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労働契約とは?労働条件通知書と雇用契約書の違いについて社会保険労務士が分かりやすく解説します。

社労士が解説!
労働契約とは?労働条件通知書と雇用契約書の違いについて

この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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労働契約とは、使用者の指揮命令のもとに行られる労務を指します。

就業規則とは会社と従業員のルールを定めた規則です。
ただし、規則であると同時に、法的な書類でもあります。就業規則は労働基準法第89条第1項により「常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し、行政官庁に届出なければならない」と規定されています。

労働契約とは?

会社と従業員との契約といえば、「労働契約」。ほぼ同様の意味で「雇用契約」を使う場合もありますが、厳密には異なります。

■雇用契約とは…

民法に規定されており、「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約すること」としています。

■労働契約とは…

労働契約法に規定されており、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意すること」と規定されています。雇用契約と違い、使用者の指揮命令のもとに労務が行われます。一般的に、会社と従業員が結ぶ契約については、多くの場合、こちらを指すことになります。

書面で契約を交わす場合、労働契約法でいえば「労働契約書」ですが、同居の親族など労働者とも言えない人にも適用できるよう「雇用契約書」と表現する場合もあります。

厳密には上記のような違いがありますが、運用上、違いを意識することは少ないと思います。厳密に考えなければならない場合以外は意識する必要はないでしょう。

 

「労働契約」「雇用契約」と「業務委託契約」の違い

「労働契約」「雇用契約」と「業務委託契約」の違いも、しっかりと押さえておきましょう。

名目上、「業務委託契約」を結んでいても、実態は雇用であると判断されて、労働基準法その他の関係規定の適用を受けるといったことがないように、「業務委託契約」について、確認しておきます。

「業務委託契約」は、当事者の一方が注文主から受けた特定の仕事(委託業務)の処理や、仕事の完成(成果物)を約束し、注文者がそれに対して報酬を支払う契約です。請負契約や委任契約となり、「労働契約」や「雇用契約」のように、「使用者」と「労働者」という関係ではありません。

注文主は、具体的な指揮命令を行うことができません。

形式上は「業務委託契約」にもかかわらず、会社の指揮命令下で働いていたり、報酬が指揮命令の下で働いていたことに対する報酬と判断されると、実態は「労働契約」「雇用契約」であるにもかかわらず、労働法の適用を逃れようとする「偽装請負」と判断されてしまいますので、注意が必要です。

労働契約の基本原則

労働契約は労働契約法に基づき、会社と従業員が個別に結んだ一人一人のルール。この労働契約法には、「労働契約5原則」がベースとなっています。
(1) 労使の対等の原則
労働契約は、労使対等の立場における合意に基づいて締結・変更すべきものとする
(2) 均衡を考慮の原則
労働契約は、正社員や契約社員といった雇用形態ではなく、就業の実態によって締結・変更されるべきもの。
(3) ワークライフバランス配慮の原則
労働契約は、育児や介護などの問題を考慮して締結・変更されるべきものである。
(4) 労働契約遵守・信義誠実の原則
労使が労働契約を遵守し、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
(5) 権利濫用禁止の原則
労使共に労働契約に基づく権利行使の濫用は許されない。

 

社労士小栗の経営視点のアドバイス

弊社の顧問先でも業務委託契約だと思っていたが、実は雇用契約だったということがあります。雇用契約ですので、高額な残業代の支払いがありました。業務委託契約書があるから業務委託だと思っていらっしゃる方もいますが、そうではありません。1社専属の場合など境目があいまいな場合は専門家に相談してすすめることをお勧めします。

労働契約の締結

労働条件通知書を発行する際は、6つの絶対的明示事項を必ず盛り込みましょう。

労働契約は、お互いが合意すれば口約束でも成立します。しかしながら、労働基準法第15条では立場の弱い労働者を保護するため、使用者は、労働契約を締結する際には、必ず労働者に労働条件を記した「労働条件通知書」の交付を義務としています。

