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企業がおさえておきたい男性の育児休業取得義務化。企業へのメリットを社労士が解説します!

男性の育児休業取得のために企業ができること、そして企業へのメリットについてご説明します。

ここ数年で複数回に渡って、育児介護休業法の法改正が行われてきました。注目すべきは「産後パパ育休(出生時育児休業)」が新設されるといった男性の育児休業取得を促す変化です。徐々に男性の育児休業に関する認知や取得が進んできたものの、その道のりは遠いのが現実です。日本の男性が家事・育児をする時間は、他の先進国と比べて最低水準であると言われています。政府は2025年までに男性の育児休業取得率を30%として目標を掲げています。高いとも思えない目標ですが、まだまだハードルは高く及んでいません。

企業においては、男性の育児休業取得をサポートしている企業がある一方で、「人手不足なので難しい」「取得させる環境が整っていない」「取得事例がない」など、育児休業取得を積極的に後押しできないといった企業もあります。

今回は、男性の育児休業取得に着目し、取得のために企業ができること、そして企業へのメリットについて、社労士が解説していきます。

 
 
 
目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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男性の育児休業取得は義務なのか?

男性の育児休暇取得についてわかりやすく解説します。

女性に限らず、男性も子育てに参加する社会のために育児・介護休業法が改正されました。2022年には「産後パパ育休(出生時育児休業)」が新設されるなど、男性が育児休業を取得するためのベースづくりが進んでいます。この育児・介護休業法の法改正によって、企業においても、男性が育児休業を取得できるよういくつかの義務化が求められています。ただ、注意したいのは、男性が必ず育児休業を取得しなければならない、という従業員への義務を課す法改正ではないということです。男性本人に義務を課す法改正ではなく、男性が育児休業を取得できるよう企業側に課される義務が強化されたことになります。詳しい法改正ポイントと義務化の内容を確認してみましょう。

○法改正のポイントと企業側の義務とは?

□雇用環境整備の義務化

従業員が躊躇することなく育児休業の取得を申し出ることができるように、企業は環境の整備を行うことが義務とされました。以下のいずれかの措置を講じることとされ、複数の措置が望ましいとされています。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  2. 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
  3. 自社の従業員の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  4. 自社の従業員へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
□従業員が本人や配偶者の妊娠・出産を申し出た場合の個別周知・意向確認措置の義務化

従業員本人や配偶者の妊娠・出産の申し出があった場合には、企業は育児休業制度などに関する説明や、休業の取得の意向確認を個別に行う義務が、企業に課されました。

(説明周知する内容と方法)

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する制度について
  2. 育児休業・産後パパ育休の申し出先
  3. 育児休業給付について
  4. 育児休業・産後パパ育休期間の社会保険料の取り扱いについて

面談(オンライン面談でもOK)、書面、FAX、メールのいずれか方法で意向確認を行います。育休制度は従業員にとってはわかりにくい点や不安な点も多いので、できれば疑問点などに答えながら、面談を行なったうえで、説明資料を提示するなどしたほうが丁寧です。とくに育休期間中の給付金や社会保険料の取り扱いなどもしっかりと説明することをおすすめします。

□有期雇用の従業員の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用の従業員については、改正前には「引き続き雇用された期間が1年以上であること」「子どもが1歳6か月までの間に契約満了しない」という要件がありました。改正により「子供が1歳6か月までの間に契約満了しない」という要件のみとなりました。引き続き雇用された期間が1年未満の有期雇用従業員については、労使協定の締結があれば、除外しても構いません。

□産後パパ育休(出生時育児休業)の新設と分割取得

法改正により、「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が新設されました。これは男性を対象にした育児休業制度であり、子どもの出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して取得できるというものです。労使協定を締結すれば、休業中に就業することも可能といった制度です。女性の産後休業に合わせて、男性が育児休業が取れるよう配慮されています。

□育児休業の取得状況の公表の義務化

従業員1000人超の企業については、育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられました。男性の育児休業等の取得率または育児休業等と育児目的休暇の取得率を公表することとされたました。自社のホームページや、厚生労働省のサイト上で公表する必要があります。

厚生労働省サイト「両立支援のひろば」
https://ryouritsu.mhlw.go.jp/

男性が育児休業を取得するには?

育児休暇の取得についてさらに詳しく解説していきます。

男性が育児休業を取得する場合には、従来の育児休業に加え、法改正で追加された産後パパ育休(出生時育児休業)の2種類があります。産後パパ育休制度については、男性の育児休暇取得促進のために新設された制度ですので、しっかり理解しておきたいポイントや手続きについて、確認しておきましょう。

【育児休業制度】

申し出により、子どもが1歳(一定の場合は、最長で2歳)に達するまで育児休業が取得できる制度です。さらに、父母が共に育児休業を取得する場合で一定の要件を満たせば、子どもが1歳2か月に達するまでの1年間に、「パパ・ママ育休プラス」といった特例もあります。

【産後パパ育休(出生児育児休業)制度】

男性の育児休取得促進のための制度です。子どもの出生後8週間以内に4週間(28日)まで、2回に分割して、育児休業を取得できます。

 

産後パパ育休制度

育児休業制度

期間と取得可能日数

子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得可能

原則、子どもが1歳まで(最長2歳)

