PayPayが厚生労働大臣から「給与デジタル払い」対応事業者の指定を受けました。これにより、PayPayでの給与受け取りが可能となります。実際に、ソフトバンクグループ傘下の10社では、9月分の給与からPayPayでの給与受け取りに対応しました。PayPayは日本国内で広く利用されているデジタル決済プラットフォームで、利用したことがある方も多いのではないでしょうか。
電子マネー決済を行う人が増えている昨今において、デジタル給与払いの注目度は今後高まっていく可能性があります。
今回は、PayPayでデジタル給与払いを導入する際の注意点について、事業主と労働者それぞれの視点から解説します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
- NHK「あさイチ」
- 中日新聞
- 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
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デジタル給与払いの基本情報
労働基準法において、給与の支払いは原則として通貨(現金)で行うことが定められています。しかし、2023年4月に労働基準法の改正省令が施行され、労働者の同意を得た場合に、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座に対する給与支払い(デジタル払い)が可能となりました。資金移動業者への給与支払いが実際に可能になったのは2024年以降です。
デジタル給与払いを利用する際には、まずは事業主と労働者間で労使協定を結ぶ必要があります。労使協定を締結したあとは、「デジタル払いを希望する労働者」に対してのみ、給与のデジタル払いが可能です。

PayPayで給与デジタル払いをするメリット(事業主側)
事業主側のデジタル払いによるメリットを解説します。給与デジタル払いを導入すれば、労働者の多様な決済手段や送金手段に対応できるメリットがあります。以下で、給与デジタル払いを導入したときの事業主側のメリットを解説します。
手数料負担を抑えられる
デジタル払いをすると、振込手数料を銀行振込よりも抑えられる可能性があります。金融機関によって差がありますが、手数料を抑えられればコスト削減効果を得られるでしょう。
雇用している労働者が多いほど振込手数料の負担は重くなるため、よりデジタル給与を導入するメリットが大きいといえます。
企業イメージの向上や雇用機会の増加に つながる可能性がある
デジタル給与の導入は、企業イメージの向上やそれに伴う雇用機会の増加につながる可能性があります。求職者へ「革新的な取り組みを行っている企業」「時代の変化に対応できる企業」という印象を与えられれば、関心を引き付けられ、優れた人材の採用につながるかもしれません。
また、滞在期間の関係で銀行口座を開設できない外国人労働者へ給与を支払う手段として活用すれば、優れた技能や知識を持つ外国人労働者の採用につなげられるでしょう。
PayPayで給与デジタル払いをするメリット(労働者側)
労働者側のデジタル払いによるメリットを解説します。事業主だけでなく、労働者側も給与デジタル払いによるメリットを受けられます。以下で、具体的に考えられるメリットを解説します。
チャージの手間を省いて すぐに決済できる
普段から決済手段としてPayPayを利用している労働者は、給与として振り込まれれば「銀行口座からPayPayの残高にチャージする」という手間を省けます。決済に関する利便性が高まるため、日頃からPayPayを利用している労働者ほどメリットは大きいでしょう。また、銀行窓口やATMに行く回数を減らせれば、振込手数料やATM手数料を節約できるメリットも期待できます。
資金管理しやすくなる
PayPayはリアルタイムで残高を確認できるため、資金管理が容易になります。PayPayはスマートフォンから24時間365日、残高をチェックできます。不正利用の被害を受けたとしても、すぐに気づけるでしょう。また、生活費決済用のお金をPayPayにチャージし、貯蓄用のお金を銀行口座に貯めれば計画的な貯蓄を行えます。有効活用すれば、効率的な資産形成にも寄与してくれるでしょう。

経営視点のアドバイス
PayPayでの給与デジタル払いは、口座からのチャージやATMの手間・手数料を省き即座に決済できるほか、残高をリアルタイムで確認でき計画的な資金管理に役立ちます。
PayPayで給与デジタル払いをするデメリット(事業主側)
事業主側のデジタル払いによるデメリットを解説します。PayPayで給与デジタル払いをするメリットがある一方で、知っておくべきデメリットもあります。以下で、具体的なデメリットについて解説します。
