自己破産は借り入れを免除できる点から、借り入れの問題を解決する最後の砦として知られています。
自己破産には確かにデメリットがありますが、中にはデメリットとして誤って認識されている点も多く存在します。
本記事では、自己破産をする7つのデメリットや家族への影響を解説。
よくある7つの誤解や自己破産にかかる費用・手続きの流れも紹介します。
状況によっては、個人再生や任意整理の別の債務整理方法が有効なケースもあります。
本当に自己破産をするべきか、どの債務整理が自分に合っているか迷っている場合は、債務整理に強い弁護士に相談するのがおすすめです。
債務整理を得意とする弁護士事務所は以下の記事で紹介しているので、併せてご覧ください。
自己破産のデメリット7つを詳しく解説!したもん勝ちという噂は本当?
自己破産をすると借り入れが免除される点が大きなメリットである一方、以下7つのデメリットも存在します。
- 官報で自己破産した旨が掲載される
- 手続中は一部の職業に就けない
- 保証人が返済を肩代わりしなければならない
- 一定期間ローンやクレジットカードの審査に通らない
- すべての債務が帳消しになるわけではない
- 一部を除く財産を処分しなければならない
- 家族に内緒で行うのは難しい
「自己破産をすると人生が終わる」「自己破産はしたもん勝ち」などと言われますが、自己破産をして人生が終わることもなければ、した者勝ちでもありません。
以下で詳しく解説するので、自己破産のデメリットを正しく理解し、本当にするべきかを判断しましょう。
官報で自己破産した旨が掲載される
自己破産をすると、政府発行の機関紙「官報」で氏名や住所が掲載されます。
官報で破産者を掲載するのは、債権者に破産手続きに参加する機会を与えるためです。
官報に掲載されると周りにバレるのではないかと思うかもしれませんが、ほとんどの人は官報を見ないため、大きな心配はいりません。
さらに2025年4月1日以降は、プライバシー保護の観点から、公開から90日を過ぎた官報のうち、個人情報を含む情報は過去記事も含め検索できなくなります。
今までは、調べようと思えば過去の破産情報も検索できましたが、現在は一定期間を過ぎれば物理的に知るすべがありません。
手続中は一部の職業に就けなくなる
自己破産手続中は、例として以下の職業に就けません。
- 行政書士
- 警備員
- 公認会計士
- 司法書士
- 社会保険労務士
- 生命保険外交員
- 税理士
- 宅地建物取引士
- 不動産鑑定士
- 弁護士
上記の職業は、主に顧客の財産や秘密を取り扱う仕事です。
ただし多くの場合、職業に就けないのは自己破産手続中のみであり、一般的には免責許可が下りて「復権」をすれば、試験を再度受ける必要なく再登録ができます。
これらの職業に就く予定がない人にとっては、デメリットにはなりません。
保証人が返済を肩代わりしなければならない
自己破産をすると、保証人に債務の請求が行きます。
保証人は債務者が返済ができなくなった際に肩代わりをするために設定するので、自己破産をしても保証人の債務は消滅しません。
注意すべきは、家族や知人が保証人になっている場合です。
自己破産をすると、通常は一括での返済が求められるため、保証人に大きな負担がかかってしまいます。
肩代わりをできない場合、保証人も連鎖的に自己破産をしなければならない可能性もあります。
家族や知人を保証人にしている場合は、本当に自己破産をするべきかを慎重に検討し、すると決めたら事前にその旨を伝えることが大切です。
一定期間ローンやクレジットカードの審査に通らない
自己破産をすると、その旨が信用情報機関に記録されるため、ローン契約やクレジットカードの発行など、信用を必要とする取引が一定期間できなくなります。
ローン会社やクレジットカード会社は、新規の申し込みがあると、信用情報機関に申込者の信用情報を照会します。
このとき、返済の遅延や破産手続きがあった事実を意味する「異動」の記録があると、信用力がないとみなされるため、審査に通るのは実質的に不可能です。
ただし信用情報機関に異動の記録がされるのは、5~7年間です。
