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コラム

マネーフォワード給与を使っても社労士が必要な理由|自社処理との違い

「マネーフォワード クラウド給与を導入したから、もう社労士は不要では?」という声を、経営者・人事担当者の方から多くお聞きします。給与計算ソフトは確かに強力なツールですが、社会保険・労働保険の手続き代行や就業規則の整備、労使トラブルへの対応は、ソフトだけでは完結しません。この記事では、社会保険・労務管理の専門家である社会保険労務士法人とうかいが、給与計算ソフトと社労士の役割の違いを具体的に解説します。「給与ソフトで自社処理できている」と思っている企業が見落としがちなリスクと、社労士に依頼することで得られる安心について、実務事例を交えてお伝えします。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア

  • NHK「あさイチ」
  • 中日新聞
  • 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」

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目次

1. この記事の要約

  • マネーフォワード クラウド給与は給与・賞与の自動計算・Web明細発行など給与計算業務を大幅に効率化するが、社会保険・労働保険の手続き代行や就業規則の作成・変更は対応範囲外である。
  • 社会保険労務士(社労士)には、社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)第2条に基づく「書類作成」「手続代理」「相談指導」の3種の業務権限があり、一部は社労士のみが行える独占業務である。
  • 給与ソフトは「計算の正確さ」を支援するツールだが、「制度設計・手続き・判断・相談」は人間の専門家が担う領域であり、両者は補完関係にある。
  • 従業員100名規模の企業では、入退社手続き・定時決定・随時改定・育児休業関連手続きなど年間を通じて社労士が対応すべき手続きが多数発生する。
  • 社会保険労務士法人とうかいでは、マネーフォワード クラウド給与をはじめとする給与計算ソフト導入済み企業の顧問契約・スポット相談にも対応している。

2. そもそも、マネーフォワード クラウド給与とは?

マネーフォワード クラウド給与は、クラウド上で給与・賞与の計算から明細発行・振込データ作成まで一連の給与計算業務をカバーする給与計算ソフトです。2024年11月時点で19万事業者以上に利用され、勤怠管理システムや労務管理ソフトとのAPI・CSV連携により、転記作業を大幅に削減できます。

マネーフォワード クラウド給与でできることは?

マネーフォワード クラウド給与の主な機能は以下のとおりです。

機能カテゴリ主な内容
給与・賞与計算自動計算・前月比較・カスタム計算式の設定
明細・帳票Web給与明細発行・賃金台帳・労働者名簿・支給控除一覧表
控除計算所得税・社会保険料・雇用保険料の自動計算
振込FBデータ出力・ワンクリック振込
住民税eLTAX連携による住民税情報のデータ連携
勤怠連携KING OF TIME・ジョブカン等の勤怠ソフトとAPI/CSV連携
社会保険(別サービス)入退社帳票・定時決定・随時改定・電子申請(クラウド社会保険との連携)
年末調整(別サービス)書類配布・回収・年税額自動計算(クラウド年末調整との連携)

給与計算業務の自動化・ペーパーレス化という点では非常に優れたツールです。

マネーフォワード クラウド給与「だけ」ではできないこととは?

マネーフォワード クラウド給与は給与計算ツールであり、以下の業務は本サービスの対応範囲外です。

1. 社会保険・労働保険の手続き代行 入退社時の資格取得・喪失届の提出、育児休業・産前産後休業に伴う申請、雇用保険の離職票発行、労災申請など、行政機関への手続き代行は社労士の業務領域です。マネーフォワード クラウド社会保険は書類作成・電子申請の補助ツールですが、手続きの判断・代理提出を担うのは社労士です。

2. 就業規則・賃金規程の作成・変更・届出 就業規則は常時10名以上の事業場に作成・届出義務があります(労働基準法第89条)。業種・雇用形態・就業実態に応じた規程の起案、労働基準監督署への届出、労働者代表への意見書取得は、給与ソフトでは対応できません。

3. 労使トラブルの対応・相談 解雇・ハラスメント・残業代未払い請求など、労使間の紛争・相談対応は社労士の相談指導業務(社労士法第2条第1項第3号)に該当します。

4. 法改正への実務対応判断 毎年改正される労働・社会保険関連法への対応は、自社の状況に合わせた判断が必要です。ソフトが計算ロジックを自動更新しても、「自社はどう対応すべきか」の判断は社労士が担います。

給与計算ソフトと社労士の業務は何が違う?