導入にあたって手間がかかる
デジタル給与払いを導入するためには、労働組合との労使協定が必要です。労働組合がない企業では、労働者の過半数代表者との間で合意を得る必要があります。また、各労働者の希望をヒアリングする必要があるため、導入にあたって手間がかかる点はデメリットです。
給与関係の事務負担が増える
給与支払いに関する振込手数料を抑えられる一方で、給与関係の事務負担は重くなります。労働者ごとに「従前どおり銀行振り込み」「デジタル払い」「デジタル払いと銀行払いの併用」が異なり、それぞれの希望を踏まえて給与支払いを行う必要があるためです。出典:厚生労働省「賃金のデジタル払いが可能になります!」
また、途中で受け取り方法を希望する労働者がいる場合は、さらに事務負担が生じます。人事や経理部門の事務負担が増加する恐れがある点は、デジタル払いのデメリットといえるでしょう。
PayPayで給与デジタル払いをするデメリット(労働者側)
労働者側のデジタル払いによるデメリットを解説します。労働者側も、給与をデジタル払いで受け取る際に注意すべき点やデメリットがあります。

デメリットについて解説します。
口座の上限額は 20万円と決まっている
厚生労働省の指針ではデジタル給与の口座上限は100万円までとされていますが、PayPayのサービス(PayPay給与受取)において保有できる給与残高の上限額は「20万円」に設定されています。 なお、給与のうちPayPayで受け取れる金額の上限は20万円です。20万円を超える場合、超えた分は銀行口座へ出金される仕組みとなっています。
一般的な口座とは異なり上限が設けられており、毎月20万円以上PayPayで決済する方にとっては、枠が物足りなく感じる可能性があります。
振込手数料がかかる
PayPayから銀行口座へ出金する際、PayPay給与受取を利用中で、PayPayマネー(給与)を含む本人名義の銀行口座への送金は、月1回まで手数料無料で利用できます。2回目以降のPayPayマネー(給与)を含む送金、およびPayPayマネー(給与)が含まれない送金については、PayPay銀行宛への送金は回数に関わらず手数料無料です。PayPay銀行以外の金融機関宛の場合は100円の手数料がかかります。
なお、PayPay銀行では、給与受け取りを利用している場合、他の金融機関宛の振込手数料が月3回まで無料になる特典を提供しています。この特典はPayPay残高からの送金手数料には適用されません。
システム障害が起こると決済できない
PayPayは便利な決済手段ですが、PayPayでシステム障害が起こると機能が失われてしまう恐れがあります。特に、キャッシュレス決済に伴って現金を持ち歩かなくなった方は要注意です。
PayPay側も障害が起きないような体制を整えていますが、リスクを完全に排除することはできません。そのため、万が一の事態に備えてPayPay以外の決済手段を用意することが重要と言えるでしょう。
事業主がPayPayで給与を支払う方法
事業主がPayPayで給与を支払う方法を解説します。事業主がPayPayで給与を支払うためには、以下のような手順を踏んで手続きを進める必要があります。労使協定を締結する就業規則の改定・届出を行う従業員への周知と個別のヒアリングを行う希望者から同意書を提出してもらう給与のデジタル払いが開始されるデジタル給与払いの環境を整備するためには、まず労使協定を締結したうえで就業規則の改定と届出を行う必要があります。また、労働者への周知と合わせて給与の受け取り方法をヒアリングしましょう。
デジタル払いを希望する労働者からは同意書を提出してもらい、書面で保存しておくと安心です。大矢の経営視点のアドバイスデジタル給与払いを導入するためには、就業規則の改定や届出など、煩雑な業務が発生します。必要に応じて社会保険労務士に依頼すれば、スムーズに導入を進められるでしょう。
労働者がPayPayで給与を受け取る手順
労働者がPayPayで給与を受け取る手順を解説します。労働者がPayPayで給与を受け取るためには、まず自身のPayPayアカウントを作成しなければなりません。PayPayのアプリ内に表示されるミニアプリの中にある「PayPay給与受取」から申し込みを進めると、入金用の口座番号が付与されます。
口座番号は、PayPayがPayPay銀行と契約したうえで自動的に紐づけられます(労働者がPayPay銀行で口座開設を行う必要はない)。労働者が勤務先に口座番号を伝え、勤務先が当該口座へ給与を振り込むと、PayPayのアカウントに表示される流れです。
PayPayで安全に給与支払い・受け取りができる?