申し出期限

原則、休業の2週間前まで

原則、1か月前まで

分割取得

2回まで分割可能(初めに申し出る必要あり)

2回まで分割可能(取得の際に申し出る)

休業中の就業

労使協定締結が必要。その場合は労働者が合意した範囲で就業可能

原則、就業不可

1歳以降の延長

-

育休開始日を柔軟化

1歳以降の再取得

-

特別な事情がある場合に限り再取得可能

○男性の育休は何日取得できるのか

男性が育休を取得する場合、“結局、何日休めるのか?”という質問をされることもあります。今回の法改正で新たに産後パパ育休(出生時育児休業)が設けられたため、一例を見てみましょう。

【父・母が2人とも育休を取得する場合の例】
父母ともに育児休業取得する場合は、1歳2か月まで取得が可能となります。産後パパ育休・育休ともに分割取得も可能なので、夫婦で相談しながら育児休業の取得について計画していくことが可能です。

男性の育児休業は、従業員も企業にもメリットがある

徐々に取得が進んでいる男性の育児休業ではありますが、一般的になったと言われるまでには進んでいないのが現状です。国として子育て支援としてさまざまな取り組みを推進し、育休制度の改正を行なってきました。男性の育休が促進されれば、共働き家庭の負担軽減、女性のキャリア中断の影響を防ぐなど、さまざまなメリットがあるからです。また、現代社会において男性が育休を取ることはダイバーシティにおいて当然の流れとも言えます。

ただ、国の旗振りだけでは進まない部分もあります。実際には、企業自体が育児休業取得に取り組んでいかない限りは、現状はなかなか改善されないでしょう。

企業として育休取得推進が進まない理由として、「職場の仕事が回らなくなる」「取得しづらい雰囲気がある」「周りの協力が得られない」「収入が心配」「復帰した後に席があるか不安」といった意見が上がっています。確かに、長期で休業する育児休業は、男性に限らず、業務への影響、その間の人手問題など課題があるのは事実です。しかしながら、企業が男性育休を推進することで、働く従業員の働き方、仕事へのモチベーションへの将来的効果は大きいメリットをもたらすと考えられます。人材採用においても、育休取得推進に力を入れている企業は、そうでない企業に比べ人材獲得に有利でしょう。男性の育休の取得が増えることで、育児休暇制度がさらに発展し、多くの人々が育児と仕事を調和させやすくなる社会となっていくのです。男性の育休は、従業員にも企業にとってもポジティブな影響をもたらす重要な取り組みです。

 

「それパタハラです!」と言われないために。
男性従業員から育児休業を相談されたときの企業対応とは?

「それ、パタハラです!」と言われないために、企業として理解しておかなければならないことがあります。セクハラ、モラハラといったワードは今や一般的で、ハラスメント教育に力を入れている企業もあるでしょう。しかしながら、「パタハラ」はまだまだ理解されていないことが多いかもしれません。

「パタハラ」とは、パタニティハラスメントの略です。Paternity(父性) harassment(嫌がらせ、悩ます)が由来です。男性が育児休業を取得することに関連して、会社や職場から受けるハラスメントのことを言います。

育児介護休業法によれば、 男性従業員が育児のために、

  • 育児休業、子の看護休暇、時短勤務などの制度を利用したいと希望したこと
  • これらの制度を利用したこと

を理由に、嫌がらせなどを受け、就業環境を害されることを言うとされています。
悲しいことにパタハラが発生する要因には、まだまだ無意識な性別における役割意識(子育ては女性が行うもの)が、背景にあるのでしょう。歩みの遅い男性の育児休業取得の背景には、このような根深い考え方も起因しています。

(パタハラの事例)

  • 育休を取得したいと男性従業員が上司に相談したら、“奥さんが専業主婦なんだったら休む必要はないだろう”と言われた
  • 男性従業員が、育児による時短勤務を希望したら、“昇進できない”と言われた
  • 男性従業員が育休を希望したら、“繁忙期なので育休を取得することはできない”と言われた
  • 男性従業員が育休を取得したら、周りの同僚が“負担がかかって迷惑”と苦情を言われた

もちろん、これらのパタハラは禁止です。会社として不利益取り扱いは禁止されており、上司・同僚などからパタハラと思われる発言などがされないような職場環境の改善、従業員への理解を深めるなどの責務があります。
就業規則などにパタハラ防止のための方針を記載したり、従業員への周知徹底を行なっていく必要があるでしょう。

まとめ

男性の育児休暇取得についてアドバイスいたします、ご不明点はとうかいへお問い合わせください。

男性の育児休業取得促進は、企業の新たな義務となりました。ただ、企業の負担だけでなく、将来的には従業員のモチベーションアップや、優秀な人材獲得などメリットも多くあります。従業員と企業双方のメリットを享受するために、積極的に運用整備を進めていくことをおすすめします。ここ数年の法改正で、より男性の育休も取得しやすい環境が整ってきましたので、改めて自社の取り組みを見直すきっかけとされてはいかがでしょうか。

育休制度は就業規則への規定など、不安や心配な点も多くあると予想されます。当社では各種規程の策定へのアドバイスも積極的に行なっていますので、まずはお気軽にお問合せください。

 
 

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