会社・従業員双方の署名・押印などをしっかりと残しておきたい場合などは、「雇用契約書兼労働条件通知書」として、従業員に署名してもらうことが一般的です。

労働条件の明示

「労働条件通知書」の明示事項は、以下のとおりです。2019年4月より、従業員が希望した場合は、書面以外にFAX、電子メール、SNSなどでも明示できるようになりました。

くれぐれも電子メールやSNSでの明示が認められるのは従業員が求めた時だけです。従業員の求めもなく、就業規則で規定して、電子メールやFAXでの明示を行うことは違法です。

【絶対的明示事項(必ず)】
① 労働契約の期間に関する事項
② 有期労働契約の更新の基準に関する事項
③ 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
④ 始業・終業時刻、所定労働時間超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、2交代制等に就業させる場合に関する事項
⑤ 賃金の決定・計算・支払い方法、賃金の締め切り、支払い時期、昇給に関する事項(退職手当及び臨時の賃金は除く)
⑥ 退職に関する事項(解雇を含む)

【相対的明示事項(定めがあるときは。就業規則で定めている場合は、そちらでもOK)】
昇給に関する事項
退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項
臨時に支払われる賃金・賞与などに関する事項
労動者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項
安全衛生に関する事項
職業訓練に関する事項
災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
表彰、制裁に関する事項
休職に関する事項

法的には絶対的明示事項を明示し、必要に応じて相対的明示事項を明示することで足りますが、最近は労働契約にも透明性が求められています。多くの労務トラブルが労働契約時の「曖昧さ」によって引き起こされています。
人手不足なので、会社にとって言いにくいことは伝えたくないかもしれませんが、後々のトラブルを防止する意味でも、社員を定着させるためにも、労働条件は採用時にできる限り明示しましょう。

その際、ただ労働条件を伝えるのではなく、会社のコンセプトや大事にしている思いも一緒に伝えることが大切です。

契約期間の明示

雇用期間の定めのない一般的な正社員の契約と比べ、契約社員やアルバイト・パートなど、期間を定めて契約する「有期雇用(労動)契約」の場合は、注意が必要です。

会社は、有期の従業員と契約した場合、契約期間を明示せず雇用した場合は、「期間の定めなし」ととられるため、一定の期間が過ぎたあとに、「会社都合により契約終了」とはできません。

また、契約期間を設定するのと合わせて、契約を更新する可能性の有無、更新する場合の条件などを明記しておきましょう。更新する条件をクリアしているにも関わらず、契約更新しないなどの雇い止めは、不法な契約打ち切りとして、トラブルや訴訟になるケースもあるので、明確に労使がわかる基準を明示しておきましょう。

さらに、契約期間には上限があります。有期契約の場合の上限は、原則として3年。ただし、専門的な知識等を有する労働者、満60歳以上の労働者については、5年が限度です。

契約更新時のトラブルにならないよう、以下を確認しておくことがポイントです。

雇用期間が終了しているにも関わらず、更新の手続きをせず、そのまま継続されている場合は、「以前と同じ労働条件にて、期間の定めのない契約が締結された」と判断されることもあるため、契約期間はしっかり把握し、管理していくことが重要です。

労働契約の変更

大矢です。労働契約の変更は、内容によっては慎重に行う必要があります。

採用時に締結された労働契約も、賃金や勤務体系の変更など、労働条件の変更に伴って、新たな契約の締結が必要な場合があります。労働条件が有利になる場合は、あまり問題となることはないと思いますが、不利になる場合はトラブルになるケースもありますので、慎重に進める必要があります。

会社が労働条件を変更する場合には、主に以下の方法があります。

労働条件変更について、従業員それぞれ個別に同意を得て、労働条件通知書を明示したり、雇用契約書を締結する
② 就業規則を変更する


なかでも、賃金に関しては、会社が一方的に変更するなどは、不利益変更となるため、簡単に認められません。その変更に合理性があるかなど、判断されます。不利益変更になる場合は、一定のプロセスを経て、変更する必要があります。社労士や弁護士など労働法の専門家に相談しながら変更を行うことをおすすめします。

