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コラム

上場準備の労務で気を付けること|退職給付債務とハラスメント対策

結論(この記事で分かること) 上場準備の労務で見落とされやすいのが、「退職給付債務(退職給付引当金)の計上」と「ハラスメント対策」です。退職金制度がある会社は、監査を受ける財務諸表に退職給付債務を計上する必要があり、その前提として支給基準が明確な退職金規程が欠かせません。ハラスメント対策は、パワハラ・セクハラに加えて2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策も事業主の義務となりました。上場審査で説明を求められる内部通報制度や懲戒処分の状況とあわせて、運用の実績を積み上げておくことが重要です。

上場準備では、未払い残業代や労働時間管理に目が向きがちです。しかし実務では、「退職金の会計処理ができない」「ハラスメントの通報対応が記録に残っていない」といった問題が、監査や審査の段階で表面化することがあります。この記事では、IPO支援や就業規則の整備を手がける社会保険労務士法人とうかいが、2026年10月1日時点の公表情報をもとに、この2つの論点の注意点と整備の進め方を解説します。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア

  • NHK「あさイチ」
  • 中日新聞
  • 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」

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目次

1. この記事の要約

  • 退職金制度があるなら、退職給付債務の計上が必要です。 上場申請には監査を受けた財務諸表が必要なため、退職金も会計基準に沿って負債として計上します。
  • 計上の前提は、支給基準が明確な退職金規程です。 「社長の裁量で決める」「慣行で払っている」状態では、債務を見積もれません。
  • 従業員300人未満なら、原則として簡便法が使えます。 期末自己都合要支給額などを使って計算できますが、方法は監査法人と協議して決めます。
  • ハラスメント対策は、パワハラ・セクハラ・マタハラ等に加え、2026年10月1日からカスハラと求職者等へのセクハラも義務化されました。 改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)によるものです。
  • 上場審査では、内部通報制度や懲戒処分、労働基準監督署の調査の状況を説明します。 規程があるだけでなく、運用の記録が必要です。

2. そもそも、上場準備で問われる「労務」とは?

上場準備で問われる労務とは、会社が労働関係の法令を守り、そのための体制を継続して運用できているかどうかです。東京証券取引所のグロース市場では、新規上場申請者に「各種説明資料」の提出を求めています。その中の「従業員・労務の状況」と「リスク管理及びコンプライアンス体制」で、労務に関する多くの項目の説明が必要になります。

主な説明項目は次のとおりです(東京証券取引所「新規上場申請者に係る各種説明資料の記載項目について」2026年3月25日更新)。

  • 勤怠の管理方法、サービス残業を防ぐ取り組み、36協定の締結状況
  • 最近1年間と申請事業年度の賃金未払いの発生状況とその後の顛末
  • 最近3年間と申請事業年度の労働基準監督署の調査状況と、懲戒処分の状況
  • 内部通報制度の整備状況(経営陣から独立した窓口、通報後の流れ、通報者保護、通報件数など)
  • 最近3年間と申請事業年度の法令違反・不祥事、係争・紛争の状況

退職給付債務は「財務諸表の正確さ」、ハラスメント対策は「コンプライアンス体制の実効性」に関わる論点です。どちらも、上場直前に慌てて整えようとしても間に合いにくい点が共通しています。

専門用語解説

  • 退職給付債務とは、 退職金や企業年金について、将来支払う見込み額のうち、期末までに発生していると認められる部分を見積もった額です。
  • 退職給付引当金とは、 退職給付債務から年金資産を差し引いた額を、貸借対照表に負債として計上するものです(連結財務諸表では「退職給付に係る負債」と表示します)。
  • 簡便法とは、 期末自己都合要支給額などを使って退職給付債務を計算する方法です。原則として従業員300人未満の小規模企業等に認められています。
  • 原則法とは、 割引率や昇給率、退職率などの基礎率を使い、数理計算で退職給付債務を算定する方法です。
  • カスタマーハラスメントとは、 顧客や取引先などからの、社会通念上許される範囲を超えた言動により、労働者の就業環境が害されることです。

このセクションのポイント

  • 上場審査では「従業員・労務の状況」と「コンプライアンス体制」の説明が求められる
  • 賃金未払い、労基署の調査、懲戒処分、内部通報の件数まで説明対象になる
  • 退職給付債務は財務諸表の正確さ、ハラスメント対策は体制の実効性に関わる
  • どちらも直前の整備では間に合いにくい

3. 押さえるべきポイント:何に、どう対応するのか?

結論として、退職給付債務は「規程の明確化→計算方法の決定→毎期の計上」、ハラスメント対策は「法定の措置の整備→相談・通報の運用→記録の蓄積」という順で進めます。

退職給付債務の計上が必要になるのはなぜ?