給与計算ソフトは「入力された条件に基づいて正確に計算する」ツールです。一方、社労士は「法令に基づいて何を入力すべきかを判断し、手続きを代行し、相談に応じる」専門家です。

比較項目給与計算ソフト社労士
給与・賞与の計算自動計算・効率化計算ルールの設定・確認
社会保険料率の反映自動更新(法改正対応)適用ルールの判断
入退社手続き書類作成補助(別サービス連携)手続き代行・行政窓口対応
就業規則の整備対応不可作成・変更・届出代行
労使トラブル対応対応不可相談・助言・手続き支援
法改正の実務判断計算ロジックの自動更新自社への適用方法の判断
行政調査(労基署・年金機構等)への対応対応不可立会い・対応支援

このセクションのポイント

  • マネーフォワード クラウド給与は給与計算の自動化・効率化に優れたツールだが、社会保険手続きの代行・就業規則の整備・労使トラブル対応は対応範囲外である。
  • 社会保険・労働保険の手続き代行には、社労士法に基づく手続き代理権が必要であり、ソフトで代替できるものではない。
  • 給与計算ソフトと社労士は競合関係ではなく、「計算ツール」と「判断・手続き・相談の専門家」として補完関係にある。
  • 従業員100名規模の企業では、年間を通じて多数の社労士対応業務が発生するため、顧問契約を結ぶことが現実的かつ安全である。

3. 社労士が必要な3つの理由:法令・手続き・相談の壁

給与計算ソフトを導入しても社労士が必要な理由は、法令・手続き・相談という3つの壁にあります。それぞれについて、法的根拠と実務上の理由を解説します。

理由①:社会保険・労働保険の手続き代行は社労士の独占業務では?

社会保険労務士とは、社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)に基づき、労働・社会保険に関する法令の円滑な実施と事業の健全な発達・労働者等の福祉の向上に資することを目的として設けられた国家資格者です。

社労士の業務は、同法第2条第1項で以下の3種類に分類されています。

  • 1号業務(書類作成):労働社会保険諸法令に基づく申請書・届出書・報告書・審査請求書等の作成
  • 2号業務(手続代理):行政機関等に提出する申請書等の提出代行および事務代理
  • 3号業務(相談指導):労務管理および社会保険に関する相談・指導

このうち1号・2号業務は社労士の独占業務です。社会保険労務士法第27条は、「社会保険労務士でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号及び第2号に掲げる事務を業として行ってはならない」と定めており、社労士資格を持たない者が報酬を得てこれらの業務を行うことを明確に禁じています(昭和43年法律第89号第27条)。

これはつまり、給与ソフトの自動作成機能を使って書類を整えたとしても、それを「代理で提出する」行為は、社労士でなければ業として行えないということを意味します。従業員の入退社、育児休業・産前産後休業の取得・終了、雇用保険の喪失・受給手続き、労災申請、定時決定・随時改定など、企業では年間を通じてこれらの手続きが発生し続けます。

理由②:就業規則・賃金規程の整備はソフトでは対応できない

就業規則とは、常時10名以上の労働者を使用する使用者が、労働基準法第89条に基づいて作成・届出の義務を負う社内ルールの集成です。

就業規則の整備は、単なる「書類作成」ではありません。以下の要素が必要です。

自社の実態に合った規程設計 業種・雇用形態・労働時間制度(フレックス、変形労働時間制等)・テレワークの有無など、自社の就業実態を反映した内容でなければ、実務で機能しません。厚生労働省のモデル就業規則を丸写しにした規程では、トラブル発生時に対応できないケースがあります。

