結論(この記事で分かること) 未払い残業代の有無は、①36協定の上限時間と実績の比較、②賃金台帳と打刻記録・PCログの突合、③固定残業代の設定時間と実労働時間の差の確認、④管理監督者の範囲の実態確認、⑤割増賃金の計算基礎・端数処理の確認、という5つの手順でセルフチェックできます。いずれか1つでも乖離があれば、過去分の未払いが生じている可能性があるため、早めの確認が必要です。
「自社に未払い残業代がないか不安」という相談は、人事労務の現場でよくあるものです。この記事では、500社以上の労務相談に対応してきた社会保険労務士法人とうかいが、自社でできる未払い残業代のセルフチェック手順を解説します。
この記事の監修
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
- NHK「あさイチ」
- 中日新聞
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結論:未払い残業代は5つの手順で段階的にチェックできる
未払い残業代の有無は、1つの資料だけでは判断できません。36協定、賃金台帳、打刻記録、就業規則、給与計算の設定という複数の資料を突き合わせることで、乖離箇所が見えてきます。

このセクションのポイント
- 1つの資料だけでは未払いの有無は判断できない
- 複数資料の突合により乖離箇所が明らかになる
- 乖離が見つかった場合は過去分の精算が必要になり得る
セルフチェックの5つの手順
手順1:36協定の上限時間と実績を比較する
36協定で届け出た時間外労働の上限(原則月45時間・年360時間)と、実際の時間外労働の実績を比較します。上限を超えているのに割増賃金が上限内の計算のまま支払われているケースは要注意です。
手順2:賃金台帳と打刻記録・PCログを突合する
賃金台帳に記載された労働時間数と、タイムカードやPCの起動・終了ログなど客観的な記録を突き合わせます。著しい乖離がある場合、厚生労働省のガイドラインでも実態調査と補正が求められています。

手順3:固定残業代の設定時間と実労働時間の差を確認する
固定残業代として何時間分を見込んでいるかを確認し、実際の時間外労働がその時間を超えている月がないか、過去数か月分を抽出して確認します。超えている月は差額の精算が必要です。
手順4:管理監督者の範囲が実態と合っているか確認する
役職者を労基法41条の管理監督者として割増賃金の対象外にしている場合、役職名ではなく、経営者と一体的な立場での権限・裁量・待遇があるかという実態で判断されているか確認します。

手順5:割増賃金の計算基礎・端数処理を確認する
割増賃金の計算基礎から除外してよいのは家族手当・通勤手当など労基法37条5項の7項目のみです。また、時間外労働の端数を日次で1分単位で切り捨てていないかも確認します。
このセクションのポイント
- 36協定・賃金台帳・打刻記録・就業規則・給与計算設定を順に突合する
- 管理監督者の範囲は役職名ではなく実態で判断する
- 計算基礎の除外項目と端数処理のルール違反は見落としやすい
社会保険労務士法人とうかいからのアドバイス
- 過去3か月分を抽出して試行的に突合する:全期間を一度に確認するのではなく、まず直近3か月で乖離の有無を確認する
- 乖離が見つかった部署から優先的に確認する:拠点・部署ごとに運用が異なる場合は範囲を広げて点検する
- 判断に迷う項目は専門家に確認する:管理監督者の該当性や固定残業代の有効性は専門的な判断を要する

社会保険労務士法人とうかいでは、全国の企業へフルリモートで未払い残業代のセルフチェック支援・労務相談を行っています。 → 未払い残業代チェック・労務相談のご案内:https://www.tokai-sr.jp/service/
このセクションのポイント
- まず直近3か月分で試行的にチェックする
- 乖離があれば対象範囲を広げて確認する
- 判断が難しい論点は専門家に相談する
よくある質問(FAQ)
Q1. 未払い残業代のチェックは何から始めればよいですか?
まず36協定の上限時間と実績の比較から始めるのがおすすめです。上限超過が常態化している部署は、他の乖離も見つかりやすい傾向があります。
Q2. 管理監督者だから残業代を払わなくてよいと聞きましたが本当ですか?
役職名だけでは判断できません。経営者と一体的な立場で労務管理の権限・裁量・待遇があるかという実態で判断されます。

Q3. チェックの結果、未払いが見つかった場合はどうすればよいですか?
対象期間と金額を正確に試算し、支払い方針を決める必要があります。賃金請求権の消滅時効は当分の間3年のため、過去3年分が対象になり得ます。
まとめ
未払い残業代のセルフチェックは、36協定・賃金台帳・打刻記録・管理監督者の範囲・計算基礎という5つの手順で段階的に行うことができます。自社での判断が難しい場合は、社会保険労務士法人とうかいまでご相談ください。

監修:社会保険労務士法人とうかい 2011年開業・2015年法人化。名古屋本社・東京神田事務所を拠点に、顧問先500社以上の人事労務を全国フルリモートで支援。社労士事務所TOP100(2023年)選出、2026年サステナグロースカンパニーアワード「ライジングスター賞」受賞。
参考資料
- 厚生労働省・都道府県労働局「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」:https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/pdf/guidelines.pdf
- 鹿児島労働局「時間外労働・休日労働・深夜労働 Q10 残業手当の端数処理」(昭和63年3月14日基発150号に基づく運用):https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/kyushokuchu/0310.html
- 労働基準法 第36条・第37条・第41条・第115条・第143条(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049