上場を申請するには、公認会計士または監査法人の監査を受けた財務諸表が必要です。非上場の中小企業では、退職金を「支払ったときに費用にする」処理が多く見られます。しかし上場準備に入ると、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」に沿って、退職給付債務を負債として計上する必要があります。

初めて計上するときは、それまで計上していなかった債務が一度に負債として表れます。純資産や利益に大きく影響することがあるため、早めに金額の規模をつかんでおくことが重要です。なお、税務上は退職給付引当金の繰入額は損金になりません。会計と税務で扱いが異なる点にも注意が必要です。

簡便法と原則法はどちらを使う?

企業会計基準適用指針第25号では、従業員数が原則として300人未満の小規模企業等に簡便法を認めています。300人以上でも、年齢や勤続期間に偏りがあり、原則法で信頼できる計算ができない場合は、簡便法が認められることがあります。

項目簡便法原則法
対象原則として従業員300人未満の小規模企業等上記以外
計算方法の例期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法など割引率・昇給率・退職率などを使った数理計算
必要な準備退職金規程と従業員ごとの要支給額の計算上記に加え、基礎率の設定と年金数理人等による計算
留意点一度採用した方法は継続して適用する外部への計算委託の費用と期間を見込む

どちらの方法を採るか、重要性をどう判断するかは、最終的に監査法人との協議で決まります。社会保険労務士は会計処理そのものではなく、その前提となる退職金規程の整備と、要支給額の計算に必要な人事データの整理を支援します。

労務の視点で注意すべき退職金規程のポイントは?

退職給付債務を正しく見積もるには、「誰に、いくら、どの条件で払うか」が規程で明確になっている必要があります。

  1. 支給基準のあいまいさ: 「功労に応じて決定する」「会社が別に定める」といった規定では、要支給額を計算できません。計算式で求められる形にする必要があります。
  2. 規程と運用のずれ: 規程と異なる金額を慣行として払い続けていると、その慣行が労働条件と評価されるおそれがあります。
  3. 就業規則への記載: 退職手当の定めをする場合は、適用される労働者の範囲、決定・計算・支払の方法、支払の時期を就業規則に記載しなければなりません(労働基準法第89条第3号の2)。
  4. 制度変更と不利益変更: 支給水準の引き下げや制度の切り替えは、労働条件の不利益変更に当たる場合があります。合理性の検討や従業員への説明が必要です(労働契約法第9条・第10条)。
  5. 請求権の時効: 退職手当の請求権の消滅時効は5年です(労働基準法第115条)。過去の退職者への未払いがないかも確認します。

企業型DCへの移行は選択肢になる?

選択肢の一つです。確定拠出年金のような確定拠出制度は、会計上、その期に拠出すべき額を費用として処理します。退職一時金のように将来の支払見込み額を退職給付債務として計上する必要がないため、債務の変動を抑えやすくなります。ただし、既存の退職金からの移行は不利益変更の論点を伴います。移行の手続きや従業員への説明は、慎重に設計する必要があります。

ハラスメント対策で義務になっていることは?

職場のハラスメント対策では、次の措置が事業主の義務です。

ハラスメントの種類根拠法義務化の時期
パワーハラスメント労働施策総合推進法大企業2020年6月、中小企業2022年4月
セクシュアルハラスメント男女雇用機会均等法施行済み
妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント男女雇用機会均等法・育児・介護休業法施行済み
カスタマーハラスメント改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)2026年10月1日
求職者等に対するセクシュアルハラスメント改正法(同上)2026年10月1日

カスハラと求職者等へのセクハラの施行日は、施行期日を定める政令(令和8年政令第17号)で2026年10月1日と決まりました。具体的に何をすべきかは、厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号・第52号)で示されています。

義務となる措置の中心は、次の4点です。

  • 方針を明確にし、従業員に周知・啓発する(就業規則への規定や研修など)
  • 相談窓口を設け、適切に対応できる体制を整える
  • 発生したときに、事実確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止を迅速かつ適切に行う
  • 相談者のプライバシーを守り、相談したことを理由とする不利益な取扱いを禁止して周知する

上場審査で、ハラスメント対策はどう見られる?