賃金規程との整合性確保 賃金の計算方法・各種手当・賞与の算定基準は、賃金規程として詳細に定める必要があります。給与計算ソフトの設定と賃金規程の内容が乖離していると、計算ミスや未払い残業代問題につながります。

法改正への継続的な対応 育児・介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法など、労働関連法は毎年改正されます。就業規則を最新の法令に対応した内容に維持し続けるには、専門家の継続的なサポートが不可欠です。

労働者代表からの意見書取得・届出 就業規則の作成・変更には、労働者代表からの意見書取得と労働基準監督署への届出が必要です(労働基準法第89条・第90条)。この手続きを適切に行わないと、就業規則の効力が問題となる場合があります。

理由③:労使トラブル・法改正対応はリアルタイムの専門判断が必要

労使トラブルとは、使用者(企業)と労働者(従業員)の間で生じる権利・義務をめぐる紛争・問題のことです。具体的には、解雇・雇い止め・残業代未払い・ハラスメント・メンタルヘルス対応・休職・復職などが含まれます。

給与計算ソフトは、設定された計算式に基づいて正確に金額を算出します。しかし、「この従業員に割増賃金を払うべきか」「管理監督者として扱ってよいか」「固定残業代の設定は適法か」といった法的判断はソフトが行うものではなく、社労士が行うものです。

法改正対応においても同様です。2025年度の主な法改正としては、育児・介護休業法の改正(子の看護等休暇の拡充)、社会保険の適用拡大(短時間労働者への適用要件の段階的変更)、労働条件明示ルールの整備などが挙げられます。これらが自社の給与計算・就業規則・雇用契約にどう影響するかを判断し、対応策を講じるのは社労士の役割です。

このセクションのポイント

  • 社会保険労務士法第27条により、社労士でない者が報酬を得て手続代理・書類作成を業として行うことは禁止されている。
  • 給与計算ソフトは「計算の実行」を担うツールであり、手続きの代理権・法的判断・相談指導は社労士の専権事項である。
  • 就業規則の整備は単なる書類作成ではなく、自社実態に合った設計・法改正対応・労基署への届出まで含む継続的な業務である。
  • 労使トラブルは発生してから対応しようとすると企業側のリスクが高まるため、社労士との顧問契約による予防的対応が重要である。
  • 年間を通じて発生する社会保険・雇用保険の手続きは、スポット依頼より顧問契約の方がコストパフォーマンスが高い場合が多い。

4. 経営者が今すぐ対応すべきこと|社会保険労務士法人とうかいからのアドバイス

「給与ソフトを導入しているから大丈夫」という状態から、適切なリスク管理体制を整えるために、今すぐ着手すべきことがあります。社会保険労務士法人とうかいが、優先度別に整理してお伝えします。

優先度別アクションリストとは?

【今すぐ着手】緊急度・重要度ともに高い項目

  1. 就業規則の最新化確認:就業規則の最終改定日を確認し、直近3年以内の法改正(育児・介護休業法、パート・有期法等)に対応しているか点検する。対応できていない場合は速やかに社労士に相談する。
  2. 社会保険手続きの抜け漏れ確認:直近1年間の入退社手続き・育休・産休関連手続きに漏れがないか確認する。手続き漏れは遡及申請が必要になる場合があり、早期発見が重要。
  3. 固定残業代・みなし残業の適法性確認:固定残業代制度を採用している場合、その設定が労働基準法・判例基準を満たしているか確認する。適法な設定でないと未払い残業代請求のリスクがある。

【期日までに対応】年間スケジュールで管理すべき項目

  1. 算定基礎届(定時決定)の適切な対応:毎年7月に提出する算定基礎届は、給与計算ソフトで金額集計が可能でも、報酬の定義・除外項目・特殊な支給があった場合の判断は社労士の確認が必要。
  2. 随時改定の見逃し防止:固定給の変動から3か月後の標準報酬月額が2等級以上変動した場合、月額変更届の提出が必要(健康保険法第43条・厚生年金保険法第23条)。ソフトの自動計算に頼るだけでなく、社労士によるチェックが有効。
  3. 労働保険料の年度更新(毎年6月1日〜7月10日):賃金総額の集計・概算保険料の申告・確定精算は、正確な賃金台帳の管理と連動する。

