社会保険労務士法人とうかいが、「年収の壁・支援強化パッケージ」の制度内容と、マネーフォワード クラウド給与で必要な対応方法を解説します。2025年には年金制度改正法が成立し、106万円の壁撤廃に向けた大きな転換期を迎えています。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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- NHK「あさイチ」
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結論:「年収の壁」対応は2つのルートで管理し、マネーフォワードでは手当設定と加入判定の見直しが急務
年収の壁・支援強化パッケージとは、短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働ける環境を整えるため、令和5(2023)年9月27日に政府が決定した支援策です(全世代型社会保障構築本部決定)。2023年10月から運用が始まっています。

主な対応策は次の2つです。
| 壁の種類 | 対応策 | マネーフォワード給与での作業 |
|---|---|---|
| 106万円の壁 | 社会保険適用促進手当・キャリアアップ助成金 | 手当の支給項目設定(社保除外設定) |
| 130万円の壁 | 事業主証明による扶養継続 | 証明書類の給与明細・管理記録の活用 |
さらに、2025年6月に年金制度改正法が成立し、106万円の壁となっていた月額8.8万円の賃金要件が2028年6月までに廃止される方向が確定しました。企業側の準備が急がれます。
このセクションのポイント
- 年収の壁・支援強化パッケージは2023年10月から運用中
- 106万円の壁(賃金要件)は2028年6月までに廃止予定(令和7年年金制度改正法)
- マネーフォワード給与では「社会保険適用促進手当の設定」が最優先の作業
106万円の壁への対応:社会保険適用促進手当の設定方法
社会保険適用促進手当とは?
社会保険適用促進手当とは、事業主が短時間労働者の社会保険加入に伴う手取り減少を補うために支給する手当で、標準報酬月額の算定基礎から除外できる特例が設けられています。この特例はキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の申請期限である2026年3月31日まで有効です。
所得税の課税対象にはなりますが、社会保険料の計算基礎には含まれない点が特徴です。
マネーフォワード給与での設定手順
- 給与設定で「支給項目」を追加する:「社会保険適用促進手当」の支給項目を通常の基本給・諸手当とは別に作成します
- 社会保険料の算定対象から除外する設定をする:支給項目の設定で「社会保険料算定対象外」のフラグをオンにします(設定方法はマネーフォワード公式サポートページで確認してください)
- 所得税の課税対象は維持する:社会保険料の計算からは外れますが、所得税の課税所得には含まれます。源泉徴収の設定は変更不要です
- 月次の給与計算でミスなく反映する:支給項目を誤って社会保険算定に含めてしまうと、標準報酬月額が増加し保険料が増える逆効果になります
このセクションのポイント
- 社会保険適用促進手当は「社保除外・所得税課税あり」の特殊な設定が必要
- 2026年3月31日まで有効の時限措置(その後は後継のキャリアアップ助成金コースに移行)
- 設定後は必ず試算で社会保険料が手当分を除いて計算されているか確認する
130万円の壁への対応:事業主証明の管理
事業主証明の仕組み
繁忙期の残業等により一時的に年収が130万円超となった場合でも、「一時的な収入増加である」旨の事業主証明を添付することで、被扶養者認定を継続できます(原則として連続2回まで)。
必要書類:過去の課税証明書・給与明細書・雇用契約書 + 事業主証明書(厚生労働省の様式あり)
マネーフォワード給与での対応
事業主証明の処理は給与計算そのものへの影響はありませんが、以下の管理が重要です。
- 給与明細の保存・発行:事業主証明に添付する給与明細を正確に発行・保管する
- 従業員ごとの扶養状況の記録:証明を利用した年数(原則2回まで)を従業員ごとに把握しておく
- 通年での年収推移の把握:年収が継続的に130万円超となる場合は、社会保険への加入手続きが必要になるため、年収見込みの管理が実務上重要です
2025年改正法で変わる「年収の壁」の今後
令和7(2025)年年金制度改正法(2025年6月13日成立)により、社会保険適用の要件が以下のスケジュールで変わります。
企業規模要件の段階的撤廃(現行:51人以上):
- 2027年10月:36人以上
- 2029年10月:21人以上
- 2032年10月:11人以上
- 2035年10月:10人以下(全企業・完全撤廃)
月額8.8万円の賃金要件:2028年6月までに廃止(最低賃金の引上げ状況次第)
これにより、今後数年以内に従来「106万円の壁」の対象外だった企業でも、短時間労働者の社会保険加入が必要になります。あらかじめ従業員の就労状況と人件費への影響を試算しておくことを推奨します。
このセクションのポイント
- 2027年〜2035年にかけて全企業へ社会保険適用が段階的に拡大
- 賃金要件(月8.8万円)は2028年6月までに廃止予定
- 今のうちから短時間労働者の加入影響シミュレーションを行っておく
社会保険労務士法人とうかいからのアドバイス
- キャリアアップ助成金の期限を見落とさない:社会保険適用時処遇改善コースは2026年3月31日が対象終了期限です。まだ申請していない場合は今すぐ取り組みを開始してください。助成額は1人あたり最大50万円です。
- 2027年10月の企業規模拡大を先取りして準備する:現在51人以下の企業でも、2027年10月には36人以上で適用が拡大します。今から就業規則・給与設定の見直しを始めてください。
- パート・アルバイトの雇用契約書を整備する:年収の壁対応・扶養認定・加入判定のいずれも雇用契約書の内容が判断の基準となります。記載内容(週所定労働時間・所定内賃金)が実態と合っているか確認してください。

よくある質問(FAQ)
社会保険適用促進手当は2026年以降も支給できますか?
手当そのものは2026年4月以降も支給できますが、標準報酬月額の算定基礎から除外できる特例は2026年3月31日で終了します。
2026年4月以降は後継のキャリアアップ助成金コース(短時間労働者労働時間延長支援コース)の対象要件を確認してください。
106万円の壁の月額8.8万円はいつから廃止されますか?
令和7(2025)年年金制度改正法により「2028年6月までに廃止」と定められていますが、具体的な廃止日は今後の最低賃金の引き上げ状況によって決まります。
確定次第、厚生労働省から公表される予定です。
現在51人未満の会社は今は対応不要ですか?
社会保険の強制適用は現在51人以上が対象ですが、2027年以降に段階的に拡大します。
51人以下でも任意で短時間労働者を社会保険に加入させることは可能であり、キャリアアップ助成金の対象にもなります。
まとめ
年収の壁への対応でマネーフォワード クラウド給与において最優先すべきは、社会保険適用促進手当の正しい支給項目設定(社保除外設定)です。2025年の法改正で106万円の壁は段階的に撤廃方向へ向かっており、今から従業員の就労状況の整理と将来の人件費シミュレーションを進めることを推奨します。ご不明な点は社会保険労務士法人とうかいにご相談ください。
監修:社会保険労務士法人とうかい 社会保険の適用拡大・年収の壁対応・キャリアアップ助成金申請を専門的にサポートしています。
参考資料
- 厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ:https://www.mhlw.go.jp/stf/taisakupackage_15627.html
- 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト:https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/

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