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海外へ赴任する際の社会保険等の取り扱いは?わかりやすく解説します

原則的な社会保険や労働保険の取り扱いについて解説していきます。

コロナ禍で延期されていた海外渡航についてそろそろ動き出す企業が増えてきました。最近ではグローバルに展開する企業が多く、海外で勤務する日本人の割合も増えてきています。そこで問題となってくるのが、海外赴任者の社会保険や労働保険の取り扱いです。今回は原則的な社会保険や労働保険の取り扱いについてわかりやすく解説していきます。

 
 
目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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海外赴任中は社会保険等の適用を受けられない?!
加入者要件をおさらい

海外に赴任する際、社会保険等の適用を受けられる条件について見ていきます。

社会保険等の適用範囲

会社員の被用者保険は大きく分けて社会保険労働保険の2種類があります。どちらも適用されるのは原則として日本国内に所在する事業所のみです。

 

被用者保険 種類
社会保険 サラリーマン(会社員) 自営業者等
健康保険・厚生年金保険 国民健康保険・国民年金保険
介護保険料
労働保険 雇用保険・労災保険

※ 本社の所在地が国内でも、国外で設立された支社等は基本的に適用対象外となります。

 

海外赴任者と国内企業の雇用関係

海外赴任者が社会保険や労働保険の適用を受けられるか否かは、日本国内の事業所と雇用関係にあるかどうかで判断されます。労務の提供・指揮命令形態・人事労務管理・賃金の支払い等の実態を見て、総合的に判断されることになりますが、一般的に国内企業から給与が支払われていれば資格を継続していると言えます。ただし、低額な部分だけを国内企業が支払い、大半を赴任先の海外企業の規定に基づき支給する場合には、雇用関係なしとみなされ資格を喪失させることが多いようです。

 

対象者 給与支払い 雇用関係

社会保険

の適用

労働保険

の適用

転勤

(在籍

出向)

国内企業から基本給等が支給 あり 適用される

国内企業から一部支給

または

無し(全て海外企業から支給)

なしとみなされる場合がある

雇用関係の有無に

準ずる

移籍 国内企業からの給与支給はなし なし 適用されない

 

 

社会保険料の月額を算定する報酬に関する定め

海外赴任者の給与が、国内企業と赴任先の海外企業の双方から支払われる場合、社会保険上の報酬には両方の給与が合算されるケースがあります。

 

社会保険料を算定する際の「報酬」とは?

社会保険料を決める上で、報酬とは労働者が労働の対償として受ける経常的かつ実質的に受ける物です。

被保険者の通常の生計にあてられる全ての物を含有するとされています。

 

 

国内企業の規定に基づき双方から報酬が支払われる場合には合算され、それぞれの規定に基づき支給される場合は海外企業から支給される報酬は対象外になります。ただし、国内企業から支払われている事実が確認出来る場合は、海外企業から支給される分も「報酬」に含めることになるため、月額算定する際は注意が必要です。

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社会保険の被保険者資格を喪失した時の対策

社会保険の被保険者資格を喪失した場合の制度と対策について紹介します。

社会保険の被保険者資格を喪失した場合の代替案を紹介します。

健康保険の資格を喪失した場合

被保険者資格喪失から20日以内なら手続きできる、健康保険任意継続制度があります。これは最長2年間、被保険者資格を延長することが可能です。ただし資格喪失後は、企業が負担していた保険料も含めて全額自己負担で支払うことになります。保険料は退職した時の報酬月額(上限は30万円)に各都道府県の保険料率を乗じた額を2年間支払うことになります。

また、住民票を除票しないのであれば、国民健康保険に加入することも可能です。

いずれの場合も、現地の病院では健康保険法が適用されないため、日本国内のように健康保険証は使用できません。

  • 現地ではいったん全額自己負担で医療費を支払う
  • 後日「海外医療費」として健康保険組合などに請求する
  • 戻ってくる支給額は全額ではなく、日本国内の医療機関で同等の傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額となる

海外医療費の請求には、必要な添付書類があったりその書類の言語を和訳したりと手間がかかります。

厚生年金の資格を喪失した場合

次の2つの要点を満たしていれば国民年金保険の任意加入が可能になります。また、国民年金の資格を喪失した場合も同じ条件で任意加入できます。

  • 日本国籍を有する20歳〜60歳未満の者
  • 日本国内で保険料の納付ができる者(日本国民年金協会に代行依頼が可能)

住民票を除票したうえで海外に赴任する場合は、国民年金保険の加入義務はありません。ただ将来、年金受給時に有利になるよう国民年金に任意加入することができます。任意加入の保険料は国内の預貯金から納付することができ、その結果将来の年金受給額を増やすことができます。

二重負担の可能性も…
国外社会保障制度の加入免除手続き

海外で働く場合、原則として就労する国の社会保障制度に加入することになります。しかし、日本国内企業との雇用関係が継続していれば日本の社会保障制度にも継続して加入しなければならず、保険料を二重に負担することになってしまいます。また、海外の社会保障制度に加入したとしても、年金を受け取るには一定期間その国の年金制度に加入しなければならないケースが多く、就業期間によっては年金を受け取ることができず、掛け捨てとなるため就業者にとっては不利な状況が生じてしまいます。

その不利な状況をなくすため、日本と一部国との間で「社会保障協定」が締結されています。

社会保障協定とは?