それ以降は異動の情報が抹消されるので、ローンやクレジットカードの契約が可能になります。
すべての債務が帳消しになるわけではない
自己破産をしても、現在の債務がすべてなくなるわけではありません。
自己破産で免責されない債務を「非免責債権」と呼び、以下が該当します。
- 税金・罰金
- 養育費
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 故意または重過失により加えた、人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償権
- 個人事業主が雇っている従業員への給与の支払い
「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」とは、盗難や暴力など、相手に損害を与える目的で行った不法行為に対して課せられた損害賠償請求です。
「故意または重過失により加えた、人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償権」とは、飲酒運転など重大な過失により、人の生命や身体を害した場合の損害賠償請求を指します。
以上の債務は自己破産や個人再生をしても消滅しないため、思うような効果を得られない可能性があります。
なお非免責債権は自己破産の際に免責・減額されないだけであり、自己破産手続き自体は非免責債権があっても可能です。
一部を除く財産を処分しなければならない
自己破産をすると、債務を免除される代わりに、生活に必要な最低限のものを除いた財産を処分しなければなりません。
自己破産は破産者の財産をお金に換えて、債務を返済する手続きのためです。
処分される財産は、20万円を超える価値のあるものが原則であり、具体的には以下が挙げられます。
- 預貯金(複数口座がある場合は合計額)
- 生命保険(複数契約がある場合は合計額)
- 不動産
- 自動車
- 貴金属や骨董品
- 有価証券
- 退職金(受け取り見込みを含む)
一方で、自己破産は生活の再建をするための手続きであるため、手続後の生活に最低限必要な財産は「自由財産」として手元に残せます。
自由財産として認められるものは、以下の通りです。
- 99万円以下の現金
- 家具・家電・衣類などの生活必需品
- 仏壇・位牌など
なお裁判所に申し立てをすると、自由財産の範囲を広げられる可能性があり、これを「自由財産の拡張」といいます。
拡張の範囲は破産者の状況を鑑み、裁判所が判断するため、弁護士に相談して申し立てるのがおすすめです。
自己破産を家族に内緒で行うのは難しい
同居している家族がいる場合、内緒で自己破産を行うのは難しいです。
自己破産が家族にバレるケースには、以下が挙げられます。
- 家や車が処分される
- 家族が保証人になっている場合、家族に請求が行く
- 同居家族の収入状況が分かる資料を用意する
- 弁護士や裁判所・管財人からの郵便物が届く
- 破産後一定期間、クレジットカードやローンの審査に落ちる
自己破産をしている旨は家族に通知されませんが、破産を進める上での手続きや破産による影響によって、間接的にバレる可能性があるのです。
ただし以下の状況では、家族にバレずに自己破産を進められるケースがあります。
- 1人暮らしで家族を保証人とした借り入れがない
- 家族と同居しているが生計を完全に別にしている
家族と同居していても、生計を別にしていれば、家族の収入状況が分かる資料の提出が必要としない場合が多いです。
自己破産によって家族に生じる5つの影響!直接的なデメリットはない
自己破産をすると、家族に以下の5つの影響が及ぶ可能性があります。
- 車や持ち家がなくなる
- 家族カードが使えなくなる
- 保険が解約される
- 一定期間家族の保証人になれない
- 子ども名義の預貯金も処分される
自己破産は原則として本人にのみ影響が生じるものであり、家族への直接的なデメリットはありません。
ただし自分の財産が処分されたり、信用がなくなったりすることで、家族へ影響が出る可能性があるので、以下で詳しく見ていきましょう。
破産名義者の車や持ち家がなくなる可能性がある
