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コラム

育児・介護休業中は社会保険料が免除される?免除条件・手続き・給与計算上の注意点

育児休業や介護休業を取得する従業員がいる場合、企業の給与計算担当者が必ず確認すべき制度が「社会保険料の免除制度」です。

適切に対応すれば、従業員にとって大きなメリットになる一方、手続きを誤ると重大な給与計算ミスにつながる可能性があります。

今回は、育児・介護休業中の社会保険料免除制度の仕組み、申請手続き、給与計算上の注意点について、社会保険労務士法人とうかいが詳しく解説します。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア

  • NHK「あさイチ」
  • 中日新聞
  • 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」

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育児・介護休業中の社会保険料免除制度とは

何が免除されるのか

育児休業中や介護休業中は、一定の条件を満たすことで、以下の社会保険料が被保険者(従業員)負担分が免除されます。

【免除の対象】

  1. 健康保険料 — 従業員負担分が全額免除
  2. 厚生年金保険料 — 従業員負担分が全額免除
  3. 雇用保険料 — 免除されない(注意)

【免除されない保険】

  • 雇用保険料:通常通り徴収(保険関係は継続)

なぜこのような制度があるのか

育児や介護は、従業員にとって経済的な負担が大きい時期です。この負担を軽減し、安心して育児・介護に専念できるように、国が設けた制度です。

制度の背景

  • 少子化対策(育児支援)
  • 介護離職の防止
  • 仕事と家庭の両立支援

育児休業中の社会保険料免除:条件と手続き

育児休業で社会保険料が免除される条件

育児休業中の社会保険料免除には、以下の条件があります。

【免除対象者の条件】

  1. 育児休業をしていること
    • 育児休業法に基づいた正式な休業
    • 保育園の入園待ちなど「休業延長事由がある」場合も対象
  2. 月末時点での状態
    • 月の末日時点で「育児休業中」であること
    • 日付は月末が判定基準(中途復帰の場合は月ごとに判定)
  3. 給与支払いの有無
    • 給与が支払われていなくても、または支払われていても対象(給与の有無を問わない)

【重要】 育児休業給付金をもらっていても、社会保険料の免除対象になります。これは大きなメリットです。

申請手続きの流れ

育児休業中の社会保険料免除を受けるには、以下の手続きが必要です。

ステップ1:申請書の準備

健康保険組合(または全国健康保険協会)と年金事務所に提出する書類を準備します。

【提出書類】

  1. 「育児休業保険料免除申請書」(健康保険)
  2. 「厚生年金保険育児休業保険料免除申請書」(厚生年金)

両書類は以下から取得できます。

ステップ2:書類に記入

必要な情報:

  • 従業員の氏名、生年月日
  • 被保険者番号
  • 育児休業の開始日・終了予定日(正確な日付が重要)
  • 子どもの生年月日

ステップ3:提出

  • 健康保険関係:加入先の健康保険組合 or 全国健康保険協会
  • 厚生年金関係:管轄の年金事務所

多くの企業は、給与計算ソフト業者や社労士を通じて提出します。

ステップ4:確認と免除開始

提出後、通常2~3週間で審査が完了します。

免除開始月

  • 申請が承認された月の翌月から免除が開始される
  • 例:5月に申請 → 6月分から免除対象

介護休業中の社会保険料免除:育児休業との違い

介護休業で社会保険料が免除される条件

介護休業中の社会保険料免除は、育児休業と異なるルールがあります。

【免除対象となる介護休業】

  1. 介護休業法に基づいた休業
    • 要介護状態にある家族(親、配偶者、子など)を介護するための休業
  2. 連続する最長93日の期間
    • 介護休業は「通算93日」の範囲内で、複数回に分割取得可能
    • この期間内の社会保険料が免除対象
  3. 月末時点での判定
    • 育児休業と同様、月末時点で介護休業中であることが要件

【育児休業との主な違い】

項目育児休業介護休業
休業期間子どもが3歳になるまで(延長可能)通算93日以内
免除期間休業期間全体93日以内の期間
対象家族子ども両親、配偶者、子ども等
復帰後免除終了免除終了

介護休業での申請手続き

介護休業の場合、申請書は異なります。

【提出書類】

  1. 「介護休業保険料免除申請書」(健康保険)
  2. 「厚生年金保険介護休業保険料免除申請書」(厚生年金)