【体制整備】中長期的に整えるべき項目

  1. 雇用契約書・労働条件通知書の整備:2024年4月施行の改正で、労働条件の明示事項が拡充されました(就業場所・業務の変更の範囲の明示等)。既存社員・新規採用者へのルール整備が必要です。
  2. ハラスメント防止体制の整備:中小企業でもパワーハラスメント防止措置が義務化されています(2022年4月施行)。就業規則への規定・相談窓口設置・研修実施の状況を確認する。

よくある落とし穴とは?

落とし穴①:給与ソフトの「社会保険手続き機能」で全手続きが完了していると思い込む マネーフォワード クラウド社会保険は書類作成・電子申請の補助ツールです。提出すべき書類の判断・提出先・添付書類の確認・提出期限の管理は、自社担当者または社労士が担う必要があります。ソフトが自動で提出してくれるわけではありません。

落とし穴②:就業規則をネットのテンプレートや10年以上前のものをそのまま使い続ける 労働関連法は毎年改正されます。古い就業規則を使い続けると、法定の内容が規定されていない場合(有給取得義務の規定など)や、最新の法律と矛盾する条文が残ったままになる場合があります。労基署の調査時に指摘されるリスクもあります。

落とし穴③:管理監督者の認定を誤り、残業代を支払っていない 「管理職には残業代を払わなくてよい」という誤解は依然として多くあります。労働基準法第41条の「管理監督者」に該当するかどうかは、肩書きではなく実態で判断されます。要件を満たさない管理職に残業代を支払っていない場合、多額の未払い残業代請求につながるリスクがあります。

落とし穴④:社会保険の加入漏れ・適用判断ミス パートタイム労働者や短時間労働者の社会保険加入要件は、2022年以降段階的に拡大されています(2024年10月以降は従業員51名以上の企業で適用拡大)。加入漏れが発覚した場合、遡及加入・保険料の追納が必要になります。

社会保険労務士に相談するとできることは?

社会保険労務士法人とうかいへのご相談・顧問契約により、以下の業務を担当します。

  • 社会保険・雇用保険の手続き代行:入退社・育休・産休・傷病・障害・老齢関連のすべての申請手続きを代行
  • 給与計算チェック・アドバイス:マネーフォワード クラウド給与等の設定内容の確認・改善提案
  • 就業規則・賃金規程の作成・変更・届出:自社実態に合った規程整備と労基署届出代行
  • 法改正情報の提供と実務対応支援:自社への影響分析と対応策の提案
  • 労使トラブルの予防・対応:問題発生前の予防的アドバイスから、発生後の対応支援まで
  • 労働基準監督署・年金機構等の調査対応:行政調査の立会い・対応支援

このセクションのポイント

  • まず就業規則の最終改定日と社会保険手続きの抜け漏れを確認することが最優先事項である。
  • 給与ソフトの「手続き機能」はあくまで補助ツールであり、手続きの判断・代行は社労士の業務である。
  • 管理監督者認定の誤り・社会保険加入漏れ・就業規則の陳腐化は、100名規模の企業で実際に多く発生している典型的なリスクである。
  • 社会保険労務士法人とうかいとの顧問契約により、年間の手続き業務・法改正対応・トラブル予防を包括的にサポートできる。

5. とうかいが実際に対応した相談事例・よくあるトラブル

以下の相談事例・よくあるトラブルは、実在のクライアント情報を特定できない形で、典型的な相談パターンを一般化して記述しています。個人情報・企業名は一切含みません。

事例①:給与ソフト導入後も社会保険手続きミスが続いたケース

相談内容:製造業・従業員約120名規模の企業から「マネーフォワード クラウド給与を導入してから1年が経つが、日本年金機構から算定基礎届の訂正通知が来るケースが続いている。原因がわからない」というご相談をいただきました。

