高年齢者・障害者雇用状況報告書は、法律に基づき対象企業に提出が義務付けられている重要な書類です。特に、高年齢者雇用状況報告書と障害者雇用状況報告書では、対象となる労働者の定義や人数のカウント方法が複雑なため、正確な理解が求められます。
本記事では、報告書の提出義務から具体的な書き方の注意点、さらには未提出の際に生じる可能性があることや、正確な報告が求められる理由に至るまで、実務担当者が知っておくべきポイントを網羅的に解説します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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そもそも高年齢者・障害者雇用状況報告書とは?
高年齢者・障害者雇用状況報告書は、企業における高年齢者と障害者の雇用に関する実態を把握し、その雇用促進を図るために国へ報告する書類です。 それぞれの法律に基づいて作成され、企業の規模に応じて提出が義務付けられています。
ここでは、これらの報告書の基本的な役割と法的な位置づけについて説明します。

企業の高年齢者と障害者の雇用状況を毎年報告するための書類
この報告書は、企業が毎年6月1日時点での高齢者および障がい者の雇用状況を国に報告するためのものです。 「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」と「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、それぞれの雇用確保措置の実施状況を明らかにすることが目的とされています。
国は集計されたデータを用いて、今後の雇用政策の立案や助成金制度の設計に役立てています。
報告書の提出は法律で定められた企業の義務
報告書の提出は、法律によって定められた企業の義務です。 高年齢者雇用状況報告書は高年齢者雇用安定法第52条第1項、障害者雇用状況報告書は障害者雇用促進法第43条第1項によって、それぞれ対象となる企業への提出が義務付けられています。
この報告義務を怠った場合、特に障害者雇用状況報告書の提出に関しては罰則が科される可能性があるため、法令遵守の観点からも確実な対応が必要です。
【提出義務】高年齢者・障害者雇用状況報告書の対象企業と提出方法
報告書の提出義務は、すべての企業にあるわけではありません。 企業の常用労働者数によって対象となるかどうかが決まります。
ここでは、どのような企業が報告の対象となるのか、また提出期限や具体的な提出方法について、実務上必要な情報を解説します。

報告書を提出する必要がある企業の従業員数
報告書の提出義務は、常用労働者の数によって決まります。高年齢者雇用状況報告書は、常用労働者が21人以上の企業が対象です。一方、障害者雇用状況報告書は、2024年4月1日の法定雇用率引き上げに伴い、対象範囲が拡大されました。具体的には、2024年4月1日からは常用労働者数が40.0人以上の企業に提出義務があります。
2026年4月1日以降は民間企業の法定雇用率が2.7%に引き上げられたことに伴い、常用労働者数が37.5人以上の企業に提出義務があります。自社の常用労働者数を正確に把握し、対象であるかを確認することが最初のステップです。
提出期限は毎年7月15日
高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出期限は、原則として毎年7月15日とされています。 この報告書には、毎年6月1日時点の雇用状況を記載します。提出期限が土日祝日にあたる場合は、翌開庁日が期限となります。 ただし、ハローワーク名古屋中の情報では「今年度の報告期限は7月16日までとなります。」と記載されている場合もあり、提出期限が年によって異なる可能性や、特定のハローワークでの扱いが異なる可能性があるため、最新の情報を確認することが重要です。
この時期は労働保険の年度更新や社会保険の算定基礎届の提出とも重なり業務が繁忙を極めるため、計画的に準備を進めることが重要です。
提出先は管轄のハローワーク
作成した報告書は、企業の本社所在地を管轄するハローワークに提出します。 支店や営業所が複数ある場合でも、本社が一括して取りまとめ、本社の管轄ハローワークへ報告するのが原則です。 提出先を間違えないよう、事前に自社の管轄ハローワークを確認しておきましょう。 h3:提出方法は電子申請・郵送・持参から選択可能 報告書の提出方法には、主に3つの選択肢があります。
1つ目は、政府の電子申請システム「e-Gov」を利用する方法です。 24時間いつでも申請可能で、移動の手間もかかりません。
