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就業規則の不利益変更。トラブルになりにくい不利益変更の仕方について解説します。

就業規則の不利益変更。トラブルにならない
不利益変更の仕方について解説します。

就業規則の見直しを行う際、その変更が不利益変更に当たるかどうかは非常に重要なポイントとなります。

「不利益変更」とは、会社が一方的に、従業員にとって不利益になる労働条件などの変更をすることを言います。最もイメージしやすい例は、「給与を会社側の一方的な判断で引き下げる」「手当の廃止」などです。会社からもらえる給与、手当が引下げられることは、従業員に金銭的な影響があり、不利益変更であることが明らかです。会社側の説明如何によって従業員からのクレームにもなりやすい問題です。その他、金銭に関わる問題以外にも、「労働時間の変更」「休日・休暇の日数を減らす」「休職や復職の条件を変更する」「福利厚生を変更する」といったものもあります。つまり、従業員に与えられていたメリットがなくなる変更の場合、「不利益変更」に該当する可能性があります。

不利益変更は行わないにこしたことはありませんが、経営上仕方なく行わざる得ない場合もあります。
今回は、一方的な不利益変更や従業員の同意が得られない不利益変更が理由で、大きなトラブルにならないよう、不利益変更の基本的な知識を解説し、正しい方法で不利益変更を進めていただくヒントにしていただけたらと思います。

この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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就業規則・労働条件の不利益変更
禁止の原則とは?

コンサルタントの中村です。
就業規則の不利益変更をする際は、必ず従業員の合意が必要です。

 

まず労働条件は会社と従業員の双方の「合意」によって決まるのが原則です。

つまり、一度、会社と従業員双方で労働条件を合意した場合、従業員の意思に反して一方的に労働条件を変えることはできません。当たり前といえば当たり前かもしれません。雇用契約において経営者が一方的に労働条件を変えることができてしまうのであれば、合意する意味がなくなってしまいます。労働契約法第9条においても、就業規則による労働契約の内容の変更について言及しています。

「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない」

会社と従業員のルールや労働条件を定める就業規則は、従業員の合意がなければ、会社が勝手に変更することはできないと定められているのです。

 

就業規則・労働条件が不利益変更できる条件とは?

経営者としても従業員に対しての不利益変更はできればしたくありません。
ですが、多様な働き方が求められるにつれ、誰にとっても不利益にならないように就業規則を変更することは難しくなってきています。誰かの利益となったとしても、誰かの不利益になるのであれば、合意が得られないケースもあるからです。

企業を取り巻く環境は変化しています、さまざまな変化に素早く対応すべきです。しかし従業員の労働条件に関わる事項にあたっては、慎重に進める必要があるでしょう。労働条件に関わる変更については、“労働者保護”の観点から一定の制限が課されていますが、不利益変更が、全く許されないわけではありません。注目は、前述の労働契約法第9条の“ただし、次条の場合は、この限りでない”という但し書き。次条の第10条では、労働条件の不利益変更は、就業規則の変更に合理性があり、その就業規則が周知されている場合に限っては、変更後の労働条件も有効なものと認められています。

つまり、「変更に合理性」があって、「就業規則を周知」するという、2つの条件を満たせば、たとえ不利益な変更であっても、可能ということなのです。

 

変更に合理性があるとは?

変更に合理性があるかどうかは、以下の要素によって総合的に判断されます。

従業員が受ける不利益の程度がどれくらいか
併せて、会社側としては、不利益変更をするにあたっては、できるだけ不利益の程度を減らすとか緩和する方法を検討しているか、という点も気をつけておく必要があるでしょう。

変更することが本当に必要であるのか
なぜ不利益変更を行わなければならないのかという必要性の大きさが問われるところです。例えば、不利益に変更しなければ、会社自体の存続に関わるといったケースは、必要性が大きいといえるでしょう。

変更後の就業規則の内容が実態に合うものかどうか
変更した就業規則の内容が必要以上に著しく従業員に不利益を与えるような場合には、合理性があるとはいえません。業界や業種、同規模の同業他社などを参考に、内容が妥当であるかなど検討が必要でしょう。

従業員代表者や労働組合との交渉
不利益変更をするにあたっては、従業員に向けての合意形成をするためのステップを慎重に進めていかなくてはなりません。時間をかけて、協議を重ねていくことが重要です。このステップを無理やり推し進めると、かえって話がこじれてしまい合意が難しくなるといったこともあるので、慎重に進めましょう。

就業規則を周知するとは?

