社労士(社会保険労務士)とは、社労士資格を有している国家資格者で、労働関係や社会保険の法律に精通しているプロフェッショナルです。
企業の人材に関する専門家で、社会保険や労務管理などの業務が行えます。
社労士にしかできない仕事も数多くあり、資格取得を目指している人も多いのですが、業務内容に見合うだけの年収が得られるのか疑問に思う人も多いです。
本記事では社労士の平均年収を条件別にまとめました。
社労士を目指している人に向けて、社労士の年収をアップするためのコツや社労士の資格を取得する方法もまとめているので、資格取得の参考にしてください。
社労士(社会保険労務士)は500万円前後が平均年収
厚生労働省が行っている賃金構造基本統計調査によると、社労士(社会保険労務士)の平均年収は約500万円ほどとなっています。
令和5年現在の賃金構造基本統計調査においては、社労士単独の調査は行われていません。
社労士単独の年収のわかる令和元年の調査結果を紹介します。
項目 内容 決まって支給される現金給与額 4,018,800円
※月額334,900✕12ヶ月年間賞与やその他の特別給与額 841,400円 年収 4,860,200円
令和元年における社労士の平均年収は486万円程度との結果です。
年によって変動もありますが、社労士の年収目安は500万円前後と考えましょう。
令和5年における社労士の平均年収の目安もチェック
令和2年からの変更によって、社労士は「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」に含まれました。
令和5年における社労士も含めた「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」の平均年収は約950万円程度という結果が出ています。
年 社労士含むその他の経営・金融・保険専門職業従事者の平均年収 令和5年 9,476,000円 令和4年 7,808,600円 令和3年 10,295,200
その他の経営・金融・保険専門職業従事者に含まれる職業とは、以下の5つです。
- 公認会計士
- 会計士補
- 税理士
- 社会保険労務士
- 経営コンサルタント
年によって変動も大きいので、社労士も含めた専門職の年収の目安として参考にしておきましょう。
社労士の平均年収を条件別で確認
社労士の平均年収については、性別や勤務形態によっても大きく違います。
例えば社労士の性別による平均年収の違いは、下記の通りです。
性別 令和元年 令和5年
※その他の経営・金融・保険専門職業従事者の年収男性 5,147,500円 10,489,000円 女性 4,340,300円 7,284,100円
男性と女性では、男性の年収が高めの傾向にあります。
これは一般的な職業全体の年収において男性のほうが高い傾向にあるため、社労士の女性の年収が低いとは言い切れません。
性別 社労士の月額賃金 正社員の月額賃金 男性 336,800円 351,5000円 女性 271,400円 269,4000円
賃金で比較した場合も、社労士の平均的な年収は女性の方が数万円程度低い傾向です。
社労士の年収は年齢では大きく影響されない
社労士の年収は年齢においては大きく影響されません。
年齢 令和元年 令和5年
※その他の経営・金融・保険専門職業従事者の年収男性 女性 20歳~24歳 ― ― 4,211,400円 25歳~29歳 ― ― 7,221,300円 30歳~34歳 5,573,200円 2,183,405円 8,834,200円 35歳~39歳 4,466,800円 4,534,000円 9,761,300円 40歳~44歳 4,933,800円 4,366,300円 9,037,700円 45歳~49歳 5,409,900円 4,018,300円 15,800,200円 50歳~54歳 ― 4,970,800円 9,240,600円 55歳~59歳 ― 5,433,200円 11,256,400円
調査の結果によれば、年齢が上がるにつれて年収が上がるとも言えません。
雇われている社労士の場合は、勤続年数が長くなるにつれて給与も増える傾向にあります。
