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【テンプレート付き】人事評価制度の作り方 

導入手順や注意点を分かりやすく解説

人事評価制度は、企業の成長や従業員のモチベーションを向上させるための重要な仕組みです。人事評価制度を適切に構築し、運用することで生産性や従業員の定着率向上を目指せます。一般的に、人事評価制度は「人事評価規程」を作成し、詳細を定めます。規程がないと属人的な人事評価が行われ、従業員のモチベーションを損なう要因となるため注意しましょう。今回は、人事評価制度や規程の作り方、導入手順などを解説します。テンプレートも用意しているので、ぜひ参考にしてみてください。

目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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人事評価規程

-人事評価の適用範囲や評価方法、項目、運用実施などを定めたもの。

人事評価制度の基本知識

人事評価制度の基本知識について詳しく解説します。

人事評価制度とは、従業員の業務遂行能力や成果に基づいて評価を行う制度の枠組みです。人事評価に基づいて昇給や昇任、配置などを決定するケースが一般的なので、従業員にとって大きな関心事といえるでしょう。

まずは、人事評価制度の基本的な情報から解説します。

人事評価制度とは

人事評価制度は、一般的に就業規則か人事評価規程に落とし込んで作成します。人事評価制度は就業規則における「相対的必要記載事項」であり、もし企業内に人事評価制度がなければ、規程を作成する必要はありません。

しかし、従業員にとって人事評価は収入やキャリアに大きな影響を与える要素です。「どのような仕組みで、どのような点を高く評価するのか」は、大きな関心事といえるでしょう。

つまり、多くの企業にとって人事評価制度は欠かせない制度です。従業員の満足度やモチベーションを高め、生産性を向上させるためにも、適切な人事評価制度は重要な役割を果たします。

属人的な評価となってしまう事態を防ぐうえで、従業員のパフォーマンスや貢献度を定量的に評価するシステムは有用です。人事評価規程を作成する際には、明確な基準と透明性を確保し、厳格に運用することが大切です。

人事評価制度の必要性とその利点

人事評価制度は、従業員に対して求めている役割や期待している能力を理解してもらううえで有用です。企業として求めている人材や能力などを明文化することで、従業員の自発的な成長を促進できるでしょう。

また、公平かつ透明性のある人事評価制度があれば、従業員に不満が生まれにくくなります。評価基準が曖昧だと「なぜ自分よりも〇〇のほうが出世が早いのか」「なぜ成果を上げたのに低評価なのか」など、さまざまな不満が生まれかねません。

つまり、各従業員の目指すべき方向を明確化し、モチベーションを向上させるために人事評価制度は重要な役割を果たします。個々の成績や貢献度に応じた適切な処遇を用意することで、人材定着や人材獲得などのメリットも期待できるでしょう。

人事評価制度で定めるべき項目

人事評価制度で定めるべき内容として、以下の要素が挙げられます。

評価対象者

評価期間

評価要素

評価項目

評価の実施方法

評価区分(S~Dなどのランクが一般的)

評価の実施者

遵守事項

評価の対象者は、正社員だけでなく契約社員やパートなどの非正規雇用の方も含められます。評価する要素や項目を明文化すれば、求めている能力が従業員に伝わりやすくなるでしょう。

評価の実施方法や評価区分を決め、区分ごとにどのような昇給・昇任が行われるのかを明確にします。

評価方法については、従業員が持つスキルや知識・資格などを評価する「能力評価」や、従業員の業績を評価する「業績評価」などの方法が代表的です。

評価者や評価者が遵守すべき事項を記載すれば、従業員も「恣意的な人事評価が行われていない」と理解できるため、安心できるでしょう。

人事評価制度の導入手順

人事評価制度の導入手順について詳しく見ていきましょう。

人事評価制度は、労働基準法に則りながら導入しましょう。例えば、就業規則の一方的な不利益変更は許されないため、人事評価規程を設ける際には慎重に判断する必要があります。

また、現状の評価体制や制度を見直し、どのような課題があるのか把握することも大切です。現状抱えている課題を解決するために必要な変更を加えつつ、従業員の理解を得やすい制度を構築しましょう。

現状の分析と目的設定

現在人事評価制度があるものの、規程として明文化されていない場合や時代に即していない場合、改正する必要があります。

現状の業務プロセスや評価システムを分析し、具体的な問題点を把握しましょう。各従業員から意見を聴取し、どのような点に不安や不満を感じているか把握することも効果的です。

