2024年6月に始まる4万円の定額減税は、所得税と住民税の負担を軽減する一時的な措置です。年収が一定額未満の個人や特定の世帯状況にある人が主に対象です。税負担が軽減されることで可処分所得が増え、消費活動の促進や経済循環の活性化が期待されます。
4万円がどのように計算されるかは、所得税と住民税の申告に基づき決定されますが、具体的な制度の内容についてよくわからない人も多いのではないでしょうか。
今回は、定額減税の具体的制度内容、対象者、期間、申請方法などわかりやすく解説します。
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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定額減税は2024年6月から導入される政府が実施する重要な経済対策の一つです。この施策は、物価上昇などの国民の経済的負担軽減を主な目的として、個人の手取り額を増やし、消費に回せる余裕が生まれることで、消費活動を活性化させます。個人消費の増加は企業収益の向上につながり、結果的に雇用の安定や新たな雇用創出に寄与することが期待されます。財政支援を通じて景気を刺激し、回復への道をつける狙いがあります。
特定の収入以下の世帯や個人を中心に、所得税や住民税を一律で減額する制度で、多くの国民が恩恵を受けると予想されています。しかし、対象者、減税額、適用期間など、制度の詳細がわかりずらいと疑問を持つ人も少なくありません。
2024年6月から定額減税がスタートします。給与計算の担当者にとっては、減税されるのはうれしいけど、業務が増えると気が重いという人も多いかもしれません。いざ給与計算時に慌てないよう、社員の扶養状況の確認など早めに対応しておきましょう。
定額減税は、対象者全員に同額の税金減額が適用される仕組みです。一方、定率減税は、納税者の所得に応じて税額が減る方式です。定額減税は、収入にかかわらず全対象者が同じ金額の恩恵を受けるので、低収入の家庭ほど恩恵を大きく感じます。これにより、低収入者の税負担が軽減され、消費の刺激と経済の活性化が狙われています。一方、定率減税は、所得が高いほど減税額が大きくなり、高収入者の税負担が軽減されますが、所得格差の是正には繋がりにくいです。
定額減税の導入背景には、政府が直面する経済問題や市民への配慮、特に低収入者への支援が重視されています。
定額減税を知るにあたっては、所得税と住民税について理解しておかなければなりません。所得税は、個人の収入に応じて国に納める税金です。毎年1月1日〜12月31日の間の所得をもとに計算されます。この税金は所得によって税率が変動し、収入が多い人は高い税率で課税されます。
一方、住民税は1月1日時点で住所を置いている市区町村や都道府県などの自治体に支払われるもので、所得に基づいて算出される所得割と全住民が均等に負担する均等割が設けられており、その合計額が住民税として徴収されます。住民税は前年の所得に基づいて計算されます。
定額減税は、所得税と住民税の減税がされるもので、具体的な減税額については、所得に応じて所得税3万円、住民税1万円の計4万円の減税が予定されています。減税の対象となるのは、納税者本人とその扶養家族です。夫婦2人・子供1人の家族であれば、12万円の減税となるわけです。定額減税は、一律の減税額が適用されるため、低所得者ほど税負担の軽減を大きく実感します。収入に関係なく同じ額の減税が行われます。
定額減税制度は、所得税・住民税が軽減される制度ですが、その対象は一定の範囲に定められています。定額減税は1人あたり所得税3万円、住民税1万円の計4万円が減税されるものですが、年収が2,000万円を超える人については対象外となっています。なぜなら、この制度は中低所得者層の経済活動を促進し、広範囲にわたって経済的支援を提供することを目的としているからです。これは限られた財源を必要としている層に的確に配分しようとする政策の意図を反映しています。
対象となる年収2000万円以下の人々はサラリーマン、中小企業の経営者、フリーランスやパート、アルバイトをしている人など幅広い職業の人たちが含まれます。
定額減税の対象かどうかを知るためには自身の所得水準を正確に把握し、適用条件を満たしているかを確認することが重要です。
減税の適用を確実に受けるためには、いくつかの注意が必要です。この度の定額減税は、2024年度の所得税と住民税に限り実施される特別措置として計画されています。2024年6月から開始されます。
納税対象者にとっては、この減税措置を利用するための特別な申請手続きは必要ありません。すなわち、該当する方全員が自動的に所得税と住民税の計算時に、減税額を適用されることになります。ただし、企業の給与担当者にとっては、所得税・住民税に関わることですから、給与計算処理に大きく影響しますので、正しい理解をしておく必要があるでしょう。
・所得税3万円
