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コラム

男性の育児休業取得義務化は強制?企業の対応義務とメリットを解説

男性の育休取得が義務化されたと聞き、従業員は強制的に休まなければならないのか、企業は何をすべきかと疑問に思うかもしれません。 しかし、この義務化は従業員個人に取得を強制するものではなく、企業側に男性が育児休業を取得しやすい環境を整えることを義務付けるものです。 この記事では、法改正によって企業に課された義務の内容や、男性が利用できる育休制度についてわかりやすく解説します。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

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男性の育休取得は義務ではない!企業に課された3つの義務とは

男性の育児休業取得は、あくまで従業員の権利であり、義務ではありません。 法改正の目的は、男女問わず育児休業を取得しやすい社会を実現することにあります。 その実現のため、企業には「職場環境の整備」「個別の制度周知と取得意向の確認」「育休取得状況の公表」をはじめとする複数の義務が課せられました。これらは、従業員が育休取得をためらうことなく、安心して申し出られる環境を作るための措置です。

【2022年~】育児・介護休業法の改正で企業に義務化されたこと

2022年4月1日から段階的に施行された育児・介護休業法の改正により、企業には男性の育児休業取得を促進するための新たな義務が課されました。 厚生労働省が主導するこの改正は、男女がともに仕事と育児を両立できる社会を目指すものです。
具体的には、育休を取得しやすい職場環境の整備、従業員への個別周知と意向確認、そして大企業における取得状況の公表が義務付けられました。 いつから何が義務化されたのかを正しく理解し、適切な対応が求められます。

法改正によって何が義務化されたのでしょうか?

義務①:育休を取得しやすい職場環境を整える

企業は、男性従業員が育児休業をためらうことなく取得できるよう、職場環境を整備する義務があります。 具体的な措置として、育休に関する研修の実施、相談窓口の設置、自社内での男性育休取得事例の収集と提供、育休制度や取得促進方針の周知、という4つの選択肢が示されています。 企業は、これらのうち少なくとも1つを実施しなければなりません。
例えば、育休に関する手続きや給付金についてまとめた社内マニュアルを作成して配布したり、人事部に専門の相談担当者を配置したりといった対応が考えられます。

義務②:本人や配偶者の妊娠・出産を申し出た社員への個別周知と意向確認

従業員本人またはその配偶者が妊娠出産した旨を申し出た際に、企業はその従業員に対して個別に対応する義務があります。 具体的には、育児休業や産後パパ育休に関する制度の内容、休業の申し出先、育児休業給付金、休業期間中の社会保険料の取り扱いといった情報を個別に知らせなければなりません。 その上で、対象の従業員が育児休業の取得を希望するかどうかの意向を確認する必要があります。
この意向確認は、面談や書面交付などの方法で行い、取得を強制したり、取得しないよう働きかけたりすることは認められていません。

義務③:【従業員1000人超】男性の育休取得状況を公表する

常時雇用する従業員が1000人を超える企業は、男性の育児休業取得状況を年に1回公表することが義務付けられています。 公表する内容は、「男性の育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」のいずれかです。
この公表は、自社のウェブサイトや厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」など、一般の人が容易に閲覧できる方法で行う必要があります。
この義務は、企業の育児支援への取り組みを外部に示し、社会全体で男性の育休取得を後押しする雰囲気を作ることを目的としています。

【2025年4月~】法改正による企業の義務の変更点

育児介護休業法は段階的に改正されており、2025年4月1日からは企業の義務がさらに拡大されます。 これまでの法改正に加えて、より多くの中小企業が男性の育休取得促進に取り組むことを目的とした変更が加えられます。
具体的には、育休取得状況の公表義務の対象企業が拡大されるほか、新たに対象となる企業には育休取得率の目標設定などが義務付けられます。 企業はこれらの変更点に対応するため、事前の準備が必要です。

