教育訓練休暇給付金は、2025年10月から開始された新しい雇用保険の給付制度です。 働きながら主体的に学び直し(リスキリング)を行う労働者を支援することを目的としています。
この記事では、新制度の対象となる人や受給条件、支給額、申請方法、他の制度との併用について詳しく解説します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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教育訓練休暇給付金とは?2025年10月から開始された新制度をわかりやすく解説
教育訓練休暇給付金とは、労働者が自発的に教育訓練を受けるために無給の休暇を取得した際に、その間の生活費を支援するために国から支給される給付金です。
2025年10月1日から施行されるこの制度は、在職中の労働者がキャリアアップや新しいスキルの習得を目指し、長期の訓練に専念しやすくなる環境を整えることを目的としています。

制度が創設された背景|リスキリングによるキャリアアップ支援が目的
この制度が創設された背景には、デジタル化や産業構造の急速な変化があります。 変化に対応するため、労働者が自らのキャリアを主体的に考え、必要なスキルを習得する「リスキリング」の重要性が高まっています。
従来の制度では訓練費用の補助が中心でしたが、休暇中の生活費を保障することで、より多くの労働者が安心して長期間の学びに挑戦できるよう、経済的な支援を強化することが目的です。
従来の「教育訓練給付金」との主な違い|目的と支援対象を比較
従来の教育訓練給付金制度は、受講にかかった費用の一部を補助することが主な目的で、「専門実践」「特定一般」「一般」の3種類があります。 これに対し、新設される教育訓練休暇給付金は、訓練受講のために取得した「休暇期間中の生活費」を支援する点が最大の違いです。
費用の補助ではなく、生活保障に焦点を当てることで、労働者が離職せずにスキルアップに専念できる環境を提供します。
教育訓練休暇給付金で支給される金額と期間の目安
教育訓練休暇給付金を利用する上で、支給される具体的な金額や期間は重要なポイントです。 給付額は離職時に受け取る失業手当(基本手当)に相当する額が目安となり、受給できる期間には上限が設けられています。
ここでは、給付額の計算方法と支給対象となる日数について解説します。
給付額の計算方法|離職前の賃金の50%が目安
給付額は、原則として休暇を取得する前の6ヶ月間に毎月支払われた賃金総額をもとに算出される「基本手当の日額」と同等の金額です。 これは、離職した場合に受け取る基本手当の水準であり、賃金日額のおよそ50%〜80%に相当します。
給付率は年齢によって異なり、45歳未満は66%、45歳以上60歳未満は80%などが適用される見込みです。 ただし、支給額には上限が設定されます。
給付を受けられる日数|
教育訓練休暇給付金を受け取れる日数は、雇用保険の被保険者期間に応じて90日、120日、150日のいずれかとなります。例えば、2ヶ月(約60日)の休暇を取得した場合は、その期間分が支給の対象となる可能性があります。この給付金は、休暇開始日から1年以内の教育訓練休暇に対して支給されます。
ただし、妊娠・出産・育児などの理由で30日以上教育訓練を受けられない場合、ハローワークに申し出ることで、最大4年以内の教育訓練休暇について受給期間を延長できる場合があります。
【チェックリスト】あなたが教育訓練休暇給付金の対象者か確認しよう
教育訓練休暇給付金を受給するには、いくつかの要件を満たす必要があります。 主な条件として、雇用保険の加入期間や取得する休暇の種類、受講する訓練内容が定められています。 受給資格に直接的な年齢制限はありません。 以下の項目で、自身が対象者となるかを確認していきましょう。
条件1:雇用保険に5年以上加入していること
給付金を受給するための基本的な条件は、教育訓練休暇の開始日までに、同一の事業主の下での雇用か否かを問わず、雇用保険の被保険者期間が通算して5年以上あることです。 ただし、制度開始後の経過措置として、当分の間はこの期間が3年以上に緩和される予定です。
過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合は、その後の加入期間が一定年数必要になる場合があります。
条件2:30日以上の無給の教育訓練休暇を取得すること
勤務先の就業規則などに定められた教育訓練休暇制度を利用し、30日以上のまとまった休暇を取得することが必要です。 この休暇期間中は、会社から賃金が支払われない「無給」であることが条件となります。
そのため、有給休暇を取得して訓練を受ける場合や、企業が給与を支払いながら実施する研修は対象外です。 事前に自社の休暇制度を確認しておく必要があります。
条件3:対象となる教育訓練を受講すること
受講する教育訓練は、厚生労働大臣が指定した講座でなければなりません。 具体的には、専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練のうち、情報関係や大学院の修士・博士課程、専門学校の課程などが対象となる見込みです。 キャリアコンサルタントとの相談を通じて作成したキャリアプランに基づき、自身の目指すキャリアに適した講座を選ぶことが求められます。
教育訓練休暇給付金の申請から受給までの4ステップ
教育訓練給付金を利用するには、勤務先への相談から始め、ハローワークでの正式な手続きが必要です。申請には複数の書類が必要となり、受講開始日の2週間前までにハローワークで受給資格確認の手続きを完了させる必要があります。
ここでは、申請から給付金を受け取るまでの具体的な流れを4つのステップに分けて解説します。

