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社会保険の手続きってどれくらいあるの?
担当者が知っておくべき手続きを社会保険労務士が解説します。

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会社で働く従業員にとって、重要な社会保険制度。健康保険や厚生年金保険、雇用保険、労災保険といった従業員の生活や将来の年金、雇用の維持・促進のためのさまざまな保険制度の総称です。パート・アルバイト等の短時間で働く従業員にも、社会保険の適用が広がり、企業によっては、手続きへの負担が大きく増加しているのではないでしょうか。採用から退職まで、そして従業員の生活の変化に応じて、さまざまな種類の社会保険の手続きが必要となってきます。会社は、法令に従って、その手続きを行わなくてはなりません。

今回は、多くの種類のある社会保険の手続きをピックアップし、担当者が知っておくべき手続きをまとめ、社労士が解説していきます。自社の手続きに誤りや漏れがないか、この機会にチェックしてみましょう。

 
目次
この記事の監修

社労士 小栗多喜子

社会保険労務士法人とうかい
執行役員 社会保険労務士 小栗多喜子

同社、人事戦略グループマネージャーを務め、採用・教育を担当する。商工会議所、銀行、Adeco,マネーフォワードなどセミナーや研修講師も精力的に行っている。労働法のアドバイスだけではなく、どのように法律と向き合い企業を成長させるのかという経営視点でのアドバイスを得意としている。

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その他、記事の監修や寄稿多数。
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社会保険とは?

社会保険とは、従業員の病気やけが、出産や育児・介護、将来の年金、失業した時、死亡した時に至るまで、安心して生活・働いていけるように制度として確立した公的な保険制度です。主に、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つの保険制度があります。

 

  1. 健康保険
    健康保険とは、業務外で病気やけがのほか、出産や死亡に関する保険給付を行います。療養によって仕事を休業し、給料が支払われない場合には、傷病手当金の支給も行われます。全国健康保険協会(協会けんぽ)と各健康保険組合(組合健保)の2種類があります。保険料は、会社(事業主)で従業員が折半して支払います。健康保険は従業員(被保険者)に扶養される親族(被扶養者)も、保険給付の対象となります。
    【主な給付内容】
    療養費、高額療養費、傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金、埋葬料など

  2. 厚生年金保険
    厚生年金保険とは、会社員を対象とした公的年金制度です。将来老齢になったとき、病気やケガにより障害が残ったとき、死亡したときなどに年金給付や一時金給付が行われます。国の公的年金制度は、自営業者などが加入する国民年金1号被保険者、会社員や公務員などが加入する第2号被保険者、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者が加入する第3号被保険者があります。第2号被保険者である会社員は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の年金を受給することになります。保険料は、会社(事業主)で従業員が折半して支払います。
    【主な給付内容】
    老齢年金(老齢厚生年金)、障害年金(障害厚生年金1〜3級、障害手当金)、遺族年金(遺族厚生年金)

  3. 介護保険
    介護保険とは、従業員(被保険者)が、介護が必要と認定されたときに、必要に応じて介護サービスを受けることのできる保険制度です。40歳に達した月から加入対象となります。基本的に、65歳以上の人は、要介護認定で介護が必要とされた場合は、いつでもサービスを受ける事が可能です。ただし、40歳から64歳までの人であっても、介護保険の対象となる特定疾病により介護が必要と認定された場合は、介護サービスを受ける事が可能です。保険料は、会社(事業主)で従業員が折半して支払います。
    【主なサービス内容】
    居宅介護支援、訪問介護、通所介護、施設介護、福祉用具貸与など

  4. 雇用保険
    雇用保険とは、働く人の生活の安定や就業促進を目的とした保険制度です。仕事を失業した際に受給する「基本手当」のほか、一定の教育訓練を受講した際に受給できる「教育訓練給付」があります。育児や介護によって、仕事を休業する際にも、給付金が支払われます。保険料は、会社(事業主)で従業員が一定の割合に応じて支払います。
    【主な給付内容】
    基本手当(失業手当)、育児介護休業給付、高年齢雇用継続給付、教育訓練給付など

  5. 労災保険
    労災保険とは、通勤に起因するけが、業務に起因する病気やけが、障害や死亡などのときに、給付が行われる公的保険制度です。従業員を1人でも雇用している会社は、労災保険の適用となります。保険料は、会社(事業主)が全額負担して支払います。
    【主な給付内容】
    療養(補償)給付、休業(補償)給付、障害(補償)給付、遺族(補償)給付、埋葬料(補償)給付、傷病(補償)給付、介護(補償)給付など

  6.  