しかし一般的な仕事と同じく昇給の幅は大きくないため、「40歳を超えたら一気に収入が増える」といった変化は期待ができません。
企業規模別における社労士の平均年収
希望規模別における社労士の平均年収は以下の通りです。
企業規模 令和元年 令和5年
※その他の経営・金融・保険専門職業従事者の年収1,000人以上 6,311,500円 8,950,900円 100人~999人 3,968,200円 12,542,300円 10人~99人 4,956,600円 7,233,100円
社労士として収入を上げたいなら、1,000人以上従業員がいる大企業での勤務が最も効果的です。
大企業なら年収が上がりやすいのは、一般職と同じです。
可能な限り高収入を目指したいなら、規模の大きい企業への就職を目指しましょう。
しかし、社労士として働きたい人は多いため、採用されるかどうかは経歴や実力によります。
まず中小企業に入社をして経験を積んで評価を得たり、新卒で入社を目指しましょう。
社労士の収入が左右されるのは業務の内容
調査結果を見ると、社労士の年収は業務内容によっても左右されると推測できます。
企業規模や年齢による年収の違いは少なく、性別もそこまで大きいとは言えません。
社労士の担当業務は幅広いので、年収を高めたい場合は担当できる業務を増やして、年収が高い傾向にある勤務先に採用されるように意識しましょう。
社労士の年収と一般会社員との比較
社労士と一般社員は年収がほとんど変わりません。
社労士と職業全体の平均年収を比較した結果は、下記の通りです。
時期 令和元年 社労士の平均年収 4,860,200円 全職業の正社員の平均年収 5,034,000円 出典:賃金基本統計調査│厚生労働省
出典:民間給与実態統計調査│国税庁
社労士の業務は国家資格であるにも関わらず、職業全体で見ると高額とは言えないのが現状です。
国税庁が調査している民間給与実態統計調査によれば、全職業における給与取得者の平均年収は503万円です。
社労士の年収の方が約30万円も低いため、「苦労して資格取得したのに割に合わない」と不満を抱く人も少なくありません。
社労士の資格を所有している人は年々増えており、その結果仕事も少なくなっているため、資格を所有しているだけで稼げる状態ではないと分かります。
また社労士の収入は担当している業務によっても幅広い傾向にあります。
社労士になっただけで高い収入を得られるわけではなく、業務内容によって差が出るため、高い年収を目指したいなら担当できる業務を増やせるように知識をつけましょう。
社労士の年収をアップさせるコツ3選
社労士の年収をアップさせるコツは、以下の3つがあります。
- 営業スキルを磨いて人脈も広げる
- コンサルティング業務も担当できるように学習する
- ダブルライセンスを目指す
- 独立をする
社労士の年収が年齢や企業規模で大きく影響されない理由は、担当する業務の幅によって収入が決まるからです。
営業スキルを磨いて人脈も広げれば、より多くの企業から仕事を取れる可能性もでてきます。
コンサルティング業務を担当できる社労士になれば、高収入も期待できます。
ダブルライセンスを目指すと、担当できる業務も増えるので収入アップにもつながっていくでしょう。
社労士としての経験を積み上げていき、ある程度クライアントとの繋がりを持てたら、独立するのも1つの方法です。
仕事が安定するまでは収入も減少する可能性がありますが、独立した社労士のほうが最も稼ぎやすい傾向にあります。
これから紹介する3つのコツから自分に向いているものを選んで、収入アップを目指していきましょう。
営業スキルと人脈を生かして仕事を手に入れる
社労士として年収アップを目指すなら、以下の方法で仕事を手に入れましょう。
| 方法 | 詳細 |
|---|---|
| 営業スキルを磨いていく | 顧客を獲得するために必要 |
| 人脈を広げる | 人脈が広がれば集客にも繋がる |
社労士として働く方法は、企業で勤務する方法と独立開業する方法の2種類があります。
企業に勤めれば自分で業務を探す必要がないですが、大きな年収アップは目指しにくいです。
