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コラム

健康保険の被扶養者認定基準が見直されたら給与体系をどう変える?扶養外れリスク・手取りシミュレーション

健康保険の被扶養者認定基準は、定期的に見直されています。2026年以降も段階的な改正が予想されており、認定基準が厳しくなる可能性があります。

今回は、被扶養者認定基準の見直しが企業の給与計算や従業員の手取りに与える影響、そして企業が今から準備すべきことについて、社会保険労務士法人とうかいが詳しく解説します。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア

  • NHK「あさイチ」
  • 中日新聞
  • 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」

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被扶養者認定基準の現在と見直しの動向

現在の被扶養者認定基準とは

健康保険の被扶養者として認定されるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 年間収入が130万円未満(月額換算で約108,000円程度)
  • 被保険者の収入の2分の1未満
  • 同一世帯であること(配偶者や親、子など一定の親族関係)
  • 主として被保険者に生計を維持されていること

    特に注目されるのが「年間収入130万円」という基準です。この金額は、給与だけでなく雑所得やアルバイト収入なども含まれます。

見直しの背景と予想される変化

2024年から健康保険制度の抜本的な改革が進められており、2026年以降の被扶養者認定基準の見直しが検討されています。

主な検討項目は以下の通りです。

  1. 年間収入基準の引き下げ
    • 現在の130万円から120万円程度への引き下げが検討されています
  2. 月額ベースの厳格化
    • 月額108,000円という基準がより厳密に運用される可能性
  3. 判定期間の明確化
    • 過去3か月の平均値ではなく、直近1か月で判定する可能性も
  4. パート・アルバイト従業員への影響拡大
    • 特に配偶者を扶養にしている場合の判定が厳しくなる可能性

どの従業員が影響を受けるか:チェックリスト

被扶養者認定基準の見直しで最も影響を受けやすい従業員は以下の通りです。

対象者影響度理由
配偶者を扶養にしている従業員⭐⭐⭐⭐⭐ 非常に大きい夫婦合わせた家計管理が必要
親を扶養にしている従業員⭐⭐⭐⭐ 大きい扶養認定基準が急に変わるリスク
子どもを扶養にしている従業員⭐⭐⭐ 中程度成長に伴うアルバイト収入が影響
パート・アルバイト従業員の配偶者⭐⭐⭐⭐⭐ 非常に大きい基準引き下げの影響をダイレクトに受ける

チェックリスト:あなたの従業員は大丈夫?

以下に当てはまる場合は、見直し前に対応を検討すべきです。

  • 配偶者が扶養に入っており、月額108,000円ぎりぎりの収入がある
  • 親を扶養にしており、わずかな年金収入がある
  • 子どもがアルバイトをしており、収入が増加傾向にある
  • パート従業員で、配偶者の扶養控除をメインの給与にしている
  • ここ1年以内に扶養者の収入が増えた

3つ以上当てはまる場合は、早めに対応を検討しましょう。

扶養認定基準を超えた場合の給与体系見直しパターン

被扶養者認定基準が見直されて基準を超えた場合、企業が取ることができる対応は3つのパターンがあります。

パターンA:給与額を調整(最も一般的)

方法: 従業員の給与自体を調整し、認定基準以下に抑える

メリット

  • シンプルで分かりやすい
  • 従業員の手取りへの心理的影響が少ない

デメリット

  • 給与を下げることになり、従業員の納得を得にくい
  • 企業側の評価制度との整合性が取りづらい

実例: 月額110,000円→105,000円に調整

パターンB:賞与配分を変更

方法: 月給は変えず、賞与の支給月を変更または支給額を減らす

メリット

  • 月額基準を下げれば、認定基準をクリアできる
  • 年間総支給額は変わらない場合もある

デメリット

  • 賞与の変更により、従業員のモチベーションに影響
  • 社会保険料の計算が複雑になる可能性

実例: 月給105,000円 + 賞与で調整(年間総額は維持)

パターンC:福利厚生で補填

方法: 給与は減らさず、現物支給や福利厚生で対応

メリット

  • 従業員の手取りが減らない
  • 給与総額で示すより、実質的な報酬が見える

デメリット

  • 社会保険料や税金の扱いが複雑になる
  • 制度の設計・管理にコストがかかる

実例: 通勤手当を現物支給に変更、昼食補助を充実 など

被扶養者の扶養外れ前後:手取りシミュレーション

実際に扶養外れになった場合の手取りがどう変わるのか、シミュレーションしてみましょう。

【例】配偶者が扶養認定基準を超えた場合

見直し前:年間収入130万円(月額約108,000円)

月額給与:108,000円
+ボーナス等:0円
──────────────
年間手取り目安:約1,200,000円
  ※配偶者控除により、世帯の税負担が軽減

見直し後:年間収入135万円(月額約112,500円)

月額給与:112,500円
+社会保険料の自己負担が発生(約18,000円/月)
+配偶者控除が失われ、所得税が増加(約8,000円/月)
──────────────
年間手取り目安:約1,160,000円
※年間で約40,000円の手取り減少

結論: わずか月額4,500円の給与増でも、社会保険料と所得税の負担により、手取りは逆に減る可能性があります。

企業の対応方針と従業員への説明方法

企業がすべき準備(チェックリスト)

