休日出勤手当は、労働者が会社の定めた休日に働いた際に支給される割増賃金を指します。一般的にイメージする会社の休日に働くという休日出勤と、労働基準法に基づいた休日出勤では、厳密には異なります。この会社の休日には法定休日(週1日)と所定の休日があり、それぞれの休日に対して異なる割増率が適用されるのです。人事労務や給与計算を担う担当者の方は、この違いについてしっかり理解しておきましょう。従業員の休日労働に対し正当な報酬を提供することで、労使間の信頼関係を構築し、従業員のモチベーションを高める効果も期待されます。適切な計算方法や管理方法を理解することは、企業の財務管理や従業員の満足度向上にも大いに寄与するでしょう。
今回は、休日出勤と休日出勤手当に着目し、考え方や計算方法について解説していきます。
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
・NHK「あさイチ」
・中日新聞
・船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
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ます休日出勤と休日出勤手当の基本概要を確認していきましょう。
休日出勤手当とは、労働基準法に基づき労働者が休日に勤務した場合に支給される割増賃金手当です。この手当には適用される割増率が異なり、休日出勤の定義によって割増賃金は35%が適用されるケース、25%が適用されるケースとがあります。こうした手当を適切に管理することが、労使間の信頼関係を保つ上で非常に重要です。休日出勤には割増手当が発生するため、正確な労働時間の管理と給与計算を行わなければなりません。従業員の働き方改革が進む中、休日出勤の取り扱いはますます重視されるようになっていますので、しっかりと理解しておきましょう。
法定休日と会社指定の休日には明確な違いが存在します。同じ“休日であっても、その定義は異なるのです。まず法定休日は、労働基準法第35条に基づき、使用者(会社)が、労働者(従業員)に必ず与えるものとされている休日です。「毎週少なくとも1回」、または「4週間に4日以上」の休日を与えなければならないとされています。法定休日に従業員が出勤した場合、法定休日の出勤には通常賃金の35%以上を上乗せした割増賃金が支給しなくてはなりません。
一方、会社独自に指定する休日として法定外休日があります。法定休日と区別して所定休日と呼んでいる会社もあるでしょう。会社の休日であることは法定休日同様ではありますが、法定外休日に出勤した場合には、通常賃金の25%以上の割増賃金を支給するのが一般的です。法定休日は法律で定められた義務ですが、会社指定の休日は企業の裁量に任されています。
大矢の経営視点のアドバイス
例えば就業規則において、土曜日を所定休日、日曜日を法定休日と定めている会社では、土曜日に休日出勤した場合であれば、休日出勤は25%以上の割増手当が必要ですし、日曜日に休日出勤した場合であれば35%以上の割増手当の支払いが必要になるわけです。
休日出勤手当が発生するケースを解説します。
休日出勤手当が発生するケースは、法定休日と会社指定の休日における出勤をした場合が挙げられます。法定休日とは労働基準法によって定められた週1日の休みを指します。これ以外の日も休日として企業が独自に設定することがあります。法定休日に出勤した場合、割増賃金として通常賃金の35%が加算されます。一方、会社指定の休日に出勤した場合は25%の割増賃金が一般的です。
法定休日に出勤した場合の割増賃金は35%であり、これは労働基準法によって定められています。通常の給与に割増率を掛け合わせた金額が支給されるため、給与の計算が複雑になることがあります。労働基準法において、「毎週少なくとも1回」、または「4週間に4日以上」は特に重視されているため、法定休日の労働には、時間外割増25%より多い35%の割増賃金が設定されています。
例えば、時給1,000円の労働者が法定休日に8時間出勤した場合、1,000円×1.35(35%割増)×8時間=10,800円が支給されることになります。法定休日の出勤は休息時間を削るため、適正な賃金が支払われることで労働者のモチベーションを維持することが不可欠です。
従業員が休日出勤した場合に、労基法および就業規則に基づいた割増賃金を含む休日出勤手当を支払うことは大前提です。しかし休日出勤手当を支払っているからといっても、従業員の休日が削られたことには違いありません。振替出勤や振替休日、代休は、従業員の休暇を調整するための重要な手段ですので、適切に運用することをおすすめします。振替休日とは、本来の休日を別の日に振り替えることを指し、その場合、割増賃金の発生は避けられます。一方、代休は休日出勤後に与えられる休暇であり、この場合でも割増賃金が発生することがあります。例えば、日曜日に出勤し、翌週の水曜日に代休を取得する場合、日曜日の勤務には割増賃金が適用されるかもしれません。適切な管理と計算を行うことで、従業員の疲労を防ぎ、労働環境を整えることが重要です。
鶴見の経営視点のアドバイス
会社休日に勤務する場合の労務管理、運用については、注意すべきポイントがあります。会社の休日に出勤する場合であっても、休日出勤には該当せず、「振替出勤」という、あらかじめ出勤日と休日を入れ替えて勤務するケースもあります。会社休日の土曜日に出勤する(振替出勤)かわりに、平日の水曜日を休日(振替休日)とするような場合です。この場合には、単に出勤日を交換しただけですので、例え会社の休日に該当する日に勤務していたとしも、「休日出勤」には該当せず、割増賃金も発生しません。
休日出勤手当の計算方法を解説します。