例えば、従業員から「求められている役割が抽象的で分かりづらい」という意見があれば、部署ごとに求めているスキルや役割を評価項目に明記するとよいでしょう。

評価基準と評価項目の決定

評価基準や項目が曖昧だと、従業員からすると「何を重点的に頑張ればよいのかわからない」「どのように評価しているのかわからない」という不満が生じる可能性があります。

従業員の成果や行動に基づく明確な評価基準と評価項目を定めれば、従業員の役割や重点的に行うべきことが明確になるでしょう。

目的が明確になれば、従業員はやるべきことを把握し、スキルや知識を向上させるための努力を行う可能性が生まれます。自発的に自己啓発を行う従業員が増えれば、生産性の向上が期待できるでしょう。

評価に関する規則の設定

評価制度の透明性と公正性を確保するためには、明確な規則を設けることが大切です。

「誰が、どのような評価手法や評価基準に基づいて従業員を評価しているのか」を明文化し、評価者にも責任を持たせましょう。

評価のプロセスが納得感を持って実施されれば、従業員は不安を解消できます。従業員が疑念を抱き、業務に集中できなくなる事態を防ぐためにも、不公平・不透明な評価制度はすぐに改めるべきです。

社員への周知と運用開始

新たに定めた人事評価制度は、就業規則や人事評価規程として明文化し、社内で周知する必要があります。せっかく人事評価制度を作成しても、従業員が知らなければ意味がありません。

従業員が達成すべき目標や習得すべき知識やスキルをわかりやすく伝えるためにも、きちんと周知しましょう。

説明会を実施したり、マニュアルや資料を作成して、いつでも参照できるように配布することも有効です。

人事評価制度を作る際の注意点

人事評価制度を作る際の注意点を見ていきましょう。

人事評価制度は従業員のモチベーションを向上させるうえで重要ですが、構築する際には注意点が存在します。

特に、公正性と透明性を持った制度に仕上げることは、組織全体の信頼性を高めるためには欠かせません。

従業員が納得できる形で運用しなければ、制度を設ける意味がないため、注意しましょう。

公正性と透明性を確保する

公正性と透明性の確保は、人事評価制度の基礎となります。同じ評価基準を全ての従業員に適用することが基本であり、特定の従業員を差別すると、従業員の不満が高まってしまいます。

あわせて、評価の理由やプロセスが明確であることも必要です。「なぜ自分はこのような評価なのか」を、各従業員が納得できるような仕組みを構築しましょう。

評価基準に一貫性を持たせる

評価基準に一貫性を持たせることも、制度の公正さを担保するために不可欠です。評価基準の一貫性を欠き、その都度変更されたりすると、評価者の裁量が大きくなり主観的・属人的な人事評価になってしまいます。その結果、従業員が不信感を抱く結果になりかねません。

評価基準を定めるときは、定量的な指標と定性的な評価項目を組み合わせて、全ての等級や職種において共通の評価様式を用いるとよいでしょう。

評価手法の紹介

評価手法を紹介します。

人事評価制度の内容は、企業によって柔軟に設定できます。以下で代表的な評価手法と特徴を解説するので、企業の文化や目的に応じて適切な手法を選択しましょう。

MBO(目標管理制度)

MBO(目標管理制度)は、従業員自身が具体的な目標を設定し、その達成度に基づいて評価する手法です。

自分のスキルや能力に応じて従業員が目標を設定するため、自発的な能力開発を促進できるメリットがあります。また、業務に対する責任感が高まるメリットも期待できるでしょう。

具体的な達成目標が設定されるため、評価が定量的になりやすく、客観的に評価しやすい特徴があります。目標を共有することで、チームの上司も目標の達成に向けてサポートをしやすくなります。

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価は、特定の職務に求められるスキルや行動特性に焦点を当てた評価手法です。

部署内で模範となる人(ロールモデル)をコンピテンシーとして設定し、模範となる人と同じ行動をした従業員を高く評価する点が特徴です。模範となる人がすぐ近くにいるため、従業員としても「どのように業務に取り組めばよいのか」がわかりやすいでしょう。