「変更の合理性」があっても、変更後の就業規則が周知されていなければなりません。

労働基準法では、就業規則の周知について、「常時作業場の見やすい場所へ掲示や備え付ける」「書面で交付」「磁気ディスク等に記録し各作業場で内容を常時確認できる」といった方法で、従業員が就業規則の内容を知る状態であることが必要とされています。

就業規則が、周知されていない場合には、労基法違反となり、30万円以下の罰金が科せられています。

コンサルタント中村の経営視点のアドバイス

ご相談に来られる経営者の方で、「不利益変更はできないもの」と考えていらっしゃる方も少なくありません。しかし不利益変更はすべてが禁止されているわけではありません。
ケースに拠りますが、賃金制度の再構築などは「結果として」賃金が下がってしまう方がいても人件費総額が減らない試算であれば、認められるケースもあります。
不利益変更は絶対にできないとあきらめる前に一度ご相談ください。
なぜ不利益変更をしなければいけないのか?その結果、従業員の暮らしはどうなるのか?
会社の成長のため、やらなければならないこともあります。

就業規則・労働条件の不利益変更の手続きの進め方

労務支援チームの大矢です。就業規則・労働条件の不利益変更の手続きを進める際は、従業員の合意を得ることが大切です。

実際に「不利益変更」を行うには、慎重に進める必要があるとお伝えしました。では、具体的にどのように進めたらよいのでしょうか。より丁寧で後からトラブルになりにくいのは、従業員個人個人に説明を行い、合意を取っていくことでしょう。個別にきちんと説明をされ、同意をしたということで、従業員の納得感にもつながります。

一方、会社に労働組合がある場合には、まず労働組合との協議をしていくのが一般的です。会社と労働組合が合意できる場合には、労働協約を締結します。労働協約は、就業規則より優先となるため、合意し締結した労働協約にあわせて、就業規則も変更していくことになります。以下は、不利益変更を行うことが多いケースをもとに、進めていく場合の注意ポイント。細心の注意を払って、労務トラブルとなるリスクを減らしていきましょう。

「給与の減額・手当の廃止」不利益変更を行う場合の注意点

給与の削減計画を作成する
削減後の給与が同業同規模の他社と比べて、どの程度であるかなども検討します。

② 給料削減計画案を従業員に説明する
個別に説明したり、説明会を開催する必要があるでしょう。

就業規則(または賃金規程)を変更する
著しい不利益がないかなど検討が必要です。

従業員の個別の同意書をもらう
全従業員から個別の同意書をもらえることが望ましいです。労働組合がある会社の場合は、労働組合と労働協約を締結します。

「労働日数・休日の変更」不利益変更を行う場合の注意点

労働日数や休日日数を変更する場合は、給与計算の基礎となる単価へ影響する部分でもあります。単純に労働日数や休日日数が増えた、減ったということだけではありません。以下の事項など、日数が変更となることで、どのように変化するのか、変更案を作成しておくことをおすすめします。

・時間単価(残業単価)がどうなるか

・休日単価がどうなるか

・時間控除単価がどうなるか(遅刻・早退の場合の控除)

・固定残業代はどうなるか

「みなし残業代の廃止」不利益変更を行う場合の注意点

あらかじめ定めた時間分の残業代が支払われる「みなし残業代制度」。残業手当の計算が簡便だったり、固定費として経費が予定しやすいなどもあって、取り入れている企業も多いでしょう。

一方で、昨今の働き方改革関連の労働時間管理の厳格化によって、働く人の権利意識も高まっているなか、みなし残業代制度に厳しい目が向けられています。また、「みなし残業として設定した残業時間と実態がそぐわない」「事前に決めた残業時間を働いていない従業員が多数」といった理由で、みなし残業代制を廃止する企業もあります。

ただ、みなし残業代を廃止する際には、会社側からの一方的な廃止は労働契約法上の不利益変更に抵触する可能性があるため簡単にはできません。給与が減るなど従業員にとっては、不利益変更となる場合には、トラブルになるケースもあるので、注意が必要です。みなし残業手当が減る分を基本給を上げるといった要求もあるかもしれません。

