結論(この記事で分かること) 歩合給(出来高払制)で働く従業員にも、時間外労働をさせた場合は割増賃金の支払いが必要です。歩合給部分は「歩合給の総額÷その月の総労働時間数」で時間単価を出し、時間外労働時間数と0.25を掛けて計算し、固定給部分は通常どおり1.25を掛けて計算します。
運送業や美容サロンなど、売上や件数に応じた歩合給を採用している会社では、「歩合を払っているから残業代は不要では」と迷うことがあります。この記事では、社会保険・労務管理の専門家である社会保険労務士法人とうかいが、歩合給の残業代の計算方法と、固定給と併用する場合の考え方、注意点を解説します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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- NHK「あさイチ」
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結論:歩合給でも残業代(割増賃金)は必要
歩合給であっても、法定労働時間を超えて働かせた場合は割増賃金を支払う必要があります。厚生労働省の資料でも「歩合給であっても時間外労働や休日労働には割増賃金の支払いが必要」と明記されています。

割増賃金の支払義務は労働基準法37条に、時間単価の求め方は労働基準法施行規則19条に定められています。
このセクションのポイント
- 歩合給でも時間外・休日労働には割増賃金が必要
- 根拠は労働基準法37条、計算方法は労基則19条
- 「歩合を払っているから残業代は不要」という扱いはできない
歩合給と固定給の残業代の計算方法
歩合給部分はどう計算する?
歩合給部分の時間単価は、「歩合給の総額÷その賃金計算期間の総労働時間数」で求めます(労基則19条1項6号)。総労働時間数には、残業時間を含むすべての労働時間が入ります。
割増率は1.25ではなく0.25を掛けるのが一般的な取扱いです。残業した時間に対する1.0倍の部分は、歩合給の総額にすでに含まれていると考えられるためです(この取扱いの根拠とされる行政通達〈昭和23年11月25日基収3052号〉の原文は要確認)。
歩合給部分の残業代=歩合給の総額÷総労働時間数×0.25×時間外労働時間数
固定給と併用する場合は?
固定給と歩合給を併用する場合は、それぞれ別に計算して合計します(労基則19条1項7号)。月給の固定給部分は「月給÷月の所定労働時間数(月によって異なる場合は1年間の1か月平均)」で時間単価を出し、1.25を掛けます。

計算例(数字は架空の例です)
| 項目 | 例の数字 |
|---|---|
| 固定給(月給) | 200,000円(月平均所定労働時間160時間) |
| 歩合給 | 120,000円 |
| 総労働時間 | 200時間(うち時間外労働40時間) |
- 固定給部分:200,000円÷160時間=1,250円 → 1,250円×1.25×40時間=62,500円
- 歩合給部分:120,000円÷200時間=600円 → 600円×0.25×40時間=6,000円
- 残業代の合計:68,500円
月60時間を超えたらどうなる?
月60時間を超える時間外労働には、50%以上の割増率が適用されます(労働基準法37条1項ただし書)。中小企業にも2023年4月1日から適用されています。歩合給部分は60時間を超えた時間について0.5、固定給部分は1.5を掛けて計算します。
このセクションのポイント
- 歩合給部分は「総額÷総労働時間×0.25×残業時間」
- 固定給部分は「月給÷所定労働時間×1.25×残業時間」で別に計算して合計
- 月60時間超は中小企業も50%以上(歩合給部分は0.5)
社会保険労務士法人とうかいからのアドバイス
今日から次の3点を点検しましょう。
- 歩合給から残業代を差し引く仕組みになっていないか:最高裁令和2年3月30日判決(国際自動車事件)は、売上高等の一定割合から残業手当等の相当額を控除して歩合給を計算する定めについて、歩合給が0円になることもあるなどの事情の下では、割増賃金が支払われたとはいえないと判断しました。最高裁令和5年3月10日判決でも、歩合給の相当部分を「調整手当」に組み替えた賃金体系で、割増賃金の支払いを認めた原審が違法とされています。
- 保障給を定めているか:出来高払制で働く労働者には、労働時間に応じた一定額の賃金を保障しなければなりません(労働基準法27条)。保障給の具体的な水準は法律に数字がないため、賃金規程で定めておきましょう。
- 労働時間を正確に把握しているか:歩合給部分の単価は総労働時間で決まります。

このセクションのポイント
- 歩合から残業代を差し引く仕組みは最高裁で否定された例がある
- 出来高払制には保障給(労基法27条)が必要
- 総労働時間の正確な把握が計算の前提
よくある質問(FAQ)
Q1. 歩合給を払っていれば残業代は不要ですか?
いいえ、不要ではありません。歩合給でも法定労働時間を超えた労働や休日労働には割増賃金が必要です。歩合給部分は総労働時間で割った単価に0.25を掛けて計算します。
Q2. 歩合給の割増率が1.25ではなく0.25なのはなぜですか?
残業時間分の1.0倍の賃金は、歩合給の総額にすでに含まれていると考えられるためです。そのため割増部分の0.25だけを上乗せします。固定給部分は通常どおり1.25で計算します。

Q3. 「歩合給に残業代を含む」と定めれば問題ありませんか?
いいえ、それだけでは足りない場合があります。最高裁は、歩合給から残業手当相当額を差し引く仕組みについて、割増賃金が支払われたとはいえないと判断した例があります。通常の賃金と割増賃金を判別できる定めが必要です。

Q4. 歩合給の従業員にも月60時間超の50%は適用されますか?
はい、適用されます。中小企業も2023年4月1日から対象です。歩合給部分は月60時間を超えた時間について0.5を掛けて計算します。
まとめ
歩合給でも残業代は必要で、歩合給部分は「総額÷総労働時間×0.25」、固定給部分は「×1.25」で計算して合計します。歩合から残業代を差し引く仕組みや保障給の定めは、賃金規程とあわせて点検しましょう。社会保険労務士法人とうかいでは、歩合給制度の計算方法や賃金規程の見直しについてご相談を承っていますので、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

参考資料
- e-Gov法令検索「労働基準法」第27条(出来高払制の保障給)・第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金):https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」第19条1項4号・6号・7号(割増賃金の基礎となる賃金の計算):https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
- 厚生労働省労働基準局「労働法の基礎講座 第9回【賃金】割増賃金(計算方法)」(長崎労働局掲載):https://jsite.mhlw.go.jp/nagasaki-roudoukyoku/content/contents/no9-25031001.pdf
- 山口労働局「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は50%以上で」:https://jsite.mhlw.go.jp/yamaguchi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/warihikiage_01.html
- 裁判所「最高裁判所第一小法廷 令和2年3月30日判決(平成30年(受)908号)」:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89433
- 裁判所「最高裁判所第二小法廷 令和5年3月10日判決(令和4年(受)1019号)」:https://www.courts.go.jp/hanrei/91858/detail2/index.html