自分名義で所有している車や家は、ほとんどのケースで自己破産による処分の対象です。
車が処分されると移動で不便が生じ、持ち家がなくなれば転居を余儀なくなれます。
通院や介護でどうしても車を必要とする場合は、自由財産の拡張によって処分を回避できる可能性がありますが、仕事上の理由は認められません。
持ち家については、夫婦の共有名義で所有していても処分されるケースが多いです。
自己破産をすると、破産者の持ち分だけが処分されますが、それでは買い手は住むことも売ることもできません。
そのため買い手は、共有状態を解消するための訴訟である「共有物分割請求訴訟」をする可能性があります。
持ち家の共有物分割請求訴訟では、不動産全体を売却し、持ち分に応じて現金を渡すのが一般的です。
自己破産をすると、持ち家は手放さなければならないと思っておきましょう。
家族カードが使えなくなる
自己破産をすると、破産者のクレジットカードが解約されるため、破産者を本会員とする家族カードは使えなくなります。
ただし家族が元々保有しているクレジットカードは引き続き使える上、家族が新たにクレジットカードを申し込む際の審査にも影響はありません。
破産者が引き続きクレジットカードを使いたい場合は、家族を本会員とするクレジットカードの家族カードを使う方法があります。
保険が解約される可能性がある
自己破産をすると、自分が保険料を支払っている家族の生命保険や、子どもの学資保険が解約される可能性があります。
保険の契約者が配偶者であっても、保険料を支払っているのが破産者であれば、財産処分の際に破産者の財産とみなされ、処分の対象となる場合があります。
子どもの学資保険も、名義は子どもであっても保険料を自分が支払っていれば、処分の対象です。
なお、処分を逃れる目的で破産直前に名義変更をすると財産隠しに該当し、名義を戻された上で没収されるので避けましょう。
破産者は一定期間家族の保証人になれない
破産者は一定期間、信用情報に傷が付いた状態になるため、家族の保証人になれません。
保証人は契約者が債務を支払えなかった場合に代わりに支払いする役割のため、信用が必要です。
例えば子どもが車や住宅ローンを組む場合は、自分が保証人になれないため、他の親族を頼るか、外部の保証会社を利用する必要があります。
この状態は、クレジットカードやローンの審査と同様、信用情報機関から異動の記録が抹消されるまで続きます。
子ども名義の預貯金も処分される可能性がある
子ども名義の預貯金は原則として処分の対象外ですが、場合によっては処分されてしまう可能性があります。
生命保険と同様に、預金の原資が自分のお金である場合には、実質的に破産者の財産としてみなされる場合があります。
ただし原則は、財産隠しの疑いがなければ口座の名義で判断され、子どもの預貯金は処分の対象外とする裁判所が多いです。
預貯金や保険など、家族名義でも自分が原資を負担している財産の扱いについては、弁護士に相談するのが無難です。
自己破産のデメリットとしてよくある誤解7つを紹介
以下の7つは自己破産のデメリットとして語られることがありますが、いずれも事実ではありません。
- 選挙権がなくなる
- 年金を受け取れなくなる
- 生活保護が受け取れなくなる
- ローンや賃貸を一生契約できない
- 会社にバレる・転職ができない
- 海外に行けなくなる
- 家族の財産も差し押さえられる
自己破産は生活再建のための手段であり、一定期間信用はなくなりますが、一生にわたって尾を引くデメリットはありません。
以下で詳しく解説するので、自己破産のデメリットを正しく認識するための参考にしてみてください。
選挙権がなくなる
選挙権は憲法で規定されている参政権の一つであり、自己破産によってなくなることはありません。
選挙権を失うのは、主に禁錮以上の刑に処せられている最中の人や、選挙や政治資金に関する不正を働いて罰せられている人が該当します。
しかし自己破産者が選挙権を失うという規定はありません。
年金を受け取れなくなる
自己破産をすると公的年金を受け取れなくなる、というのは誤解です。
公的年金は差押禁止財産に該当しており、将来受け取る年金が減額されたり、差し押さえられたりはしません。