収入アップを目指したいなら独立開業して自分で仕事を手に入れるのが近道です。
業務をこなす力はあったとしても営業スキルがなければ、自分の良さをアピールできずに仕事の獲得にも繋げられません。
最初は書類作成や給与計算などの依頼を受けながら信用を積み重ねて、強みをアピールして幅広い業務を任せてもらう方法も効果的です。
依頼された業務をこなしつつ自分なりの提案もできれば、新たな仕事も任せてもらえる可能性があるでしょう。
自身の得意分野をアピールし、他の人と差別化するのも有効的な手段です。
幅広い人脈がある方が仕事を任せてくれる人も見つけやすいため、将来的に独立も目指すなら、早い段階から人脈も作っていきましょう。
コンサルティング業務が担当できれば年収アップにも繋がりやすい
社労士は幅広い業務担当ができますが、中でもコンサルティング業務を担当できれば年収アップにも繋がりやすいです。
社労士の主な業務は書類作成や帳簿作成ですが、知識を活かして労務関係のコンサルティング業務も行えます。
コンサルティングの業務内容は多岐にわたっていて、企業の悩みに合わせて対応します。
- 就業規則に関する相談
- 評価制度に関する構築
- 労働環境に関する整備
- 福利厚生を充実
- 採用業務に関する相談
コンサルティング業務は社労士だけではなく、他の業種の人でも可能です。
しかし、人材に関する専門家の社労士ならではの視点でアドバイスできるため、企業が抱えている問題解決に繋げられる可能性があります。
社労士として年収アップを目指すなら、コンサルティング業務も担当できるように、幅広い知識を身につけていきましょう。
ダブルライセンスを取得して担当できる業務を増やす
社労士が他の資格も合わせて取得(ダブルライセンス)すれば、担当できる業務の幅も増えます。
特に社労士と相性の良い資格の例は下記の通りです。
| 社労士と相性がいい資格 | 理由 |
|---|---|
| 行政書士 | ・社労士として健康保険や雇用保険、年金関連の書類を作成できる ・行政書士の資格があれば会社設立に関する書類作成にも携われる |
| 司法書士 | 法律的な問題にも対応が可能になる |
| 中小企業診断士 | コンサルティングに関する知識が高められる |
| 税理士 | 税務関連の業務にも担当できる |
| ファイナンシャルプランナー | 社労士としての保険や年金関連の知識が活かせる |
| 年金アドバイザー | 社労士としての年金関連の知識が活かせる |
行政書士は開業届や事業届を作成できるため、会社設立に関わったあとで社労士の資格を活かして人事関連書類の担当もすると1社と長い関わりを持てます。
司法書士の資格を取ることで、法律と人事関連両方の問題に対してサポートが可能です。
中小企業診断士の資格を持っていれば、コンサルティング業務も担当しやすくなります。
税理士の資格を取得すれば税務関連の業務も担当ができて、ファイナンシャルプランナーや年金アドバイザーでは社労士として得た知識を活用できる資格です。
社労士として得た知識を活かしながら業務の幅を広げられるように、得意な分野や興味のある資格と合わせて取得しましょう。
社労士が行う業務内容は主に3種類!資格取得までの長期計画
社労士が行う業務内容は主に3種類に分かれています。
| 社労士業務の種類 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 1号業務 | 事務手続きに関する代行 | ・労働保険や社会保険などの手続き ・健康保険の手当金に関する申請手続き ・助成金の申請手続き |
| 2号業務 | 書類や帳簿作成 | ・就業規則の改定や作成 ・帳簿の作成 ・労働者名簿の作成 |
| 3号業務 | コンサルティング業務 | 人事関連の指導や相談 |
1号業務は主に事務手続きに関する代行で、労働保険や社会保険の加入や脱退の手続き、助成金申請などの専門的な内容です。
2号業務では労働社会保険諸法令に基づき、必要な書類や帳簿の作成を行います。
3号業務では人事に関連する幅広い相談に乗る業務で、社労士以外の人でも担当できる内容です。