コンピテンシー評価は、部署内で求められる知識やスキル、業務姿勢を持つ人材を効率的に育成できるメリットがあります。

評価基準がわかりやすく、公正性を確保しやすい点はコンピテンシー評価のメリットです。

360度評価

360度評価は、上司だけでなく同僚や部下など、さまざまな視点から従業員を評価する方法です。多くの企業では対象従業員の上司が評価者を務めるケースが多いですが、上司以外の意見を取り入れることで、客観的かつ正確に評価できるメリットがあります。

360度評価を採用すれば、多面的な評価によって従業員の強みや改善点をより正確に把握できます。また、単一の評価者による偏りが発生する事態を抑えて、より全体的な評価を行うことも可能です。

上司だけでなく同僚からのフィードバックを受けることで、自己理解にもつながり成長を促進できます。

人事評価規程の作り方

人事評価規程の作り方を見ていきましょう。

人事評価制度を決めたら、実際に人事評価規程に落とし込んで明文化します。実際に規程を作る際の流れは、大まかに以下のとおりです。

1. 自社の課題を把握する

2. 人事評価制度を作成する目的を考える

3. 評価制度と評価基準を決める

4. 評価項目を設定する

5. 具体的な評価方法を決める

6. 社員へ周知して運用する

なお、規程を作る際にはサンプルやテンプレートを活用したり、社会保険労務士へ作成を依頼する方法があります。

サンプルやテンプレートを活用する場合は、厚生労働省が出している作成例を参考にしながら、自社に合わせて作成するとよいでしょう。実際に作成したサンプルを基に、従業員とコミュニケーションを取りながら改善を図ることも大切です。

もし規程を作成するのが難しければ、人事労務の専門家である社会保険労務士に依頼するのも一つの手段です。自社が抱えている悩みや課題を相談しながら、最適な評価制度や評価方法を考えてくれるでしょう。

導入後のポイントと注意点

導入後のポイントと注意点をお話します。

人事評価制度を導入した後は、当初の想定通りに運用されているか確認することが重要です。

制度が正しく機能しなければ、設計時の目的が達成されない可能性が高まります。定期的に評価プロセスを見直し、従業員からのフィードバックを受け入れつつ、労使双方が納得できる制度を作成しましょう。

制度運用の重要性

人事評価制度を設けたあとに、適切に運用できているか確認しましょう。決めたとおりに運用できていなければ制度を定めた意味はなく、結果的に従業員は評価基準やプロセスに対して不信感を抱くことが考えられます。

従業員のモチベーションが低下してしまうと元も子もないため、評価者への研修を行い、きちんと従業員の評価が適切に行われているか確認することが不可欠です。

失敗例とその対策

制度は人間が作る以上、何かしらの欠陥が見つかることがあります。また、評価方法ごとにメリットとデメリットがあるため、すべての従業員を満足させるのは現実的とはいえません。

とはいえ、多くの従業員が不満を抱えるような人事評価制度は、速やかに改正する必要があります。例えば、評価基準が曖昧で従業員が自らの業務目標を明確に把握できず、正当な評価ができなくなるのは代表的な失敗例です。

実際に運用を開始したあとに改善すべきポイントが見つかったら、必要に応じて改正しましょう。評価者だけでなく被評価者である従業員からもヒアリングを行い、ブラッシュアップしましょう。

規程の不利益変更は認められない

規程を変更する際には、法律に反するリスク対策も必要です。合理的がないにも関わらず、就業規則を一方的に変更することは認められていません。

人事評価制度の運用を開始したあとに制度の改正を行う場合、評価基準を厳しくすると不利益変更にあたる可能性があります。

透明性を持った評価プロセスを構築し、誰もが納得できるような評価を行う運用を行うことは重要ですが、法律の面で違反がないように意識する必要があります。

まとめ

人事評価制度は、従業員のモチベーションを維持し、自発的な能力開発を促進するうえで重要な存在です。明確な人事評価制度を設けていない場合は、透明性・公平性のある人事評価制度を作成するとよいでしょう。従業員からすると、自分の評価は昇給や昇進などに影響するものです。人事評価制度が未整備・未成熟な企業だと、貴重な人材が離れてしまう事態になりかねません。社会保険労務士法人とうかいでは、企業様の就業規則や人事評価制度の策定をサポートしております。労務・経営に関する幅広い相談に対応しているため、自社に合った人事評価制度の導入で迷っている方は、お気軽にご相談ください。

人事評価規程

-人事評価の適用範囲や評価方法、項目、運用実施などを定めたもの。

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