ただしすでに受け取っている年金は現金や預金として処理され、自由財産を超える範囲は処分の対象となる可能性があります。
生活保護が受け取れなくなる
自己破産をすると生活保護を受け取れなくなる事実はありません。
生活保護は親族や公的扶助を受けられず、就業が困難で収入が著しく少ないことなどが受給の条件として設定されていますが、いずれも自己破産とは無関係です。
加えて、現在生活保護を受けている人も自己破産が可能で、自己破産をしても生活保護費は減額されません。
ローンや賃貸を一生契約できない
「自己破産をすると信用がなくなるため、ローンや賃貸を一生契約できない」という認識は誤りです。
ローンや賃貸の審査に通らないのは、信用情報機関に異動の記録があるためですが、異動の記録は一定期間後に消滅します。
日本にはJICC、CIC、KSCの3つの信用情報機関があり、異動の記録が登録されている期間はそれぞれ以下の通りです。
- JICC・CIC:5年間
- KSC:7年間
消費者金融やクレジットカード会社は主にJICCやCICに加盟しており、KSCは銀行が多く加盟しています。
そのためクレジットカードは自己破産から5年後、銀行のカードローンは7年後を目安に再度発行可能になります。
会社にバレる・転職ができない
自己破産をすると会社にバレてクビになる、転職活動で内定が出ないなどと心配するかもしれませんが、会社や応募企業にバレることは原則ありません。
自己破産をしても、裁判所や債権者は会社に通知をしないためです。
さらに自己破産を理由とした解雇は不当解雇に当たるので、クビになる心配もありません。
ただし会社からお金を借りていた場合は、会社は債権者となるため、自己破産をした旨が通知されます。
会社にバレたくないからといって、会社が債権者である事実を隠すと免責されない可能性もあるため、隠さずに申告する必要があります。
海外に行けなくなる
自己破産をしたからといって、海外旅行に制限がかかったり、パスポートの発行に支障が出たりはしません。
ただし管財事件の手続中は、長期間自宅を離れる際に管財人や裁判所の許可を取る必要があり、これには引っ越しも含まれます。
同時廃止の場合や、自己破産手続きの前後は制限がありません。
家族の財産も差し押さえられる
自己破産で差し押さえられるのは破産者の財産のため、原則として家族の財産に影響はありません。
しかし以下のケースでは、家族名義の財産であっても処分される可能性があります。
- 破産者が実質的な所有者である(学資保険・子どもの預貯金など)
- 共同名義の財産(家・車など)
- 連帯保証人である家族が返済を肩代わりできなかった場合
- 自己破産前に名義変更をした場合(財産隠しの疑い)
上記を除く破産者とは無関係の家族の財産は影響を受けず、家族の社会的信用も損なわれません。
自己破産を行う前に検討すべき点は?想定以上の財産が処分される可能性もある
自己破産を行う前には、以下の点を検討する必要があります。
- 法律上の条件に合致しているか
- どうしても手放したくない財産はあるか
- 免責不許可事由に該当していないか
「自己破産をすれば借り入れが帳消しになる」と安易に考えていると、思った通りに免責がされなかったり、想定以上の財産が処分される可能性があります。
自己破産を本当にするべきかを判断するためのポイントを、以下で詳しく解説します。
法律上の条件に合致しているか
自己破産は誰でもできるわけではなく、以下3つの条件を満たした場合に手続きが可能です。
- 債務の支払いが不能である
- 債務のすべてが非免責債権でない
- 免責不許可事由に該当しない
債務の支払いが不能である状態とは、一時的にでなく未来にわたっても返済の見込みがない状態を指します。
支払能力の有無は、以下の観点から総合的に判断されます。
- 債務の状況
- 資産の状況
- 収入
- 家族構成
- 生活状況
- 支払いが不能に至った経緯
支払能力がないとみなされる一般的な基準は、債務の総額が年収の1/3を超えているかどうかです。
