【テンプレート付き】国内・海外対応の出張旅費規程の作り方。
記載する項目や必要な理由、注意点を解説
出張旅費規程とは、出張に伴う宿泊費や交通費などの経費を支給する際のルールです。企業内で出張旅費規程を作成しておけば、役員や従業員が出張を行う際の手続きがスムーズになります。
また、出張時の旅費や精算方法を定義することにより、無駄な出費を防ぐ効果も期待できます。企業の経営効率を高めるだけでなく、経理の業務負担も軽減するうえでも、出張旅費規程の作成は有意義です。
今回は、出張旅費規程の作り方や作成するメリットなどを解説します。テンプレートも掲載していますので、ぜひご活用ください。
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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・NHK「あさイチ」
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出張旅費規程は、どのように旅費交通費や日当などを支払うかを決めたものです。
出張旅費規程は、役員や従業員が業務で出張する場合、どのように旅費交通費や日当などを支払うかを決めたものです。
出張に際して、その都度実費精算するのは面倒ですが、あらかじめ規程を作成しておけば、内容どおりに支給すれば足ります。
出張旅費規程は法令による定めがないため、企業が独自に支給額を設定できます。交通費・宿泊費・日当の取り決めを自由に行い、役員や従業員が出張する際には、支給額の範囲内でやり繰りするように伝えるとよいでしょう。
なお、規程の数が増えてくると管理が煩雑になります。そのため、管理責任の明確化や制定・改廃等の手続きの標準化等を目的として、規程管理規程を作成します。
この規程管理規程において、規程毎に管理責任者を定めることとしている場合、それぞれの規程に管理責任者の明記が必要です。
出張旅費規程を設定するメリットを見ていきましょう。
出張旅費規程を作成することで、企業は出張に関する経費を明確に管理できるようになります。また、実費精算の業務がなくなるため、会計部門の負担を軽減できるでしょう。
以下で、企業が出張旅費規程を作成するメリットを解説します。
規程内に出張旅費の支給額を明確に定めることで、出張時に支給すべき金額を明確にできます。規程で定めた金額を支給すればよいため、実費精算が発生しません。
実費精算する場合、飛行機や新幹線の領収書などを確認したうえで支給処理をするため、面倒といわざるを得ません。しかし。出張旅費規程があれば詳細な計算を省略し、規程に則って支給すればよいため、業務負担を軽減できます。
出張旅費規程を導入することで、経費の削減を図れます。出張に関する経費を事前に明確に設定することで、従業員が不必要に高額の出費をするリスクを軽減できるでしょう。
支給する額は規程で決まっているため、出張した者が必要以上に高い宿泊施設を利用したり、高級車両(グリーン車など)を利用したりする事態を防げます。これにより、経費を削減して企業の財務状況を改善できるでしょう。
出張経費規程に則って旅費交通費を支給すれば、当該支出は「旅費交通費」として経費計上できます。経費計上することにより法人税の課税所得を減らし、納付する法人税を最適化できます。
また、手当を受け取る側(従業員側)も、出張旅費規程に基づく支給は非課税です。法人税だけでなく所得税を最適化するうえで、出張旅費規程の作成は有用といえるでしょう
ただし、規程通りに支給しても、そもそもの規程が相場を逸脱している場合は経費計上や非課税給与としての取り扱いが認められません。出張旅費規程を作成する際には、妥当な金額を設定する必要があります。
出張旅費規程の作成手順をご紹介します。
出張旅費規程を作成する際には、出張に関連する経費をどう管理するか詳細に決める必要があります。また、従業員への周知を行うことも欠かせません。
出張旅費規程を作成する場合、目的と適用範囲を定義しましょう。「すべての従業員を対象とする」「正規雇用の従業員を対象とする」のように、規程が適用される対象者を具体的に示しましょう。
誰が規程の適用を受けるかが不明確だと、後々になってトラブルが起こる可能性があります。
出張の定義を定めて、手当が支給される出張を明確にしましょう。例えば「片道100kmを上回る場合」「往復150 kmを超える場合」のように、具体的な移動距離を定める方法があります。