上場審査の資料には「ハラスメント対策」という独立した項目はありません。ただし、内部通報制度の運用、懲戒処分の状況、係争・紛争の状況などの説明を通じて、実質的に確認されます。たとえば、ハラスメントの相談が内部通報窓口に寄せられた場合、調査、是正、再発防止の一連の対応が記録として残っているかが問われます。経営陣が関わる案件で調査が形だけになっていると、ガバナンス上の問題と受け取られかねません。

このセクションのポイント

  • 上場申請には監査済みの財務諸表が必要で、退職給付債務の計上が前提になる
  • 簡便法は原則として従業員300人未満で使えるが、最終判断は監査法人と協議する
  • 債務計算の前提は「計算式で求められる」退職金規程
  • 2026年10月1日からカスハラと求職者等へのセクハラ対策も義務化された
  • 上場審査では、内部通報や懲戒処分の説明を通じてハラスメント対応の実効性が見られる

4. 経営者が今すぐ対応すべきこと|社会保険労務士法人とうかいからのアドバイス

上場スケジュールの中では、監査契約の前後で退職給付債務の金額の目安をつかみ、ハラスメント対策は申請までに1年以上の運用実績を作ることを目標にすると進めやすくなります。

優先度別アクションリスト

優先度やること期限の目安担当
高退職金規程の有無と支給基準を確認し、要支給額を計算できる状態か点検する監査法人との契約前後人事担当者
高全従業員の自己都合要支給額を試算し、退職給付債務の規模を把握する監査対象期間の開始前人事・経理担当者
高カスハラ・求職者等へのセクハラを含め、ハラスメント防止規程と就業規則を改定するすぐに(2026年10月1日施行済み)人事担当者
中経営陣から独立した内部通報窓口(外部窓口を含む)を設け、通報後のフローを文書化する申請の1年以上前経営者・管理部門
中退職金制度の見直し(企業型DCへの移行など)を検討する計上方法の決定前経営者
低管理職向けのハラスメント研修と、相談対応記録の様式を整える年1回以上人事担当者

よくある落とし穴

  1. 退職金規程がなく、慣行で払っている: 支給基準がないと債務を見積もれません。規程を作るときは、過去の支給実績との整合性も確認が必要です。
  2. 初年度の計上額が想定より大きい: 勤続年数の長い従業員が多い会社では、初めて計上する債務が大きくなりがちです。早めに試算し、資本政策や利益計画に反映させます。
  3. 役員退職慰労金と混同している: 役員の退職慰労金は従業員の退職給付とは別の会計処理です。内規の整備状況も別に確認します。
  4. カスハラ対策を接客部門だけの問題にしている: 取引先や顧客と接する営業・管理部門も対象になり得ます。全社の方針として定める必要があります。
  5. 相談窓口があっても記録が残っていない: 審査では件数や対応の流れを説明します。相談の受付から是正・再発防止までを記録する仕組みが必要です。

社会保険労務士に相談するとできること

  • 退職金規程の新設・見直しと、支給基準を計算式で定める設計
  • 従業員ごとの勤続年数・等級など、要支給額の計算に必要な人事データの整理(会計処理は監査法人・公認会計士と連携して進めます)
  • 退職金制度の変更に伴う不利益変更の検討と、従業員への説明資料の作成
  • カスハラ・求職者等へのセクハラを含むハラスメント防止規程、就業規則の改定
  • 相談窓口の運用フロー、懲戒規程の整備、管理職研修の実施
  • 上場審査の「従業員・労務の状況」に関する説明資料の作成支援

このセクションのポイント

  • 監査契約の前後で、退職給付債務の金額の目安をつかむ
  • ハラスメント対策は2026年10月施行の義務化に合わせ、今すぐ規程を改定する
  • 内部通報窓口は申請の1年以上前に設け、運用の記録を残す
  • 会計処理は監査法人と、規程と運用の整備は社労士と分担して進める

5. とうかいが実際に対応した相談事例・よくあるトラブル

※事例は典型的なケースをもとに再構成しています。

相談事例

事例1:IT企業・従業員約150名(上場準備中)

  • 相談内容: 監査法人から退職給付債務の計上を求められたが、退職金規程が「別途定める」となっており、計算ができない。
  • 対応: 過去の支給実績を整理し、勤続年数と等級に応じたポイント制の計算式を設計しました。従業員説明会を行い、既存の水準を下回らない形で規程を改定しました。
  • 結果: 従業員ごとの自己都合要支給額が計算できるようになり、監査法人と協議のうえで簡便法による計上に進みました。

事例2:小売業・従業員約250名(上場準備中)

  • 相談内容: 店舗での顧客からの暴言が続いており、2026年10月のカスハラ対策の義務化に対応したい。上場審査で内部通報の運用も説明できるようにしたい。
  • 対応: カスハラの方針と対応手順を盛り込んで就業規則とハラスメント防止規程を改定しました。店舗責任者向けの研修を行い、相談・通報の受付記録の様式を整えました。
  • 結果: 相談の受付から再発防止までの流れが文書化され、審査資料で説明できる体制になりました。