労働条件を変更するときの
労働条件変更通知書」

前述のように、労働条件は会社の都合で一方的に変更することはできません。安易に労働条件の変更を行うと、大きな問題に発展するおそれがあるのです。

そのため、会社はトラブルを防止に備え、労働条件変更の際には、従業員への説明、同意が重要となってくるのです。労働条件の変更が有益な変更の場合、個別の同意なく、就業規則などで変更することはありますが、そうした場合であっても、従業員への説明は欠かせません。そして、重要なのが、変更したことが確認できるような書面を用意すること。それが「労働条件変更通知書」です。

従業員を採用するときには、必ず「労働条件通知書」で、労働条件を明示しなくてはなりません。これは会社の義務です。一方、「労働条件変更通知書」については、とくに義務とされていませんが、会社・従業員双方のためにも、用意することをおすすめします。

「労働条件変更通知書」を発行することを省いたために、従業員側から「会社が勝手に労働条件を変更した」といった不信感を抱くことにもなりかねません。これは労使の信頼関係を維持していくためにも、省かずしっかりと行いましょう。

社労士小栗の経営視点のアドバイス

労働条件の変更を通知および同意を得る際に、労働条件通知書や雇用契約書を使用しますが、従業員にとって有利な変更の場合は労働条件通知書を使用し、有利とはいえない場合は雇用契約書を使用することをお勧めします。不利益ともとれる変更は、同意を書面で得ておくことでトラブルを防げるからです。

コンサルタント中村の経営視点のアドバイス

労働契約の変更は基本的に労働者と合意があれば有効となります。
しかし書類に合意があったからといって、納得したわけではないということに注意が必要です。

下げる提案をすることは禁止されていませんが、提案をした場合、離職やモチベーションの低下が心配されます。
労働条件は上げやすく、下げにくい特徴を持っています。

そのことをよく理解し、労働条件を決定することが大切です。法律で禁止されていないからといって安易な労働条件の変更はすべきではないでしょう。

労働契約の終了

社会保険労務士の長谷川です。従業員の解雇は簡単に行えるものではありません。

労働契約の終了はその原因によっていくつかのケースにわけることができます。それぞれに法的な意味合いが違いますので、労働契約の終了を行う(行われる)際に、何に当てはまっているのかを意識する必要があります。

1.合意退職(労使双方の合意に基づく雇用契約の終了)
2.解雇(使用者による一方的な労働契約の終了)
3.辞職(労働者による一方的な労働契約の解約)
4.定年
5.期間の定めのある契約における期間の終了
6.休職期間満了に伴う当然退職
7.一定期間の音信不通に伴う当然退職(就業規則に定めが必要です)

非常に複雑なので、ここでは簡単に解説をします。
大きくは労働契約を終了させるのが、使用者のか、それとも従業員なのか?そして合意は得られているのかによって分類することができます。
なかでも使用者から一方的に労働契約の終了を告げる「解雇」は、従業員の生活を脅かす可能性のあるものとして自由に行うことはできません。
残念ながら労使間のトラブルとしても、よくあるトラブルとなってしまっています。法律の制限を受けるのはもちろんのこと、誠意をもって対応することが「解雇」を行う上で最も必要なことではないでしょうか。

就業規則と労働契約の関係性

労働契約を結ぶ時には、絶対的明示事項を書面などにより提示しなくてはいけません。一方で、相対的明示事項については、就業規則に定める労働条件を提示してもよいとされています。したがって、会社は、労働契約を結ぶ際には、合わせて就業規則の周知も必要です。

また、法律的に明示が必要ということも確かなのですが、労働契約の透明性は非常に定着に影響します。求職者はいわゆるブラック企業に就職してしまうことを非常に気にしています。伝えるべきことをしっかりと伝えることで入社前、入社後の安心につながります。契約書・就業規則どちらかという話ではなく、どちらも大切な書類です。どちらも経営者の意思をいれ、しっかりと整備することが重要です。

