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育児短時間短勤務中の労働者の給与計算とは?
事業主や労務担当者が知っておくべきポイントを解説

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短時間勤務中の給与計算はどのように行えばよいのでしょうか。

出産を経て職場へ復帰する労働者が、短時間勤務を希望するケースがあります。育児を理由とする短時間勤務の希望があった場合、事業主は措置を講じなければなりません。

しかし、短時間勤務中の給与計算はどのように行えばよいのでしょうか。

今回は、短時間勤務中における労働者の給与計算方法を解説します。育児休業から復帰する労働者がいる企業の事業主や労務担当者に役立つ内容となっているので、参考にしてみてください。

 
目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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育児中の時短勤務とは?

育児中の時短勤務とは?詳しく解説します

育児中の親が働きやすい環境を整えるために、多くの企業が短時間勤務制度を導入しています。保育園の送迎をはじめとした家庭環境を考慮し、労働者に短時間労働を認めることで子育てと仕事の両立がしやすくなります。

育児短時間勤務の基本概要

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」において、「事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。」と規定されています。

3歳未満の子どもを育てる従業員から短時間勤務を希望する旨の申出があった場合、事業主は応じなければなりません。

育児を理由に貴重な人材を失ってしまうのは、事業主にとっても打撃となります。労働者が安心して働ける環境を整備するためにも、事業主は法律を遵守する必要があります。

 

育児短時間勤務の利用対象者

育児短時間勤務制度の利用対象者は、「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」と定められています。

子が3歳になるまでは義務で、3歳から小学校就学の始期に達するまでの子がいる労働者に関しては努力義務です。産まれてから小学校入学前まで子を養育している労働者がいる場合、事業主は必要な措置を行えるように備える必要があります。

なお、育児による短時間勤務を希望できるのは正社員だけではありません。パートタイムや契約社員も、条件を満たせば短時間勤務を希望できます。

 

時短勤務の給与計算方法

時短勤務の給与計算方法を確認しましょう。

労働者が育児短時間勤務制度を利用する際、労働時間に応じて給与計算を行う必要があります。

通常の勤務時間に合わせて、基本給を調整するのが一般的です。例えば、1日の労働時間が8時間から6時間に減少する場合、基本給も6/8を乗じて再計算します。

 

基本給の計算方法

時短勤務を利用する場合、基本給は短縮された勤務時間に応じて減少します。具体的に、短時間勤務開始後の基本給は以下の計算式で計算されます。

基本給の月額=(通常の基本給の月額/通常の勤務時間)×時短勤務の時間

例えば、通常の基本給が月額30万円で通常の勤務時間が月160時間、短時間勤務開始後が月120時間の場合、基本給は以下のように計算されます。

基本給の月額=300,000円/160時間×120時間=225,000円

「通常の基本給」「通常の勤務時間」「時短勤務の時間」の3つがわかれば、短時間勤務中の基本給は簡単に計算できます。

手当の計算方法

基本給に加えて、諸手当を支給している企業もあるでしょう。短時間勤務をしている労働者に支給する手当は、手当の性質に応じて減額することがあります。

企業が就業規則に規定している諸手当は、主に3種類に分類できます。

労働日数や労働時間が計算の基礎になる手当
(実際の労働日数や労働時間に応じて支給されるもの)
宿直手当、食事手当など
職務を基準とする手当
(勤務日数や時間に関係なく支給されるもの)
役職手当や資格手当など
家庭事情に応じた手当
(勤務日数や時間に関係なく支給されるもの)   
住宅手当や扶養手当など

上表の中でも、労働日数や労働時間が計算の基礎になる手当は、勤務時間の短縮に伴って減額となる可能性があります。基本的な考え方としては、労務の提供に影響する手当に関しては減給する必要がある、と捉えるイメージです。

高谷の経営視点のアドバイス

事業主は、手当の支給に関して就業規則に定めておきましょう。労務担当者は、定められている就業規則に応じて手当の計算を行いましょう。手当の性質に応じて、減給する必要があるか判断してください。

賞与の計算方法

賞与は、一般的に会社の業績や個人の評価に基づいて決定されます。賞与の計算方法によっては、短時間勤務中の労働者へ支給する賞与に影響が出るでしょう。

例えば、賞与の計算方法を「基本給×○ヶ月分」のように設定している場合、基本給が低くなっているため、短時間勤務前と比較すると賞与額が低くなります。

勤務日数や勤務時間を賞与の計算基準としているケースでも、賞与額に影響が出ます。育児休業前後の勤務日数や勤務時間を比較したうえで、賞与額を計算しましょう。

 

