセクションのポイント
- 支給開始年齢の3〜4ヶ月前に会社から情報提供する仕組みを作ることで申請漏れを防げる。
- 在職老齢年金の基準額は2022年改正で47万円に引き上げ済み。旧基準(28万円)を使い続けている企業は要注意。
- 定年後の賃金設計では年金との合計額を意識し、手取り収入の観点から設計することが重要。
- 雇用保険の基本手当受給中は特別支給が停止されるため、離職期間がある場合は事前に説明が必要。
9. 個別相談のご案内|社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士法人とうかいは、従業員数100名以上の中小企業を中心に、社会保険・年金・労務管理の包括的な支援を行っています。
「そろそろ定年を迎える従業員がいるが、年金手続きのサポートをどうすればよいか」「在職老齢年金の影響を考えて再雇用後の給与設定を見直したい」「加給年金の対象かどうか確認してほしい」など、年金に関するご相談に幅広く対応しています。
対応内容の例
- 特別支給の老齢厚生年金・老齢年金の受給額試算
- 在職老齢年金シミュレーションと賃金設計アドバイス
- 定年退職・再雇用に伴う社会保険手続き代行
- 年金請求書の作成サポート
- 社会保険労務士によるオンライン相談・訪問相談
社会保険・年金制度に関するご不明点は、ぜひ社会保険労務士法人とうかいへお気軽にご相談ください。
10. よくある質問(FAQ)
Q. 特別支給の老齢厚生年金はいつから受け取れますか?
A. 生年月日と性別によって異なります。 男性は昭和36年4月2日〜昭和44年4月1日生まれが61〜64歳、女性は昭和41年4月2日〜昭和49年4月1日生まれが61〜64歳で受け取れます。昭和44年4月2日以降生まれの男性・昭和49年4月2日以降生まれの女性は特別支給の対象外で、65歳から老齢厚生年金が支給されます。
Q. 自動的に受け取れるようになりますか?
A. いいえ、申請しなければ受け取れません。 支給開始年齢の誕生月の約3ヶ月前に日本年金機構から「年金請求書(事前送付用)」が届きますので、必要事項を記入して添付書類とともに年金事務所へ提出してください。申請なしに自動的に支給が始まることはありません。
Q. 働きながら特別支給の老齢厚生年金を受け取ることはできますか?
A. はい、受け取れますが、条件によっては一部または全額が停止される場合があります。 厚生年金加入の職場で働きながら受給する場合、「在職老齢年金」の仕組みにより、標準報酬月額と年金月額の合計が基準額(令和4年度以降47万円台)を超えると、超過分の2分の1が支給停止されます。国民年金のみ加入の自営業等の場合は停止されません。
Q. 特別支給の老齢厚生年金を受け取ると65歳以降の年金が減りますか?
A. いいえ、受け取っても65歳以降の老齢厚生年金の金額は変わりません。 特別支給は繰り上げ受給とは異なる制度であり、受給しても65歳以降の年金額が恒久的に減額されることはありません。なお、65歳以降の老齢厚生年金を繰り下げて増額することは可能ですが、特別支給を受給しながら65歳以降分の繰り下げを行う手続きは複雑なため、年金事務所または社会保険労務士に相談することを推奨します。
Q. 定年退職して失業給付を受けながら年金ももらえますか?
A. いいえ、雇用保険の基本手当(失業給付)を受給している期間は、特別支給の老齢厚生年金は支給停止されます。 基本手当の受給が終わった翌月から年金の停止が解除されます。どちらを優先するかは、基本手当の受給見込み額・期間と年金額を比較して判断することになります。個別のシミュレーションをご希望の場合は社会保険労務士にご相談ください。
Q. 国民年金にしか加入していない期間があります。受給できますか?
A. 特別支給の老齢厚生年金の受給には厚生年金保険の被保険者期間が1年以上必要です。 国民年金のみの期間については、受給資格期間(10年)の計算には含まれますが、厚生年金の被保険者期間そのものとしてはカウントされません。厚生年金保険の被保険者期間が合計1年未満の場合は、特別支給の老齢厚生年金は受け取れません。
Q. 特別支給の老齢厚生年金を受け取ると加給年金ももらえますか?
A. 条件を満たしていれば、加給年金も受け取れます。 厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あり、生計を維持している65歳未満の配偶者または18歳未満の子(障害がある場合は20歳未満)がいる場合に加算されます。加給年金は自動加算されないため、年金請求書への記載と添付書類の提出が必要です。
Q. 年金請求書が届かない場合はどうすればよいですか?
A. 最寄りの年金事務所にご連絡ください。 転居・改姓等により住所・氏名の変更が反映されていない場合や、通知書が届かなかった場合は、年金事務所に問い合わせれば書類の再送付や窓口での対応が可能です。また、年金の請求は支給開始年齢到達後であれば遅れて提出しても受理されますが、受給権の時効(5年)には注意が必要です。
Q. 会社の社会保険(厚生年金)に加入したまま特別支給を受けられますか?
A. はい、受け取れます。ただし在職老齢年金の仕組みにより、賃金と年金の合計が基準額を超える場合は一部停止されます。 厚生年金保険に加入しながら特別支給を受給することを「在職受給」といいます。会社に勤めている場合、事業主経由で年金事務所に届出が必要な場合もあるため、手続きは会社担当者に相談するか社会保険労務士にご確認ください。
まとめ
特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳へ段階的に引き上げられる際の経過措置として設けられた制度です。生年月日・性別によって支給開始年齢が61〜64歳と異なるため、まず自分(または従業員)がいつから受け取れるかを確認することが第一歩です。
忘れてならないポイントは「申請しなければ受け取れない」という点です。年金請求書が届いたら速やかに手続きを進めてください。また、在職中の方は在職老齢年金の基準額と自分の給与・年金額を照らし合わせ、受給額への影響を事前に把握しておくことが重要です。
定年前後の従業員を抱える経営者・人事担当者の方は、情報提供の仕組みづくりと賃金設計の見直しを早めに行うことをお勧めします。制度の詳細や個別のシミュレーションについては、社会保険労務士法人とうかいへお気軽にご相談ください。

この記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。在職老齢年金の基準額等は毎年度改定されます。最新の数値は日本年金機構・厚生労働省等の公式サイトでご確認ください。法令・制度は改正される場合があります。
監修・文責:社会保険労務士法人とうかい