その他の手続きは育児休業と同様です。

給与計算上の注意点:免除期間中の計算方法

社会保険料を控除しない設定

免除対象月は、給与計算時に社会保険料を控除しません。

【給与計算の例】

改定前(免除なし):
基本給:250,000円
– 健康保険料:12,000円
– 厚生年金保険料:23,000円
– 雇用保険料: 1,000円
──────────────
手取り給与:214,000円

改定後(免除対象月):
基本給:250,000円
– 健康保険料:0円 ← 免除
– 厚生年金保険料:0円 ← 免除
– 雇用保険料:1,000円 ← 免除されない
──────────────
手取り給与:249,000円 ← 大幅増加

従業員にとっての大きなメリット — 免除期間中は手取り給与が月35,000円程度増加します。

給与計算システムでの設定方法

ほとんどの給与計算ソフトには、「育児休業中」「介護休業中」のフラグを立てられる機能があります。

【給与計算ソフトでの設定例】

  1. 従業員情報に「育児休業開始日」「終了予定日」を入力
  2. その期間中は自動的に社会保険料が「0円」に設定される
  3. 給与明細には「免除対象」の旗が表示される

主なソフトの対応状況

ソフト対応状況
弥生給与対応(フラグ機能あり)
オービック勘定奉行対応(詳細設定可能)
クラウド給与計算対応(多くはテンプレート化)

免除終了後の保険料計算:注意が必要なポイント

復帰後の計算方法

育児・介護休業から復帰した場合、社会保険料の計算にいくつかの注意点があります。

注意点1:復帰月の判定

復帰のタイミングが重要

例:6月15日に復帰した場合

【判定方法】
- 月末時点で「休業中」か「勤務中」か
- 6月30日時点で勤務中 → 6月分から保険料が復帰される
- 6月30日時点で休業中 → 7月分から保険料が復帰される

企業と従業員の間で「復帰日」を明確にしておくことが重要です。

注意点2:給与が変わっていないか確認

休業前後で給与(報酬月額)が変わった場合、社会保険料の計算方法が異なります。

【例】育児休業前後で給与が変わった場合

休業前給与:月額250,000円
休業期間:6か月
復帰時給与:月額280,000円(昇給)

→ 復帰後の保険料は「280,000円ベース」で計算
→ 社会保険料が増加する可能性

扶養認定基準との組み合わせ:複雑ケースの対応

育児・介護休業中に、従業員の配偶者が「被扶養者認定基準を超える可能性」がある場合、複雑な対応が必要になります。

【複雑ケースの例】

状況:
- 従業員Aが育児休業中
- A の配偶者がアルバイトで月額100,000円を稼ぐ
- A の給与がないため、「配偶者が被扶養者になれるか」が問題

判定方法:
- A の給与がない場合、配偶者は「A の扶養」ではなく「本来の基準」で判定
- この場合、配偶者の月額100,000円が認定基準(約108,333円)以下かどうかで判定

このような状況では、健康保険組合に個別相談することをお勧めします。

よくある疑問Q&A

Q1:育児休業給付金を受け取っているのに、社会保険料も免除されますか?

A:はい、免除されます。育児休業給付金の受給と社会保険料免除は別の制度であり、両方受け取ることができます。これは国が「子育て支援」として設けた制度です。

Q2:育児休業中に復帰した場合、給与計算をどうしますか?

A:復帰日による判定が重要です。月末時点で「勤務中」であれば、その月から社会保険料が復帰されます。正確には企業の給与計算システム設定を、復帰日に合わせて変更する必要があります。

Q3:給付金なしで育児休業を取っている場合、社会保険料は免除されますか?

A:はい、免除されます。給付金の有無に関わらず、育児休業法に基づいた正式な休業であれば、社会保険料の免除対象になります。

Q4:育児休業が終わって復帰したのに、保険料の免除が続いていました。どうすればいいですか?

A:これは「申請書の『終了予定日』が誤っていた」可能性があります。直ちに健康保険組合と年金事務所に報告し、遡及して保険料を徴収する手続きを取る必要があります。(企業の給与計算誤りになる可能性あり)

Q5:介護休業で複数回の分割取得をする場合、どの期間が免除対象になりますか?