見直しが実施される前に、企業が準備すべきことは以下の通りです。

【給与計算システム関連】

  • 被扶養者認定基準の変更に対応したシステム設定
  • 扶養外れ時の自動計算機能が正しく動作するか確認
  • 給与明細の表示項目(控除額)の見直し

【ルール整備関連】

  • 被扶養者認定基準見直しに伴う給与体系変更の方針決定
  • 就業規則の「給与規程」で扶養手当などの取り扱いを確認
  • 扶養家族の収入変動への対応ルールを定める

【従業員対応関連】

  • 対象となる従業員への事前説明
  • 扶養認定基準の説明資料の作成
  • 個別の手取り試算の準備

従業員への説明資料の作り方

被扶養者認定基準の見直しは、従業員にとって「給与が減る」と受け取られる可能性があります。適切な説明が不可欠です。

説明の3ステップ

  1. なぜ見直しが起きるのか(背景説明)
    • 健康保険制度の持続可能性
    • 公的保険と個人の負担のバランス
  2. 自分たちにどう影響するのか(影響説明)
    • 年間130万円の基準が変わる可能性
    • 扶養家族の収入に対する見直し
  3. 企業としてどう対応するのか(対応方針)
    • 給与体系をどう変更するか
    • 従業員個別の手取り試算結果

社会保険料と所得税:細かい計算のポイント

被扶養者認定基準を超えた場合、以下の社会保険料と税金が新たに発生します。

健康保険料(被扶養者でなくなった場合)

配偶者が被扶養者から外れた場合、配偶者本人が健康保険の加入義務が発生します。

保険料の試算例

  • 月額給与112,500円の場合
  • 健康保険料:約6,200円/月(40歳未満の場合)
  • 厚生年金保険料:約10,200円/月
  • 合計:約16,400円/月が新たに負担増

所得税の増加

配偶者控除が失われることで、所得税が増加します。

  • 配偶者控除額:380,000円(通常)
  • 失われた控除による所得税増:約7,600円/月(税率20%想定)

扶養家族数の減少による影響

扶養家族が1人減ると、被保険者側の社会保険料計算にも影響する可能性があります(健保組合による)。

企業の実務対応:チェックリストと導入タイムライン

見直しに向けた実務対応を、タイムラインで整理しました。

【今からすぐできること】

  • 現在の被扶養者認定状況を把握(人数、世帯数)
  • 認定基準に近い従業員をピックアップ
  • 給与計算ソフトの仕様確認

【3か月以内にすべきこと】

  • 給与計算ソフトベンダーへの問い合わせ(対応予定の確認)
  • 就業規則・給与規程の見直し
  • 対象従業員への事前アナウンス

【見直し実施前にすべきこと】

  • 全従業員への説明会実施
  • 給与計算システムのテスト運用
  • 個別の手取り試算と説明準備

よくあるご質問

Q1:「年間収入130万円」の「収入」に何が含まれますか?

A:給与、アルバイト、年金、不動産収入、副業による所得など、すべての収入が対象です。ただし、一時的な支出(医療費控除など)は含まれません。

Q2:見直しが実施されたら、すべての従業員が扶養外れになりますか?

A:いいえ。基準がわずかに引き下がるだけなら、影響を受けるのは「現在、基準に近い従業員」に限定されます。

Q3:扶養を外れたら、雇用保険や労災保険はどうなりますか?

A:健康保険と異なり、雇用保険・労災保険は「労働時間」で判定されるため、扶養・扶養外の区分は関係ありません。

Q4:企業側で「給与体系の変更」を強制できますか?

A:就業規則に基づいた変更であれば可能ですが、従業員の不利益になる場合は説明と同意が必要です。一方的な給与低下はトラブルのもとになります。

最後に:扶養認定基準見直しへの対応は「早めの準備」が重要

健康保険の被扶養者認定基準の見直しは、従業員の手取り給与に直結する重要なテーマです。

企業がいま準備すべきことは以下の3点です。

  1. 現状把握 — 対象従業員の特定と影響額の試算
  2. ルール整備 — 就業規則・給与規程の見直し
  3. 従業員説明 — わかりやすい説明資料の準備

見直しが実施される直前では、給与計算システムの対応に時間がかかり、従業員への説明も急ごしらえになってしまいます。

複雑な制度だからこそ、今から準備を始めることが、トラブルのない対応を実現する鍵です。

🎯 扶養認定基準の見直しについて、企業担当者のお困りごと

被扶養者認定基準の見直しに対応するためには、以下のような対応が必要になります。

  • 現在の従業員の被扶養者認定状況を正確に把握すること
  • 給与体系や手取りへの影響を試算すること
  • 対象従業員への説明資料を準備すること

これらの対応は、給与計算や社会保険手続きの専門知識が必要です。

企業の担当者だけでは判断が難しい場合は、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。

社会保険労務士法人とうかいでは、被扶養者認定基準の見直しに対応した給与体系の見直し、従業員説明資料の作成、給与計算システムの対応などをトータルにサポートしています。

「このままでいいのか、給与を変えるべきなのか判断したい」「従業員にどう説明すればいいのか分からない」といった場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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