社会保障協定とは、日本と一部の国との間で締結されている協定で、二カ国間の社会保障制度を下記の通り調整します。

  • 加入すべき年金制度を二国間で調整する「二重加入の防止
  • 保険料が掛け捨てにならないよう、二国間の年金制度の加入期間通算して年金受給のために必要な加入要件を満たしやすくする「年金加入期間の通算

日本と社会保障協定の発効が完了している国は?

社会保障協定の発効が完了している国は全部で22か国です。(2022年6月現在)

社会保障協定締結状況 国  名
二重加入の防止・年金加入期間の通算

ドイツ・アメリカ・ベルギー・フランス・カナダ・オーストラリア・オランダ・チェコ・スペイン・アイルランド・ブラジル・スイス・ハンガリー・インド・ルクセンブルク・フィリピン・スロバキア・フィンランド・スウェーデン

二重加入の防止のみ イギリス・韓国・中国
社会保障協定署名未発効 イタリア

 

協定発効が完了している22か国に赴任する場合、一定の要件を満たせば赴任国の年金制度への加入が免除されます。また、イギリス・韓国・中国を覗けば年間加入期間を通算できるようにもなります。

日本の年金制度から年金を受け取るためには10年以上の資格期間が必要になりますが、社会保障協定の発効が済んでいる国への赴任であれば、赴任国の年金制度加入期間も日本の年金加入期間とみなして取り扱われるようになり大変有利です。

社会保障協定が未発効の国で働く場合の注意点

現在調整中とされているイタリアとの社会保障協定ですが、その時期についての見通しは立っていません。協定署名未発効のイタリアを含め、社会保障協定が発効されていない国に赴任する場合は、赴任の期間に関わらず原則として勤務する国の社会保障制度に加入することになります。また、日本企業との雇用契約が継続している場合は、日本の社会保障制度にも継続して加入することになります。

 

国内企業と雇用関係を継続したまま海外赴任する際の年金制度の加入一覧(原則)

  社会保障協定発効済の国

社会保障協定署名済

未発効の国

赴任期間 赴任期間5年以内 赴任期間5年超 期間に関わらず
日本の社会保障制度 免除(※1)
赴任国の社会保障制度 免除 〇(※2)

※1 国民年金への任意加入は可能

※2 5年以内の赴任期限が延長になった時、認められる場合あり 

 

 

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介護保険の被保険者資格と手続きの方法

海外赴任により、居住地が国外に移った場合、介護保険は適用除外となります。その場合は「介護保険適用除外該当届・非該当届」に添付書類を添え、事業主を通じて日本年金機構に提出します。また国内に居住地が戻った場合も同じように、「介護保険適用除外該当届・非該当届」を作成し事業主を通じて日本年金機構に提出します。

 

被保険者 事業主 日本年金機構
区分 内容 区分 内容
提出時期 延滞なく 提出時期 延滞なく
提出先 事業主 提出先 年金事務センター
提出方法 事業所に指定された方法 提出方法

電子申請

郵送

窓口持参

 

 

海外赴任する場合の労災補償

労災保険における海外赴任者は「海外出張」と「海外派遣」に分けられます。海外赴任者がどちらに区分されるかによって対応の仕方が変わります。

 

  • 海外出張・・・労働を提供する場所が海外であるだけで、国内事業所に所属している者
  • 海外派遣・・・海外の企業に所属し、該当事業所の使用者の指揮に従って勤務する者
  •  
海外出張労働者の労災適応 海外派遣労働者の労災適応
特別な手続きなしで労災保険の適応あり

基本的に適応外

ただし、

 

海外派遣特別加入制度に加入していれば

適応あり

※企業規模や就労形態などの条件があるため、

事前に確認が必要

 

 

 

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まとめ

海外赴任に関わる社会保険制度についてのお困りごとはとうかいにお任せください。

海外赴任する際は、前もって手続きを済ませておけば、日本の社会保険等の制度だけでなく海外の社会保障制度を受ける事も可能になります。労災などもしものときの備えとして、社員にとっては安心です。しかし、適用には国内の事業所との雇用関係について個別の判断が必要となるなど、企業担当者にとっては負担の大きい手続きでしょう。

社会保険労務士法人とうかいでは、様々な雇用関係に対応した高い専門性、積極的なご提案で、お客様に安心の社会保険手続きアウトソーシングをご提供しております。従業員数名から2,000名以上企業まで顧問先350社以上の業務支援を行っていますので、業種・企業規模ごとに異なる労務課題についてもスピード対応いたします。社会保険手続きのオンライン化についてもご相談ください。業務フローの見直し含めて、御社の手間・ミスの発生リスクを軽減した提案をさせていただきます。ぜひ、一度60分の無料相談をご利用ください。

 
 
 

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