背景と問題点:調査したところ、2つの問題が重なっていました。1つは、特定の手当(住宅手当・通勤手当等)の報酬への算入判断が誤っていたこと。もう1つは、随時改定(月額変更届)の対象となる給与変動があったにもかかわらず、担当者が判断できずに提出が漏れていたことです。ソフトは金額を正しく計算していましたが、「何を報酬に含めるか」「いつ月変届を出すか」という判断は担当者が行っていたため、繰り返しミスが生じていました。

社労士法人とうかいの対応:まず、過去2年分の算定基礎届・月額変更届の内容を遡って確認し、誤りがあった被保険者の訂正申請を行いました。次に、報酬の算入・除外の判断基準を整理した社内マニュアルを作成し、定期的な確認フローを構築しました。また、給与計算ソフトの設定と実際の賃金規程の内容に乖離があったため、賃金規程を改定し、ソフトの設定と整合するよう修正しました。

結果・教訓:月額変更届の提出漏れを防ぐ仕組みが整い、その後は算定基礎届の訂正通知ゼロを達成しました。給与ソフトの計算精度を活かすには、入力する情報の正確さと判断基準の明確化が前提です。

事例②:就業規則未整備でトラブルが表面化したケース

相談内容:小売業・従業員約80名(パートタイム比率約6割)の企業から「退職した従業員から未払い残業代を請求する内容証明が届いた。どう対応すればよいか」というご相談をいただきました。

背景と問題点:確認すると、就業規則の最終改定が10年以上前で、パートタイム労働者に関する規定がほとんどない状態でした。また、固定残業代制度を導入していたものの、賃金規程への明記・給与明細への内訳明示・事前の合意取得がいずれも不十分で、固定残業代として機能していないと評価されるリスクがありました。給与ソフト上では毎月問題なく計算されていましたが、その計算の根拠となる規程が不備だったため、トラブルにつながりました。

社労士法人とうかいの対応:元従業員への対応を弁護士と連携して進めながら、並行して就業規則・賃金規程の全面改定を実施しました。パートタイム労働者に適用される就業規則の別規程化、固定残業代制度の適法な再設計、固定残業代超過分の精算フローの整備を行いました。また、全従業員への労働条件通知書の再交付と説明会を実施しました。

結果・教訓:就業規則・賃金規程を整備し直すことで、以後同様のトラブル発生リスクを低減しました。給与ソフトによる計算の前提となる「規程の整備」こそが、企業を守る基盤です。

よくあるトラブル①:社会保険の適用漏れ(短時間労働者)

症状:2024年10月の社会保険適用拡大(51名以上の企業)以降、週20〜30時間のパートタイム従業員を多数抱える企業で、加入対象者の特定・資格取得手続きが適切に行われていないケースが発生しています。

原因:給与ソフトの「従業員情報」に週所定労働時間・月額賃金の正確なデータが入力されていない、または適用要件の判断基準(月額88,000円以上・週20時間以上・2か月超の雇用見込み等)を担当者が十分理解していないことが主な原因です。

対処法:まず全パートタイム従業員の雇用条件(週所定労働時間・月額賃金・雇用見込み期間)を整理し、社会保険適用要件に照らして加入漏れがないかを確認します。加入漏れがあった場合は、日本年金機構・ハローワークへの遡及手続きが必要です。自己解決が難しい場合は社会保険労務士法人とうかいへご相談ください。

よくあるトラブル②:育児休業中の手続き抜け漏れ

症状:従業員が育児休業を取得したが、育児休業給付金の申請が遅延・漏れた、または社会保険料免除の手続きが完了していないという状況が発生しています。

原因:育児休業中の従業員に関する手続きは、育児休業開始時(育児休業取得者申出)・給付金申請(2か月ごと)・社会保険料免除申請・終了時の手続きと複数のタイミングで発生します。担当者が手続きフローを把握しきれていない場合や、人事異動で担当者が変わった場合に漏れが生じやすい構造です。

