お気軽にお問い合わせ・相談ください

052-433-7280

営業時間 9:00〜17:00 (土日祝は除く)

トップページ > コラム > 給与計算 > 未払い賃金請求訴訟が増加中、企業がやるべき「給与計算の正確性確認」

コラム

未払い賃金請求訴訟が増加中、企業がやるべき「給与計算の正確性確認」

ここ数年、企業に対する「未払い賃金請求訴訟」が増加しています。その背景には、時効の延長(2年→3年)労働者の権利意識の向上 があります。

給与計算のわずかな誤りが、数百万円の未払い賃金請求に発展する可能性もあります。企業としては、今から給与計算の正確性を確認し、トラブルを予防することが重要です。

今回は、未払い賃金請求訴訟の実態、よくある未払い事例、企業がやるべき予防対策について、社会保険労務士法人とうかいが詳しく解説します。

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先450社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア

  • NHK「あさイチ」
  • 中日新聞
  • 船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」

取材・寄稿のご相談はこちらから

目次

未払い賃金請求訴訟が増加している理由

時効の延長(2年→3年)による影響

2020年の民法改正により、賃金請求権の消滅時効が「2年から3年に延長」されました。

【改正前後の比較】

項目改正前改正後(2020年4月以降)
消滅時効2年3年
請求可能期間過去2年分過去3年分
企業の潜在リスク低い高い

影響: 企業が時効だと思っていた「過去3年分」の未払い賃金が、突然請求される可能性が高まった

労働者の権利意識向上

SNSやメディアでの「労働問題」の報道が増え、労働者の権利意識が高まっています。

【権利意識の高まりの具体例】

  • 未払い残業代請求に関する情報発信
  • 弁護士による「無料相談」の増加
  • 労働審判・訴訟の敷居が低くなった

企業による給与計算ミスの多発

実は、多くの企業で「給与計算誤り」が発生しています。

【よくある誤り】

  • 残業代の計算忘れ
  • 手当の計算ミス
  • 給与計算システムの設定誤り
  • 最低賃金未達成(気付いていない)

よくある未払い事例:企業が気付かないうちに発生

ケース1:残業代計算ロジックの誤り

状況

  • 企業が「みなし残業制度」を採用
  • 基本給に「30時間分の残業代相当額を含む」という設定
  • しかし実際には毎月50時間の残業があった

未払い額の計算

時給:2,000円
基本給に含まれる残業:30時間分(60,000円)
実際の残業:50時間 × 2,000円 × 1.25倍 = 125,000円
未払い分:125,000円 – 60,000円 = 65,000円/月

3年分:65,000円 × 36か月 = 2,340,000円
(法廷闘争で敗訴した場合、弁護士費用を含めるとさらに増加)

ケース2:インセンティブ・手当の計算誤り

状況

  • 営業職の「営業手当」が給与に含まれていない
  • 給与計算システムの設定ミスで、月給に営業手当が反映されていなかった
  • 3年間、200人が未払い状態

未払い額の計算

1人あたりの営業手当:月額50,000円
未払い期間:3年間(36か月)
1人あたりの未払い:50,000円 × 36か月 = 1,800,000円

200人 × 1,800,000円 = 360,000,000円(3億6千万円)

結果: 企業の経営危機につながる可能性さえある

ケース3:最低賃金未達成

状況

  • 企業が最低賃金の改定に対応していない
  • 時給1,100円の従業員が、新最低賃金1,130円の地域で勤務
  • 2年間、気付かずに1,100円のまま支給

未払い額の計算

差額:30円/時間
月間勤務時間:160時間
月額差額:30円 × 160時間 = 4,800円/月
2年分:4,800円 × 24か月 = 115,200円

付加金請求(同額):115,200円
合計:230,400円

ケース4:休日割増賃金の計算漏れ

状況

  • 会社が「法定休日」と「所定休日」の区別をしていない
  • 法定休日出勤時に「35%割増」ではなく「25%割増」で支給
  • 月3回程度の法定休日出勤がある

未払い額の計算

時給:1,500円

正しい計算:1,500円 × 1.35倍 = 2,025円
実際の支給:1,500円 × 1.25倍 = 1,875円
差額:150円/時間

月の法定休日出勤:3回 × 8時間 = 24時間
月額差額:150円 × 24時間 = 3,600円/月
3年分:3,600円 × 36か月 = 129,600円

