人事評価制度は、評価すること自体を目的とするのではなく、企業と社員を成長に導くものでなければなりません。
社労士法人とうかいでは、人事評価制度の設計から導入・運用まで、社労士ならではの視点でサポートいたします。
人事評価制度の目的は、社員の行動を変え、企業と社員を成長に導くことです。
大企業などで多く導入されている人事評価制度は、本来の評価制度の目的とは異なり、社員を「評価」することが目的になっています。
評価することそのものが目的となった人事評価制度は、大企業のように社員数が多い企業では機能します。
社員数が多い場合、同じ役割を務めている社員が複数いることが多く、そのため、社内での競争が促され、競争に勝つために社員の行動が変わります。
しかし、社員数が少ない企業では様々な仕事を兼務していることが多く、同じ土俵での比較がされないために競争が起きづらくなります。
つまり、中小企業で大企業型の評価制度を入れても、比べる相手が少ないため、評価制度が形骸化してしまうのです。
評価のための評価、面談のための面談といって、人事評価制度のために時間を使うことになってしまいます。
人事評価制度は評価をすることが目的ではなく、評価をされることによって社員に気づきを与え、行動を変えさせるものでなければなりません。
人事評価制度は人材育成制度でなければならないのです。
人事評価制度は人が育つ仕組みを作ることと同義です。
そのためには誰でも評価できる「絶対評価」で具体的な行動評価の評価制度を作ることをおすすめしています。
絶対評価とは、どの程度できているかを他者と比較することなく、その人自身の状態に対して行う評価です。
例えば「あいさつができているか」という項目を絶対評価で評価すれば、毎日気持ちの良いあいさつができている人は〇になります。
しかし相対評価の場合、本人が毎日気持ちよくあいさつができていたとしても、組織の中でそれ以上に気持ちよくあいさつができている人がいれば△や×になってしまいます。比較せずに評価ができる絶対評価の方が評価をしやすい特徴があります。
また、行動評価とは、先程の「あいさつができる」という項目のように本人の行動を評価とすることです。
行動評価であれば、できているかどうかが分かりやすく、行動そのものを評価するため、社員の行動の改善につながりやすいのです。
社員が競争する相手は社内の社員ではありません。
人事評価制度によって、求められる行動を明確化することで、それぞれの社員が能力を発揮できるのです。
評価制度を絶対評価による行動評価とすることによって、普段から評価を意識した行動をとることができるようになります。
人事評価制度は資格等級制度を基本とすることをお勧めします。
資格等級制度とは、社員が成長する段階を等級で表現する評価の方式です。
具体的には社員を6~8程度のいくつかの等級に分け、それぞれの部署、等級で必要とされる能力を定義します。
例えば、
というように、各部署で必要とされる能力を等級で段階を付け、明確化する作業です。
明確化する際の注意点は、実際に今、その業務を担当し、該当の等級にある人の能力を書き出すわけではないということです。
本来あるべき姿を想像し、現在行っている仕事だけでなく、本来行うべき仕事や持っていてほしい能力も一緒に書き出しましょう。
人事評価制度では社員に期待される行動や努力を明確にすることが必要です。
行動や努力の程度を「S・A・B・C・D」の5段階で表現するのが一般的です。
行動や努力の程度を「評価の着眼点」として定義し、部門別、等級別に作成することで社員全員がどのような行動や努力を期待されているか明確化します。
「評価の着眼点」を基準に評価の優劣を決めることで、社員の行動を変えるきっかけになります。
そのためにも、設定した評価の着眼点を毎期の初めに社員に周知し、すべての社員が前もって評価項目を知っている状況を作ることが大切です。
また、評価の着眼点をたくさん設定しても、その全てをやり切ることはできません。
現在の自社のレベルに合わせて、現状で6割の社員ができている項目を確認し、その中から12項目程度に絞り込みましょう。
人事制度は4つの制度から成り立つのが一般的です。
1.資格等級制度、2.評価制度、3.能力開発制度、4.給与制度 です。
「資格等級制度」は、社員の成長段階を明確化し、その能力に応じた資格等級に格付けする制度です。
資格等級制度の目的は「社員の能力向上に必要な能力」を具体的に明示し、自分にはどのような能力が必要なのかを社員自身で知ることが出来るようにすることです。
つまり、社員が能力向上してゆくステップを段階として表現する制度といえます。
評価制度
「評価制度」は等級毎、部署毎に「期待される行動(つまり努力や成果)」が具体的に明示されているものにしましょう。これらの期待された行動をどれほど実行してくれたかを見返ることが目的です。
「部下育成見返り制度」と読み直してもよいものです。
能力開発制度
「能力開発制度」は社員の能力を向上させる機会・チャンスを提供することが目的の制度です。
OJTによる能力向上、通信教育などの社外の教育利用、そして自分の個人目標、自己啓発などが設定され、フォローされるような仕組みをつくります。
給与制度
「給与制度」の目的は「許される範囲内で人件費を決める」ことです。等級と評価によって公正に金額を決める仕組みをつくります。
人事評価制度はプロジェクト方式で進めることをお勧めします。
メンバーは5~10人程度が適切です。部門の管理者またはNo.2の人は、必ずメンバーになってもらいます。
等級も様々な方がいいでしょう。
様々な立場の意見が反映された人事評価制度とすることで、導入後にしっかりと運用される人事評価制度となります。
フレームワークという手法を用いて、誰のための制度作りなのか、なぜ人事制度が必要なのかの共通理解をメンバー内で持ちます。
等級数を決定し、各部門、等級別に仕事の内容を等級に振り分けます。この作業は、現在社員が行っている仕事と期待される仕事のすべてを洗い出します。これを「仕事しらべ」と呼んでいます。
評価制度の基本となる評価要素を決定します。「期待される社員像」のアンケートから、成果、勤務態度、能力の3項目ごとに4つの評価要素を設定してください。実際の評価はこの評価要素を基準に行います。この作業は「着眼点表作り」と呼ばれ、高い業績をあげるためにどう行動すべきかの決定をします。
能力開発の機会の提供と個人目標の設定、フォロー体制を仕組化します。目標管理制度の基礎となる重要な制度です。
等級と評価に基づいて予算内で昇給額を決定する仕組み作りです。
評価者全員に人事制度を理解してもらい、かつ評価の実践的教育を行います。
人事評価制度は企業と社員を成長に導くものでなければなりません。
社内の従業員を評価し、給与に差をつけることが目的ではないのです。
社員の成長を促し、やる気をださせ、それぞれの能力を最大限に発揮してもらうための風土づくりこそが人事評価制度なのです。
運用がうまくいっていない人事評価制度の多くは、評価のための評価制度になっています。それでは社員も評価の時期だけしか意識をしていません。
人事制度の本当の目的は、どのような能力を社員に期待し、どのような努力をして欲しいのかを明確に社員に知ってもらい、社員がその期待に応えてくれたかどうかを反省(評価)し、さらなる社員の指導・育成を図ることです。
私たちとうかいも多くの中小企業をサポートさせていただきましたが、社員が成長している会社はおおむね評価制度が具体的で、今後に期待される行動を明確に指示したものでした。
人事評価制度でお悩みでしたら、一度とうかいにご相談ください。
人事労務の専門家として人事評価制度だけでなく、人事制度全般のアドバイスをさせていただきます。