2つ目は、管轄のハローワークへ郵送する方法。
そして3つ目は、ハローワークの窓口へ直接持参する方法です。 自社の状況に合わせて最も都合の良い方法を選択できます。
【高年齢者雇用状況報告書】項目別の書き方と注意点
高年齢者雇用状況報告書を作成する際には、特に定年制や継続雇用制度に関する項目で、自社の就業規則と齟齬がないかを確認することが重要です。 また、報告の基礎となる常用労働者数の正確なカウントも欠かせません。 ここでは、各項目の書き方と注意すべきポイントを解説します。
「定年制の状況」は就業規則と相違ないか確認する
「定年制の状況」を記入する際は、必ず自社の就業規則を確認し、記載内容と相違がないように注意が必要です。 報告書では、「定年制の定めなし」「60歳定年」「65歳定年」といった選択肢から自社の制度に合致するものを選びます。
もし就業規則と報告内容が異なると、ハローワークから是正指導を受ける可能性があるため、提出前のチェックが不可欠です。
「継続雇用制度の状況」は自社の制度を正しく選択する
継続雇用制度には、定年後も雇用契約を維持する「勤務延長制度」と、一度退職した後に新たな雇用契約を結ぶ「再雇用制度」があります。 報告書では、自社がどちらの制度を導入しているか、あるいは両方を採用しているかを正確に選択しなければなりません。
また、希望者全員を対象とする制度か、特定の基準を設けているかといった運用実態も正しく報告する必要があります。
「常用労働者数」を正確にカウントする方法
報告の基礎となる常用労働者数は、雇用保険の被保険者と基本的に一致します。 具体的には、「1週間の所定労働時間が20時間以上」であり、かつ「1年を超えて雇用される見込みがある」労働者が対象です。
この条件は正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトといった雇用形態にも適用されるため、すべての従業員について条件を満たすかを確認し、正確に人数をカウントすることが求められます。
【障害者雇用状況報告書】間違いやすい項目の書き方と注意点
障害者雇用状況報告書は、高年齢者向けのものよりもカウントルールが複雑で、特に間違いやすいポイントがいくつか存在します。
常用雇用労働者の定義の再確認はもちろん、障害の種類や労働時間に応じた特例的な計算方法を正確に理解しておくことが、適切な報告の鍵となります。

書き方について詳しく解説します。
注意点①:常用雇用労働者の定義と範囲を正しく理解する
障害者雇用状況報告書においても、法定雇用率を算出する基礎となる常用雇用労働者の定義を正しく理解することが極めて重要です。 「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「1年以上の雇用見込みがある」労働者が対象となります。
この人数を誤って算出すると、実雇用率も不正確になり、適切な報告ができません。 パートやアルバイトであっても、条件に該当すれば必ず含める必要があります。
注意点②:障害者数の複雑なカウントルールを把握する
障害者の実雇用率を計算する際の人数カウントは、単純に頭数を数えるだけではありません。 障害の程度や週の所定労働時間によって、1人を2人として数える「ダブルカウント」や、0.5人として換算するルールが存在します。
これらの特例を適用し忘れると実雇用率を低く算出してしまう可能性があるため、複雑なカウントルールを正確に把握することが不可欠です。
重度身体・知的障害者は1人で2人と数える(ダブルカウント)
障害者数のカウントにおいて、重度の身体障害者または重度の知的障害者については、1人を雇用することで2人を雇用しているものとして計算する「ダブルカウント」が適用されます。 このルールは、特に雇用が困難とされる重度障害者の雇用を促進するためのものです。
対象となる従業員がいる場合、この特例を適用することで実雇用率が大きく変動するため、算入漏れがないよう注意深く確認が必要です。
週20時間以上30時間未満の短時間労働者は0.5人で計算する
週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者として障害者を雇用する場合、原則として1人あたり0.5人としてカウントされます。ただし、この短時間労働者が重度身体障害者または重度知的障害者である場合は、1人としてカウントされます。
労働時間に応じた正しい換算を行うことが、正確な実雇用率の算出につながります。
精神障害者の短時間労働者に関するカウントの特例
精神障害者の雇用促進を目的として、特例措置が設けられています。 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者については、当面の間、一定の要件を満たす場合に限り1人としてカウントすることが可能です。