訴訟になった場合の企業リスク:金銭的・非金銭的損失

リスク1:損害賠償額の膨大さ

未払い賃金訴訟では、以下の支払い義務が発生します。

【支払い内容の内訳】

  1. 未払い賃金の本体
    • 実際に未払いになっていた金額
  2. 付加金(同額)
    • 未払い賃金と同額の罰則金
  3. 延滞金(遅延損害金)
    • 訴訟判決から支払うまでの年5%の利息
  4. 弁護士費用
    • 訴訟に必要な弁護士費用(敗訴時は企業負担)
【計算例】
未払い賃金:500万円
付加金:500万円(同額)
遅延損害金:年5% × 判決後の支払い期間
弁護士費用:150万円~300万円(事案による)
─────────────────
総支払額:約1,150万円~1,300万円

リスク2:企業信用の失墜

訴訟が発生すると、以下の非金銭的損失があります。

【企業への影響】

  • メディア報道 — 「未払い賃金」のニュースは報道されやすい
  • 採用への影響 — 「ブラック企業」という評判により、採用が困難に
  • 取引先からの信頼喪失 — 企業間の信頼が低下
  • 従業員のモチベーション低下 — 既存従業員の不安定化

リスク3:労働基準監督署の立ち入り調査

訴訟が起きると、労働基準監督署が企業に立ち入り調査を行う可能性があります。

【立ち入り調査での指摘項目】

  • 給与計算の正確性
  • 勤務表の記録
  • 就業規則の合法性
  • その他の労働基準法違反

調査で他の違反が見つかると、さらに罰則が重くなります。


トラブル予防:給与計算の「自己監査」チェック項目

未払い訴訟を予防するには、企業側が定期的に給与計算を自己監査することが重要です。

【月次チェック項目】

給与計算時に、毎月以下を確認してください。

  • 残業代の計算が正確か
    • 法定時間(8時間/日、40時間/週)を超えているか
    • 時給計算は「基本給 ÷ 所定労働時間」か
    • 割増率(1.25倍か、深夜1.5倍か)は正確か
  • 給与が最低賃金以上か
    • 当該地域の最低賃金を確認したか
    • 最低賃金に含まれない手当(通勤手当など)で除外していないか
  • 各種手当が正確に計上されているか
    • 家族手当、資格手当、役職手当など漏れていないか
    • 給与規程の「手当計算ロジック」と一致しているか
  • 給与計算システムの設定は正確か
    • 従業員ごとの設定が、就業規則と一致しているか
    • システム更新後、設定に誤りが生じていないか

【半年~年次チェック項目】

  • 過去3年分の未払いがないか
    • 毎年、過去3年分の計算結果をサンプル確認
    • 給与計算ソフトでチェック機能を活用
  • 最低賃金の改定に対応したか
    • 毎年秋の最低賃金改定に、システム設定を更新したか
  • 給与規程と実際の計算に乖離がないか
    • 就業規則の給与規程と、実際の給与計算が一致しているか
  • 法改正に対応したか
    • 育児休業中の保険料免除など、新制度への対応状況

【年1回~3年ごとのチェック項目】

  • 外部監査を検討するか
    • 社労士による「給与計算監査」の実施
    • システム保守企業による「給与計算の点検」
  • 訴訟リスク診断
    • 「現在、未払い賃金のリスクがないか」を専門家に相談

給与計算システムの設定見直し:よくある間違い

間違い1:「みなし残業制度」の設定誤り

テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。

テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。【誤った設定】
基本給:200,000円(30時間のみなし残業を含む)
追加の残業:1時間につき0円(既に含まれていると勘違い)

【正しい設定】
基本給:200,000円
みなし残業(30時間相当):含む
30時間超過分:時給計算で支給

間違い2:「手当」の包含忘れ

【誤った給与計算】
基本給:250,000円
営業手当:50,000円(給与計算に反映されていない)
実際の支給額:250,000円(未払い50,000円)

【正しい給与計算】
基本給:250,000円
営業手当:50,000円
実際の支給額:300,000円

間違い3:「割増率」の誤り

【誤った設定】
深夜勤務(22時~翌5時):1.25倍(法定)
実は、深夜割増1.25倍 + 残業割増1.25倍 = 1.5倍必要な場合がある

【正しい設定】
深夜残業:時給 × 1.5倍(25%+25%)
確認:労働基準法で要件を確認

従業員との紛争が生じた場合の対応フロー

ステップ1:従業員からの申し立てを受けた場合

直ちにすべきこと

  1. 給与計算の履歴を確認
    • 当該従業員の過去3年間の給与支給記録
    • 勤務表、残業時間記録
  2. 専門家への相談
    • 弁護士、社労士に相談
    • 素人判断で対応しない
  3. 文書での正式な回答
    • 口頭ではなく、書面での対応
    • 対応内容を記録に残す

