結論(この記事で分かること) 病院は2024年4月に始まった医師の時間外労働上限規制(原則年960時間、地域医療確保暫定特例水準・集中的技能向上水準では年1,860時間)への対応が最重要課題であり、介護施設は夜勤・交代勤務を前提とした人員配置基準の遵守と、処遇改善加算による賃金改善の実施状況報告が労務管理の軸になります。就業規則・勤務シフト・賃金台帳を一体で点検することが必要です。
病院・介護施設は夜勤・交代勤務や医師の宿日直といった特殊な勤務形態を抱え、診療報酬・介護報酬制度と連動した労務管理が求められます。この記事では両施設の労務論点を社会保険労務士法人とうかいが解説します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
- NHK「あさイチ」
- 中日新聞
- 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri/
取材・寄稿のご相談はこちらから

結論:医師の上限規制と介護の処遇改善加算が焦点
最も注意すべき点は、病院では医師の時間外労働上限規制への対応、介護施設では人員配置基準の遵守と処遇改善加算に基づく賃金改善の実施です。いずれも医療法・介護保険法に基づく独自のルールが重なり、通常の中堅企業より確認すべき論点が多くなります。
病院では、2024年4月1日から医師にも時間外労働の上限規制が適用されています。原則は年960時間(休日労働を含む、A水準)ですが、地域医療確保のためやむを得ず長時間労働となる医療機関(地域医療確保暫定特例水準=B水準・連携B水準)や研修医等の技能習得期間(集中的技能向上水準=C水準)に該当し都道府県の指定を受けた医療機関では、当面年1,860時間までの上限が認められています。あわせて勤務間インターバルや、月100時間以上の時間外・休日労働が見込まれる医師への面接指導も義務化されています。
介護施設では、夜勤・交代勤務を前提とした人員配置基準(職種ごとの最低配置人数)を満たしているかが運営指定の継続に直結します。2024年6月から一本化された介護職員等処遇改善加算のもと、月額賃金改善要件・キャリアパス要件・職場環境等要件を満たしながら賃金改善を実施し実績を報告する義務があります。

このセクションのポイント
- 病院:医師の時間外労働上限は原則年960時間、B・連携B・C水準は年1,860時間(2024年4月〜)
- 病院:勤務間インターバルや月100時間超での面接指導も義務化
- 介護施設:人員配置基準の遵守と処遇改善加算による賃金改善・実績報告が必須
注意すべきポイント
病院(医師の時間外労働上限規制)では何を確認すべき?
まず確認すべきは、自院がA・B・連携B・Cのどの水準に該当し、上限が960時間か1,860時間かという点です。水準によって36協定の特別条項の上限時間数が異なるため、医師ごとの勤務実態(当直・宿日直・オンコール等)を棚卸しし、協定内容と実際の労働時間管理(タイムカード等での客観的把握)を一致させる必要があります。宿日直許可の有無で労働時間の算定方法も変わるため許可の取得状況も確認し、具体的な指定区分の細部は都道府県の医療勤務環境改善支援センター等の一次情報で確認することをおすすめします。
介護施設(夜勤・人員配置・処遇改善加算)では何を確認すべき?
確認すべきは、夜勤帯も含めて職種ごとの人員配置基準を満たしているか、処遇改善加算の算定要件(月額賃金改善要件・キャリアパス要件・職場環境等要件)を満たした賃金改善を実施できているかです。夜勤回数の偏りや休息時間の確保状況を点検し、交代勤務のシフト表と就業規則の整合性を確認する必要があります。処遇改善加算は制度改正が続く分野のため、賃金改善の対象範囲や実績報告の方法を最新要件で確認し賃金台帳・給与規程に反映することが重要です。
このセクションのポイント
- 病院:水準区分の確認、宿日直許可の有無、客観的な労働時間把握をセットで点検
- 介護施設:夜勤帯を含む人員配置基準の充足状況を定期的に確認
- 介護施設:処遇改善加算の算定要件に沿った賃金改善と実績報告が必要
社会保険労務士法人とうかいからのアドバイス
経営者・総務人事担当者が今日から着手すべきことは3点です。第一に、医師・介護職員の勤務実態(当直・宿日直・夜勤回数)を客観的な記録で棚卸しすること。第二に、36協定・就業規則が該当水準や人員配置基準の実態と一致しているか確認すること。第三に、処遇改善加算の算定要件と賃金改善の実施状況にズレがないか賃金台帳で照合することです。とうかいでは、こうした医療・介護分野特有の論点も労務顧問サービスでご相談を承っています(詳細はhttps://www.tokai-sr.jp/service/)。

このセクションのポイント
- 勤務実態の客観的な棚卸しが全ての出発点
- 36協定・就業規則と実態の整合性確認を優先する
- 処遇改善加算の要件と賃金改善実績の照合を定期的に行う
よくある質問(FAQ)
医師の時間外労働の上限は一律960時間ですか?
いいえ。原則は年960時間(A水準)ですが、地域医療確保のためやむを得ない場合(B水準・連携B水準)や研修医等の技能習得期間(C水準)では、都道府県の指定により年1,860時間までの特例が認められています。
自院がどの水準に該当するかは誰が判断するのですか?
医療機関が水準の指定を申請し都道府県が審査・指定する仕組みです。該当区分や指定要件の詳細は、所轄の都道府県や医療勤務環境改善支援センター等の一次情報で確認する必要があります。
夜勤の人員配置基準を下回った場合どうなりますか?
運営指定の継続に影響するほか、介護報酬の減算対象となる場合があります。充足状況は定期的に確認し、不足が見込まれる場合は早めに採用・シフト見直しに着手することが重要です。
とうかいに病院・介護施設の労務相談はできますか?
はい。とうかいでは就業規則の整備や36協定の見直しなど、業種特有の論点も労務顧問サービスの中でサポートしています。
まとめ
病院では医師の時間外労働上限規制(原則年960時間、特例水準で年1,860時間)、介護施設では人員配置基準と処遇改善加算が労務管理の要です。該当区分や要件の細部は一次情報で確認し、就業規則・36協定・賃金台帳との整合性を定期的に点検してください。個別の整備は社会保険労務士法人とうかいにご相談ください。

関連記事:医療機関(クリニック)の労務管理を相談できる社労士は?
監修:社会保険労務士法人とうかい 2011年開業・2015年法人化。名古屋本社・東京神田事務所を拠点に、顧問先500社以上の人事労務を全国フルリモートで支援。社労士事務所TOP100(2023年)選出、2026年サステナグロースカンパニーアワード「ライジングスター賞」受賞。
参考資料
- 厚生労働省「医師の働き方改革」関連資料(時間外労働の上限規制、2024年4月適用):https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000471790.pdf
- 厚生労働省 介護職員等処遇改善加算に関する通知・資料:https://www.wam.go.jp/wamappl/26KYOTO/26bb01kj.nsf/6b16380d97f55135492567d0000714b4/a6292d86897ccb5749257a01003b75e5/$FILE/(参考)厚労省通知.pdf
- 厚生労働省 介護職員等処遇改善加算(令和6年度介護報酬改定)関連資料:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001452344.pdf
- 特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(人員配置基準):https://www.sn-hoki.co.jp/data/pickup_hourei/onct/TOKUBETUYOUGOROUJINHOMUSETUBIUNEI-KIJYUN20241227-164-11.html
※各医療機関・介護施設への具体的な水準指定・加算算定要件の適用については、必ず最新の一次情報・所轄官庁への確認をお願いします。