育休取得状況の公表義務が従業員300人超の企業へ拡大

2025年4月1日から、男性育休取得状況の公表義務の対象が、現行の「常時雇用する従業員1,000人超」の企業から「従業員300人超」の企業へと拡大されます。 これにより、これまで対象外だった多くの中堅企業も、年に1回、男性の育休取得率などを自社のウェブサイトなどで公表する必要が生じます。
公表内容は現行の義務と同様に、「男性の育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。 対象となる企業は、取得率の算出方法を確認し、公表に向けた準備を進めなければなりません。

男性が利用できる育休制度の種類と特徴

男性従業員が利用できる育児休業制度は、大きく分けて2種類あります。 一つは2022年10月から始まった「産後パパ育休(出生時育児休業)」で、もう一つは以前からある「育児休業」です。 産後パパ育休は子の出生直後の時期に柔軟に取得できる制度で、従来の育児休業とは別に利用できます。
男性の育休取得を促進するため、これらの制度は併用や分割取得が可能になっており、家庭の状況に合わせた多様な働き方を選択しやすくなっています。

男性が利用できる育休制度について解説します。

産後パパ育休(出生時育児休業)の概要と申請期限

産後パパ育休(出生時育児休業)は、子の出生後8週間以内に最大4週間まで取得できる制度です。 この期間は、母親の心身の負担が特に大きい時期であり、男性が育児に参加しやすくなるよう創設されました。 大きな特徴は、取得可能期間内であれば、初めにまとめて申し出ることで2回に分割して取得できる点です。 例えば、「出産直後に2週間、退院後に2週間」といった柔軟な休み方が可能です。 申請は原則として休業開始の2週間前までに行う必要がありますが、労使協定で定めれば1か月前までとすることも可能です。

従来の育児休業との違いは?分割取得や併用も可能

従来の育児休業は、原則として子どもが1歳になるまで(最長で2歳まで延長可能)取得できる制度です。 法改正により、こちらも2回まで分割して取得できるようになりました。 産後パパ育休との主な違いは、対象期間の長さと申請期限です。 産後パパ育休は子の出生後8週間以内が対象ですが、育児休業は1歳になるまでと長期です。
この2つの制度は併用が可能で、例えば産後パパ育休を2回、育児休業を2回、合計で最大4回に分けて休業することもできます。 これにより、夫婦で交代しながら育児にあたるなど、より柔軟な計画を立てられます。

育休中に受け取れる出生時育児休業給付金の計算方法

産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した場合、雇用保険から「出生時育児休業給付金」が支給されます。 支給額の計算方法は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」が基本です。 休業開始時賃金日額とは、原則として育休開始前6か月間の賃金を180で割った額を指します。
ただし、この賃金日額や支給額には上限が設けられています。 また、休業中に会社から給料が支払われる場合、その金額によっては給付金が減額されたり、支給されなかったりすることがあるため、事前に会社の担当部署に確認することが重要です。

育休期間中の社会保険料は免除される?

育児休業期間中は、従業員本人と企業が負担する社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除されます。 免除を受けるためには、事業主が日本年金機構へ「育児休業等取得者申出書」を提出する必要があります。 免除の対象となるのは、育休を開始した月から終了した月の前月までです。 また、月の末日が育休期間中である場合に加えて、同じ月内で14日以上の育休を取得した場合もその月の保険料が免除されます。
これにより、休業中の経済的負担が軽減され、従業員は安心して育児に専念できます。

企業が男性の育休取得を推進する3つのメリット

法改正に対応することは企業の義務ですが、男性の育休取得を積極的に推進することは、単なるコンプライアンス遵守にとどまらず、企業経営に多くのメリットをもたらします。 従業員の働きやすい環境を整備することで、企業の社会的評価が高まり、優秀な人材の確保や定着につながります。 ここでは、企業が男性の育休取得を推進することで得られる代表的な3つのメリットについて解説します。

企業のイメージアップと人材獲得力の強化につながる

男性の育児休業取得を積極的に支援する姿勢は、「従業員のワークライフバランスを重視する企業」として社会的に高く評価されます。 特に近年、就職活動を行う学生や転職を考える求職者は、給与や待遇だけでなく、働きやすさや企業の価値観を重視する傾向が強まっています。
育休取得率の高さや充実した両立支援制度を公表することは、企業の魅力的なアピールポイントとなり、採用競争において優位に立てます。結果として、多様で優秀な人材の獲得につながり、企業の持続的な成長の基盤となります。