A:複数回の分割取得でも、通算93日以内の範囲で免除対象になります。例えば30日取得、60日取得の計2回の場合、合計90日が免除対象です。93日を超える部分は免除対象外になります。

実務対応:給与計算での確認チェックリスト

育児・介護休業中の従業員がいる場合、給与計算時に以下の項目を必ず確認してください。

【毎月の確認事項】

  • その従業員が「休業対象月」に該当しているか
  • 申請書の「終了予定日」を確認(誤った日付になっていないか)
  • 社会保険料が正しく「0円」に設定されているか
  • 雇用保険料は徴収されているか(雇用保険は免除対象外)
  • 給与明細に「免除対象」の旨を表示しているか

【復帰前の確認事項】

  • 復帰予定日を正確に把握
  • 給与計算システムで「免除終了日」を更新
  • 復帰月の社会保険料計算設定を変更
  • 復帰時に給与が変わった場合、年金事務所への「報酬月額変更届」を提出

【書類の保管】

  • 申請書類のコピー保管
  • 申請から承認までの通知文書
  • 免除対象期間の記録(トラブル対応時のため)

トラブルケース:よくある給与計算ミスと対策

ケース1:免除期間を超過して保険料免除を続けた

状況

  • 育児休業が3月に終了
  • しかし給与計算システムの「終了日」を誤って4月に設定
  • 4月も社会保険料が免除されてしまった

対策

  1. すぐに健康保険組合と年金事務所に報告
  2. 過納分の社会保険料を従業員から徴収
  3. 給与計算システムを修正し、以後の誤りを防止

ケース2:復帰月を誤って認識した

状況

  • 従業員が4月15日に復帰(給与支給日は25日)
  • 4月25日の給与時点で「まだ休業中」と誤認
  • 4月の社会保険料を免除したままにした

対策

  • 「月末時点での状態」が判定基準であることを確認
  • この場合、4月30日時点では勤務中のため、4月から保険料復帰が正しい
  • 過納分を遡及徴収する手続きが必要

ケース3:扶養者の状態変化を見落とした

状況

  • 従業員Bが育児休業中(給与なし)
  • Bの配偶者がアルバイト収入を増やした
  • 結果、配偶者が「被扶養者」ではなくなるべき状態に

対策

  • 休業中も「扶養状況の変化」は起こる可能性
  • 健康保険組合に「扶養認定状況の確認」を取る習慣をつける
  • 従業員にも「配偶者の収入変化があれば報告」するよう案内

給与計算システムの対応:設定ポイント

弥生給与での設定例

【設定手順】

  1. 「従業員情報」 → 「保険加入状況」タブ
  2. 「育児休業開始日」「終了予定日」を入力
  3. 自動的に免除対象月が計算される
  4. 社会保険料が「0円」に自動設定される

クラウド給与計算での設定例

多くのクラウド型給与計算(例:給与奉行クラウド)では、以下のように設定します。

【設定手順】

  1. 従業員の「休業情報」セクションに「育児休業」を選択
  2. 「開始月」「終了月」を入力
  3. 該当月の社会保険料が自動的に除外される

2026年以降の制度改正予定:注視すべき点

育児・介護休業制度は、今後も改正が予定されています。

【予想される改正項目】

  1. 育児休業給付金の給付率引き上げ
    • 現在:賃金の約67% → 70~80%への引き上げ検討
  2. 社会保険料免除期間の拡充
    • 介護休業の免除期間の延長の可能性
  3. 扶養認定基準の厳格化
    • 育児休業中の配偶者の扶養認定が変わる可能性

企業の給与計算担当者は、厚生労働省の発表を注視し、システム対応時期を早めに把握することが重要です。

🎯 育児・介護休業中の社会保険料免除について、給与計算担当者のお困りごと

育児・介護休業中の社会保険料免除に対応する際には、以下のようなお困りごとが生じます。

  • 「申請の手続きが複雑でよく分からない」
  • 「給与計算システムの設定がうまくいかない」
  • 「復帰後の計算方法が不安」
  • 「過去のミスに気づいたがどう対応すればいいのか」

これらは給与計算と社会保険の専門知識が必須です。

社会保険労務士法人とうかいでは、育児・介護休業中の社会保険料免除申請、給与計算システムの設定、復帰時の対応などをトータルにサポートしています。

「社会保険料の免除申請をしたい」「給与計算の設定を確認したい」「過去の計算に誤りがなかったか確認したい」といった場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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