休日出勤手当の計算方法は、基本的な給与の計算とは異なります。まずは1時間あたりの賃金を正確に算出し、その後に割増賃金を計算するステップが必要です。適切な計算方法を理解することは、従業員の正当な報酬を保証し、労働基準法に基づいた運営を行う上で非常に重要です。また、給与計算時には様々な注意点があり、よくある間違いを事前に防ぐ対策も重要です。具体的な計算方法と注意点に確認しておきましょう。
1時間あたりの賃金の算出方法は、月給制と時給制で異なります。月給制の場合、まず月給を月の所定労働時間で割ります。例えば、月給が30万円で月の所定労働時間が160時間の場合、1時間あたりの賃金は30万円÷160=1,875円となります。時給制の場合、既に時給が決まっているため、その金額を直接使います。この1時間あたりの賃金の算出を誤ると、その後のすべての計算が誤ってしまいます。正確な賃金を算出することは、公正な給与支払いの基盤となります。
割増賃金の具体的な計算ステップを確認していきましょう。まず、1時間あたりの賃金を求め、それに割増率を掛け合わせます。法定休日の場合、割増率は35%です。例えば、1時間あたりの賃金が2,000円の場合、2,000円×1.35=2,700円が割増賃金です。次に、実際に勤務した時間数を掛け算します。例えば、8時間勤務した場合、2,700円×8=21,600円が支給されるべき割増賃金です。このように、各ステップを踏むことで正確な割増賃金を算出できます。
給与計算時は様々な注意点があり、労働基準法を遵守し、不適切な給与計算が行われないようにすることが重要です。時折見られる間違いとしては、振替休日と代休の取り扱いの混同や、割増率の計算ミスがあります。振替出勤・振替休日は割増賃金が発生しないのに対し、休日出勤・代休の場合は割増賃金が発生するため、この違いを明確に理解する必要があります。また、休日出勤した際に深夜労働した場合などは、深夜労働に対する割増の計算も加わりますので、注意が必要です。これらのポイントを押さえることで、正確な給与計算が実現します。
高谷の経営視点のアドバイス
給与計算において、休日出勤手当をはじめとした割増賃金の計算の理解は非常に重要です。正しい休日出勤手当が支払われなければ、従業員から未払いの残業代を請求されることもあるでしょう。労基法違反とならないためにも、しっかりと休日出勤の定義や割増賃金を理解し、適切な給与計算を行うようにしましょう。
適切な労務管理と休日出勤手当を詳しく解説します。
適切な労務管理と休日出勤手当の理解は、企業と従業員双方にとって重要です。労務管理の適切さが法的遵守や従業員のモチベーション維持に直接影響するため、休日出勤手当などの正確な給与計算は非常に重要となります。また、従業員の健康と福利厚生を維持するためには、しっかりと休息日を確保しなければなりませんし、それが企業の生産性向上にも寄与するでしょう。従業員の労働時間、残業時間を正確にカウントすることは、会社と従業員双方にとってのメリットがあるものです。残業時間のカウント方法やツールの活用など、複雑な労働時間管理と給与計算を簡素化する方法について詳しく解説します。
適切な労務管理と休日出勤手当の理解は、従業員と会社の双方に多大なメリットをもたらします。従業員にとっては、ミスなく正確な賃金が支払われることでモチベーションが向上し、仕事に対する満足感が高まります。これにより、離職率の低減や生産性の向上が期待できます。一方、企業側にとっても、法令遵守によるリスク回避や、従業員のパフォーマンス向上が実現します。また、公正な給与制度は企業の評判を高め、人材の採用・定着にも寄与します。結果として、企業全体の競争力が向上し、持続可能な成長が可能となります。
従業員の労働時間および残業時間のカウント方法は、休日出勤手当の計算にも深く関わります。たとえば、週の所定労働時間を超過する場合、通常の残業(25%の割増賃金)が適用されますが、法定休日の出勤には35%の割増賃金が適用されます。また、深夜労働(午後10時から午前5時まで)の場合は、さらに25%の割増が加算されます。これらを正確に計算するためには、残業時間と休日出勤を別々にカウントし、それぞれの割増率を適用することが必要です。これにより、正確な給与計算が実現し、従業員の不満を回避できます。
マネーフォワードクラウドには、バックオフィスをサポートするツールが豊富にあります。とくにマネーフォワードクラウド給与、マネーフォワードクラウド勤怠、マネーフォワードクラウド人事労務などは、給与計算や労務管理に特化したツールで、休日出勤手当の計算を簡単にするために役立ちます。このツールを使用することで、複雑な割増賃金や残業時間の計算が自動化され、人為的なミスを減少させることが可能です。例えば、法定休日出勤の35%の割増や深夜労働の追加割増など、多岐にわたる計算を一括で処理できます。また、マネーフォワードは労働基準法に準拠しているため、法的なリスクも最小化できます。このように、効率的な給与計算が可能になることで、企業全体の生産性向上にも寄与します。
本記事では、休日出勤手当の考え方、計算方法や労務管理の重要性について詳しく解説しました。法定休日と会社指定の休日の違いなど休日出勤の定義や割増手当についてご理解いただけたでしょうか。休日出勤は、労基法に照らして正しく理解しておかなければなりませんし、正確な給与計算のためには各ステップごとの計算方法も抑えておく必要もあるでしょう。特に、1時間あたりの賃金の算出方法や割増賃金の具体的な計算ステップは、非常に重要です。正確な給与計算は従業員の満足度を高めると同時に、法的リスクを最小限に抑えることにもなります。マネーフォワードなどのツールを利用しながら、さらに効率的な管理が実現しませんか。給与計算業務にお悩みの担当者のみなさまからのご相談、お問い合わせに、スピード感を持って対応させていただきます。