どうする?労働契約の実務

実際に、労働契約を結ぶうえで、実務上、トラブルになりやすい事項をご紹介します。

 

雇用契約書(労働契約書)も就業規則も存在しない

就業規則の作成義務のあるのは、10人以上の従業員のいる会社。小規模の会社などでは、就業規則を作成していない場合もあるかもしれません。さらに、雇用契約書も締結していないといったケースがあるのも実情。

とはいえ、労働基準法では、会社の従業員数に関係なく、従業員を雇用する場合には、労働条件を書面などで、明示することを義務づけていますので、たとえ就業規則の作成義務は免れたとしても、法律違反となります。トラブルになった際に、法的な責任を履行していないため、経営者としては非常に厳しい立場におかれます。

雇用(労働)契約書しか存在しない

就業規則の作成義務のない会社の場合は、罰則はありません。しかし、その分、雇用契約書や労働条件通知書で、詳細に明示しておく必要があります。

就業規則しか存在しない

労働条件を書面などで通知することは使用者の義務なので、労働基準法違反となります。
従業員とのトラブル防止のためにも、必ず書面で通知しましょう。

雇用(労動)契約書も就業規則もあるが、それぞれの内容が異なっている

職場における統一したルールである「就業規則」に対し、会社と従業員が個別に結んだ決まりごとが、雇用契約書(労働契約書)です。
就業規則と雇用契約書の整合が取れている必要がありますが、なかには異なるケースもあります。

​① 就業規則より雇用(労動)契約書が、下回るケース
労働契約法第12条では、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による」としています。
② 就業規則より雇用(労働)契約書が、上回るケースこの場合は、雇用(労働)契約が優先されます。

雇用契約書も就業規則もあるが、実態と違う

会社でずっと慣習的に行われているような場合には、労働慣行として、制度化されているのと同じ効果が生じます。 

募集と労働契約が違う

従業員を採用募集する際にも、募集条件と実際の労働条件に、違いがあるなどは、トラブルのもと。採用募集の時点でも、労働条件をきちんと明示しておきましょう。ただし、労働契約締結までに、当初明示した条件に変更がある場合は、速やかに求職者に知らせるなど配慮が必要です。雇用(労働)契約書に記載された労働条件が求人票の募集条件と異なっていても、いったん締結してしまうと、その労働条件が基準となります。募集時、労働契約時、いずれにしても、労働条件を正確に伝える必要があるでしょう。

まとめ

社労士の小栗です。就業規則は単にルールブックであるだけではありません。

いかがでしたでしょうか?
就業規則も労働(雇用)契約書も労働契約を締結するうえで非常に大切な書類です。近年、労働契約の透明性はますます求められるようになっています。
「ブラック企業」という言葉がトレンドワードとして取り上げられ、求職者や若者を中心にブラック企業にだけは就職したくないと思っているからです。では求職者はどのようにブラック企業かどうかを判断するのでしょうか。複数の要因はあると思いますが、労働契約の透明性はその一つだと思います。

就業規則や雇用契約書、労働条件通知書などの書類を整え、しっかりと業務内容や入社してからの教育体制を説明することで、求職者に安心を与えるととともに、定着につながります。

もし会社で離職が多いなどでお悩みの方だいらっしゃったら労務書式を見直してみてはいかがでしょうか?書式もですが、伝え方も見直しをすることをおすすめします。

何から見直せばいいかわからないという方は、無料相談をご利用ください。プロの視点や他企業の事例などをお伝えします。

動画での解説はこちら!
雇用契約書は義務?無い場合想定される問題は?
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労務相談の顧問や就業規則の整備をお願いしています。そもそも私自身の考えになりますが、社員の成長と私自身の成長が、会社自体の伸びにつながると考えています。そして、そのためには働くための当たり前の体制が整備された「まともな会社」であることが前提となるでしょう。そこの組織づくり・成長する基盤づくりを進めるにあたっての不安点をよく相談しています。

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