規程で定めた移動を伴う業務を行う場合は出張に該当するため、規程で定めた手当を支給することになります。
出張中は勤怠管理が難しいため、みなしで勤務時間を決定するのが一般的です。規程内に「出張中は所定労働時間を勤務したこととみなす」と設けておくとよいでしょう。
また、出張中に事故が発生した場合の対応についても予め取り決めておきましょう。速やかに上司や担当部署に連絡する必要がある旨を定めておけば、事故に遭遇してもスムーズに対処できます。
出張旅費規程では、交通費や宿泊費、日当といった具体的な金額を記載する必要があります。相場を参考にしながら支給額を決めると、税務署から指摘を受けるリスクを軽減できます。
交通費は、公共交通機関の実費や、移動距離・役職に応じて一律で設定するのが一般的です。
公共交通機関が発達していないエリアへ出張する場合、レンタカーやタクシーの利用が想定されます。移動の合理性を考慮し、レンタカーやタクシーを利用する場合は、その旨も記載しておきましょう。
例えば、「レンタカー・タクシーの利用は原則として認めないが、所属長の承認を受けたときはこの限りではない。この場合、実費を支給する。」のように定めておくとよいでしょう。
宿泊費に関しては、役職に応じて支給する金額を定めるのが一般的です。
一般社員 | 8,000円 | ||
---|---|---|---|
マネージャー | 9,000円 | ||
部長 | 10,000円 |
上記のように一律で定めることで、従業員が宿泊先を選定する際の基準が明確になります。
日当は、出張時における食事代や雑費を補填するために支給する手当です。宿泊費と同じように、役職に応じて金額を定めるのが一般的です。
一般社員 | 2,000円 | ||
---|---|---|---|
マネージャー | 2,500円 | ||
部長 | 3,000円 |
大矢の経営視点のアドバイス
このように、一律の支給基準を定めておけば、経費処理の負担を軽減できます。規程がないと不公平感や不平等感が生まれてしまうリスクがありますが、規程があれば全員に同じルールが適用されるので不満も生まれにくいでしょう。
出張旅費の相場について解説します。
業種や企業規模によって出張旅費の設定方法は異なりますが、支給する出張旅費が相場から離れていると、税務署から指摘を受けるリスクが高まります。
役職 | 宿泊費 | 日当 |
---|---|---|
役員 | 1~1.5万円程度 | 4,000~5,000円程度 |
マネージャー・部長 | 1万円程度 | 3,000~4,000円程度 |
一般社員 | 8,000~1万円程度 | 2,000~3,000円程度 |
あくまでも例ですが、上表を参考にしながら規程を作成するとよいでしょう。
なお、昨今のようにインフレが発生していたり、インバウンドの増加により宿泊料金が増加していたりする場合、適宜規程を見直すことが可能です。
海外の出張旅費規程作成のポイントを見ていきましょう。
海外出張の機会がある企業は、国内とは別に海外出張規程を作成しておくとよいでしょう。作成の方法は国内の出張旅費規程と同じですが、海外の場合はより多くのコストが発生する関係から、支給する金額が増えます。
また、飛行機代の計算方法もエコノミーやビジネスクラスごとに違いを設けるなど、国内よりも詳細な規程を設ける必要があります。
出張の目的や期間、渡航先によっても必要な経費が変わるため、滞在日数や渡航先に応じて支給する日当を設定することも可能です。海外出張旅費規程においては、各国の物価や事情を考慮したほうがよいでしょう。
あわせて、海外出張者が加入する保険や、トラブルが発生したときの緊急連絡先なども規程に盛り込んでおくと安心です。
出張旅費規程の作成は、企業と従業員双方にとって重要な取り組みです。適切な規程を設けることで、出張に伴う経費の管理を効率よく行うことができ、従業員は明確なルールに基づいて安心して出張できます。
出張旅費規程の作成は、法人と個人の税金にも影響を与えます。事務的にも経済的にも、出張旅費規程を作成し、必要に応じて見直すことは有意義です。
社会保険労務士法人とうかいでは、就業規定の作成や改定サービスを行っています。出張旅費規程を作成すると就業規則に盛り込む必要がありますが、労働基準監督署への届出をはじめとした手間が発生します。
企業様の事情をヒアリングしたうえで、労働問題の法的リスクを軽減しつつ最適な規程作りをサポートしますので、お気軽にご相談ください。以下でテンプレートもご用意しておりますので、ご活用ください。