よくあるトラブルとその対処法

  1. 退職金の支給額が規程と合わない
    • 原因: 規程を改定せずに、運用で支給額を変えていた。
    • 対処法: 支給実績と規程の差を洗い出し、どちらに合わせるかを決めます。規程の水準を下げる場合は、不利益変更の手続きを踏みます。
  2. 退職給付債務の計上で利益計画が崩れた
    • 原因: 計上額の試算が遅れ、利益計画に反映されていなかった。
    • 対処法: 監査対象期間に入る前に試算し、資本政策や予算に組み込みます。
  3. ハラスメント調査に経営陣が関わり、公正さが疑われた
    • 原因: 通報窓口が経営陣の指揮下にしかなかった。
    • 対処法: 社外窓口や監査役などへの通報ルートを設け、調査の独立性を確保します。
  4. カスハラ被害を訴えた従業員が退職した
    • 原因: 現場任せで、会社としての対応方針がなかった。
    • 対処法: 対応を打ち切る基準や上長への引き継ぎなど、会社の方針と手順を定めて周知します。被害を受けた従業員へのメンタルヘルスのケアも行います。

このセクションのポイント

  • 退職金の「規程と運用のずれ」は債務計算と労務トラブルの両方の原因になる
  • 退職給付債務の試算は、監査対象期間に入る前に終える
  • ハラスメント調査は、経営陣から独立したルートを確保する

6. 個別相談のご案内|社会保険労務士法人とうかい

社会保険労務士法人とうかいは、社会保険・労働保険の手続きから就業規則の整備、労務相談まで、企業の人事労務を幅広くサポートしています。

  • 2011年開業・2015年法人化。顧問先500社以上の人事労務を支援
  • 名古屋本社・東京神田事務所を拠点に、全国フルリモートで対応
  • IPO支援、M&A労務デューデリジェンス、就業規則作成、企業型DC導入支援に対応

「自社は対象になるのか知りたい」「何から手を付ければよいかわからない」といったご相談も承っています。まずはお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 上場準備では、退職給付債務を必ず計上しなければなりませんか?

はい、退職金制度がある場合は必要です。上場申請には監査を受けた財務諸表が必要で、退職給付債務は「退職給付に関する会計基準」に沿って負債として計上します。退職金制度がない場合や、確定拠出制度のみの場合は、退職給付債務は生じません。

Q2. 従業員が少ない会社でも原則法で計算する必要がありますか?

いいえ、原則として従業員300人未満の小規模企業等は簡便法を使えます。期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法などがあります。ただし、どの方法を採るかは監査法人と協議して決めます。

Q3. 退職金規程がない場合はどうすればよいですか?

まず、過去の支給実績を整理し、支給基準を計算式で定めた退職金規程を作ることが必要です。退職手当の定めをする場合は、適用範囲、計算・支払の方法、支払時期を就業規則に記載する義務があります(労働基準法第89条第3号の2)。

Q4. 退職金を企業型DCに切り替えると、退職給付債務はなくなりますか?

切り替えた部分については、退職給付債務を計上する必要がなくなります。確定拠出制度は、その期に拠出すべき額を費用として処理するためです。ただし、移行前に積み上がった部分の扱いや、不利益変更への対応が必要です。

Q5. カスタマーハラスメント対策はいつから義務ですか?

2026年10月1日から義務です。改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)により、カスハラ対策と求職者等へのセクハラ対策が、企業規模にかかわらずすべての事業主の義務になりました。具体的な措置は厚生労働省の指針で示されています。

Q6. 上場審査で、ハラスメント対策は確認されますか?

はい、内部通報制度や懲戒処分の説明を通じて実質的に確認されます。東京証券取引所の各種説明資料では、内部通報制度の整備状況や通報件数、最近3年間の懲戒処分・係争の状況などの説明が求められます。

Q7. ハラスメントの相談窓口は社内だけでよいですか?

法律上は社内窓口でも措置義務を満たせます。ただし上場審査では、経営陣から独立した通報窓口の設置状況の説明が求められます。弁護士などの社外窓口を併設すると、公正さを示しやすくなります。

Q8. 上場準備の労務は、いつから社労士に相談すべきですか?

監査法人や主幹事証券と契約する前後が目安です。退職金規程の整備や運用実績の積み上げには1年以上かかることがあるため、早めに着手するほど選べる手段が増えます。

まとめ

上場準備の労務では、未払い残業代だけでなく、退職給付債務の計上とハラスメント対策も重要な論点です。退職給付債務は、計算式で支給額が決まる退職金規程を整えることが出発点になります。ハラスメント対策は、2026年10月1日のカスハラ対策の義務化に対応した規程の改定と、内部通報の運用実績づくりが欠かせません。どちらも上場直前では間に合いにくいため、監査契約の段階から計画的に進めましょう。上場準備の労務体制づくりは、社会保険労務士法人とうかいへお気軽にご相談ください。

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