社会保険の手続き一覧

会社に雇用されると従業員はさまざまな社会保険の対象となります。
従業員の生活の変化によっても、さまざまな手続きが発生することになります。どんなときに、どんな社会保険の手続きが必要なのか、シーン別に必要な手続きを確認してみましょう。

従業員を採用したとき
 

社会保険 手続き・届出内容 期限 手続きポイント
健康保険/
厚生年金保険
資格取得届 被保険者となった日から5日以内 手続きには基礎年金番号やマイナンバーが必要
雇用保険 資格取得届 被保険者となった日の属する月の翌月10日まで 労働条件を確認できる資料などが必要

 

従業員が退職/解雇したとき
 

社会保険 手続き・届出内容 期限 手続きポイント
健康保険/
厚生年金保険
資格喪失届 被保険者でなくなった日から5日以内 健康保険証を返却する必要
雇用保険 資格喪失届/離職証明書 被保険者でなくなった日の翌日から10日以内 離職証明書が必要な場合には、離職理由が確認できる書類が必要

 

従業員が異動したとき
 

社会保険 手続き・届出内容 期限 手続きポイント
健康保険/
厚生年金保険
住所変更届 速やかに 転勤による住所変更が生じる場合に必要。
雇用保険 転勤届 事実のあった日の翌日から10日以内 異動辞令など転勤が証明される書類が必要

 

従業員が結婚したとき
 

社会保険 手続き・届出内容 期限 手続きポイント
健康保険/
厚生年金保険
氏名変更届 速やかに 原則不要。ただし、マイナンバー等との紐付けがされていない場合は必要。
被扶養者異動届 事実のあった日から5日以内 結婚などによって、配偶者を扶養する場合に必要。
住所変更届 速やかに 結婚による住所変更が生じる場合に必要。
雇用保険 氏名変更届 氏名変更の都度 氏名変更の事実が確認できる書類

 

従業員が死亡したとき
 

社会保険 手続き・届出内容 期限 手続きポイント
健康保険/
厚生年金保険
資格喪失届 被保険者でなくなった日から5日以内 健康保険証を返却する必要
健康保険埋葬料(費)支給申請書   亡くなった被保険者により生計を維持されて、埋葬を行う方に支給
雇用保険 資格喪失届 被保険者でなくなった日の翌日から10日以内  

 

従業員が出産、育児休業、介護休業したとき
 

社会保険 手続き・届出内容 期限 手続きポイント
健康保険/
厚生年金保険
出産手当金支給申請書   被保険者が出産のために会社を休むときに支給される。
出産育児一時金支給申請書   被保険者および被扶養者が出産したときに支給される。
産前産後休業取得者申出書   産休中の社会保険料免除のための申請。
育児休業等取得者申出書   育児休業中の社会保険料免除のための申請
雇用保険 育児休業給付金支給申請書 育児休業開始の翌日から10日以内 賃金台帳や育児の事実が確認できる資料が必要
介護休業給付金支給申請書 介護休業を開始した日の翌日から10日以内 賃金台帳や対象家族との続柄が確認できる住民票などの資料が必要

 

従業員が病気やけがで休んだとき
 

社会保険 手続き・届出内容 期限 手続きポイント
健康保険/
厚生年金保険
傷病手当金支給申請書   被保険者が病気やけがのために会社を休み、給与の支給がないときに支給される。

 

従業員が業務上の病気やけがで休んだとき
 

社会保険 手続き・届出内容 期限 手続きポイント
労災保険 療養補償給付たる療養の給付請求書    
療養補償給付たる療養の費用請求書 支出確定日の翌日から事項2年  
休業補償給付支給請求書 日毎に翌日から2年  

 