ステップ1:勤務先の就業規則を確認・相談する
まず、自身の勤務先に「教育訓練休暇制度」が導入されているかを確認します。 この制度が就業規則に規定されていなければ、給付金を利用することはできません。 制度がある場合は、取得の条件や社内での申請フローを確認し、上司や人事部に休暇取得の意向を相談します。
制度がない場合は、導入を働きかけることから始める必要があります。
ステップ2:受講する教育訓練を決定する
次に、ハローワークなどでキャリアコンサルティングを受け、自身のキャリアプランを明確にします。 そのプランに基づき、受講する教育訓練講座を決定します。 対象となるのは、専門実践教育訓練や特定一般教育訓練など、厚生労働大臣が指定した講座に限られます。
デジタルスキルや専門職大学院など、特別な知識・技能の習得につながる講座が中心となります。
ステップ3:ハローワークで申請手続きを行う
受講する講座が決まったら、住所地を管轄するハローワークで受給資格の確認手続きを行います。この手続きは、原則として受講開始予定日の前日から起算して2週間前までに行う必要があります。
申請には、本人確認書類や雇用保険被保険者証、キャリアコンサルティングの結果などの提出が求められます。
ステップ4:休暇を取得し訓練を受講、給付金が支給される
教育訓練給付金は、訓練の受講修了後にハローワークへ支給申請を行うことで受け取れます。原則として、ハローワークが指定する日に、失業認定と同様の手続きを経て、指定した金融機関の口座に振り込まれる仕組みです。
利用前に知っておきたい教育訓練休暇給付金の注意点
教育訓練休暇給付金はキャリアアップに役立つ制度ですが、利用する際にはいくつかの注意点を理解しておく必要があります。 特に、将来の失業手当(基本手当)の受給資格に影響を及ぼす可能性がある点は、労働者にとって重要な確認事項です。
また、企業側にも制度導入にあたって必須となる手続きがあります。
利用者の注意点:失業手当(基本手当)の受給に影響が出る
可能性がある この給付金を受給した場合、その算定基礎となった雇用保険の被保険者期間は、次の給付(失業手当など)の受給要件となる期間としてカウントされないことがあります。
したがって、期間が再設定される場合があるため、給付金受給後に離職して失業手当を受け取るには、改めて受給要件を満たす期間の加入が必要となる場合があります。2回目の利用や将来の万一の失業に備え、この点は慎重に検討すべきです。
企業の注意点:制度導入には就業規則の改定が必須
従業員が教育訓練休暇給付金を利用するための大前提として、企業が教育訓練休暇制度を就業規則に定め、所轄の労働基準監督署に届け出ている必要があります。 制度がなければ、従業員は給付金の申請ができません。
そのため、従業員のリスキリング支援を検討する企業は、まず就業規則の改定と整備から着手することが不可欠です。
【企業担当者向け】教育訓練休暇給付金制度を導入するメリット
従業員が教育訓練休暇給付金を利用できる環境を整えることは、企業にとっても多くのメリットをもたらします。
従業員の自律的な学びを支援することで、組織全体のスキルレベルが向上し、企業の競争力強化につながります。
また、人材育成に積極的な企業として、従業員満足度の向上や人材の定着も期待できます。

従業員のスキルアップによる生産性向上
従業員が専門的な知識や最先端のスキルを習得することは、個人の能力向上だけでなく、組織全体の生産性向上に直接貢献します。 特にDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)といった変化の激しい分野において、従業員が主体的に学び続ける環境は、企業の持続的な成長を支える基盤となります。
キャリア自律の支援によるエンゲージメント向上と離職防止
従業員一人ひとりのキャリアプランを尊重し、その実現を支援する制度を設けることは、従業員の会社に対する満足度や愛着(エンゲージメント)を高めます。 自身の成長とキャリアの展望を描ける職場環境は、優秀な人材の流出を防ぎ、長期的な人材定着につながる重要な要素です。
他の助成金(人材開発支援助成金など)と併用できる可能性
企業が教育訓練休暇制度を導入し、従業員の学びを支援する際には、「人材開発支援助成金」をはじめとする他の公的支援制度を併用できる可能性があります。 例えば、訓練経費の一部や、代替要員の確保にかかる費用などの助成を受けることで、企業の経済的負担を軽減しながら、効果的な人材育成施策を展開できます。
教育訓練休暇給付金制度とはに関するよくある質問
2025年10月から始まる新しい制度であるため、多くの疑問が寄せられています。 例えば、雇用保険の加入期間が1年や2年の場合は対象になりませんが、当分の間は3年以上あれば対象になる可能性があります。 ここでは、パートタイマーの利用可否や講座の組み合わせなど、特によくある質問とその回答をまとめました。
パートやアルバイトでも利用できますか?
雇用保険に加入し、被保険者期間が5年以上(当分の間は3年以上)などの支給要件を満たしていれば、パートやアルバイトといった雇用形態に関わらず利用できます。
育児休業給付金などと同様、正規雇用者だけでなく、多様な働き方をする労働者が対象となる制度です。
複数の講座を組み合わせて30日以上の休暇を取得しても対象になりますか?
キャリアプランに基づいた一連の訓練と認められれば、複数の講座を組み合わせて30日以上の休暇を取得した場合も対象となる可能性があります。
ただし、個別のケースによって判断が異なるため、事前にハローワークへ相談し、計画している訓練内容が給付金の対象となるかを確認することが不可欠です。
勤務先に制度がない場合、どうすれば利用できますか?
勤務先に教育訓練休暇制度が導入されていない場合、この給付金を利用することはできません。
利用を希望する際は、まず人事部や労務担当者、労働組合などに制度導入を相談することが第一歩です。 従業員と企業双方のメリットを伝え、導入を働きかける必要があります。
まとめ
教育訓練休暇給付金は、2025年10月から始まる、労働者の主体的なリスキリングを経済的に支援する制度です。給付額は賃金の一定割合とされており、専門性を高める良い機会となります。
この制度を有効活用するには、利用者が条件を正しく理解するとともに、企業側が就業規則を整備し、従業員の学びを後押しする環境を整えることが求められます。



