厚生労働省は、令和8年熊本地震に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主に対して、雇用調整助成金の特例措置を実施すると発表しました。
この特例措置は、令和8年熊本地震に伴う経済上の理由により事業活動を縮小する事業所を対象としたもので、労働政策審議会職業安定分科会での審議・答申を経て、厚生労働省が速やかに関係省令を公布し施行するとされています。
本記事では、特例措置の対象となる要件や、全国共通の特例内容、熊本県内の事業所に追加される特例内容、特例対象期間について整理して解説します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
- NHK「あさイチ」
- 中日新聞
- 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri/
取材・寄稿のご相談はこちらから

特例措置の対象となる事業所
令和8年熊本地震に伴う経済上の理由により、事業活動を縮小する事業所が対象となります。
通常、施設や設備の損壊に伴う事業活動の休止・縮小は助成対象となりませんが、今回の特例では、地震により施設や設備が直接的な被害を受けた場合であっても、経済上の理由(例:修理業者の手配や修理部品の調達等に関して災害の影響により期間を要すること等)があれば、助成対象となります。

全国の事業所を対象とした特例措置
全国の事業所を対象として、以下4つの特例措置が実施されます。
| No. | 項目 | 通常の取扱い | 特例措置の内容 |
|---|---|---|---|
| (1) | 生産指標の確認期間 | 最近3か月間の月平均値が前年同期比で10%以上減少していることが要件 | 比較期間を最近1か月に短縮し、迅速な特例適用を可能とする |
| (2) | 雇用量増加時の取扱い | 雇用者・派遣労働者の合計人数の最近3か月平均が前年同期比で5%超かつ6名以上(中小企業事業主は10%超かつ4名以上)増加している場合は助成対象外 | 当該要件を撤廃し、雇用量が増加していても助成対象とする |
| (3) | 事業所設置後1年未満の事業主 | 雇用保険適用事業所設置後1年未満の事業主は対象外 | 令和8年7月28日時点で事業所設置後1年未満の事業主も助成対象とする |
| (4) | 計画届の提出時期 | 休業等を行う前に計画届の事前提出が必要 | 計画届の事後提出を可能とする |
(1)生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮
通常は、販売量、売上高等の事業活動を示す生産指標の最近3か月間の月平均値が、前年同期と比べて10%以上減少している事業所であることが要件とされています。今回の特例では、この比較期間を最近1か月とすることで、迅速な特例適用を可能としています。
(2)最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象
通常は、その事業所で雇用している労働者及び受け入れている派遣労働者の合計人数の最近3か月の平均値が、前年同期比で5%超かつ6名以上(中小企業事業主の場合は10%超かつ4名以上)増加している場合は助成対象となりませんが、今回の特例ではこの要件を撤廃します。

(3)地震発生時に事業所設置後1年未満の事業主も対象
通常は、雇用保険適用事業所設置後1年未満の事業主は対象となりませんが、令和8年7月28日時点において事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象となります。
この場合、(1)の生産指標は、地震発生日前のいずれかの1か月(雇用保険適用事業所設置後であって労働者を雇用している場合に限る)の数値と比較します。

(4)計画届の事後提出が可能に
通常は、助成対象となる休業等を行うにあたり、事前に計画届の提出が必要ですが、今回の特例では事後の提出も可能となります。
熊本県内の事業所に追加される特例措置
熊本県内に所在する事業所については、上記の全国共通特例に加え、以下2つの特例措置が追加で実施されます。
(1)残業相殺のルールを撤廃
通常は、休業等をさせる一方で所定外労働を行わせた場合、支給対象となる休業等の延べ日数から所定外労働時間分を控除することとされていますが、この取扱いを撤廃します。

(2)教育訓練の実施状況に応じた助成率引き下げルールを撤廃
通常は、支給日数が30日を経過した日以降の期間について、教育訓練の実施率が10%未満の場合は助成率を引き下げることとされていますが、この取扱いを撤廃します。
特例対象期間
発災日(令和8年7月28日)から令和9年1月27日までの間に開始した休業等が、特例の対象となります。
まとめ
令和8年熊本地震に伴う雇用調整助成金の特例措置は、熊本県内だけでなく全国の事業所が対象となる点が特徴です。生産指標の確認期間短縮や雇用量増加要件の撤廃、計画届の事後提出など、通常の制度よりも要件が緩和されており、震災の影響を受けた事業主が速やかに休業等に対する助成を受けられるよう設計されています。
なお、具体的な申請窓口・提出書類・支給申請の手続き詳細については、本記事の情報源となった発表内容に記載がないため、要確認としています。実際の申請にあたっては、最新の公式情報をご確認ください。

出典
厚生労働省 報道発表資料「令和8年熊本地震に伴う雇用調整助成金の特例を実施します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75665.html