PayPayのセキュリティ対策は強固で、安心して利用できると考えて差し支えありません。24時間365日体制での不正検知や2要素認証など、不正利用を防ぐための仕組みが整備されています。また、いつでも相談できるカスタマーサポート窓口も24時間365日利用でき、万が一不正利用の被害に遭っても全額が補償されます。
厚生労働大臣から認可を受けていることで、一定の安心感は担保されていると考えて問題ないでしょう。
しかし、ユーザー側もセキュリティ意識を持つことが重要です。定期的なパスワード変更や、不審なリンクをクリックしないなどの基本的なセキュリティ対策を守れば、安心して給与受け取り口座として利用できるでしょう。

よくあるご質問
ここではよくあるご質問をご紹介します。
デジタル給与払いとはなんですか?
労働基準法で定められた原則である通貨(現金)払いの例外として、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座(スマホ決済アプリや電子マネー口座など)へ給与を振り込むことです。
2023年4月に制度が解禁され、PayPayも厚生労働大臣の指定を受けています(PayPayが指定を受けたのは2024年8月9日です)。デジタル給与払いを導入するには、事前に事業主と労働者間で労使協定を締結する必要があります。デジタル払いは、「希望する労働者」に対してのみ可能です
事業主がPayPayでデジタル給与払いを導入する際のメリットと必要な対応を教えてください。3:事業主がPayPayでデジタル給与払いを導入する際のメリットと必要な対応を教えてください。
メリットは振込手数料の削減や企業イメージの向上です。対応として労使協定の締結や就業規則の改定が必要です。 銀行振込よりも手数料を抑えられる可能性があり、コスト削減につながります。
また、革新的な企業としてイメージが向上し、外国人労働者を含む多様な人材の採用につながる可能性もあります。企業の対応:導入にあたっては、労働組合(または労働者の過半数代表者)との労使協定の締結、就業規則の改定・届出が必須です。さらに、従業員への周知と個別のヒアリングを行い、デジタル払いを希望する労働者から同意書を提出してもらい、書面で保存する必要があります。労働者の同意なく強制することは労働基準法違反となるため注意が必要です。
労働者がPayPayで給与を受け取るメリットはなんですか?
銀行口座からのチャージの手間が省け、すぐに決済に利用できます。また、アプリでリアルタイムに残高を確認でき、資金管理が容易になります。
日頃からPayPayを利用している労働者にとっては、銀行窓口やATMに行く手間や手数料を節約でき、決済の利便性が大幅に高まります。また、24時間365日スマートフォンから残高を確認できるため、計画的な資金管理や貯蓄にも役立てられます。
PayPayで受け取れる給与の金額に上限はありますか?
PayPayで給与を受け取る場合、保有できる残高の上限額は20万円です。この上限額を超過した分は、事前に登録した銀行口座へ手数料無料で自動送金されます。
PayPayマネーの残高上限は通常100万円ですが、PayPay給与受取を利用するユーザーのPayPayアカウント全体の保有上限は、PayPayマネーが80万円、PayPayマネー(給与)が20万円とされています。
デジタル給与払いを導入することで、事業主側の事務負担は増えますか?
はい、給与関係の事務負担は増加する可能性があります。 労働者ごとに「銀行振込」「デジタル払い」「デジタル払いと銀行払いの併用」の希望が異なるため、それぞれに合わせて給与支払いを行う必要があり、事務が煩雑になります。
また、途中で受け取り方法の変更を希望する労働者が出た場合も、追加の事務作業が発生します。人事・経理部門の負担が増えるため、導入前に体制を確認するか、社会保険労務士などの専門家への依頼を検討することが推奨されます。
PayPay以外にデジタル給与払いの指定を受けている事業者はありますか?
厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者はPayPay株式会社です。
まとめ
PayPayでのデジタル給与払いを導入すると、事業主と労働者の双方にメリットをもたらすでしょう。
ただし、メリットだけでなくデメリットがある点にも留意する必要があります。
導入に際しては、労使協定を締結したうえで各労働者の希望をヒアリングしましょう。
デジタル給与払いの導入するメリットが大きいと判断したら、準備を進めてみてください。



