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2022年4月〜改正女性活躍推進法の義務化が中小企業まで拡大。
改正のポイントを社会保険労務士が解説します。

2019年6月に法改正した女性が社会で活躍しやすい環境づくりを促進する「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」、いわゆる「女性活躍推進法」。

2022年4月からは対象が中堅・中小企業にまで拡大され、努力義務が義務化となります。

今回は、2022年4月に変わるポイントや求められる対応などを中心に、解説していきます。

この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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女性活躍推進法とは?

目前に迫った義務化の準備は済んでいますか?

女性活躍推進法とは、2015年に成立した法律です。女性が仕事で個性や能力を存分に発揮できる社会の実現を目的としています。少子高齢化によって将来の労働人口の減少が予想されることを背景に、優秀な人材の採用や育成、長期的に仕事をしていける仕組みや環境づくりは、重要な課題です。とくに諸外国と比べ日本の女性の就業や管理職比率が低い状況は、改革を行うべき問題の一つと捉えられていました。

そこで、女性が働きやすく長期的にキャリア形成をしていけるよう、国や地方公共団体、企業に対して、改革を求めていくことになったのです。

女性活躍の底上げを行うため、女性採用比率や管理職比率といった活躍状況の把握、目標数値の設定、目標達成のための行動計画の策定といった取り組みが求められています。

女性活躍推進法の改正ポイント

改正のポイントを押さえて、早めの対応を。

女性活躍推進法は2019年6月に改正され、2022年4月1日からは対象企業が拡大されます。

中堅・中小企業まで対象が拡大

女性活躍推進法は、これまで努力義務とされていた「常時雇用する労働者が101人以上300人以下」の企業についても、2022年4月以降「一般事業主行動計画の策定・届出義務および自社の女性活躍に関する情報公表」が義務付けられることとなります。

対象となる企業は、2022年4月1日の施行日までに行動計画を策定・提出・情報公開するための準備が必要です。

女性活躍に関する情報公開が義務化

対象企業が拡大されるとともに、女性活躍推進に関しての情報公表についても、義務化されることになります。情報公開にあたっては、単に女性が働いていること公表するものではありません、自社の課題解決のためにどのような計画を策定し、取り組んでいるのかといった結果を、定量的に測定したものを公表する必要があります。

 

特例認定制度(プラチナえるぼし)が創設

女性活躍を推進し、取り組み状況が優秀であると認定された企業に与えられるのが、「えるぼし認定」です。えるぼし認定を取得するには、「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの認定基準をもとに、自社の状況を「女性の活躍推進企業データベース」に登録、公表し評価されます。1〜3段階で評価され、5つすべての基準を満たしている場合には3つ星、3〜4つの基準を満たしている場合には2つ星、1〜2つの基準を満たしている場合には1つ星として、認定がされます。

さらに、改正女性活躍推進法では新たに「プラチナえるぼし」認定が創設されました。えるぼし認定企業のうち、より高い水準の要件を満たした企業に認定されることになりました。

えるぼし、プラチナえるぼし認定企業には、厚生労働大臣が定める認定マークが付与されます。自社商品やホームページ、広告、名刺などへの利用が可能です。

また、えるぼし認定企業は資金調達などでの加点評価を受けられるといったメリットもあります。

2022年4月、対象企業になったら?
行うべき6つのポイント

自社の実情を正確に把握し、課題を分析しましょう

2022年4月からは、常時101人以上の従業員を雇用している企業にも義務が拡大されます。常時雇用している従業員とは、正社員に限りません。契約社員やパートタイマー、アルバイトなど有期雇用の従業員もその対象であり、過去1年以上の期間で引き続き雇用されている、または1年以上引き続き雇用されると見込まれる人であれば、雇用形態を問いません。

すでに従業員が101人以上の企業はもちろんのこと、今後101人以上になることが見込まれる場合には、早めの準備をおすすめします。

この女性活躍推進法の義務化については、罰則規定がないため、とくに対応する必要がないといった企業もあるかもしれません。とはいえ、女性活躍推進を打ち出す企業姿勢は、優秀な人材採用や、企業イメージアップに大きく影響するものです。反して、こうした対策に無理解や対応を打ち出さない企業への印象は損なわれる恐れがあるでしょう。この機会に自社の働く環境の実態を見直す機会にしてはいかがでしょうか。

実際に、対象企業になったとき、対象となることが予定されるときに、行うべきポイントを確認しておきましょう。

 

自社の女性従業員の活躍状況を把握する

まずは、自社の現状について把握し、課題を明らかにすることから始めます。次の基礎項目について確認します。

基礎4項目

① 女性の採用比率

採用を行った人のうち女性の採用割合を明らかにします。

直近事業年度の女性採用者数÷直近事業年度の採用者数×100(%)

② 男女の平均勤続年数の差

従業員の平均勤続年数の男女の差を確認します。

女性の平均勤続年数÷男性の平均勤続年数×100(%)

その他、男女別に育児休業取得率、年次有給休暇取得率、給与額、人事評価など、確認しておくとよいでしょう。

③ 管理職に占める女性の割合

役員の割合と管理職の割合を明らかにします。

女性管理職数÷管理職数×100(%)

④ 労働時間の状況

1か月あたりの労働時間、残業時間、平均残業時間などを算出しておきます。

自社の課題を分析する

基礎項目のほか、さらに自社の状況に合わせて詳細に把握することで、課題設定がより具体的になってくるでしょう。

そもそも女性の採用自体が少ないのか、採用方法やアプローチに問題があるのか、それとも職種に性別による偏りがあるのかなど、出産・子育てをしながら働くことを阻害する要因は何かなど、原因を探っていきます。