ただし失業中で収入がなくても、預貯金や資産が豊富にある場合は、支払能力があるとみなされ、自己破産が認められないケースがあります。
加えて、債務のすべてが税金や養育費、特定の場合の損害賠償請求などの非免責債権である場合にも、免責される債務がないため自己破産はできません。
免責不許可事由に該当していないか
免責不許可事由とは、自己破産の申し立てをしても免責許可が下りない事情を指します。
具体例として、以下のケースが挙げられます。
- 債務の理由がギャンブルや株式取引などの投機的な取引などの浪費である
- 返済ができないと分かっていながら信用取引を行った
- 特定の債権者を優遇した
- 自己破産をするためにわざと損失を生んだ
- 財産隠しをした
- 7年以内に自己破産で免責を受けている
不誠実な取引による債務を帳消しにしようとしている場合や、不当な方法で自己破産手続きを進めようとすると、免責不許可事由に該当します。
ただし例外的に、免責不許可事由に該当していても、裁判所の判断で免責許可が下りるケースがあります。
それでも、免責不許可事由に触れる行為は避けるに越したことはありません。
どうしても手放したくない財産はあるか
家や車など、どうしても手放したくない財産がある場合は、自己破産が向いていない可能性があります。
財産を残せるボーダーラインは、原則として20万円を超える価値があるかどうかです。
例えば家や車は、かなり古かったり故障したりしていない限り、20万円を超える評価額が付けられるケースがほとんどのため、手元に残せないと思っておきましょう。
一方で99万円以下の現金や生活に必要な家財は残せます。
自己破産後の生活や家族への影響を考慮し、本当に自己破産をするべきかを判断してみてください。
自己破産手続きの流れを解説
自己破産手続きの大まかな流れは、以下の通りです。
- 弁護士への相談
- 受任通知・督促の停止
- 申し立てのための書類準備
- 裁判所へ申し立て・破産審尋
- 手続開始の決定
- 管財人面接(管財事件の場合)
- 債権者集会(管財事件の場合)
- 免責審尋
- 免責許可
自己破産には、手続きの開始と同時に手続きを終了させる同時廃止と、管財人が財産を換価して債務を清算する管財事件の2種類があります。
同時廃止は、返済に充てられる資産がほとんどない場合に適用される例外的な手続きで、原則的な手続きは管財事件です。
同時廃止か管財事件かによって手続きの終了までにかかる期間が異なり、大まかには以下の通りです。
- 同時廃止:3〜4ヶ月
- 管財事件:半年〜1年
財産の調査や換価、債権者への分配が発生する分、管財事件の方が長い時間がかかります。
自己破産にかかる費用は手続きの種類によって30~100万円程度
自己破産手続きにかかる費用は手続きの種類によって、30~100万円程度の費用がかかります。
費用の詳細は、以下の通りです(東京地裁の場合)。
- 申立手数料:1,500円
- 予納金(同時廃止):11,859円
- 予納金(管財事件):最低20万円+1件につき18,543円
- 予納郵券:原則4,400円
- 弁護士への依頼費用:30~80万円
費用の多くを弁護士への依頼費用が占めていますが、事務所によっては分割払いに対応しているケースがあります。
加えて法テラスでは、弁護士費用を立て替えてくれる場合もあります。
裁判所へ払う費用は、申し立てを開始するまでに用意できればよいので、少額でも収入があれば準備が可能です。
なお生活保護を受けている人は、予納金や弁護士・司法書士への依頼費用を法テラスが立て替えてくれるため、免除できる可能性があります。
免除を受けるには審査が必要ですが、まずは最寄りの法テラスに連絡し、無料相談を申し込みましょう。
自己破産で家族の負担を軽減するには?特定の債権者への返済や離婚は手続きが複雑になる
自己破産による家族への影響を軽減するには、以下のポイントに注意しましょう。
- 偏頗弁済(へんぱべんさい)は避ける
- 自己破産を理由に離婚しない
自己破産前に特定の債権者だけに返済をしたり離婚したりするのは、かえって手続きを複雑にしてしまいます。
特定の債権者の優遇や破産前の離婚がどのようなデメリットをもたらすのか、詳しく見ていきましょう。
