会社員が副業を始めた場合、社会保険料がどうなるかは働き方によって異なります。 副業先がアルバイトなどの雇用契約であれば、特定の加入条件を満たすことで社会保険への加入義務が発生し、保険料の計算に影響が出ます。
本業と副業先の給与を合算して保険料が決まるため、手続きや注意点を正しく理解しておく必要があります。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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副業の働き方によって社会保険料の扱いは変わる
副業における社会保険料の扱いは、その働き方、特に「雇用契約」か「業務委託契約」かによって大きく変わるのが特徴です。 アルバイトやパートのような雇用契約で働く場合は、収入や労働時間に応じて社会保険への加入義務が生じ、保険料に直接的な影響を及ぼす可能性があります。 一方、個人事業主として業務委託で働く場合は、原則として本業の社会保険料に影響はありません。
副業先で社会保険への加入義務が発生する5つの条件
副業がアルバイトやパートなどの雇用契約の場合、一般社員の4分の3以上働く場合を除き、以下の5つの条件をすべて満たすことで、その勤務先で社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務が発生します。
1. 週の所定労働時間が20時間以上であること。
2. 月額賃金が8.8万円以上であること。
3. 2か月を超える雇用の見込みがあること。
4. 学生でないこと。
5. 勤務先が特定適用事業所(従業員数が51人以上)、国・地方公共団体に属する事業所、または任意特定適用事業所のいずれかに該当すること。
これらの条件は、企業の規模や個人の働き方によって適用されるため、自身の状況と照らし合わせて確認することが重要です。

要件について解説します。
週の所定労働時間が20時間以上である
社会保険の加入条件の一つに、雇用契約書などで定められた週の所定労働時間が20時間以上であることが挙げられます。 これは、残業時間を含まない、契約上の労働時間です。 例えば、契約上は週15時間勤務で、繁忙期に一時的に20時間を超えて働いたとしても、この条件には該当しません。 継続的に週20時間以上の勤務が見込まれるかどうかが判断基準です。
1ヶ月の賃金が88,000円以上見込まれる
月額の賃金が88,000円以上であることは、短時間労働者の社会保険加入条件の一つです。この金額は、一般的に「8.8万円の壁」と呼ばれることもあります。 計算の対象となるのは、基本給や諸手当など固定的に支払われる給与です。現行制度では、残業代、賞与、交通費といった変動的な手当は含まれません。 時給制の場合は「時給×月の所定労働時間」で算出し、この金額が基準を超えるかどうかが判断されます。
雇用期間が2ヶ月を超えて継続する見込みがある
当初の雇用契約期間が2ヶ月以内であっても、契約書に「更新する場合がある」といった記載がある場合や、同様の契約で2ヶ月を超えて雇用された実績がある場合には、「2ヶ月を超えて継続する見込みがある」と判断されます。 そのため、短期のアルバイトのつもりが、契約更新によって意図せず加入対象となるケースもあり注意が必要です。
学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象)
学生が社会保険に加入できるかどうかは、勤務先の適用事業所の種類や労働時間など、特定の条件によって異なります。休学中の学生や、定時制・通信制を含む夜間部の学生は、一般の労働者と同様の扱いを受ける場合があり、他の条件を満たせば社会保険の加入対象となり得ます。また、卒業後も同じ勤務先で働き続ける場合なども加入対象となることがあります。
【働き方別】副業で社会保険料は増える?増えない?
副業による収入が増えたからといって、必ずしも社会保険料が上がるわけではありません。 保険料が増えるか増えないかは、副業の契約形態によって決まります。 雇用契約を結ぶアルバイトなどの場合は保険料が増える可能性がありますが、業務委託契約を結ぶ個人事業主としての活動であれば、原則として本業の社会保険料は変わりません。
ケース1:アルバイトやパートで副業する場合の保険料
サラリーマンが副業としてアルバイトやパートで働き、前述の社会保険加入条件をすべて満たした場合、本業とは別に副業先でも社会保険に加入する手続きが必要です。 この場合、本業と副業の給与を合算した金額を基に保険料が再計算されます。 結果として保険料の総額は増え、本業と副業それぞれの給与から按分されて天引きされることになります。
ケース2:業務委託契約で個人事業主として副業する場合の保険料
個人事業主やフリーランスとして業務委託契約を結び、個人事業として副業を行う場合、その収入は給与所得ではなく事業所得や雑所得に分類されます。 この働き方では、会社の社会保険の加入条件には該当しないため、本業の社会保険料が増えることはありません。 ただし、副業で得た所得については、自身で確定申告を行う必要があります。
本業と副業の両方で社会保険に加入する際の手続きの流れ
本業と副業の両方の勤務先で社会保険の加入条件を満たす場合、健康保険や厚生年金保険は二重で加入するのではなく、両方の勤務先で加入手続きを行い、それぞれの勤務先からの収入を合算して社会保険料が計算されます。
雇用保険については、主な収入を得ている勤務先でのみ加入します。この場合、被保険者自身が「健康保険厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を、事実発生から10日以内に年金事務所または事務センターに提出する必要があります。