みなし残業代制度を廃止を行う際には、上記の「給与の減額・手当の廃止」不利益変更を行う場合の注意点とあわせて、以下の点に注意し、慎重に進めます。

・みなし残業代制度を廃止する合理性

労働契約法10条では「労働条件の変更について、合意性を有する場合は労働者の同意なく就業規則を変更することが出来る」としています。そもそも残業代は実際の残業時間に基づいて支払われるべきもの。みなし残業代の場合、実際に働いていない分の残業代が支払われている可能性もあります。会社がみなし残業代の廃止をする行為は合理性を有していると判断するためには、設定したみなし残業時間と実態の残業時間についても、事前に確認しておくべきでしょう。

・従業員への周知と同意

とくに、みなし残業代制度の対象者である従業員には、丁寧な説明が必要です。

・就業規則の変更

・経過措置を設ける

みなし残業の廃止で不利益変更が生じる従業員に対し、著しく給与が低くならないよう、一定の期間、手当を支給するなどの措置を行います。経過措置の期間について、法律で規定はありませんが、あまり短いと経過措置とみなされません。

不利益変更の同意書のひな形とは

 

不利益変更に関する従業員への説明や就業規則の変更が済んだら、従業員の同意を確認するために、個別に同意書を提出してもらいます。同意書に決まった様式はありません。たとえば、給与引き下げに関する同意書であれば、手当ごとに変更金額や変更日、支払日などをわかりやすく記載し、従業員に自署してもらいます。

就業規則・労働条件の不利益変更に従業員が同意しない
場合はどうなるの?

不利益変更までのプロセスを慎重に進めていくなかで、同意しない従業員がいるかもしれません。しかしながら、従業員の同意を得ることがないまま、一方的に不利益な変更をすると、反発した従業員との間で労働紛争となることもあり得ます。労働紛争にまで至らないまでも、不利益変更の影響で、従業員のモチベーションが低下する可能性もあります。

重ねてお伝えすると、不利益変更には丁寧かつ慎重に同意を得るための努力が必要となってきます。

しかしながら、それでも同意を得られない場合もあります。となると、不利益変更ができないのか、というと、一概には言えません。“同意しない従業員がいるので、不利益変更ができない”と諦めてしまってはいませんか? 

従業員に個別に説明し多数の同意を得ている場合などは、他の従業員が同意をしている事自体が、変更の合理性があるものと認識される場合もあるかもしれません。必ずしも従業員全員が同意をしなかったとしても、不利益変更について可能な限り多くの従業員の同意を得るように、進めていくことが重要です。もし不利益変更におけるトラブルで労働紛争に発展した場合には、合理性を判断する材料ともなるからです。

これって不利益変更?不利益変更Q&A

原則、従業員の労働条件が引下げられること事項に対して、不利益変更と言われますが、不利益変更と思われるものの、実は会社の正当な対応であるというケースもあるのです。
自社のケースが、不利益変更に該当するのか、検討しておきましょう。

業務成績が悪い従業員の減給は不利益変更になりますか?

不利益変更にならない可能性が高いです。

“減給”といってすべてが不利益変更になるわけではありません。業務成績が人事考課制度と連動している場合、人事考課の結果として、給与の額が減額する場合には、不利益変更にはあたりません。

役職者ではなくなった従業員の役職手当の減額は不利益変更になりますか?

不利益変更とならない可能性が高いです。

前述同様に、人事考課の枠組みの中で、例えば部長職の従業員が、一般従業員に降格して役職手当がなくなった場合や、課長職などに異動となり役職手当が減額した場合であっても、人事権に基づく役職の降格の場合、給与や手当の減額は会社の権利として認められています。

みなし残業制度の廃止は不利益変更になりますか?

不利益変更となる可能性もあります。

みなし残業として、固定の残業手当を支払っていたものの、みなし残業制度を廃止し、実労働分の残業手当を支給する制度へ変更するといったケース。従業員側では固定の残業手当が生活給となっていることもあり、不利益変更と捉えられる場合もあります。

休日や特別休暇を減らし、5日分の有給休暇を強制付与することは不利益変更になりますか?

不利益変更となる可能性が高いです。

改正労働基準法により、事業規模を問わず全ての会社が、10日以上の年次有給休暇が付与された社員に対して付与日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させることが義務付けられました。この改正をうけ、休日や特別休暇を減らすことで対応するのは、不利益変更となりますので、気をつけましょう。そもそも5日分の強制付与を課したのは、有給休暇の取得を促進するためです。それにもかかわらず、従来からの「休日」や「休暇」とすり替えるのは、法の趣旨に反していることになります。

退職金の廃止・減額は不利益変更になりますか?