偏頗弁済(へんぱべんさい)は避ける
自己破産をする前に、親族や知人など特定の債権者にのみ返済をするのは避けましょう。
このように、特定の債務者にだけ弁済する行為を偏波弁済といいます。
自己破産では、すべての債権者を平等に扱わなければならず、偏波弁済はその公平性を損なう行為です。
偏波弁済を行うと、以下のペナルティが課せられる可能性があります。
- 債権者が受けた弁済に相当する金銭を返還しなければならない
- 免責不許可事由に該当する
- 刑事罰の対象となる(破産法第266条)
「消費者金融に返すくらいなら家族に返そう」など、他の債権者に不利益を被らせる目的で弁済をすると、最悪の場合5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金、またはその両方が課せられる場合があります。
ただし支払不能ではない、かつ破産手続き開始前に期日が到来した分の返済や、支払不能になる31日以上前に行った期限前返済は、偏波弁済に該当しません。
自己破産を理由に離婚しない
自己破産をすると家族に迷惑がかかるからと、破産前に離婚をしようと考えている人もいるかもしれません。
しかし自己破産前に離婚をすると、慰謝料の支払いや財産分与をしたことで財産隠しを疑われる可能性があります。
慰謝料や財産分与によって財産が減少し、同時廃止で進めようと思っていても、管財事件として取り扱われ、時間と費用が余計にかかる可能性もあります。
もっとも、自己破産をしても配偶者は子どもに直接の影響はありません。
自己破産をするにあたって本当に離婚が必要なのか、仮に離婚をする場合の適切なタイミングは弁護士への相談も可能です。
自己破産するか迷ったら個人再生や任意整理など他の債務整理も検討しよう
債務の負担を軽減する制度には、自己破産の他に個人再生や任意整理もあり、3つをまとめて債務整理と呼びます。
両者には自己破産にはないメリットもあり、状況によっては自己破産より自分や家族への影響の軽減が可能です。
債務負担を減らす効果は自己破産→個人再生→任意整理の順で大きいですが、同じ順番で生活への影響も大きくなります。
なおどの制度を利用しても、信用情報機関に異動の記録が登録されるため、ローンや賃貸の審査が不利になる点は同じです。
それぞれの制度の概要を解説するので、自分の状況により合っている制度を探しましょう。
個人再生なら返済額を大幅に減額できる
個人再生とは、裁判所へ再生計画を提出し、債務を大幅に減額する制度です。
目安として債務を1/5に減額でき、現在よりも家計に余裕を持たせて返済を進められます。
自己破産と比較した際のメリットには、以下が挙げられます。
- 住宅ローンの返済を続けることで、家に住み続けられる
- ローンの支払いが終わっていれば、車も残せる
- 旅行や引っ越し・職業の制限がない
ただし返済をする必要がある以上、安定した収入がないと個人再生は利用できません。
財産を手元に残しながら、債務を大幅に減額したい人に向いている制度です。
任意整理なら債権者ごとに返済負担軽減の交渉ができる
任意整理とは、主に将来の利息をカットし、元金の返済を行っていく債務整理です。
具体的には各債権者と交渉をし、利息カットなどで合意した新たな返済計画をもとに返済を続けていきます。
自己破産と比較した際のメリットは、以下の通りです。
- 財産を残せる
- 裁判所を通す必要がなく、費用が安い
- 債権者ごとに減額交渉するかを選べる
- 周りにバレにくい
任意整理なら、例えば自動車ローンはそのまま返済を続け、消費者金融の借り入れの利息をカットするといったことが可能です。
これにより、必要な財産を残しながら返済負担を減らせます。
ただし債務の軽減の効果は3つの債務整理の中で最も小さく、返済を続けるだけの収入も必要です。
任意整理は、元金だけなら返済できる余裕のある人や、手続きに手間やお金をかけたくない人に向いています。
自分がどの債務整理に向いているかは、弁護士に相談するのがおすすめです。
以下の記事では、債務整理に強い弁護士を紹介しているので、返済負担が重くて悩んでいる人は併せてご覧ください。