対処法:育児休業取得者ごとに手続きチェックリストを作成し、各手続きの期限・担当者を明確にします。社会保険労務士法人とうかいでは、育児休業関連の手続き一式を代行するサービスを提供しています。

よくあるトラブル③:労働時間管理の不備による残業代リスク

症状:給与ソフトで残業代を計算・支給しているにもかかわらず、労働時間の打刻ルール・自己申告の実態・管理監督者の認定範囲について、法的に問題があると指摘される状況が発生しています。

原因:給与ソフトは連携した勤怠データに基づいて計算するため、勤怠データ自体が適切に管理されていなければ正確な残業代計算になりません。また、「管理監督者」として残業代支給対象外にしている従業員が、実態として労働基準法第41条の要件を満たしていない場合があります。

対処法:勤怠管理システムと給与計算ソフトの連携設定が実態を反映しているか確認します。また、管理監督者として扱っている従業員の職務内容・権限・賃金水準が法的要件を満たすかを社労士に確認してもらうことを強くお勧めします。自己解決が難しい場合は社会保険労務士法人とうかいへご相談ください。

このセクションのポイント

  • 給与ソフトを導入しても、「何を報酬に算入するか」「いつ月額変更届を出すか」の判断は人間(社労士)が行う必要がある。
  • 就業規則・賃金規程の不備は、給与ソフトによる正確な計算があっても、未払い残業代請求・労基署調査のリスクを高める。
  • 社会保険の適用拡大・育児休業関連手続き・管理監督者認定は、中小企業で実際に多くのトラブルが発生している領域である。
  • トラブルは発生後に対応するより、事前の体制整備(就業規則整備・手続きフロー確立・顧問社労士との連携)による予防が重要である。
  • 社会保険労務士法人とうかいでは、これらの典型的なトラブルに対して実務的な解決策を提供しています。

6. 個別相談のご案内|社会保険労務士法人とうかい

社会保険労務士法人とうかいは、社会保険・労務管理の専門家として、中小企業から中堅企業まで幅広い企業の人事労務課題に対応しています。

こんなお悩みをお持ちの方はご相談ください

  • マネーフォワード クラウド給与等の給与計算ソフトを導入済みだが、社会保険手続きの代行や就業規則の整備について不安がある
  • 社労士顧問契約を検討しているが、コストに見合うか確認したい
  • 就業規則を何年も改定していないため、現状のリスクを確認したい
  • 社会保険の加入漏れ・算定基礎届の内容に不安がある
  • 従業員からの労使トラブルの予兆があり、早めに対応したい

専門対応分野

  • 社会保険・雇用保険の手続き代行(入退社・育休・産休・傷病・老齢等)
  • 給与計算サポート・給与ソフト設定確認
  • 就業規則・賃金規程・各種社内規程の作成・変更・届出
  • 労働時間管理・残業代対策のコンサルティング
  • ハラスメント対策・メンタルヘルス対応体制の整備
  • 労働基準監督署・年金機構等の行政調査対応支援
  • 法改正情報の提供と実務対応支援
  • 助成金の申請・活用支援

相談方法

初回のご相談は、お電話またはメールフォームよりお気軽にお問い合わせください。オンライン(Zoom等)でのご相談にも対応しています。

社会保険労務士法人とうかいへのお問い合わせは、ウェブサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。

7. よくある質問(FAQ)

Q. マネーフォワード クラウド給与を使えば社会保険の手続きも全部できるのでは?

A. いいえ、マネーフォワード クラウド給与単独では社会保険手続きの代行はできません。クラウド社会保険(別サービス)と連携することで書類作成・電子申請の補助機能は使えますが、「どの書類をいつ提出すべきか」の判断や手続きの代理提出(2号業務)は、社会保険労務士法第27条に基づき社労士のみが業として行えます。

Q. 給与計算ソフトを導入したのに社労士費用を払うのはコスト的に無駄では?

A. 給与計算ソフトと社労士は担う業務が異なるため、両者を組み合わせることが最もコスト効率が高いといえます。給与計算ソフトは計算業務の効率化・ペーパーレス化を実現し、社労士は手続き代行・規程整備・トラブル予防という専門領域を担当します。社会保険手続きミスや未払い残業代請求が発生した場合のリスクと比較すると、顧問社労士のコストは保険としての価値があります。