従業員のエンゲージメントが向上し離職率が低下する

育児休業を取得しやすい職場環境は、従業員が会社から大切にされていると感じるきっかけとなり、組織への信頼感や愛着を高める効果があります。 男性従業員が育児というライフイベントを大切にしながらキャリアを継続できることは、仕事へのモチベーション維持にもつながります。
結果として、育児を理由とした優秀な人材の離職を防ぎ、定着率の向上に貢献します。 組織全体の一体感が醸成され、生産性の向上も期待できるでしょう。

両立支援等助成金を活用してコストを抑えられる

国は、従業員の仕事と育児の両立支援に積極的に取り組む企業を後押しするため、さまざまな助成金制度を用意しています。 その代表例が「両立支援等助成金」です。 この助成金にはいくつかのコースがあり、例えば「出生時両立支援コース」では、男性従業員が育児休業を取得しやすい職場風土づくりに取り組み、実際に育休を取得した場合に事業主へ助成金が支給されます。
こうした制度を活用することで、代替要員の確保にかかる費用などを補い、コストを抑えながら男性の育休取得を推進できます。

男性育休推進は、採用ブランディングによる優秀な人材確保、エンゲージメント向上に伴う離職防止、助成金活用によるコスト抑制といった、多面的な経営メリットをもたらします。

男性の育児休業取得義務化に関するよくある質問

男性の育児休業取得に関する制度は多岐にわたり、その内容から多くのご質問が寄せられます。 特に、従業員が休業を申し出た場合に企業がそれを認めなければならないのか、企業が環境整備などの義務を怠った場合にどうなるのか、といった個別のケースに関する問題は、当事者にとって重要です。
ここでは、男性の育児休業取得に関する制度に関して頻繁に寄せられる質問とその回答をまとめました。 具体的な疑問を解消し、制度への正しい理解を深めるためにお役立てください。

会社から育休取得を打診された場合、断ることはできますか?

はい、断ることは可能です。 育児休業の取得は労働者に与えられた権利であり、義務ではありません。

会社が行う意向確認は、あくまで育休制度の利用を促すためのものであり、取得を強制するものではないため、本人の意思で取得しないことを選択できます。

企業が育休取得の意向確認を怠った場合、罰則はありますか?

意向確認を怠ったこと自体に直接的な罰則規定はありません。

しかし、育休を取得させないといった不利益な取り扱いは法律で禁止されています。 また、環境整備義務などに違反した場合、行政による助言や指導、勧告の対象となり、勧告に従わなければ企業名が公表される可能性があります。

パートや契約社員など有期雇用の従業員も育休の対象になりますか?

はい、一定の要件を満たせば有期雇用の従業員も対象です。

以前は「継続雇用期間が1年以上」という取得要件がありましたが、法改正で撤廃されました。 現在は「子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないこと」が主な要件となります。

「産後パパ育休」と「通常の育児休業」は何が違うのですか?

産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に最大4週間取得できる制度です。

通常の育休と異なり、2回に分割して取得でき、さらに労使協定があれば休業中に一部就業することも可能です。

育休取得を理由に、昇進から外れたり減給されたりするのは違法ですか?

明確に違法(不利益取り扱いの禁止)です。

育休の取得を理由とする解雇、降格、減給、賞与の不当な削減などは、育児・介護休業法で固く禁じられています。

まとめ

男性の育児休業取得義務化とは、従業員個人に取得を強制するものではなく、企業に対して育休を取得しやすい環境整備や個別周知、意向確認などを義務付けるものです。

2022年から始まったこの動きは、2025年には対象企業が拡大されるなど、段階的に強化されています。
企業は法改正の内容を正しく理解し、就業規則の見直しや相談窓口の設置といった対応が求められます。

制度を適切に運用することは、企業のイメージ向上や人材確保にもつながるため、労使双方にとって重要です。

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