ステップ2:未払いが確認できた場合

対応方針の決定

  1. 支払いの決定
    • 未払い分 + 付加金(同額)を支払う
    • または、分割支払いの交渉
  2. 再発防止策の実施
    • 給与計算システムの修正
    • 就業規則・給与規程の見直し
    • 従業員への説明
  3. 他の従業員への影響確認
    • 同様の計算誤りが他の従業員にもないか確認
    • 全員への遡及支払いが必要な場合もある

ステップ3:訴訟に発展した場合

法的対応

  1. 弁護士の依頼
    • 労働問題に強い弁護士を選定
  2. 証拠の保全
    • 給与計算資料、勤務表、システムログなどの保全
    • 削除・改ざんは絶対にしない
  3. 対外発表の検討
    • メディア対応が必要な場合、事実ベースで対応

よくある質問Q&A

Q1:給与計算誤りが発覚した場合、企業は全額賠償する義務がありますか?

A:はい。故意か過失かに関わらず、未払い賃金は支払い義務があります。加えて、付加金(同額)の支払いも命じられる可能性が高いです。

Q2:弁護士なしで訴訟に対応できますか?

A:法的には可能ですが、実務的には困難です。労働訴訟は専門知識が必要であり、弁護士の依頼を強く推奨します。

Q3:給与計算誤りが複数年にわたっていた場合、3年を超える部分は請求されませんか?

A:正確には、「消滅時効が3年」というルールなので、3年を超える部分は法的請求はできません。ただし、企業の誠実な対応として、それより前の未払いも支払う企業もあります。

Q4:給与計算の正確性を確認するため、外部監査を受けるべきですか?

A:強制ではありませんが、特に以下の場合は受けることを推奨します。

  • 従業員数が100名以上
  • 複雑な手当体系がある企業
  • 過去に給与計算誤りがあった企業

Q5:訴訟になったことを公表する必要がありますか?

A:法的には公表義務はありません。ただし、メディアから取材を受けた場合は、事実に基づいた説明が重要です。


企業の実例:未払い訴訟から学ぶ教訓

事例1:大企業での残業代未払い訴訟

状況

  • 従業員200名の大企業
  • みなし残業制度を採用しているが、実際には毎月平均60時間の残業
  • 2年間、差額を支払っていなかった

結果

  • 訴訟で敗訴
  • 未払い賃金:約1,800万円(200人 × 時給1,500円 × 60時間/月 × 12か月)
  • 付加金:1,800万円(同額)
  • 弁護士費用:300万円
  • 合計:3,900万円の支払い

学び

  • 「みなし残業」の上限設定を明確にすること
  • 実際の残業時間を把握する仕組みを作ること

事例2:中小企業での手当計算誤り

状況

  • 従業員50名の中小企業
  • 給与計算システム更新時に「営業手当」の設定ミス
  • 3年間、営業部門30人が月額50,000円の未払い

結果

  • 訴訟で敗訴
  • 未払い賃金:4,500万円(30人 × 50,000円 × 36か月)
  • 付加金:4,500万円
  • 弁護士費用:200万円
  • 合計:9,200万円

結果:企業が経営危機に陥った

学び

  • システム更新後は、必ずテスト計算を実施
  • 設定変更後は複数人での確認プロセスを導入

🎯 給与計算の正確性確認について、企業担当者のお困りごと

未払い賃金訴訟のリスク対応をする際には、以下のようなお困りごとが生じます。

  • 「現在、未払い賃金のリスクがないか心配」
  • 「給与計算システムの設定が正確か確認したい」
  • 「過去3年分の計算に誤りがなかったか調査したい」
  • 「給与計算誤りが発覚したがどう対応すればいいのか」
  • 「訴訟になった場合の対応を相談したい」

これらは給与計算と労働法の専門知識が必須です。

社会保険労務士法人とうかいでは、給与計算の監査・点検、未払い賃金リスク診断、訴訟対応などをトータルにサポートしています。

「給与計算に誤りがないか確認したい」「未払い賃金リスクを診断してほしい」「訴訟が起きた場合の対応を相談したい」といった場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

▼関連記事

いよいよ「給与計算・手続き業務を外注したい」中堅・大企業様必見!!2026年中に労務管理(給与計算・手続き)を外注化するための具体的スケジュールと検討事項一覧。外注化のためのやることリスト&スケジュールマイルストーン、ダウンロードはこちら。
ご相談の流れ
無料相談は
こちら
事務所
パンフレット