Q. 就業規則は10名未満なら作らなくていいの?

A. 常時10名未満の事業場は法的な作成義務はありませんが、10名未満であっても就業規則を整備することを強くお勧めします。就業規則がない場合、労使間のルールが不明確になり、トラブル発生時に対応が困難になります。従業員が増えて10名以上になった段階で速やかに作成・届出が必要です(労働基準法第89条)。

Q. マネーフォワード クラウド社会保険があれば社労士は不要では?

A. いいえ、マネーフォワード クラウド社会保険は書類作成・電子申請の補助ツールであり、社労士の代替にはなりません。手続きの判断・代理提出・相談指導は社労士の独占業務または専門業務であり、ソフトがこれらを担うことはできません。また、提出された書類の内容が適切かどうかの確認・保証もソフトには行えません。

Q. 社労士に頼むと、給与計算もすべて任せなければならない?

A. いいえ、給与計算は自社で行いつつ、社会保険手続きや就業規則整備・相談対応のみを社労士に依頼する契約形態も可能です。社会保険労務士法人とうかいでは、マネーフォワード クラウド給与等を活用して自社で給与計算を行っている企業の、手続き代行・法改正対応・相談対応に特化した顧問契約にも対応しています。

Q. 定時決定(算定基礎届)は給与ソフトで自動計算されるから社労士チェックは不要では?

A. 給与ソフトは入力された給与データを基に集計しますが、「何が報酬に含まれるか」の判断はソフトが行うものではありません。通勤手当・現物給与・臨時的な支給・育児休業中の復帰者の扱いなど、報酬の算入・除外の判断を誤ると算定基礎届の内容が誤りになります。社労士によるチェックが、日本年金機構からの訂正要求を防ぐための有効な手段です。

Q. 労使トラブルが起きてから社労士に相談しても間に合う?

A. 起きてから相談することも可能ですが、発生前に顧問社労士がいる方が対応できる選択肢が広がります。発生後の相談でも対応しますが、証拠の保全・当事者の聴取・書類の整備など初動が重要であり、早期相談が解決の可能性を高めます。社会保険労務士法人とうかいでは、スポット相談にも対応しています。

Q. 社労士に依頼すると、何か月後から対応してもらえる?

A. 顧問契約の場合、契約締結後速やかに対応を開始します。スポット相談の場合は相談内容によりますが、緊急性の高い案件には優先的に対応しています。まずはお問い合わせフォームまたはお電話にてご相談内容をお知らせください。

まとめ

マネーフォワード クラウド給与をはじめとする給与計算ソフトは、給与計算業務の効率化・正確化という点で非常に優れたツールです。しかし、社会保険・労働保険の手続き代行、就業規則・賃金規程の整備、労使トラブルへの対応・法改正への実務判断は、給与計算ソフトがカバーできる範囲ではありません。「ソフトを入れたから大丈夫」という認識は、見えないリスクを積み上げることにつながります。

給与計算ソフトと社労士は、役割の異なる補完関係にあります。社会保険労務士法人とうかいは、マネーフォワード クラウド給与等を導入済みの企業様の手続き代行・規程整備・法改正対応を専門的にサポートします。現状の体制に不安をお感じの方、就業規則を長年改定していない企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事は2026年5月27日時点の情報をもとに作成しています。法令・制度は改正される場合があるため、最新情報は厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/)・日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/)等の公式サイトをご確認ください。 監修・文責:社会保険労務士法人とうかい

参照法令・出典

  • 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)第2条・第27条
  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条・第90条・第41条
  • 健康保険法第43条(随時改定に関する規定)
  • 厚生年金保険法第23条(随時改定に関する規定)
  • 厚生労働省「マネーフォワード クラウド給与」機能概要(https://biz.moneyforward.com/payroll/ 2026年5月確認)
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