STEP1:健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届を提出する
本業と副業の双方で加入要件を満たしたら、まず「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」という書類を提出します。
この届出は、主に本業の会社の所在地を管轄する年金事務所または事務センターへ、原則として10日以内に行います。 届出用紙は日本年金機構のウェブサイトからダウンロード可能です。
STEP2:提出後にメインとなる事業所を選択する
「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する際、健康保険証を発行してもらう「主たる事業所」を自分で選択します。 本業と副業のどちらを選んでも、基本的な保険給付の内容に違いはありません。
ただし、健康保険組合によっては独自の付加給付制度を設けている場合があるため、内容を比較して有利な方を選択することも可能です。
STEP3:マイナ保険証(マイナンバーカード)へのデータ紐付けが完了する
手続きが完了すると、選択した「主たる事業所」の健康保険組合や協会けんぽのデータが更新されます。従来の健康保険証の新規発行は2024年12月2日に終了し、従来の健康保険証は2025年12月1日まで使用できます。以降は、お持ちのマイナンバーカード(マイナ保険証)を使って医療機関を受診する流れとなります。
複数の勤務先で加入した場合の社会保険料の計算方法
本業と副業の2か所以上で社会保険に加入する場合、保険料の算定は特別な方法で行われます。 それぞれの会社で個別に保険料が計算されるのではなく、すべての勤務先からの給与を合算した上で、全体の保険料が決定されます。
その決定された保険料を、各社の給与額に応じて割り振って納付する仕組みになっています。
本業と副業の給与を合算して標準報酬月額を算出する
社会保険料を計算する基礎となるのが「標準報酬月額」です。 複数の事業所で社会保険に加入する場合、それぞれの事業所から支払われる給与(報酬月額)をすべて合算します。 この合算した総額を基に、定められた等級区分に当てはめて一つの標準報酬月額を決定します。
これにより、収入全体に見合った保険料が算出されることになります。
算出された保険料を各社の給与額に応じて按分して支払う
合算された給与によって決定した標準報酬月額に基づき、1ヶ月分の社会保険料の総額が算出されます。 この総額を、それぞれの会社の給与額の比率に応じて按分(割り振り)します。 各会社は、こうして按分された分の保険料を、被保険者負担分として毎月の給与から天引きし、会社負担分とあわせて納付します。 これにより、負担が適切に配分される仕組みです。
社会保険の手続きで副業が会社にバレる可能性はある?
副業が会社に発覚する主な原因は住民税の通知であると広く知られていますが、社会保険の手続きがきっかけでバレる可能性もゼロではありません。 特に、本業と副業の両方で社会保険に加入する手続きを行った場合、会社に送付される通知書類の内容から、経理担当者が他の収入の存在に気づくことがあります。
住民税だけでなく「標準報酬月額決定通知書」で発覚する場合がある
毎年、算定基礎届を提出した後、年金事務所から会社へ「標準報酬月額決定通知書」が送付されます。 副業先と合算した給与で標準報酬月額が決定されている場合、この通知書には自社の給与額だけでは説明できない高い等級が記載されることになります。
経理担当者がこの不自然な点に気づけば、副業をしていることが発覚する可能性があります。

経営視点のアドバイス
複数社で社会保険に加入すると、合算給与で算出された総保険料が各社の給与比率で按分されます。その結果「標準報酬月額決定通知書」に不自然な高等級が記載され、副業が発覚する可能性があります。
社会保険料の負担を増やさずに副業をするためのポイント
副業をしたいけれど、社会保険料の負担は増やしたくないと考える場合、働き方を工夫することで保険料がかからないように調整することが可能です。
社会保険の加入条件に該当しない範囲で働くか、そもそも加入義務が発生しない契約形態の仕事を選ぶか、主に2つのポイントが挙げられます。

加入条件を満たさないように労働時間を調整する
社会保険の適用条件を満たさないように働く方法として、勤務時間や賃金を調整することが考えられます。具体的には、短時間労働者が社会保険に加入するためには、「週の所定労働時間が20時間以上」、「月額賃金が8万8千円以上」、「2ヶ月を超える雇用の見込みがある」、「学生ではない」といった複数の要件をすべて満たす必要があります。したがって、これらの条件を一つでも満たさない場合、社会保険の適用対象とはなりません。
アルバイトやパートで副業をする際は、ご自身の状況に合わせてこれらの条件を考慮し、勤務時間や賃金を調整することが重要です。
雇用契約ではなく業務委託契約の仕事を選ぶ
社会保険料の負担を避けるもう一つの有効な方法は、アルバイトやパートのような雇用契約ではなく、個人事業主として業務委託契約を結ぶ仕事を選ぶことです。 ライターやデザイナー、コンサルタントといった専門職に多い働き方です。 この場合、会社の社会保険の適用対象外となるため、本業の社会保険料に影響を与えることはありません。
副業の社会保険料に関するよくある質問
ここでは、副業と社会保険料に関して、特に多くの人が疑問に思う点をQ&A形式で解説します。
Q1. 副業がアルバイトでも社会保険料は高くなりますか?
はい、高くなる可能性があります。 副業のアルバイト先で社会保険の加入条件を満たすと、本業と副業の給与を合算して保険料が計算されます。
その結果、保険料の等級が上がり、本業の給与から天引きされる金額が増える場合があります。
Q2. 個人事業主として副業すれば、会社の社会保険料は変わりませんか?
はい、原則として変わりません。 個人事業主は会社の社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象外です。
そのため、本業の会社で加入している社会保険の保険料は、副業の収入によって変動することはありません。
Q3. 扶養内で副業する場合、社会保険はどうなりますか?
配偶者の扶養に入っている場合、副業収入が一定額を超えると扶養から外れ、自身で社会保険に加入する必要があります。
いわゆる「106万円の壁」や「130万円の壁」が該当します。 税金の扶養(配偶者控除など)とは基準が異なるため注意が必要です。
まとめ
副業における社会保険料の扱いは、雇用契約か業務委託契約かによって大きく異なります。 アルバイトなどで雇用される場合は、労働時間や賃金が加入条件を満たすかどうかの確認が不可欠です。
もし本業と副業の両方で加入することになった際は、速やかに「二以上事業所勤務届」を提出しましょう。
事業が軌道に乗り、さらに収益が拡大した際には、法人化して役員報酬を得るという選択肢もありますが、その場合の社会保険の扱いは役員としてのルールが適用されます。