給与から源泉徴収されている場合には、2024年6月〜12月までの7か月間に、1人あたり3万円分を直接減らすことになります。例えば、2024年6月の所得税が通常4万円の場合には、4万円から3万円を差し引き、1万円の所得税を源泉徴収することになります。
また、所得税が3万円に満たない場合には、翌月以降に繰り越して減税していきます。2024年6月〜8月の所得税が各1万円だった場合には、6月〜8月の所得税については徴収なし0円ということになります。
・住民税1万円
住民税については、2024年6月分の徴収はされず、7月〜2025年6月までの11か月間にわたり減税分を差し引いた額で徴収されます。
定額減税と言っても所得税と住民税では、その減税する方法が異なります。給与計算担当者にとって、気をつけておきたいのは所得税の減税についてです。2024年6月からの給与から減税の対応をしなければなりません。一方、住民税については、例年通り各自治体から知らされる住民税の通知書に従って、給与から控除すれば対応が可能です。
2024年の定額減税は、国民の生活水準の向上と経済全体の活性化を目的とする政府の施策です。多くの人が対象になるこの制度は、所得税3万円・住民税1万円の計4万円が減税されるとあって、納税者にとってはメリットのあるものですが、住宅ローン控除、ふるさと納税などにどのように影響を及ぼすのかも知っておきたいところです。
定額減税は、住宅ローンを利用している人にとって影響はあるのでしょうか。住宅ローン控除は、住宅を新築や増改築し金融機関で資金を借りた場合に、年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除できます。ここで心配されるのが、定額減税で所得税が減ることで、住宅ローン控除にも影響するのかという点です。実際には、定額減税は住宅ローン控除後の金額から減税されるため、影響はありません。しかも減税しきれない場合には、差額分を給付金として受け取れるので、問題ありません。
定額減税は、所得税・住民税の減税策ですが、住民税に関わるふるさと納税への影響はあるでしょうか?
ふるさと納税についても、定額減税による影響はありません。ふるさと納税の計算においては、定額減税をされる前の所得で上限額が決定されるので、今までどおり所得に応じた限度内でふるさと納税を楽しむことが可能です。
定額減税政策とふるさと納税の組合せにより、市民が地方支援に手軽に参加できるようになり、その結果、地方自治体の多様なプロジェクトや取り組みへの支援が増加することが期待されています。
2024年6月にスタートする定額減税は多くの市民にとって大きな関心事ですが、中には所得の少ない非課税世帯など恩恵を直接受けられない方もいます。しかし、その不公平感を払拭するため、定額減税ではない給付金としての支援が行われます。
税負担の軽減を実感しにくい非課税世帯や収入が少なく経済的困難に直面している低所得者への支援も行われます。具体的には、住民税非課税世帯には、1世帯あたり7万円の給付金が支給されます。給付金が7万円と定められた背景には、生活必需品の価格上昇や教育費、医療費などの負担増加を考慮してのものです。つまり、この給付金によって経済的に困難な状況にある世帯が少しでも生活の質を向上させることを目的としています。また、住民税の均等割は納税しているものの所得割は非課税の世帯もあります。その場合には1世帯あたり10万円の給付金が支給されます。
さらに非課税世帯や低所得世帯において、18歳以下の子供を扶養している場合には、1人あたり5万円の給付金も支給されます。
受給資格や申請方法については、自治体のウェブサイトや窓口で確認できます。条件を満たす世帯は、必ず申請手続きを行うことでこの給付金を受け取ることが可能です。
政府の方針や経済状況によっては、今後もさらに追加的な情報が提供されることも考えられますので、常に最新の情報を得ることが重要です。
2024年の定額減税が私たちの暮らしにどのような影響を与えるでしょうか。この政策は、国民の手取り額を直接増加させることを目的としています。増えた収入は消費活動を刺激し、経済の活性化に繋がる可能性があります。
定額減税は、税金が一律に減額されることを意味しますが、その具体的な効果は個人の収入レベルや消費行動によって異なります。収入が増えると、消費に回す余裕が生まれ、家計に良い影響をもたらすことが期待できます。また、減税による手取り額の増加は、個人の節約や投資への余裕を高めることにも繋がります。
しかし、定額減税の影響は良い面だけではありません。国の税収が減少することで、公共サービスの質の低下や新たな財政赤字の増大など、経済に潜在的なリスクをもたらす可能性も否定できません。これらの課題をどのように乗り越え、バランスの取れた経済政策を実現するかが、政府にとっての大きな挑戦です。
給与計算担当者にとって定額減税に関する業務の負担が増すことが予想されます。利用している給与システムの対応状況などを事前にチェックしておくことをおすすめします。何から準備しておくべきか不安な場合には、税理士や社労士にご相談してみることもおすすめです。