自社の取り組み内容・目標を設定する

課題が明らかになったら、取り組み内容、改善目標を設定します。定量的に確認できる目標を設定しましょう。中長期視点で対応策を検討することをおすすめします。

行動計画の策定・周知・公表する

取り組み内容・数値目標が設定できたら、行動計画の策定を行なっていきます。行動計画は、社内だけでなく対外的に公表するものですので、決まったフォーマットに沿って策定していきます。

① 目標

数値であらわせる定量目標を設定します。

「管理職に占める女性割合を◯%とする」といったように、数値目標を設定しましょう。

② 内容

目標を達成するための取り組み内容を記載します。

「職場のマネジメント教育の導入により、中長期的な管理職育成を行う」など、取り組み内容を記載していきます。

③ 計画期間

中長期で実現できる計画を作成します。長期計画であっても中期のマイルストーンを置きながら、定期的に進捗と目標値を確認できる計画に落とし込みます。

④ 実施時期

取り組み内容ごとに必要となる具体的なアクションとして明らかにし、実施時期を記載します。

行動計画を策定したら、社内への周知とともに、所轄都道府県労働局に届出を行います。また、厚生労働省が運営する「女性活躍推進企業データベース」のほか、自社のホームページなどに掲載し、公表します。

 

○女性活躍推進企業データベース

https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/

 

取り組み実施、効果を測定する

実際に行動計画に従って取り組みを開始します。数値目標を達成するために、定期的に効果測定を行いながら、計画を進めていきます。中長期の計画ですので、取り組みを行うなかで、計画変更の必要も生じるかもしれません。適宜、見直し、再度の目標設定などをしながら進めていきましょう。

女性の活躍情報を公表する

行動計画の公表とは異なり、各社の現状を公表します。行動計画の公表と同じく、女性の活躍推進企業データベースや自社のホームページを通じて公表をします。女性が働きやすい職場だけに重きが置かれているようにも思えますが、この取り組みは誰もが働きやすい職場づくりにもつながります。働きやすい環境づくりを目指して、取り組んでいきましょう。

中小企業の女性活躍推進の事例3選

各社が知恵を絞って取り組んでいます。

さまざまな業界の中小企業が、女性活躍推進に取り組んでいます。今回の改正女性活躍推進法の義務化対象は101人以上の企業ではありますが、100人未満の企業であっても、積極的に取り組んでいることがわかります。

どのような取り組みを行なっているか事例を紹介します。

厚生労働省:女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例より

男女問わずパフォーマンスを発揮できる働き方を実践

<情報通信業・従業員164人・女性60人>

・取り組みの背景

習慣化した長時間労働をよしとする働き方を改善したい。

・具体的な取り組み

自分の裁量と責任で働くことのできるフレックス制度を導入し、働く時間や場所、リモートワークなどの普及と合わせて推進。制度を利用して、女性管理職が育児と仕事の両立を目指す。今後は制度の積極活用と、風土の醸成、定着が目標。男女問わず誰もが働きやすい環境を目指している。

特別有給休暇を増やし子育てをサポート

<介護サービス業・従業員97人・女性85人>

・取り組みの背景

女性が多い職場であり、子供を持つ女性がいかに家庭と両立しながら心配なく働けるかという悩みがあった。

・具体的な取り組み

子供を保育園に送迎する時間が必要、扶養の範囲内で働きたい、子供の行事に休みたいなど、家庭の事情に柔軟に対応できるよう、勤務時間の柔軟化に取り組む。保育参観休暇や授業参観休暇、介護が必要な従業員には介護付き添い休暇など、特別の有給休暇を増やした。また子供の預け先に悩む従業員のための託児所も設置するなどにより、離職率が大きく低下した。個人のペースに合わせ、キャリアアップもキャリアダウンも自由に選択できるようにした。

ステップアップを支援。女性管理職が増加。

<卸売業・従業員59人・女性32人>

・取り組みの背景

女性は結婚と同時に退職する人が多く、出産後も働き続けるのは稀であった。結婚・出産後も働き続けられる環境整備が目標であった。

・具体的な取り組み

トップメッセージにより、制度の充実や多様な働き方のためのプロジェクトを結成。在宅勤務制度や育休復帰のためのフォロー体制構築、妊娠出産後の女性の健康確保についての勉強会の開催など、制度の充実と従業員自身の働き方への考え方の変化へアプローチを行った。結婚出産により離職する女性が減少し、その結果、キャリア中断することなく、女性の管理職への登用する機会が増えた。

まとめ

行動計画の策定や取り組みで迷った際には、ご相談ください。

女性活躍推進法の対象拡大により、多くの企業が取り組むべき課題となりました。もちろん、各社課題や難易度もさまざまで、実現をするまでには時間と労力がかかることがあるかもしれません。とはいえ、義務化であるかどうかに関わらず、人を雇用している企業にとっては、必ず取り組まねばならない課題であり、問題です。性別に限らず、誰もが自身の持つスキルを最大限に発揮し、いきいきと仕事ができることが理想です。そのためにも、企業が女性活躍推進に積極的に取り組むことが、今、必要といえます。今後の企業経営を見直すよい機会と捉え、取り組んでいきたいものです。

社会保険労務士法人とうかいは成長への体質改善を支援する会社です。女性が活躍する会社は成長体質の会社であることが多いです。
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