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コラム

「勤務時間が短い正規型労働者」の社会保険適用に要注意 ― 個人事業主・フリーランスの雇用形態を見直す通知が発出されました

結論から申し上げますと、個人事業主やフリーランスを「勤務時間が極端に短い正規型の労働者」として雇用し、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させている事業所は、その加入要件を満たしているか改めて点検する必要があります。厚生労働省は令和8年9月14日付で、こうした働き方について被保険者資格の取扱いを明確化する通知を、全国健康保険協会・健康保険組合・日本年金機構に対して発出しました。契約書の文言だけでなく、実態が伴っていない場合には、被保険者資格が認められない可能性があります。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

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通知の背景

今回の通知は、個人事業主等を極端に短時間の「正規型労働者」として雇用し、社会保険の被保険者資格取得届を提出する一方で、その個人事業主等から「会費」などの名目で労働の対価として受け取る報酬を上回る金額を支払わせている事例があるという指摘を踏まえたものです。このような形をとることで、本来は国民健康保険・国民年金に加入すべき個人事業主等が、実態を伴わないまま健康保険・厚生年金保険の適用を受け、結果として保険料負担を不当に軽減しているケースが確認されているとされています。

なお、この通知は令和8年3月18日付で発出された「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」の考え方を、役員以外の労働者にも広げて整理したものという位置づけです。両通知はあわせて確認しておくことをおすすめします。

被保険者資格が認められない可能性がある2つの判断要素

通知では、事業所と労働者の間に「常用的使用関係」があるかどうかは、契約書の文言だけで判断するのではなく、労働日数・労働時間・就労形態・業務内容など、就労の実態に照らして個別具体的・総合的に判断するとされています。そのうえで、次の①②のいずれにも該当する場合には、原則として被保険者資格を有さないものとして取り扱うとしています。

① 報酬が業務の対価として経常的な支払いと認められない場合

労働者として受け取る報酬を上回る額の会費等を事業所に支払っている場合や、自らの業務を第三者(事業所)に委託する形をとりつつ、実質的にはその委託費が報酬の原資になっているような場合が該当します。会費等の額が報酬と同額以下であっても、報酬の大部分を会費等の支払いが占める状態が常態化している場合などは、総合的な事情を踏まえて慎重に判断するとされています。関連法人への会費等の支払いが雇用の実質的な条件になっており、資金が事業所と関連法人の間を移動しているに過ぎない場合も同様に扱われます。

② 業務が経常的な労務の提供と認められない場合

1週間または1か月の労働時間が常態的に極端に短く、社会通念上、経常的に労務を提供しているとは言えない場合が該当します。また、労働時間の長短にかかわらず、業務内容自体が次のようなものである場合も対象とされています。単なる自己研さんに過ぎないアンケート回答や勉強会参加、指揮命令に基づかない形式的な活動報告や情報共有への協力、労働者同士の相互互助的な連携、個人事業主としての本来の事業活動をそのまま事業所の業務としているだけのもの、その他就労の実態に照らして専ら社会保険の適用を受けるための形式的な業務に過ぎないと認められるもの、が挙げられています。

経営者・労務担当者が確認すべきポイント

今回の通知を踏まえ、個人事業主やフリーランスを短時間の正規型従業員として社会保険に加入させている、あるいは今後そのような形態を検討している事業所は、次の点を確認することをおすすめします。

第一に、会費・研修費・参加料などの名目で、労働者に支払わせている金額と、労働者に支払っている報酬の金額のバランスです。会費等が報酬を上回っている、あるいは報酬の大部分を占めているという実態があれば、被保険者資格そのものが否認されるリスクがあります。

第二に、実際の労働時間と業務内容です。契約上は正規型の勤務時間を定めていても、実態として極端に短い、あるいは自己研さんや情報共有にとどまる業務内容になっていないかを確認する必要があります。

第三に、資格が否認された場合の影響です。仮に遡って被保険者資格が無効と判断された場合、事業所・本人双方に保険料の精算や国民健康保険・国民年金への切り替えなど、実務上の負担が生じる可能性があります。制度の趣旨に沿わない加入形態を継続することは、後々のトラブルにつながりかねません。

まとめ

個人事業主やフリーランスを短時間の正規型労働者として社会保険に加入させる取扱いについては、契約の形式ではなく、報酬と会費等のバランスや実際の労働実態が問われる時代になっています。すでにこうした雇用形態を採用している場合や、導入を検討している場合は、実態が制度の趣旨に沿っているか、早めに確認されることをおすすめします。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

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