社会保険料の計算と変更点

社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)は、標準報酬月額に基づいて計算されます。

育児休業から復帰すると、社会保険料は育児休業前の給料を基に計算されます。短時間勤務で給料が減ったにも関わらず、フルタイム時と同額の社会保険料を負担するため、手取り額が想定よりも少ないという事態になりかねません。

労働者の経済的な負担を軽減するために、社会保険料を算定するに当たって「育休等終了時改定」という制度が設けられています。事業主が「育児休業等終了時報酬月額変更届」を日本年金機構へ提出し、育児休業から復帰後の3ヶ月間に17日以上勤務した月が1ヶ月以上あれば、復帰後の給料をベースに社会保険料を計算する仕組みです。

さらに、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を提出すれば、受け取れる給付額を計算する際には従前の等級が維持されます。これにより、実態に即した社会保険料を納めつつ、将来受け取れる厚生年金を育児休業前の給料水準に維持できます。

 

大矢の経営視点のアドバイス

事業主が「育児休業等終了時報酬月額変更届」を日本年金機構へ提出しない場合、労働者からすると「給与は下がったのに社会保険料はフルタイム時のまま納める」必要があります。手取額が減少すると労働者の生活に悪影響が出てしまう可能性があるため、事業主や労務担当者は必ず手続きを行いましょう。

育児短時間勤務の給与計算に関するよくある質問

育児短時間勤務の給与計算に関するよくある質問を紹介します。

最後に、育児短時間勤務の給与計算をするにあたって、事業主や労務担当者が感じるよくある疑問を紹介します。

育児短時間勤務の給与計算対象期間は?

育児短時間勤務制度を利用する場合における給与計算の対象期間は、短時間勤務を開始する日が起算日となります。通常、給与計算は1ヶ月単位で行われますが、時短勤務を開始する日が月の途中の場合、日割りで計算します。

時短勤務労働者の退勤を「早退」扱いにできる?

時短勤務中に短縮された労働時間を「早退」として扱うことは可能です。早退した時間分の賃金を控除すればよいため、労働者が受け取る給与額は短時間勤務制度を適用する場合と変わりません。

ただし、賞与の計算をする際に基本給をベースにしている場合は、支給額が多くなるケースが考えられます。労働者にとってはメリットですが、事業主からすると支払う人件費が増える点には注意が必要です。

また標準報酬月額が変わらないため、労働者は賃金が低くなったにも関わらず、フルタイム時の賃金に基づいて社会保険料を納付する必要がある点に注意しましょう。

 

時短勤務中も残業手当は発生する?

時短勤務中の残業手当について解説します。

短時間勤務制度を利用している労働者が所定労働時間以上の労働をした場合、事業主は以下の割合で残業手当を支給する必要があります。

  • 法定内残業:100%
  • 法定外残業:125%
  • 深夜残業:150%

育児中の労働者に残業を強いるケースは少ないとはいえ、何らかの事情から残業が発生する事態は考えられます。

例えば、1日の勤務時間が6時間の短時間勤務労働者が6時間を超える労働をしたときは、超えた分が残業手当の対象です。事業主や労務担当者は、時短勤務労働者を含めて労働時間を正確に把握する必要があります。

 

時短勤務中に手当はどう扱えばよい?

企業の就業規定によって諸手当の扱いは異なりますが、実際の労働日数や労働時間に応じて支給される手当に関しては減給するケースが一般的です。

役職手当や資格手当などの勤務日数や時間に関係なく支給される手当や、住宅手当や扶養手当など家庭事情に応じた手当は、減額せずに支給するケースが多いでしょう。

 

まとめ

労働者が育児と仕事を両立するために、育児短時間勤務制度は有用な制度です。事業主は、労働者が短時間勤務を希望したときは必要な措置を講じなければなりません。

育児を理由に短時間勤務をする労働者がいる場合、実際の労働時間に応じて給与計算を行う必要があります。基本給や短時間勤務前後の労働時間を基に、正しく給与計算を行いましょう。

社会保険労務士法人とうかいでは、給与計算のアウトソーシングを承っています。正社員や非正規雇用労働者の給与計算はもちろん、短時間勤務労働者の給与計算も対応しています。

給与計算事務を専門家に依頼すれば、経営や本業に注力できるリソースが生まれるでしょう。無料相談も可能なので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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