会社が毎年行わなければならない手続き
 

社会保険 手続き・届出内容 期限 手続きポイント
健康保険/厚生年金保険 算定基礎届 毎年7月10日まで 7月1日現在で雇用している従業員(被保険者)の4〜6月の3か月間の報酬月額をもとに、標準報酬月額を決定するために必要
月額変更届 速やかに 従業員(被保険者)の昇給・降給により固定賃金に変動があった場合に必要。
賞与支払届 賞与支払日から5日以内 賞与の保険料を決定するために必要な手続き。
雇用保険/労災保険 労働保険 概算・確定保険料申告 毎年7月10日まで 毎年4月1日〜3月31日を1年度とし、前年度の確定保険料と新年度の概算保険料を計算し、申告するために必要。

 

会社について行わなければならない手続き
 

社会保険 手続き・届出内容 期限 手続きポイント
健康保険/厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更届 事実が発生した日から5日以内 事業所名が変更したり、移転があった場合に必要。法人登記簿謄本などの用意。
雇用保険 事業所各種変更届 変更のあった日の翌日から10日以内
健康保険/厚生年金保険 適用事業所全喪届 事実が発生した日から5日以内 廃業などをした場合に必要。
雇用保険 事業所廃止届 賞与支払日から5日以内変更のあった日の翌日から10日以内

 

社会保険手続きにおいて、
初心者担当者がよく間違いやすいポイント

社会保険手続きの間違いやすいポイントを把握しておきましょう。

  1. 退職日と資格喪失日の勘違い
    社会保険の手続きで気をつけておきたいのが、社会保険の資格を取得する日、喪失する日です。従業員を採用した場合、社会保険の資格取得日は採用日となります。従業員が退職した場合には、退職日の翌日が資格喪失日となります。退職日が11月30日の場合には、資格喪失日は12月1日となるというわけです。退職日ではありませんので、注意が必要です。

  2. 介護保険料の徴収を忘れてしまう
    介護保険の対象となるのは、従業員(被保険者)が40歳に到達した月からです。うっかり保険料の徴収を忘れるといったことのないように気をつけましょう。
     
  3. 60歳定年後の手続きしていない
    60歳で定年を迎えたものの、そのまま再雇用で働く場合であっても、手続きが必要です。そのまま働くのだから、とくに手続きが必要ないと勘違いしそうですが、再雇用後はそれまでの給与額から変更になる場合が多いものです。給与の変動に保険料もならって、標準報酬に応じた新保険料とする手続きが必要です。
     
  4. 社会保険の適用対象者の保険加入忘れ
    パート・アルバイトなどの従業員が多い場合には注意が必要です。社会保険の適用は、その対象者の範囲が拡大され、これまで社会保険の未加入者であった従業員も、加入対象者であるケースがあります。しっかりと労働条件等を把握し、加入忘れなどがないようにしましょう。
     
  5. 月額変更届を忘れる
    給与の昇給・降給などによって、固定的賃金が変わる場合には、標準報酬月額の月額変更届を提出して、保険料を改定しなくてはなりません。うっかり届を忘れたままでいると、誤った保険料を徴収するままになってしまいます。

社会保険労務士が教える社会保険手続きにおける注意点

社会保険手続きは、正しく理解をした上で進めましょう。

社会保険の手続きは、従業員が入社してから退社するまで、さまざまなケースが発生します。しかも、法改正の多く、正しく理解していないと手続きミスやもれが発生します。そうした手続きのミスや漏れは、従業員にとってみれば、得られる利益が受けられなかった、将来の年金額に影響してしまう、といった大変重要な問題です。従業員の金銭に関わる手続きのため、単に「間違えました、気をつけます」では済まされません。自社で専任の労務担当者などがいない場合には、とくに注意が必要です。一度、社会保険労務士などに社会保険手続きについて、確認しておくことをおすすめします。

 
 

まとめ

社会保険手続きのことなら、ぜひとうかいの60分無料相談をご活用ください。

社会保険の手続きは、従業員に大きく関わる手続きや届出のため、ミスなく期日どおりに行わなければなりません。電子化が進んできたとはいえ、担当者の手間や負担は大きいものです。そこで、社会保険手続きのプロフェッショナルである社労士への依頼を検討されてみてはいかがでしょうか。

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