結論(この記事で分かること) 製造業の36協定運用では、時間外労働の上限(原則月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間・複数月平均80時間以内・月100時間未満・月45時間超は年6回まで)を遵守することが核心です。製造業は適用猶予対象業種ではなく、大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から原則どおり適用されています。様式第9号(一般条項)・様式第9号の2(特別条項)の使い分けや、業務区分の細分化、過半数代表者の適正な選出が運用上のポイントです。
社会保険労務士法人とうかいは、製造業を含む顧問先500社以上の労務管理を全国フルリモートで支援しています。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
- NHK「あさイチ」
- 中日新聞
- 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri/
取材・寄稿のご相談はこちらから

結論:「上限の数字」と「様式の正確さ」が運用の核心
押さえるべきは、上限規制の数字を正確に協定へ反映させることと、届出様式・手続きを法令どおりに整えることの2点です。厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」によれば、上限は原則月45時間・年360時間であり、臨時的な特別の事情がなければ超えられません。
特別の事情があって労使合意する場合(特別条項)でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満かつ2〜6か月平均80時間以内とし、月45時間超は年6回までです。違反には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

このセクションのポイント
- 原則の上限は月45時間・年360時間
- 特別条項でも年720時間以内・月100時間未満・複数月平均80時間以内・年6回までが絶対上限
- 違反には罰則(懲役または罰金)がある
上限規制の適用時期と注意点
製造業は猶予された業種には含まれておらず、建設業や自動車運転の業務、医師とは異なり原則どおりのスケジュールで適用されています。
いつから適用されている?
大企業は2019年4月1日、中小企業は2020年4月1日から適用されています。中小企業該当は資本金または出資総額3億円以下、あるいは常時使用労働者数300人以下のいずれかで判断します(企業単位)。
猶予業種に製造業は含まれる?
いいえ。適用が2024年3月31日まで5年間猶予されたのは建設事業、自動車運転の業務、医師、鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業であり、一般の製造業は対象外です。
どの届出様式を使う?
時間外労働を協定する場合は様式第9号、限度時間(月45時間・年360時間)を超える特別条項の場合は様式第9号の2で所轄労働基準監督署長に届け出ます。第9号の2は限度時間内(1枚目)と超える分(2枚目)の2枚構成です。
このセクションのポイント
- 製造業は適用猶予業種ではない
- 中小企業の判定は資本金3億円以下または従業員300人以下
- 一般条項は様式第9号、特別条項は様式第9号の2を使用する
見落としやすいチェックポイント
製造業の現場では、製造工程を一括りにした業務区分や形式的な過半数代表者の選出が法令違反につながりやすい点に注意が必要です。厚生労働省の指針では、各製造工程で労働時間管理を独立して行っているのに「製造業務」とまとめて協定することは業務区分の細分化が不十分だと明示されています。
業務区分はどこまで細分化すべき?
設計、機械組立、検査、購買、経理など、実際に労働時間管理の単位となる業務ごとに区分します。まとめすぎると協定の実効性が認められない可能性があります。
過半数代表者は誰でもよい?
いいえ。過半数労働組合がない場合、過半数代表者は管理監督者でないこと、投票・挙手等の民主的な方法で選出されること、使用者の意向に基づく選出でないことが要件で、会社指名は認められません。
特別条項の事由は何でも定められる?
いいえ。「業務の都合上必要な場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれのある定め方は不可で、納期ひっ迫や機械トラブル対応など具体的な事由を定める必要があります。
このセクションのポイント
- 製造工程を一括りにした業務区分は不十分とされる
- 過半数代表者は管理監督者を除き民主的な方法で選出する
- 特別条項の事由は具体的に定める
社会保険労務士法人とうかいからのアドバイス
経営者・人事担当者は、まず自社の36協定が様式第9号・第9号の2のどちらに該当するか確認し、協定内容が上限規制の数字を満たすか再点検してください。次に、業務区分が製造工程ごとに細分化されているか、過半数代表者の選出プロセスが適正かを見直し、最後に時間外労働の実績を月次で記録・確認する体制を整えましょう。

このセクションのポイント
- 協定内容が上限規制の数字を満たすか再点検する
- 業務区分・過半数代表者の選出プロセスを見直す
- 時間外労働の実績を月次で記録・確認する
よくある質問(FAQ)
Q1. 製造業は時間外労働の上限規制の適用が猶予されていますか?
いいえ。猶予業種は建設事業、自動車運転の業務、医師、鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業であり、一般の製造業は大企業2019年4月・中小企業2020年4月から原則どおり適用されています。
Q2. 特別条項を結べば時間外労働に上限はなくなりますか?
いいえ。年720時間以内、月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間超は年6回までという絶対的な上限が法律で定められています。
Q3. 36協定は本社でまとめて1通届け出れば足りますか?
いいえ。原則として事業場(工場・支店・営業所等)ごとに協定し届け出る必要があり、複数工場がある場合は工場ごとの届出状況の確認が重要です。
Q4. 36協定の運用について社会保険労務士法人とうかいに相談できますか?
はい。とうかいは、36協定の締結・届出から時間外労働の管理体制の整備まで幅広い業種の労務管理を支援しています。
まとめ
製造業の36協定運用では、月45時間・年360時間の原則と、特別条項における年720時間・月100時間未満・複数月平均80時間以内・年6回までという絶対上限を正確に反映させることが欠かせません。適用猶予業種ではないため、様式の選択や業務区分の細分化、過半数代表者の選出といった見直しが必要です。不安がある場合は社会保険労務士法人とうかいへご相談ください。
関連記事:製造業の会社が労務体制を整備するには?
監修:社会保険労務士法人とうかい 2011年開業・2015年法人化。名古屋本社・東京神田事務所を拠点に、顧問先500社以上の人事労務を全国フルリモートで支援。社労士事務所TOP100(2023年)選出、2026年サステナグロースカンパニーアワード「ライジングスター賞」受賞。
参考資料
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」 https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf
- 厚生労働省「働き方改革関連法に関するサイト」(時間外労働の上限規制)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
- 厚生労働省「労働基準関係主要様式」(36協定届様式) https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/