不利益変更となる可能性が非常に高いです。

退職金に関する変更は、従業員に及ぼす影響が他の労働条件に比べ大きいので、より慎重に進めましょう。退職金の支給水準を下げる変更や、制度自体の廃止は、不利益変更となります。したがって、十分な説明と、不利益を緩和する措置の検討も必要です。

賞与の減額は不利益変更になりますか?

不利益変更とはならない可能性が高いです。

賞与は、一般的に定期または臨時に従業員の業務成績に応じて支給されているものです。支給額はあらかじめ確定していないのが通常です。その賞与を減額するにあたって、不利益変更となるかそうでないかは、賞与支給の根拠次第となります。したがって、就業規則などに、会社の業績悪化を理由として、支給額を減額したり、不支給とする措置を定めてあれば、不利益変更とはならないでしょう。

給与の締め・支払い日の変更は不利益変更になりますか?

不利益変更となる可能性があります。

労働基準法第24条では、給与は毎月払いの原則が定められています。変更月に1回も給与が支払われないということが起こらないようにすることが重要です。従業員の生活設計への配慮も必要でしょう。

Q&A使用の注意
就業規則や労働条件の変更が不利益変更となるのかどうかは、一概に判断されることではありません。
上記のように、会社の実情も考えないケーススタディは実際には起きないケースだとも言えます。
例えば、有名コーヒーチェーンのように休日を減らし、有給休暇の一斉付与に充てた場合でも前提として休日数が業界平均よりも多い場合などです。
同じことを行うとしても前提など考慮すべきことは様々です。Q&Aはあくまでも一般論としてお伝えしています。
不安な場合はいちど専門家に問合せを行うことをおススメします。

よくある勘違い。1回の減給の上限と不利益変更

“減給”でよくある勘違いが、減給額の上限についてです。ここで押さえておきたいのは、減給は大きくわけて2つのケースがあるということ。1つめは、従業員の問題行動に対する懲戒処分“としての減給、2つめは、それ以外のケースです。懲戒処分による減給については、減給できる額が労働基準法第91条で「上限として1回の額が平均賃金の半日分」と定められています。それ以外の減給については、特段の定めはありません。会社の業績悪化などで減給を行う不利益変更をする際に適用されるわけではありませんので、混同しないように注意しましょう。

 

社労士小栗の経営視点のアドバイス

1回の減給の上限がないからと言って、際限なく減給が認められているわけではありません。給与は従業員の生活の糧になるものです。経営が苦しいという理由や経営者が思うような結果を出せなかったからといって即減給するのは理解を得られにくいでしょう。なぜ減給を行うのか?を始め、そこには丁寧な説明が求められます。

「就業規則の不利益変更」のまとめ

社会保険労務士の小栗です。
オンラインで全国対応いたします。

いかがでしたでしょうか?
就業規則の不利益変更は経営者も従業員もできれば避けたいものです。
お湯は放っておくと水になりますが水は放っておいてもお湯にならないように、就業規則や労働条件はあげやすく、さげにくいという事実があります。だからこそ就業規則や労働条件の変更にはビジョンが必要です。
痛みを伴う改革だったとしても、ビジョンがあれば従業員からも納得が得られやすいですし、そもそもその変更が必要なのかどうかも判断することができます。

不利益変更は誰だってやりたくありません。しかし変化の激しい時代についていくため、会社の成長のために行うのです。
私たちは不利益変更に関する相談を数多く受けてきました。
そのほとんどが会社の未来のため、決断をしようとしているものでした。ただ、その伝え方や手順を間違ってしまうと労務トラブルに発展してしまう可能性もあります。

法律上や理論上はできたとしても人は感情のある生き物です。
不利益変更は丁寧にすすめていかないといけません。
もし不安を感じるのでしたら、専門家に相談することをおススメします。私たちも無料相談をうけつけておりますので、よろしければお申込み下さい。
 

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労務相談の顧問や就業規則の整備をお願いしています。そもそも私自身の考えになりますが、社員の成長と私自身の成長が、会社自体の伸びにつながると考えています。そして、そのためには働くための当たり前の体制が整備された「まともな会社」であることが前提となるでしょう。そこの組織づくり・成長する基盤づくりを進めるにあたっての不安点をよく相談しています。

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