この特例の対象となるのは、精神障害者保健福祉手帳の取得から3年以内の者や、2023年4月1日以降に新規で雇用され、手帳を取得した者などです。 自社に該当者がいないか確認が求められます。
注意点③:実雇用率を計算して法定雇用率を満たしているか確認する
各種カウントルールを適用して算出した障害者数を、常用雇用労働者数で除して実雇用率を計算します。 2024年4月1日から民間企業の法定雇用率は2.5%に引き上げられました。 2026年4月1日からは法定雇用率は2.7%に引き上げられます。
自社の実雇用率がこの法定雇用率を達成しているかを確認する作業は、報告書作成における重要なプロセスです。 もし未達成の場合は、ハローワークから障害者雇入れ計画の作成を指導されることになります。
報告書の未提出や虚偽報告で科される罰則
高年齢者・障害者雇用状況報告書は、法律に基づく提出義務があり、これを怠った場合には罰則が科される可能性があります。 特に障害者雇用状況報告書については、未提出や虚偽報告に対する罰則規定が明確に定められています。
また、法定雇用率が未達成の状態が続くと、行政指導や企業名公表といった厳しい措置につながるリスクもあります。
障害者雇用状況報告の未提出には30万円以下の罰金が科される
可能性 障害者雇用促進法では、障害者雇用状況報告書の提出を怠ったり、内容に偽りの報告をしたりした企業に対し、30万円以下の罰金を科すことが定められています。 これは同法第86条第1号に基づく罰則です。
一方、高年齢者雇用状況報告書には直接的な罰則規定はありませんが、提出は法律上の義務であり、ハローワークからの指導対象となるため、いずれの報告書も誠実に対応しなければなりません。
法定雇用率が未達成だと行政指導や企業名公表のリスクがある
障害者の法定雇用率が未達成の企業に対しては、まずハローワークから「障害者雇入れ計画」の作成命令という形で行政指導が入ります。 この計画に基づいて採用活動を進めるものの、改善が見られない場合は「特別指導」の対象となります。
それでもなお状況が改善されず、指導に従わない悪質なケースと判断された場合には、最終的に厚生労働省のウェブサイトで企業名が公表される措置が取られます。

経営視点のアドバイス
障害者雇用状況報告の未提出や虚偽報告には30万円以下の罰金が科されるほか、法定雇用率が未達成のままだと、行政指導を経て企業名が公表される厳しいリスクがあります。
高年齢者・障害者雇用状況報告書 注意点に関するよくある質問
ここでは、高年齢者・障害者雇用状況報告書の作成や提出に関して、実務担当者から寄せられることの多い質問等にお答えします。
法定雇用率の変更に伴う様式の扱いや、非正規雇用の従業員のカウント、提出後の修正方法など、具体的な疑問点を解消します。
法定雇用率の変更で報告書の様式は変わりますか?
法定雇用率や関連制度の改正に伴い、報告書の様式が変更される可能性があります。
そのため、報告書を作成する際は、必ずその年度の最新の様式を使用してください。 最新の様式は厚生労働省のウェブサイトや管轄のハローワークで入手できます。 古い様式を使用すると再提出を求められることがあるため注意が必要です。
パートやアルバイトは常用労働者の数に含めますか?
含める場合があります。 雇用形態にかかわらず、「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「1年を超えて雇用される見込みがある」という2つの条件を満たす労働者は、常用労働者としてカウントする必要があります。
したがって、条件に該当するパートやアルバイト従業員は報告対象の人数に含めなければなりません。
提出後に報告内容の間違いに気づいた場合の対処法は?
提出後に内容の間違いに気づいた場合は、速やかに提出先のハローワークに電話などで連絡し、訂正したい旨を伝えてください。
担当者の指示に従い、報告書を修正して再提出するのが一般的な流れです。 虚偽報告とみなされることを避けるためにも、ミスが判明した時点で正直かつ迅速に対応することが重要です。
まとめ
高年齢者・障害者雇用状況報告書は、法律で定められた企業の重要な義務です。
報告書を正確に作成するためには、常用労働者の定義や、特に複雑な障害者数のカウントルールを正しく理解しておく必要があります。
提出期限は毎年7月15日であり、他の業務と重なるため計画的な準備が求められます。
未提出や虚偽報告、法定雇用率の未達成は、罰則や行政指導、企業名公表のリスクを伴うため、誠実な対応が不可欠です。



