【自己都合退職が増える!?】2025年4月の雇用保険法改正で失業給付の制限が短縮
企業への影響は?
2025年4月に予定されている雇用保険法の改正により、失業給付(基本手当)に変更があり、労働者が自己都合で退職した場合の給付条件が大きく緩和されることになりました。あわせて教育訓練に関する支援も強化され、労働者がスムーズに再就職や起業に向かうためのサポートが充実します。この改正は、失業のリスクを軽減し、多様なキャリアパスを選べる環境を整えることを目指しています。
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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・NHK「あさイチ」
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2025年4月の雇用保険改正の概要について詳しく解説します。
厚生労働省によると、2025年4月に雇用保険の失業給付(基本手当)に関する要件が大幅に見直され、自己都合退職者への給付制限が緩和されます。これまで自己都合で退職した場合、基本的に給付が始まるまでに2か月を要していました。この制度改正により、待機期間が短縮されることになります。今回は、雇用保険の改正がどのような影響を与えるのか、具体的なポイントに焦点を当てています。
現行の制度では、自己都合退職の場合、失業給付(基本手当)を受け取るまでに給付制限として2か月(5年間のうち3回以上退職の場合は3か月)の待機期間が設定されています。多くの労働者にとって、この待機期間の経済的負担は大きな問題でした。今回の改正では、この給付制限が1か月に短縮されます。職を辞める時の選択肢を広げ、特に自己都合退職した場合でも、早期の支援が得やすくなります。この流れは、再就職や起業活動を考える労働者にとって非常に重要な変化と言えるでしょう。オプションの多様化が促進されることで、将来設計における自由度が増します。
2025年4月の雇用保険制度の改正では、自己都合退職の場合の失業給付(基本手当)の給付制限が大きく緩和されることになります。従来2か月ある給付制限が1か月に短縮されます。さらに、自己都合であっても給付制限がなしになるケースもあります。ただし、その緩和には要件があり、離職期間中や離職期間前1年間に教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受けた場合、待機期間が解除されます。離職前に教育訓練を受講した場合、その修了証明に基づき即座に失業手当を受け取れる仕組みです。この変更は、再就職や職業スキルの向上を目指す人々にとって非常にメリットが大きいでしょう。教育訓練の受講は、自己基盤を強化するための貴重なチャンスとなるため、活用する意義は深いものといえます。
コンサルタント中村の経営視点のアドバイス
これからの雇用保険の改正は、失業給付の給付制限の拡大、教育訓練休暇給付金の新設など、さまざまな改正が予定されています。企業担当者も、正確に改正の内容を理解しておく必要があるでしょう。改正内容について、疑問・質問など、お寄せください。
失業給付(基本手当)の給付制限緩和がもたらす影響についてみていきましょう。
2025年4月に改正される雇用保険制度では、給付制限の緩和が実施されます。この改正により、自己都合による退職者も失業給付(基本手当)の受給が容易になるため、経済的な安定が大いに期待されます。従来の制度では自己都合退職の場合、給付開始までの待機期間や給付制限が長く、再就職活動に影響を与える要因となっていました。今後は、より多くの労働者が困難な状況から早く抜け出し、再スタートを切ることができるようになります。
新たな雇用保険の制度では、2025年4月から自己都合退職者の給付手続きが迅速化されます。とくに、教育訓練を受けることで、給付制限がなく失業給付(基本手当)を受け取ることが可能になります。この改善策により、経済的な不安定さを軽減し、心の余裕を持ちながら再就職に専念できる環境が整います。職を失った後に収入を確保できることで、生活費の心配を少しでも和らげてくれるでしょう。
この制度改正が企業に与える影響について、給付制限の緩和が人材の流出を助長する懸念もあります。労働者が失業給付(基本手当)を早期に受給しやすくなることで、より多くの人が自己都合で退職を選択する可能性が高まります。企業にとっては貴重な人材を確保するための戦略が求められます。離職率の上昇が予見されるため、労働環境の改善や福利厚生の充実が急務となるでしょう。
コンサルタント中村の経営視点のアドバイス
失業給付(基本手当)が早期に受給できることだけが、自己都合退職を促進するかは現状ではわかりません。ただ、昨今の経済状況も背景により給与の高い会社に転職する、スキルアップできる会社に転職したいという人が増えていくことは予想されます。企業側も、状況をウォッチしながら、従業員が働きやすい環境を整えていかなければ人材が流出してしまう時代になってきているのでしょう。
教育訓練給付制度の拡充ポイントを確認しましょう。
2024年10月からは教育訓練給付制度が改正され、従来の給付率が引き上げられ、さらに多くの職業訓練プログラムが対象となっています。具体的には、専門実践教育訓練給付金の給付率が70%から80%に、特定一般教育訓練給付金の給付率は40%から50%に引き上がりました。
特定の業種におけるスキルや資格取得を支援する訓練が拡充されることで、労働者は自らのキャリア形成をより効率的に進めることができるようになります。これにより、労働市場への迅速な復帰が期待され、再就職や転職に対する不安が軽減されるでしょう。
教育訓練給付制度では、給付率が引き上げられることにより、受講者の負担が軽減されます。たとえば、特定の職業能力開発のための講座や専門学校、資格取得のためのプログラムに対する補助金が増加し、実質的な受講料が減少します。これにより、より多くの労働者が必要なスキルを身につける機会を得ることができます。例えば、IT技術や医療分野における資格取得講座が充実し、今後の労働市場で求められる専門的な技術を習得するために、積極的に活用されるでしょう。
2025年10月からは、教育訓練休暇給付金が新たに導入されます。教育訓練を受けるために仕事から離れる場合に、その期間中一定の基本手当相当額が支給される仕組みとなっています。従業員は仕事を辞めることなくスキルアップを図ることが可能です。特に、労働者は安心して教育訓練に専念でき、自らのキャリアを大きく前進させるチャンスが広がります。
2025年の雇用保険制度改正に伴う留意点をお伝えします。
2025年4月以降、雇用保険制度に大規模な改正が行われ、失業給付(基本手当)の受給条件が見直されます。この変化は労働者にとって大きな影響を与える一方、企業にとっても新たな課題が生まれることが予想されます。特に、自己都合退職を行いやすくなることで、労働市場の流動性が高まり、企業は人材の確保と定着に向けた取り組みを強化する必要があります。新制度に適応するための戦略的な計画が欠かせません。
2025年からの雇用保険改正により、企業は自己都合退職が増加するリスクに直面しています。失業給付(基本手当)の給付条件が緩和されることで、従業員が退職を選ぶハードルが下がる可能性があります。特に中小企業にとって人材の流出は、大きな痛手となります。そのため、企業は退職者を減らすために、従業員の声を聞き入れる文化や職場環境の改善など、労働環境の向上に努める必要があります。従業員が辞めたくないと感じる勤務環境を作ることが、今後の重要な課題となるでしょう。
具体的には、従業員の評価制度やキャリアアップ支援プログラムの充実なども施策の一つでしょう。さらに、柔軟な働き方や福利厚生の強化は、多様な価値観を持つ若い世代に対して魅力的に映ります。リモートワークやフレックスタイム制度の導入、働きやすい環境を提供が何より重要になってくる時代です。トライアンドエラーを繰り返しながらも取り組みを進めることで、労働者の定着率が向上し、企業全体の競争力を高めることが期待されます。