社労士は人材に特化した専門家で、事業の健全な発達と労働者の福祉向上を目標に業務を行います。
社労士になるには国家資格必要なので、計画的に資格取得のための勉強を進めましょう。
社労士の資格取得は長期的な計画が必要
社労士の資格を取るために必要な勉強時間は1,000時間が目安と言われていて、長期的な学習計画が必須です。
例えば1日6時間の勉強ができた場合、170日程度の準備期間が必要です。
仕事をしつつ1日2時間の勉強をした場合には、500日程度はかかります。
受験日が近づいてから勉強をしても間に合わないため、ある程度の期間はまとめて時間を取って勉強を進めましょう。
社会保険労務士の試験は、社会保険労務士試験連合会によって年1回、厚生労働大臣から委託を受けて実施しています。
社労士の受験資格は実務経験や学歴によって異なるので、まず受験資格の詳細を社会保険労務士試験オフィシャルサイトの「受験資格及び受験資格証明書」から確認しましょう。
受験資格を満たしていた場合には、原則Webから受験の申し込みをしましょう。
2025年9月現在は、郵送による申し込みも可能です。
社会保険労務士試験の合格率は6%前後と低い
社会保険労務士試験の合格率は平均6%前後と低いです。
年 合格率 2023年 6.4% 2022年 5.3%
2023年における申込者は42,741人で、そのうち合格者は2,720人 です。
簡単に取得可能な資格ではないので、少なくとも1,000時間の勉強時間は確保できるように計画的に学習を進めましょう。
社労士の年収に関するよくある質問3選
社労士の年収に関するよくある質問を3つ紹介します。
- 社労士として独立開業すると年収1,000万円を目指せますか?
- 社会保険労務士になっても仕事がないと聞きますが本当ですか?
- 社労士は20代や女性だと収入が低いですか?
社労士の年収に関しては高いと感じる人もいれば、「安定した仕事がない」「年収が低そう」と不安に思っている人もいます。
社労士の年収の実態を知っていれば、資格取得を目指す判断にもなるでしょう。
あらかじめ疑問や不安を解消して、資格取得に専念できるようにしましょう。
社労士として独立開業したら年収1,000万円も目指せる?
社労士として独立開業すると年収1,000万円も目指せますが、開業するだけで収入が得られるわけではありません。
独立した場合は自分で仕事を獲得しなければいけないため、営業スキルを磨いて人脈を駆使し、より多くの仕事を依頼してもらえるようにしなければなりません。
自分の得意分野を決めてから営業をしたほうが、特定の業務を必要としている企業とマッチもしやすいです。
独立すれば自分の頑張り次第で年収も上げられるため、得意分野を磨いて顧客を獲得していきましょう。
社会保険労務士になれたとしても仕事がないって本当?
「社会保険労務士になれたとしても仕事がない」との声もありますが、そのようなことはありません。
社労士は人事関係の専門家として、企業には欠かせない存在です。
仕事を獲得できない可能性があるとしたら、顧客が獲得できない場合です。
営業スキルに自信がない場合には、企業に働くと仕事を得ら
社労士の資格試験の合格率は6%程度と低く、そもそも受かること自体が難しいです。
資格取得の難しさから「やめたほうがいい」との意見もありますが、国家資格なので取得しておいて損はありません。
ただし社労士の資格取得には長期的な学習計画も必要です。
社労士は20代や女性の場合は収入が低い?
社労士は20代や女性の場合は多少収入も低くなる傾向にはありますが、大幅に低くなるわけではありません。
女性はもともと男性に比べるとどうしても年収が低い傾向にありますが、それでも十分に稼げる職業と言えます。
社労士の収入は年齢や性別ではなく、業務内容に左右される傾向にあります。
年収を上げたいならコンサルティング業務も含め、様々な業務に対応しなければなりません。
幅広く知識を得るのが苦手な場合には、自分の得意分野を明確にした上で深く掘り下げる方法もあります。
企業から信頼が得られるように、自分の強みを明確にしてから業務に取り組みましょう。

